112 / 225
閑話
5 黒いドラゴンのひとりごと
しおりを挟む
オレ、ガッシュ。
ほんとは「ガッシュティンク=ルナカペラ=デル=フィエントヴァルザブルク」っていうんだけど、まあ誰も一発じゃ覚えらんないし。っていうかそもそもニンゲンの発声器官では発音できない音も大量に混ざってるから、大体は「ガッシュ」って呼ばせてる。
そう、呼ばせてるのさ。
別にオレ、あいつらのペットじゃねえし。
いつかじいちゃんが言ってた。オレたち上級ドラゴンは、みんなめちゃめちゃ長命だし、そのぶん大いなる知恵を持ってる。だからあんな短命でバカなニンゲンどもにこき使われる筋合いはない。誇り高くて、「お前らのペットになるなんて死んでもゴメン」な種族なんだからな。舐めんなよ。
オレたちがちょっと本気を出せば、あんな奴らの百や二百、まとめてぶっ殺すこともできるんだからな。じいちゃんだったら、魔撃のひと吹きで数千、数万は塵に変えちまうだろう。そりゃ、「伝説のドラゴン」なんて言われて恐れられてるだけのことはあるわけよ、ふふん。
で、オレはその孫ドラゴン。
全身が真っ黒なのは親父ゆずり。びっしりならんだ鱗が黒曜石みたいにきらきら光って、爪も棘もぴんぴんに磨かれて。ほんとつやつや。世話係のニンゲンが、いつも「お前はほんとにキレイだね」なんてほめてくれる。
ま、当然だよな。
親父がちょっと、このニンゲンの何代か前の奴に惚れこんじゃって、「お前の役に立とう」なんて約束をしちまったもんで、オレはここでこき使われる羽目になっちゃった。あーあ。親父、なにしてくれてるんだか。
え、親父はどこにいるのかって? もうこの仕事は引退してるよ。どこかで好きに生きてるんじゃね?
いや、年をとるとオレたちって、体が大きくなりすぎるんだよ。もちろんそのぶん魔力も体力も大きくなるんだけど、人を乗せて飛ぶにはちょっと不便になるってわけ。わかるだろ? せまい渓谷の間とか飛べなくなるじゃん?
で、息子のオレがあとを引き継いだわけ。はー、めんどくせ。
でもまあ、この仕事は気に入ってる。
なんたって、俺は魔王しか乗れない特別なドラゴンだからな。
魔王って言えば、魔族の世界の親分だ。まあ、ちょっとヘンな奴が多いのは玉に疵なんだけど。
めちゃめちゃ同族殺しが大好きで、その上めっちゃ嗜虐趣味なやつとかな。ヒイヒイ泣き叫んでる女でも子供でも、ぎゃはぎゃは笑いながら、はじっこからちょっとずつ体を削り取るような奴ね。
あれはほんと、ひどかった。
オレ、もう耳も目もがっつり魔力で閉じて、見ないようにしてたけどさ。
で、この間のやつは「引きこもり」。
いや、オレが言ったんじゃねえよ? 自分でそう言ってたんだって。
なんか、滅多に王宮から出てこないで、気に入ったメスと交尾することばっか考えてるみたいな、めっちゃくらーい奴だったな、うん。
そんで、だれのことだかわかんないけど、ときどき「あいつ、ほんっとムカツク」とかなんとか、ぐるぐる真っ黒な気分を胸の中で渦巻かせてる。いつまでもそこをぐるぐる回ってるだけで、ちっとも前へ進めないって感じだったな。
ちょっと目先を変えるだけで、周りにいいことも明るいことも楽しいことも、なかったわけじゃなかったのにさ。
端から見てるとただのアホなんだけど。
ま、ニンゲンってそんなもんだし。
オレがどうこう言ったからって、聞かねえのも知ってたし。
え? 「なんでわかるの」って?
