「RRR」はええぞ!~インド映画へのいざない~

つづれ しういち

文字の大きさ
上 下
81 / 93

81 「叔父」

しおりを挟む

 はいこんにちは。
 今回もまた、シネ・リーブル神戸さまによる「インド大映画祭」の中からのご紹介となります。これにて、私自身はシネ・リーブル神戸さまによる今回の映画祭の7本をコンプリートした形になりました。
 シネ・リーブル神戸さま、素晴らしいラインナップの映画たちを本当にありがとうございました! SNSをみていると、ほかの地方でも同じ映画祭が行われており、それぞれに少しずつ違うラインナップで上映されていた模様。そちらの作品も観てみたかったなあ……!

 さてさて。前回と同様、こちらもほぼ前情報などは入れずに観に行きました。
 いやしかし……これは、刺さりまくる映画でした、個人的に。

 先に申し上げておきますけれども、子どもに対する性犯罪について赤裸々に容赦なく表現されている作品ですので、人によってはフラッシュバックを起こす恐れも。被害に遭われたご経験のあるかたは、どうか鑑賞するか否かは慎重にご判断くださいませ。

 ということで、まずはデータのご紹介から。

 〇「叔父」(原題:「Chittha」)
 2023年製作
 監督:SU・アルン・クマール
 出演:シッダールト / ニミーシャ・サジャヤン  ほか
 インド タミル語 140分

 それでは、ストーリーの冒頭を少しだけご紹介。
 イシュワーランは、姉の生んだ子、姪のスンダリを生まれたときから心から可愛がって、姉とともに一生懸命に育ててきた叔父の青年。
 8歳になったスンダリを、毎日バイクに乗せて学校の送り迎えするほどの可愛がりようです。
 スンダリはとても活発で、口数が多くてちょっと生意気な女の子。ときどき渡される叔父のスマホでゲームをするのが大好きです。

 ところでこの地域では、少し前から幼い少女を狙っての性犯罪がつづけて起こっており、地域の警察はずっと目を光らせて犯人を追っていたのですが、なかなか正体がつかめず、犯人はつかまっていません。
 ある日、スンダリの親友で、イシュワーランとも家族ぐるみで深いつきあいのある家の娘が性犯罪者の毒牙にかかってしまいます(なお、その家の青年でイシュワーランの親友である人は警官です)。
 様子のおかしいその少女を心配して、スンダリを学校で待たせ、少女をバイクに乗せて送っていったイシュワーラン。でもそのことが原因でレイプの犯人と疑われ、一時警察に拘留されてしまうのでした……。

 つぎに狙われたのは、なんとスンダリ。
 行方不明になってしまったスンダリを探そうと、イシュワーランと家族、そして近所の人たちも血眼になって彼女を探して走り回ります。
 私自身もひとりの娘の母親です。そのためもあって、連れ去られたスンダリの安否がイシュワーランと同様に心配でならず、もう本当に胸が痛むシーンの連続でした……。怯えて泣き震えるスンダリちゃんが不憫でならず。もう、ほんとうにひどい……。
 本気で泣き震える演技をするスンダリ役のニミーシャちゃんが、本当に素晴らしい演技をなさっていましたが、もう本気だとしか思えない震えようで、可哀想でならないのです。

 これ以上は本当にネタバレになってしまうので書けないのですが、
 少し「事前注意」はしたくなるものの、素晴らしい作品であることはまちがいなく。
 あ、それから。インドはこの地域だけのことかどうかわからないのですが、こうした女性を狙った犯罪を扱うのに、警察官や弁護士、裁判官などほとんど女性が扱ってくださるという様子が描かれているのですが、これが本当ならとても羨ましいなと思いました。日本でも同様になるといいなと思います。

 周囲のインドの男性たちも、事件に直接関係のない街の老人などまで、性犯罪者を「本当に悪いことをしたヤツ」としてまっすぐ糾弾し、つかまえようと頑張ってくれるのも、観ていて嬉しかったです。日本ではなぜか、犯罪者を擁護しようとする男性が多いように感じるので(逆に女性側を責める人すらいますよね)。

 あと、これは蛇足なのですが主役イシュワーランを演じたシッダールトさんが、どうかするとお若いころの真田広之さんによく似ている気がして、しょっちゅう「え、真田さん……??」ってなっていました、わたくし(苦笑)。いやまあ、これはどうでもええんですが。

 ということで、心の準備は必要な作品ではありますけれども、非常によい作品なのは間違いないので、もし機会がありましたらこちらもどうぞ。
 ではでは、ドスティ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

既婚者パーティーに行ってきた

椋のひかり~むくのひかり~
エッセイ・ノンフィクション
皆様、こんにちは。 いつも読んでくださってありがとうございます。 今回のお話は さちこが初めて既婚者パーティーに参加したお話です。 マッチングアプリに限界を感じてきた頃、 出会った男たちに勧められたのが 「既婚者合コン」でした。 さちこは好みの男と出会えるのか? 既婚者合コンにご興味のある方の一助になれば幸いです。

データから分析して目指せスコアアップ!初心者投稿者の試行錯誤と記録。

終夜
エッセイ・ノンフィクション
Web小説を書き、いつか本にしてみたい。そう考える初心者がアルファポリス様で小説を連載する中で、記録をとってグラフにしたり考察したりして試行錯誤する日々をお送りします。

ほるぷ

名前も知らない兵士
エッセイ・ノンフィクション
 たまに僕は本当に小さくなってしまう。それは、他人と比べたり、自分に自信が無くなってたり、ひどく落ち込むときにおこる。  その日の朝も、重なる綿繊維の波の上に僕は立っていて、まるで違う惑星にいるかのように、壮大な場所でちっぽけになってしまった。  カーキ色の肌掛け布団が鼻背ですれる。それから静けさに気付かれないように両眼を宙空に移した。そういうときは、すぐに起きれなくて、陽射しに当たってきらきらと光る、遠方の人口衛星みたいな微小のホコリを、布団の中から見つめている。やがて、新鮮なコーヒーを淹れようだとか、今日はあの子と会おうだとか、まだ読み終えてない文庫を読もうとか、自分のためにシュークリームを買おうだとか考えて、何とかして元気を取り戻してもらい起きることにしている。  僕は仕事を辞めて、バツイチで、漫画原作志望者で、ようやく掴んだ青年漫画誌の連載の話も消えてしまう。それでも日常は進んでいって……あてもない世界を、傍にいつも暗い道がある人生を、日々進んでいく。 いつになったら抜け出せるのかと、自問自答を繰り返しながら。その積み重ねた日常を築くことが、その人の魂にとって、本当の価値があることを見出す物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...