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43 「ただ空高く舞え」
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今回ご紹介するインド映画はこちら!
〇「ただ空高く舞え」(原題「Sooraral Pottru」)
2020年製作
スダー・コーングラー監督作品
インド・タミル語 150分
スーリヤ 主演
G・V・プラカーシュ・クマール 音楽
実は今回、公開からずっと「RRR」を上映しつづけてくださっている塚口サンサン劇場さんでこちらを拝見したのですが、時間的に続けて観られる状況だったので、先に久しぶりに「RRR」も観てきたわたくし。
もう二十何回目かです。もう数えてなくてわかんないです(笑)。
やっぱりいいですよね、「RRR」!
今回は特に「ビーム」としてではなく「アクタル」としてラーマ兄貴と仲良くしているシーンの尊さに涙しつつ観ていました。ほんとあそこ、シーンとしては一瞬なんだけども胸にくる……! あの蜜月は、本当は六か月ぐらいは続いたはずなんですよね。そこがもっともっと詳しく見てみたくなる、そんなシーンです。
さてさて。
「ただ空高く舞え」にお話を戻しますね。
こちらは、実在するインド初の格安航空会社「エア・デカン」の創設者、G・R・ゴービナート大尉の自伝的小説をもとに描いた作品です。つまりベースが実話。
主人公は空軍士官ネドゥマーラン(マーラ)。空軍時代の同期生であるセビーとチェとともに、格安航空会社を作ろうと奮闘する物語となっています。
貧しい農村出身のマーラは、教師である父から様々なことを教わって育ちました。しかし青年となってその父との確執が生じ、仲直りする機会もないまま空軍士官になって遠く離れて生活することに。
やがて母親から「父さんが二週間も意識不明。はやく帰ってきて」との電話をうけ、慌てて飛行機に乗ろうとするのですが、友人たちが渡してくれてなんとかかき集めたお金、六千ルピーで乗れるはずだったエコノミー席が満席。それより高いビジネスクラスの席をとるには一万二千ルピーが必要と言われ、搭乗まであと5分の中、必死に周囲の人たちにお金を借りようとするのですが、断られてしまいます。
つぎの便はなんと二日後。それでは間に合わないので、マーラは鉄道やヒッチハイクを乗り継いでなんとか故郷へ帰りますが……。
父の死に目には会えず、とっくに葬式は終わっていて、母からはひどく責められてしまいます。「ごめんなさい」と繰り返し、母の足にすがって泣き崩れるマーラ。
もうここで涙腺崩壊……。
それまでのインドでは、このように航空券は非常に高価なものであり、「飛行機は富裕層のもの」とされていたようです。今回の「ラスボス」ともいえる、大きな航空会社を運営する社長は悪びれもせず「我々が下等な庶民と同じ飛行機に乗れるはずがないだろう!」といったようなことを言い放つ場面も。
ここにも明らかにインドのカーストが絡んでいます。カースト上位の人々は当然富裕層であり、貧しい農村の人々はカースト下位にある人々なのですよね……。
物語の中で何度か出てくるセリフに「百年前、電気は富裕層のものだった。五十年前は車がそうだった。今、それは航空機だ」というのがあります。
だからこそ、庶民が安い価格で乗れる航空機がなくてはならない。富裕層ばかりが空を飛んで、「そうでない人々は地べたをはいずっていろ」なんてひどすぎる。
そのためにこそ、マーラたちは立ち上がるのです。
実話がベースであるために、いわゆるヒーローもののインド映画のようなわけにはいかず、何度も何度も大会社の悪どい社長や腐った政府高官たちに邪魔されて、マーラたちは苦労のしっぱなしです。本当に気の毒。だからこそ応援したいという気持ちにもなる。
パン屋を営み、それを自力で軌道に乗せて大きな会社にしていく才能にあふれた奥さん、ボンミがいるのですが、このかたがとても賢くて、マーラを心から愛していて本当に好感がもてました。
あ、ボンミは以前にもご紹介した「響け! 情熱のムリダンガム」でヒロイン役を演じられたアパルナーさんです。彼女はこの「ただ空高く舞え」により、第68回ナショナルフィルムアワード「最優秀女優賞」を受賞されています。納得の演技ですね!
ついでに申しますと、なんとこちら「ただ空高く舞え」の音楽を担当しているのが、その「ムリダンガム」で主役ピーターを演じられたG・V・プラカーシュ・クマールさんなのです! つながりを感じるう!
というわけでもうぜひぜひ、観てほしい作品です。
涙なしには見られないのでハンカチは必須ですよみなさん!
ではでは、今回はこのあたりで。
ドスティ!
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