オレ、そういうの見えちゃうからな。まあ見たくないもんは、見ないですますこともできるけどさ。
まあ、そんな心の中ドロドロのやつと話ししたってつまんねえって分かってるから、絶対に心は開かない。だからニンゲンどもってば、オレがあいつらと心を交わすことのできねえドラゴンだって、勝手に勘違いしてやんの。バッカじゃね? こっちが願い下げなだけだっつーの。
あ、でも。
今度の新しい魔王は、ちょっと面白いかなって思ってる。
いつも茶色い肌したすごい美人のダークエルフを連れてるんだけど、「ああ、また前の奴みたいな女好きか」って思ったら全然ちがった。
今までだったら、魔王はだれかに殺されて位を奪われるか、自分で死期を悟ってだれかに譲位することで誕生してた。
でもこいつは、そういうののどれとも違う。
要するにあの、前の「引きこもり魔王」から、変な理由で無理やり譲位されちゃったと、つまりそういうことらしい。オレにはよくわかんないけど。
あいつが初めて宮殿の奥深くにあるオレ専用の部屋にやってきた時、オレは半分眠ってた。
オレたちドラゴンはいつも、この世界のあらゆる部分から魔力エネルギーを吸い取りながら体力を蓄えている。その時も、ちょうどそうしていたわけだ。
あいつは世話係のやつとちょっと話をすると、あらためてこっちへやって来た。
(ふうん。また新しいヤツになったんだな)
オレはそんな風に思っただけで、片方の目を半分だけ開けてそいつを観察した。主に、その心をだけどね。
そんで、「へえ」ってびっくりした。
なんて言うか、そいつはオレがこれまで知っていたどの魔王とも違っていたから。「毛色が違う」なんて言うけど、ちょうどそんな感じ。
そいつが腰に差している青緑の不思議な魔力の光を放つ剣のことも気になった。それが、普通の魔王だったら手に触れるのも難しいような、めちゃくちゃ綺麗な気を放っていたからだ。
隣に連れてるダークエルフの女もそうだった。自分じゃそうは思ってないようだったけど、この新魔王を想うココロのところだけはめちゃめちゃキレイ。きらきら光ってて、でもどっか悲しそうで。目が離せなくなっちゃった。
こんなモノたちに想われて、慕われて、「そばに居たい」って思わせる。
そんな魔王は初めてだった。
だから俄然、興味が湧いた。
「この者は、人に心を開きません」って世話係がおせっかいなことを吹き込んでいたのも聞こえてたから、ちょっと悪戯心も湧いちゃった。
だから、オレがこう言ったとき、そいつは目を瞠って驚いたようだった。
《ねー。名前、なんてえの》
それでしばらく沈黙したあと、やっとこう返してきた。
《……まさかとは思いますが。今のお声は、あなたですか》
いや、驚いたね。めちゃめちゃ敬語だったんだもん。ちょっと吹いた。
ま、今では友達みたいな感じで、ふつーにお話ししてるけどもさ。
そいつの名前はヒュウガといった。
ヒュウガは前の魔王とは大違いで、暇さえあれば、やたらめったら領土のあっちこっちへ飛んでいきたがる。そんで何をやってるかと言うと、そこで働いてるすんごく貧しい農家の家族とか、奴隷同然に働かされてる女や子供たちと会ってるんだ。
それも、いつもの長い髪とかマントの姿じゃなくて、そこらへんに居そうな普通の髪型と格好で。つまり、「お忍び」とかいうやつだよな。
んで、城に戻って臣下の奴らにあれやらこれやら指示を出してる。
どうやら、めちゃくちゃ真面目に魔王としての仕事をしているらしい。
いや、あいつらしいけど。
なんか、ほんと面白い。
だからここんとこ、ほんと楽しい。
あっちこっちに飛んで行けると気持ちいいしな。それも、弱い者いじめしに行くとか悪だくみしにいくみたいな、胸糞悪くなるような理由じゃないし。
この宮殿で暮らすようになって、こんなのはほんとに久しぶりだ。
そういえば、ヒュウガは南にいたときに、リールーっていうメスのドラゴンに乗ってたらしい。
え? そりゃまあ、知ってるよ。同族の奴だからさ。
上級ドラゴンってのは、みんなオレのおじいちゃんから生まれてきてる。だから全部、どっかでは血がつながってるのさ。つまり親戚みたいなもんってこと。
ヒュウガが魔王になることになって、あいつ、めっちゃ泣いてたらしいな。
ま、わかるけど。しょうがねえよな、女って。
《心配すんなよ》
《こっちじゃオレが、こいつの面倒見るからよ》──。
オレは風にふうっと息を吹きかけて、その「手紙」を乗せてやった。
ドラゴン同士だけにできる秘密の通信。
なんか、返事がめっちゃ長文で来そうでイヤだったから、これまではあんまりやったことなかったんだけど。
そんなことを考えてたら、いつもみたいに大股に、マントを翻してオレの主人が入って来た。
《ガッシュ。今日は南西だ》
《おおよ。ってか、昨日は北に行ったばっかじゃん。おめーほんっと、ドラゴン使いが荒すぎー》
《……ああ、すまん。そうだよな。疲れているか》
そうなんだよ。こいつ、ちゃんとオレのことまで気遣うんだよなあ。
大丈夫だっての。オレは上級ドラゴン様だぜ。
しかも、魔王の御用達だぜ?
《ふふん。舐めんな。このオレが、ちょっとやそっとのことで泣きなんか入れるもんかよ。余裕だっつーの、ヨユー!》
《……そうか。済まない》
俺は「へいへい」ってわざとめんどくさそうに言って、ひょいと体を低くする。
あいつは隣にいるダークエルフの女を難なく抱き上げ、いつものように軽い足取りで背中のところにのぼってくる。
《んじゃ、行くぜー。ちゃんとつかまってろよー、ヒュウガ》
《分かってる。よろしく頼むぞ、ガッシュ》
俺は宮殿の発着場所になっているバルコニーから、ずばっと風を切り裂いて舞い上がる。
うひょー! オレ、かっけえ。
この時が一番、気分がいい。
背中に乗ってるクソ真面目魔王のお陰で、今までの何倍も気分がいい。
《このまま、いつまでもオレの魔王でいてくれよ。……な? ヒュウガ》
うっかりすると、ちょっとそんなことを思っちまう。
ま、ぜってえ言わねえけどな。
ふん!
ほんとは「ガッシュティンク=ルナカペラ=デル=フィエントヴァルザブルク」っていうんだけど、まあ誰も一発じゃ覚えらんないし。っていうかそもそもニンゲンの発声器官では発音できない音も大量に混ざってるから、大体は「ガッシュ」って呼ばせてる。
そう、呼ばせてるのさ。
別にオレ、あいつらのペットじゃねえし。
いつかじいちゃんが言ってた。オレたち上級ドラゴンは、みんなめちゃめちゃ長命だし、そのぶん大いなる知恵を持ってる。だからあんな短命でバカなニンゲンどもにこき使われる筋合いはない。誇り高くて、「お前らのペットになるなんて死んでもゴメン」な種族なんだからな。舐めんなよ。
オレたちがちょっと本気を出せば、あんな奴らの百や二百、まとめてぶっ殺すこともできるんだからな。じいちゃんだったら、魔撃のひと吹きで数千、数万は塵に変えちまうだろう。そりゃ、「伝説のドラゴン」なんて言われて恐れられてるだけのことはあるわけよ、ふふん。
で、オレはその孫ドラゴン。
全身が真っ黒なのは親父ゆずり。びっしりならんだ鱗が黒曜石みたいにきらきら光って、爪も棘もぴんぴんに磨かれて。ほんとつやつや。世話係のニンゲンが、いつも「お前はほんとにキレイだね」なんてほめてくれる。
ま、当然だよな。
親父がちょっと、このニンゲンの何代か前の奴に惚れこんじゃって、「お前の役に立とう」なんて約束をしちまったもんで、オレはここでこき使われる羽目になっちゃった。あーあ。親父、なにしてくれてるんだか。
え、親父はどこにいるのかって? もうこの仕事は引退してるよ。どこかで好きに生きてるんじゃね?
いや、年をとるとオレたちって、体が大きくなりすぎるんだよ。もちろんそのぶん魔力も体力も大きくなるんだけど、人を乗せて飛ぶにはちょっと不便になるってわけ。わかるだろ? せまい渓谷の間とか飛べなくなるじゃん?
で、息子のオレがあとを引き継いだわけ。はー、めんどくせ。
でもまあ、この仕事は気に入ってる。
なんたって、俺は魔王しか乗れない特別なドラゴンだからな。
魔王って言えば、魔族の世界の親分だ。まあ、ちょっとヘンな奴が多いのは玉に疵なんだけど。
めちゃめちゃ同族殺しが大好きで、その上めっちゃ嗜虐趣味なやつとかな。ヒイヒイ泣き叫んでる女でも子供でも、ぎゃはぎゃは笑いながら、はじっこからちょっとずつ体を削り取るような奴ね。
あれはほんと、ひどかった。
オレ、もう耳も目もがっつり魔力で閉じて、見ないようにしてたけどさ。
で、この間のやつは「引きこもり」。
いや、オレが言ったんじゃねえよ? 自分でそう言ってたんだって。
なんか、滅多に王宮から出てこないで、気に入ったメスと交尾することばっか考えてるみたいな、めっちゃくらーい奴だったな、うん。
そんで、だれのことだかわかんないけど、ときどき「あいつ、ほんっとムカツク」とかなんとか、ぐるぐる真っ黒な気分を胸の中で渦巻かせてる。いつまでもそこをぐるぐる回ってるだけで、ちっとも前へ進めないって感じだったな。
ちょっと目先を変えるだけで、周りにいいことも明るいことも楽しいことも、なかったわけじゃなかったのにさ。
端から見てるとただのアホなんだけど。
ま、ニンゲンってそんなもんだし。
オレがどうこう言ったからって、聞かねえのも知ってたし。
え? 「なんでわかるの」って?
オレ、そういうの見えちゃうからな。まあ見たくないもんは、見ないですますこともできるけどさ。
まあ、そんな心の中ドロドロのやつと話ししたってつまんねえって分かってるから、絶対に心は開かない。だからニンゲンどもってば、オレがあいつらと心を交わすことのできねえドラゴンだって、勝手に勘違いしてやんの。バッカじゃね? こっちが願い下げなだけだっつーの。
あ、でも。
今度の新しい魔王は、ちょっと面白いかなって思ってる。
いつも茶色い肌したすごい美人のダークエルフを連れてるんだけど、「ああ、また前の奴みたいな女好きか」って思ったら全然ちがった。
今までだったら、魔王はだれかに殺されて位を奪われるか、自分で死期を悟ってだれかに譲位することで誕生してた。
でもこいつは、そういうののどれとも違う。
要するにあの、前の「引きこもり魔王」から、変な理由で無理やり譲位されちゃったと、つまりそういうことらしい。オレにはよくわかんないけど。
あいつが初めて宮殿の奥深くにあるオレ専用の部屋にやってきた時、オレは半分眠ってた。
オレたちドラゴンはいつも、この世界のあらゆる部分から魔力エネルギーを吸い取りながら体力を蓄えている。その時も、ちょうどそうしていたわけだ。
あいつは世話係のやつとちょっと話をすると、あらためてこっちへやって来た。
(ふうん。また新しいヤツになったんだな)
オレはそんな風に思っただけで、片方の目を半分だけ開けてそいつを観察した。主に、その心をだけどね。
そんで、「へえ」ってびっくりした。
なんて言うか、そいつはオレがこれまで知っていたどの魔王とも違っていたから。「毛色が違う」なんて言うけど、ちょうどそんな感じ。
そいつが腰に差している青緑の不思議な魔力の光を放つ剣のことも気になった。それが、普通の魔王だったら手に触れるのも難しいような、めちゃくちゃ綺麗な気を放っていたからだ。
隣に連れてるダークエルフの女もそうだった。自分じゃそうは思ってないようだったけど、この新魔王を想うココロのところだけはめちゃめちゃキレイ。きらきら光ってて、でもどっか悲しそうで。目が離せなくなっちゃった。
こんなモノたちに想われて、慕われて、「そばに居たい」って思わせる。
そんな魔王は初めてだった。
だから俄然、興味が湧いた。
「この者は、人に心を開きません」って世話係がおせっかいなことを吹き込んでいたのも聞こえてたから、ちょっと悪戯心も湧いちゃった。
だから、オレがこう言ったとき、そいつは目を瞠って驚いたようだった。
《ねー。名前、なんてえの》
それでしばらく沈黙したあと、やっとこう返してきた。
《……まさかとは思いますが。今のお声は、あなたですか》
いや、驚いたね。めちゃめちゃ敬語だったんだもん。ちょっと吹いた。
ま、今では友達みたいな感じで、ふつーにお話ししてるけどもさ。
