上 下
43 / 89

43 「ただ空高く舞え」

しおりを挟む

 こんにちは。
 今回ご紹介するインド映画はこちら!

 〇「ただ空高く舞え」(原題「Sooraral Pottru」)
 2020年製作
 スダー・コーングラー監督作品
 インド・タミル語 150分
 スーリヤ 主演
 G・V・プラカーシュ・クマール 音楽

 実は今回、公開からずっと「RRR」を上映しつづけてくださっている塚口サンサン劇場さんでこちらを拝見したのですが、時間的に続けて観られる状況だったので、先に久しぶりに「RRR」も観てきたわたくし。
 もう二十何回目かです。もう数えてなくてわかんないです(笑)。
 やっぱりいいですよね、「RRR」!
 今回は特に「ビーム」としてではなく「アクタル」としてラーマ兄貴と仲良くしているシーンの尊さに涙しつつ観ていました。ほんとあそこ、シーンとしては一瞬なんだけども胸にくる……! あの蜜月は、本当は六か月ぐらいは続いたはずなんですよね。そこがもっともっと詳しく見てみたくなる、そんなシーンです。

 さてさて。
 「ただ空高く舞え」にお話を戻しますね。
 こちらは、実在するインド初の格安航空会社「エア・デカン」の創設者、G・R・ゴービナート大尉の自伝的小説をもとに描いた作品です。つまりベースが実話。

 主人公は空軍士官ネドゥマーラン(マーラ)。空軍時代の同期生であるセビーとチェとともに、格安航空会社を作ろうと奮闘する物語となっています。
 貧しい農村出身のマーラは、教師である父から様々なことを教わって育ちました。しかし青年となってその父との確執が生じ、仲直りする機会もないまま空軍士官になって遠く離れて生活することに。
 やがて母親から「父さんが二週間も意識不明。はやく帰ってきて」との電話をうけ、慌てて飛行機に乗ろうとするのですが、友人たちが渡してくれてなんとかかき集めたお金、六千ルピーで乗れるはずだったエコノミー席が満席。それより高いビジネスクラスの席をとるには一万二千ルピーが必要と言われ、搭乗まであと5分の中、必死に周囲の人たちにお金を借りようとするのですが、断られてしまいます。
 つぎの便はなんと二日後。それでは間に合わないので、マーラは鉄道やヒッチハイクを乗り継いでなんとか故郷へ帰りますが……。
 父の死に目には会えず、とっくに葬式は終わっていて、母からはひどく責められてしまいます。「ごめんなさい」と繰り返し、母の足にすがって泣き崩れるマーラ。
 もうここで涙腺崩壊……。

 それまでのインドでは、このように航空券は非常に高価なものであり、「飛行機は富裕層のもの」とされていたようです。今回の「ラスボス」ともいえる、大きな航空会社を運営する社長は悪びれもせず「我々が下等な庶民と同じ飛行機に乗れるはずがないだろう!」といったようなことを言い放つ場面も。
 ここにも明らかにインドのカーストが絡んでいます。カースト上位の人々は当然富裕層であり、貧しい農村の人々はカースト下位にある人々なのですよね……。

 物語の中で何度か出てくるセリフに「百年前、電気は富裕層のものだった。五十年前は車がそうだった。今、それは航空機だ」というのがあります。
 だからこそ、庶民が安い価格で乗れる航空機がなくてはならない。富裕層ばかりが空を飛んで、「そうでない人々は地べたをはいずっていろ」なんてひどすぎる。
 そのためにこそ、マーラたちは立ち上がるのです。

 実話がベースであるために、いわゆるヒーローもののインド映画のようなわけにはいかず、何度も何度も大会社の悪どい社長や腐った政府高官たちに邪魔されて、マーラたちは苦労のしっぱなしです。本当に気の毒。だからこそ応援したいという気持ちにもなる。

 パン屋を営み、それを自力で軌道に乗せて大きな会社にしていく才能にあふれた奥さん、ボンミがいるのですが、このかたがとても賢くて、マーラを心から愛していて本当に好感がもてました。
 あ、ボンミは以前にもご紹介した「響け! 情熱のムリダンガム」でヒロイン役を演じられたアパルナーさんです。彼女はこの「ただ空高く舞え」により、第68回ナショナルフィルムアワード「最優秀女優賞」を受賞されています。納得の演技ですね!
 ついでに申しますと、なんとこちら「ただ空高く舞え」の音楽を担当しているのが、その「ムリダンガム」で主役ピーターを演じられたG・V・プラカーシュ・クマールさんなのです! つながりを感じるう!

 というわけでもうぜひぜひ、観てほしい作品です。
 涙なしには見られないのでハンカチは必須ですよみなさん!
 ではでは、今回はこのあたりで。
 ドスティ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボケ防止に漫画投稿初めてみた!

三森まり
エッセイ・ノンフィクション
子供に手がかからなくなったし使える時間めっちゃ多くなったのでボケ防止に何かはじめようかなぁ そうだ!(・∀・)「指を動かす 頭を使う 家にいても出来る!!」という事で インターネットエクスプローラーのTOPページで宣伝してる この「アルファポリス」とやらをやってみよう! という事で投稿初めてみました へいへい 漫画描くの楽しいよ! と そんなエッセイと 私のアルポリ(どんな約し方がスタンダートなのか知ってる方教えてください)での成果?を綴る予定です(・∀・)b

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちはやふる 愛のメッセージ

NAC
エッセイ・ノンフィクション
 著者は映画ちはやふる、に出会い、生まれた頃からのシンクロニシティに気づいたノンフィクションの内容です。  そして、ちはやふるの平和のメッセージに気づくことにより、世界中の神の子たちの絆の回復により、世界平和が可能になることを示しております。  本書は短編ではありますが、様々なシンクロニシティ現象を体験する内容であり、霊的な世界平和というものを明らかにするスピリチュアル的ノンフィクションの短編作品です。  どうぞご一読くださいませ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私流の世渡り術

あず
エッセイ・ノンフィクション
ただただ自分の生きていく上での便利なことを綴っているだけです。

アルンの日々の占いやエッセイ的な何か。

譚音アルン
エッセイ・ノンフィクション
アルンの毎日の占いや時折エッセイ的な何かの駄文です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...