17 / 267
17 おばあちゃんとはなんぞや
しおりを挟むいや~、行ってまいりました、お墓参り。
もちろん、ダンナのおうちのほうです。
前回も申しました通り、要するに、無事に就職できたことのご報告ですな。
実はすでにお亡くなりのお義父さんのお誕生日が2月22日(にゃんにゃんにゃんの日)だというのは前にも申しましたが。
就職できたことが分かってからダンナが教えてくれたんですが、今回採用してくれた会社へ出した履歴書に、ダンナはこの日付を書いたのだそうです。もちろん、「オヤジ、なんとか頼むわ」という一縷の望みをかけてです。
いや~、ご利益ありましたね。
きっとお義父さんも、彼岸で「ホンマ、しゃあないなあ」って笑てはったことでしょう。
そんなこんなのお礼もかねて、今日はお墓参り。まあ、お天気も良くてよろしゅうございましたです。
んで、今日はついでに、そのあちらのご家族のお話を。
ダンナ、小さい頃からお母さんはおられず、真っ白いお肌して細っこい小柄な子やったもんで、そらもうおばあさまはご心配やったようです。
なんかもう、ちょっと「けほっ」て咳でもしようもんなら、「すわ!」とばかりに保険証もって、ダンナを連れて町のお医者さんに駆け込まれておったそうです。
「センセ、どうにかしたってください。この子は結核なんです。もうこの子が不憫で、不憫で……」
て。
まあ当時はというか、明治生まれのお祖母さまの感覚からしたら、結核は死の病ですし。
ダンナみたいな真っ白な子、そら心配やったろうなあとは思います。
今もなんや聞いたら、じわじわ結核が勢いを取り戻してきつつあるらしいですね。でも最近の若いお医者さんは、それを診た経験があまりないせいで、風邪と間違いはることもあるらしい。まあ、お互い気ぃつけましょう。
ま、それはええねん。
ほんで、町のお医者さんはもう、毎度のことなもんでようわかってはって、「いやおばあちゃん、そんなん大丈夫ですから」言うて帰してはくれはらへん。
というか、そんなんではおばあちゃんが絶対納得しはらへんわけです。
ほんで、いっつもめっちゃぶっとい針のでかい注射をおしりに――そう、今や私のモンである、あのぷりっとした可愛い(?)おしりに――ぶっすーっと刺してくれてはったそうです。
もちろん、病気やないんやから栄養剤かなんかです。
でも、それでやっとおばあちゃんは納得しはって、子供のダンナは解放されてたらしい。
かわいそうなんか、大事にされてて良かったねっちゅうべきなんか、なんやようわからんけども。
けど、そんな風やねんけど、曲がったことは大嫌いなお人やったそうです。
街のチンピラ(というのは死語なんやろか)がバスなんかの列にちゃんと並ばんと割り込んだりしているのを見ると、もう黙っとられへん。
「並びなさい! みんなちゃんと並んどるでしょう!」
と、はっきりきっぱり言う人やったと。
もちろん相手はチンピラですから、
「なんやとババア! いてこますぞワレ!」
とかなんとか、言いよるわけですが。そんなもんにはちーっとも動じない。
「関係ない! みんな並んどるんやから、並びなさい! 殴るんですか。殴んなさい!」
言う人やったそうな。
わあ、かっこええ。
そんでも、万引きした少年とか、自分で捕まえて交番なんかに連れていっときながら、
「許したってください、初めてなんです。ちょっとこの子ぉは、魔がさしただけなんです」
言うて、泣いて謝って許してもろうたそうな。
「自分の子かっちゅうねん」
て、ダンナは話して笑っておりました。
もちろん、縁もゆかりもない子なんですよ?
いやすごいわ。
もうそんな方、どのぐらい残っておられるんでしょうかねえ。
そんな方なもんで、ご近所の子供らやら、親戚みんなの子供らやら、ほとんどご自分で育てたみたいになっていて、ご生前はみなさん頭が上がらんかったということでした。
もう今ではええおっさんやら、おじいさんやらになっておられることと思いますが。
そういうご近所づきあいが、昔は普通にあったんですねえ。
と、今回はそんなお話でした。
ではでは。
みんなして、初仕事に行ってまいります~。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。
2匹の怪獣さんの母です。11歳の娘と5歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。
毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)


地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

運営に【通報】したけどスルーされてしまった件
蒼 飛雲
エッセイ・ノンフィクション
運営に不正を「通報」すれども、しかしそれを取り合ってもらえない底辺作者の悲哀と歯ぎしり。
このままだと、ほんとヤバいんだけど。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる