18 / 267
18 高所恐怖症とはなんぞや
しおりを挟む高所恐怖症。
そう、ダンナはそういう人種でもあります。
「症」とついとって、なんや特別な体質かなんかみたいに言われておりますけれども、実際はこれ、単に人間の生き物としての本能らしいですね。
赤ちゃんの時に実験してみると、人は暗いところ、狭いところは実はけっこう平気な生き物やけれども、高いところだけは本能的に避けるようにできておるものらしいです。
それを成長していくにしたがって少しずつ生きやすいように修正していくだけの話で。
ですからまあ、それは何も、悪いことでもなんでもない。
命を守るために、本来そなわっているスペックみたいなもんですわな。
で、まあダンナはそれを持ったままウン十年生きてきたお人やと、そんだけの話です。
ダンナがそういう「生きもん」やということは、私は結婚前から知っておりました。なんちゅうて、本人が告白しましたもんで。
それがどういう経緯やったかは忘れましたけども、柵とか窓ガラスなんかでしっかり囲われているところはまだマシなんですが、高い建物にときどきあるみたいな、分厚い床ガラスがはめ込んであって足許が見えるタイプは、もうとにかくアカンのでした。
「●さん。ボクがなんか悪いことしたら、ここに連れてきてください」
これ、とあるおでーとの時に言われた台詞です。
場所は確か、瀬戸内海にかかっとる大きな橋の、はじっこの塔の中やったと思います。
あそこにも、足許数十メートル下が見えるような、分厚いガラスのはまった床があるんですな。
その上で、ちょっと膝とかぷるぷるさして(いや多分、腹肉なんかもぷるぷるしてたに違いない)、恐らく気持ちは涙目でそう言ったのではないかと勝手に想像するわたし。
今となっては、なんや萌える映像です。
もっともその時は、「はい?」とちょっと目が点になりましたけどもね。
せやかて、一応「ぷろぽーず」の直後やったしね。
っちゅうか、「この男はもう悪いことする気でおるんかいな」とちょっと目が三角になりかかりましたけども。
結婚前からそんなこと断言する男もおらんやろうから、まあそういう意味でないということはすぐ分かりましたけども。
そして実際、私がそこへダンナを「こういう約束やったやんなあ!」とか言いながらひきずっていかねばならん事態も、今のところは起こっておりません。
まあ、うちの弟その2とはえらい違いやわね。
ああっ、思い出したらまーたむかついてきた!
お嫁さん、ほんまごめんなさい!!
……ま、そんな訳で。
今は、テレビのドキュメンタリーとかでめっちゃ高い雪山やら、崖を上から覗くんやら、高い塔やビルの上から下界を撮ったような映像が出てくると、録画までして娘と二人で「お父さんに見せよう!」が合言葉。
ほんでダンナが帰宅すると、
「ほらほら、オトウサン、ほらほら!」
言うて、二人してにやにやとその表情を横からうかがう。
なんちゅう母子や。
鬼や。
自分で言うな。
ダンナはまあ、映像やと分かってるのでそこまで焦るわけではないのですが、それでも、
「うわ! ヤメテ! 股の間がきゅーってするう!」
って、苦笑しつつもびびってくれます。
ちなみに、怖いモノと言えばホラー映画やとか、お化け屋敷とかいった定番のものがありますけども。
ダンナ、そういうもんはいっさい怖くないらしい。
「いや、もちろんホンマモンは怖いで? けどあんなん、つくりもんやて分かってるやん。つくりもんなんか、別に怖ないわ」
というのが、その理由。
だから、そういう映画見たり、アトラクションで遊ぼうと思っても、ちーっとも面白くない人です。
せっかく人が怖がって楽しもうとしてる横で「なにが怖いねん、あんなもん」てつまんなそうにしてる人がいたら、冷めますやん。ねえ?
いやあ、まあでも、霊感とか強くなくて良かったですねえ。
それは私もなんですけども。
いやもう、なくて良かったと思てますけどもね。
あれ、視える人はほんま大変やって聞きますもん。
ああ、また話が脱線しかかってる。
っちゅうことで、今回はこのあたりで。
皆さんもいざという時のためには、ダンナの弱味はがっつり握っておきましょう、っちゅう話でした~。
……え、違う??
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。
2匹の怪獣さんの母です。11歳の娘と5歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。
毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる