つれづれ司書ばなし

つづれ しういち

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21 「カラー版名作全集 少年少女世界の文学シリーズ」

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 お久しぶりです。
 少し間があいたので、書きたいことが溜まってきてしまいました。小説の毎日更新も続行中のため、そちらを休んでこちらを更新……ということで、とびとびに公開することになりそうですが、よろしかったらお付き合いくださいませ。

 さてさて。
 みなさんは、「カラー版名作全集 少年少女世界の文学」(小学館)という児童文学シリーズをご存じだろうか。
 一冊だけでも高さ22.8センチ、幅も4センチはあろうかという大きな本で、すべて赤い化粧箱入り。全30巻の相当大部のシリーズだ。
 私自身は祖父と祖母からプレゼントされてそのうちの2巻だけを持っていたものである。今でもそれはうちの本棚に大切に置かれている。
 内容は各国の名作といわれる作品を、児童に読みやすい形に直して翻訳したものとなっている。一例を挙げると「グリム童話」「アルプスの少女」「海底二万里」「アンクル・トムの小屋」などなど。
 翻訳されたのが昭和40年代と古いこともあって、日本語はどれも本当に美しいものばかり。いま同じ原文が翻訳されてもこのクオリティはまず出せないだろうと思われる。

 で、である。
 実は先日、朝、ダンナと一緒にいつものように手をつないで(※注1)出勤していたところ、道端にそのシリーズが紐を掛けて廃棄されているのに遭遇してしまったのだ。

「えっ!? 『少年少女世界の文学』……えっ??」と、二度見、いや三度見する私。
「そんな言うなら拾ったらええやん」とダンナは言ってくれるけれど、そうしていたのでは乗るべきバスに乗り遅れる。しかも何十冊もあるし、とても一回では運びきれないのはちょっと見ただけでも明らか。

 どうしよう。ああ、どうしよう。
 後ろ髪を引かれるどころの騒ぎではない。
 なんとも知れない感覚が鳩尾のあたりを襲い、次第に鼓動もおかしくなってくる。
 あんな本、捨てるのか。ぱっと見ではわからないけど、かなりきれいそうなのに。
 あれがゴミ処理場へ? えっ、全部?
 えええっ、勿体なさすぎる。いや、ダメだよ。ダメでしょうよ!
 やっぱり遅刻してでも拾っていくべきだったか……?
 でもでも、うちの図書館は中学生が対象だし、すごく狭いスペースだから、さすがにあれは置けないだろうし──。

 頭の中が色んな思いではち切れそうになり、遂にムスメにLI〇Eしてしまう。
 と、まだ家にいたムスメがあっさり「わかった。取ってくるわ」と返事してきた。
「えっ!?」とびっくりする私。
 ムスメとて現役の中学生で、朝のこの時間帯といえばいつも大忙しのはずなのに。
 いつもギリギリまで寝ていて、やっと朝食をとってダッシュする毎日なのに。

 少しして、「運んだ。3往復したで」とムスメからLI〇Eが!
 心の中でガッツポーズ&狂喜乱舞する私。
 いや本当にうれしかったです。ありがとうムスメ。
 帰宅して確認したら、なんと30巻全部そろっていた上、状態もかなりよかった。きちんと1巻から5冊ずつ並べて紐で縛ってあり、多少の書き込み(明らかに子供によるもの)がある以外はページの黄ばみぐらいで基本的にはきれいな品。
 初版の時期からして、もはや50年前のものだけれども、これは捨てた方もだいぶ迷った結果なのかなと思われる。この大きな本が30冊もあったら、相当居住スペースを圧迫してきたはずだからだ。

 さて、次はこの本たちの行き先である。
 実はムスメの母校である小学校で図書ボランティアもしていた私。そちらの皆さんともL〇NEでつながっているので、早速「こんな本が捨てられていて、今朝ムスメが拾って来てくれました」と報告。ボランティアの皆さんも、この本を知っている方は「これを捨てるなんて!」「良かった、〇さんが拾ってくださって」と口々におっしゃってくださる。
 それでそのまま、そちらの小学校へ寄贈できないかと相談。

 今後どうなるかはまだはっきりしないけれど、とりあえず近日中に、その小学校の教頭先生に現物を見ていただくため数冊持参することが決まった(そちらの学校にはまだ司書がいないため)。
 さてさて、どうなることやら。
 もしかしてそちらが無理でも、学校司書同士の横のつながりがあるので、公立の小学校さんへ打診していく予定です。

 と、今回はそんなご報告でした。
 ではまた次の機会に!


※注1 このあたりの顛末は、拙作エッセイ「うちのダンナはぽっちゃり男子」に詳しいです。興味がおありのかたはぜひどうぞ!(笑)

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