そいつの名前はヒュウガといった。
ヒュウガは前の魔王とは大違いで、暇さえあれば、やたらめったら領土のあっちこっちへ飛んでいきたがる。そんで何をやってるかと言うと、そこで働いてるすんごく貧しい農家の家族とか、奴隷同然に働かされてる女や子供たちと会ってるんだ。
それも、いつもの長い髪とかマントの姿じゃなくて、そこらへんに居そうな普通の髪型と格好で。つまり、「お忍び」とかいうやつだよな。
んで、城に戻って臣下の奴らにあれやらこれやら指示を出してる。
どうやら、めちゃくちゃ真面目に魔王としての仕事をしているらしい。
いや、あいつらしいけど。
なんか、ほんと面白い。
だからここんとこ、ほんと楽しい。
あっちこっちに飛んで行けると気持ちいいしな。それも、弱い者いじめしに行くとか悪だくみしにいくみたいな、胸糞悪くなるような理由じゃないし。
この宮殿で暮らすようになって、こんなのはほんとに久しぶりだ。
そういえば、ヒュウガは南にいたときに、リールーっていうメスのドラゴンに乗ってたらしい。
え? そりゃまあ、知ってるよ。同族の奴だからさ。
上級ドラゴンってのは、みんなオレのおじいちゃんから生まれてきてる。だから全部、どっかでは血がつながってるのさ。つまり親戚みたいなもんってこと。
ヒュウガが魔王になることになって、あいつ、めっちゃ泣いてたらしいな。
ま、わかるけど。しょうがねえよな、女って。
《心配すんなよ》
《こっちじゃオレが、こいつの面倒見るからよ》──。
オレは風にふうっと息を吹きかけて、その「手紙」を乗せてやった。
ドラゴン同士だけにできる秘密の通信。
なんか、返事がめっちゃ長文で来そうでイヤだったから、これまではあんまりやったことなかったんだけど。
そんなことを考えてたら、いつもみたいに大股に、マントを翻してオレの主人が入って来た。
《ガッシュ。今日は南西だ》
《おおよ。ってか、昨日は北に行ったばっかじゃん。おめーほんっと、ドラゴン使いが荒すぎー》
《……ああ、すまん。そうだよな。疲れているか》
そうなんだよ。こいつ、ちゃんとオレのことまで気遣うんだよなあ。
大丈夫だっての。オレは上級ドラゴン様だぜ。
しかも、魔王の御用達だぜ?
《ふふん。舐めんな。このオレが、ちょっとやそっとのことで泣きなんか入れるもんかよ。余裕だっつーの、ヨユー!》
《……そうか。済まない》
俺は「へいへい」ってわざとめんどくさそうに言って、ひょいと体を低くする。
あいつは隣にいるダークエルフの女を難なく抱き上げ、いつものように軽い足取りで背中のところにのぼってくる。
《んじゃ、行くぜー。ちゃんとつかまってろよー、ヒュウガ》
《分かってる。よろしく頼むぞ、ガッシュ》
俺は宮殿の発着場所になっているバルコニーから、ずばっと風を切り裂いて舞い上がる。
うひょー! オレ、かっけえ。
この時が一番、気分がいい。
背中に乗ってるクソ真面目魔王のお陰で、今までの何倍も気分がいい。
《このまま、いつまでもオレの魔王でいてくれよ。……な? ヒュウガ》
うっかりすると、ちょっとそんなことを思っちまう。
ま、ぜってえ言わねえけどな。
ふん!
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜
フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」
貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。
それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。
しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。
《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。
アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。
スローライフという夢を目指して――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる