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第二話 淫魔のお食事はやっぱりアレ
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とりあえず俺は、長期滞在で契約してた宿を引き払い、別の宿に移った。アレスたちと同じ宿だ、もう顔を合わせたくない。今夜はこのままナルファに泊まるけど、明日は別の街に移動するつもりだ。
このナルファは近くに魔物の巣と呼ばれる巨大ダンジョンがある。初級から中級までは楽に戦闘経験積んでレベルアップできるとあって、非常に冒険者の多い街だ。そのため、手頃な宿は常に満室。俺がその夜きちんとした個室のベッドで寝るには多少奮発しないといけなかった。まあ、一晩だけだ、仕方ない。
ヴァイオレットはずーっと俺に張り付いてたけど、宿に入る時には姿を消してた。気にせず部屋に入って荷ほどきしてると、また姿を現す。
「やっぱりお前幽霊だろ」
「違うよ。僕は夢魔」
「淫魔だろ?」
「淫魔は夢魔の一種だから」
「ふーん」
部屋に頼んでた湯桶が運ばれてきた。湯桶って言うか、ほぼタライだな。それでも、自室で湯が使えるなんて、さすがは高い宿だけある。いいな。いつもの冒険者の宿は当たり前のように風呂無し素泊まりだし、ヘタすりゃ見知らぬ他人と相部屋だ。大部屋で雑魚寝って宿も当たり前にあるからな。
ホクホクして服を脱ぎ捨て湯に浸かると、ヴァイオレットが体育座りでじーっと俺を見つめてた。
「あんまり見るなよ」
「おつゆ、いつ出すの?」
「後だ、後!」
「せっかく裸になったのにえっちしないの?」
「しねぇっつーの!」
あーもー、やりにくい!
遠慮のない視線に晒され、股間の我が息子は縮こまり気味だ。視線の主がゴーストにしか見えない半透明の美少年なだけに。
幽霊ってさ、綺麗な顔してるほうが怖くね?
部屋の隅で体育座りして淀んだ視線を投げかけてくる不健康な美少年のヴァイオレット、地縛霊にしか見えねぇんだよ。
精液あげるって約束したけど、果たして勃つのか、ちょっとあやしい。
湯から上がり、体を拭いて夜着を手に取るとヴァイオレットが不満そうに口を尖らせた。
「服を着ちゃうの?おつゆくれるって言ったじゃん」
「湯の始末頼むのが先だろ。メイド呼ぶのに裸ってわけにはいかねぇだろうが」
「おちんちん触りたい……」
思わず瞑目した。ダメだこいつ、放っとこ。
夜着を纏ってメイドに湯の始末を頼み、いつもよりフカフカしてるベッドに腰掛けた。
まだちょっと酔いが残ってて、横になるとこのまま眠ってしまいそうだ。
ヴァイオレットが擦り寄ってきて、足もとに蹲り、縋るような視線を向けてくる。
「レイチ……」
うーん。
コイツいないほうが自慰が捗りそうなんだよな。
目の前にいると、欲情よりも可哀そうが先に立っちゃって、食い物とか分けてやりたくなる。けど、コイツにとっての食い物が精液だってんだから、無理にでも勃たせるより他はない。
まあ、約束は約束だ。努力はしよう。それでダメだったら、見られてると勃たないからとりあえずどっか行けって言える。
粘りつくような視線を感じながら俺は股間のものを取り出し、渋々と擦った。
ん。まあ、案の定というか、目を瞑ってもそこに冷やっとするような存在を感じるんだから、いくら擦ってもペニスは項垂れたままで、いたずらにふにふにくにくにとそれをもてあそぶ時間が過ぎてゆく。
「ねぇ。舐めたい」
突然ヴァイオレットがグイッと身を乗り出してきた。
「お前男同士のやり方知らないって言ってただろ?」
「知らないけど、いい。舐めたい」
紫色の瞳が爛々と輝いている。
この目は、あれだ。
空腹の肉食獣が獲物を目の前にしたときの。
大丈夫なのか?
勢い余って齧り取られないか?
そんな不安がよぎるほど、その目はギラギラとしていた。
……仕方ないな。
「好きにしろ」
いくら擦っても全く反応を見せない息子のことを諦めて、目の前で涎を垂らす肉食獣に差し出した。
まあ、なんだかさっきより若干顔色が良くなってるみたいだし。
「ああ……」
とろけるような眼差しでそれを捧げ持ち、うっとりと見つめてから、ヴァイオレットは恭しく口づけた。
まるで騎士が貴婦人の手に口づけるかのように。
なんだろう、妙に倒錯的な光景なんだが。
幾分顔色が良くなり幽霊みが減ったヴァイオレットは、その桜色の唇を黒ずんだイチモツに這わせ、やがてしずしずとそれを飲み込んでゆく。
あ。
血が、流れてゆく。
さっきまでグッタリとしていたペニスがぷっくりと質量を増していた。
「……んっ」
ヴァイオレットが微かに声を漏らす。その綺麗な口の中で、小さな舌がはしたなく俺を舐めてつついてこじって、弄り倒していた。片方の手が竿に添えられ、リズミカルにそれをしごいている。
……やべぇ。気持ちいい。
男同士のやり方知らないって言ってなかったか?!
漏れる先走りを貪欲に舐め取って、もっともっとと言うようにじゅるじゅると音を立てて吸って舐めて、未経験だったはずの少年が今やプロフェッショナルのお姉さんに負けないテクニックを見せていた。
「やっべ……イクッ……!」
快感の電流が俺を突き上げ、そのままビスクドールのように綺麗な少年の口内に放ってしまった。
少年は一滴も漏らすまいとするかのように口をすぼめ舌を這わせながら俺の股間から顔を離し、少し上向いて幸せそうに目を細めながら、コクリと音を立ててそれを飲み下した。
「ああ……」
甘い感嘆の吐息を漏らす。
「美味しい……」
恍惚とした微笑みを湛えた少年はもう幽霊どではなく、輝くような美貌を取り戻していた。
「七年どころじゃない、十年は延びたよ。この世にこんなに美味しいものがあるなんて……」
ヴァイオレットは俺の足の間に挟まり込んだままこちらを見上げ、とろけるように微笑んでその手を股間のモノに這わせる。
「ねぇ、レイチ。もっと欲しい」
ゴクリと思わず喉が鳴った。
ヤバい。
ここでこれに応えたら、俺は吸い尽くされる。そんな予感がした。
ヤバい。やっぱりコイツは淫魔なんだ。改めてそれを実感する。
美貌を取り戻したヴァイオレットの引力は半端じゃない。男女問わず惹きつけるだろう。子どもの外見であるにも関わらず。
俺だって例外じゃない。
それがこんな風に微笑みを向け、極上の快感を与えてくれるんだ。
自制しないと、溺れてしまう。
快感の海で溺死させる、それが彼ら淫魔なのだろう。
「今日は、ここまでだ」
自制心を総動員して、ヴァイオレットを離れさせた。
「えぇ?」
不満げに口を尖らせるヴァイオレット。
「約束通り精液をやっただろう?瀕死の状態からも逃れたなら、良かったじゃないか。これからは男も相手にすればいい。お前みたいに綺麗ならセックスを教えたがる男はごまんといるだろうさ」
「やだ!僕、レイチとしたい!」
ぷーっと頬を膨らませるその様子はほんとに子どもみたいで、会話の内容とさっきまでしてたことを思うと、目眩がする。
「俺としたいなら、言うことを聞け。セックスはしない。精液は一日一回だけだ。十年延びたんだろ?次は十年後って言わないだけ優しいと思わないか?」
「レイチ、ずるい」
紫の目をジトっと据わらせて俺を睨む。
「俺だって、自分を守らなきゃいけないんだよ。淫魔に枯れるまで絞り取られるわけにはいかないんだ」
「じゃあ、契約しようよ」
「……は?」
一瞬フリーズする。
淫魔も"魔"なんだよな。ってことは、契約って……。
「レイチ、魔物使いなんでしょ?僕と従魔契約しようよ。そしたら僕はレイチの命令絶対聞くし、ゴハンの面倒も見てもらえるよね?で、成長して精液飲むだけじゃ足りなくなったら、その時はセックスしてもらえるんでしょ?」
あ、そっちの契約ね。
しかし、こんな美少年を従魔にするのか、と、思わず呻いた。主張する内容は一部の隙もない言い分のように思える。だが、大きな穴があるぞ。
「淫魔のお前を従魔にして、俺にはなんのメリットがあるんだ?」
気持ちいいってだけでは納得しないぞ。
「僕、お買い得だと思うけどな。精神魔法使えるし、潜入しての情報収集とか超得意だし」
「潜入調査か。たしかに、姿消せるなら楽にできそうだな」
「相手の無意識内に潜入できるからね~。しかも、主とは思念で会話できるから、潜入先から直接情報のやり取りできるよ!」
「マジか。エロいだけじゃなかったんだな」
「そうだよ~、だから契約しよ!」
うむむ。たしかに、育てればかなり有能な従魔になりそうだ。
「……わかった。お前と契約しよう」
俺は魔物使いの契約魔法を発動した。
「ねぇ、名前つけてよ」
ヴァイオレットが下帯だけの半裸というインキュバスらしい格好で、ベッドに沈み込み今にも眠りに落ちそうになっていた俺にベッタリ絡みつき、眠りの海から強引に引き上げる。
「……あ?名前?明日にしろ……」
つーか離れろ。
睡魔に身を任せようとしてる俺の性欲を、強引に掻き立てようとしてるみたいでウザい。
やめてくれ、俺はもう寝るんだ。
「ヴァイオレットって名前あるだろ?」
「違うよ、それ名前じゃない。目の色からつけたあだ名みたいなものだよ」
「あだ名でもいいだろ。似合ってるよ……」
「やだ!主から名前贈られたいよ!」
「今まで会話できる魔物と従魔契約したことないんだが、そういうものなのか?」
今まで従魔に名前贈ったことないんだけど。
「え。レイチ、従魔に名前贈ったことないの?」
「……ない」
「えー!可哀そう、レイチの従魔」
「そういうものだったのか?いつの間にか居なくなると思ってたんだけど、まさかそのせいだったのか?」
「あーあ。レイチ、従魔にも愛想つかされてたの。しょうがないなぁ、僕が色々、教えてあげるね、だからご褒美頂戴♡」
「頼む、寝かせてくれ……」
「寝るのはいつでもできるでしょ、なんなら僕が睡眠の魔法かけたげるし」
「お前の魔法なんかで寝たら、変な夢見そうだ」
「変じゃない、いい夢。最高に気持ちよく夢精できるよ!」
「やっぱり変じゃねぇか、お断りだ。普通に寝るから邪魔するな。名前は考えておく」
「絶対だよ。おやすみ、いい夢を」
「……勝手に変な魔法かけるな」
本当に眠くて、ヴァイオレットを絡みつかせたまま眠りに落ちた俺だったけど、夢精は免れたようだ。なんとなくエロい夢を見た気はするものの、翌朝目覚めて下着を確認したら、特に汚れてはいなかったし。
下着の確認をする俺の傍らで微睡むヴァイオレットがやけにつやつやしてて、満足げに口元を舐めてたのは……気にしないでおこう。
そのヴァイオレットは今、なぜか俺の腰に両腕を回して絡みついている。……こら、股間に顔を埋めるな!油断も隙きもねぇな。
その寝顔を見て、ふと昨夜の約束を思い出す。
そうだ。名前ね。名前……難しいな。
紫だからゆかりとか。女の名前だな。
じゃ、紫だから海苔夫とか。サイテーだな、すまん。
じゃあ、紫音とか。ありきたりだな。
ヴァイオレットって名前、実は結構気に入ってたんだよな。
あ、そうだ。
ヴィオラってたしか、イタリア語で紫だったな。
「ヴィオラ、ってのはどうだ?」
目覚めたばかりの翌早朝、寝ぼけた頭に再起動かけつつ考えたのをそのままの勢いで、俺に張り付いたままの淫魔に告げてみた。
聞いたとたんピョコッと起き上がり、俺の顔を覗き込んでくる。
「僕の名前?!」
「ん。お前が気に入ったら、だけど」
淫魔は嬉しそうに、満面の笑みを湛えた。
「気に入るに決まってるじゃん!嬉しい!ありがとうレイチ!」
ぎゅむーっと抱きついてくる、ヴァイオレット改めヴィオラ。喜んでくれて大変微笑ましいのだが、くっついて寝るのも抱きついてくるのも誤解を招くからやめてほしい。
男な上に子どもだ。日本だったら逮捕されかねない。
「おら、離れろ。今日は色々忙しいんだ。パーティの脱退手続きして、旅に出る準備して、出来れば午前中のうちに出発したいし……あれ?」
犬だったら間違いなくブンブンと尻尾を振りまくってるに違いない笑顔で俺を壁ドンならぬ床ドン状態で押し倒してるヴィオラを退かそうと肩に手をかけ、ふと違和感を覚えてマジマジと見つめた。
「お前さぁ、ちょっと成長してないか?」
俺が言うと、ヴィオラは実に嬉しそうにぐふふ~っと笑った。
「わかる?レイチにおつゆもらって栄養行き渡ったから、成長したんだよ!」
「一晩で?!」
「魔物ってそういうものだよ」
ドヤ顔で薄い胸を反らせるヴィオラ。昨日は十ニ、三くらいに見えたのが、今日は十三、四に見える。微妙な成長ではあるけど、小学生から中学生に成長したな。まあ、どっちにしても子どもだけど。
「そろそろセックスしたくなった?」
「まだだ」
「ケチ」
ぶっとむくれたヴィオラは四つん這いのままズルズルと下がると「じゃあ、レイチ、朝ごはん頂戴」と言って俺の下衣をずり下げようとする。
「待て、お前、さっき飲んだんだろ?もうダメだからな」
「え、何?知らないけど?」
「とぼけるな。俺に魔法かけてエロい夢見せて夢精させただろ。バレてんだぞ」
「魔法なんてかけてないもん。えっちな夢みたのは僕のせいじゃないし。夢精は飲んだけど。だって勿体ないじゃん!」
「とにかく飲んだならそれで今日の分は終了だ」
「やだ!僕、育ち盛りだもん、あれだけじゃ全然足りない!」
ヴィオラに強引に下衣を下げられ、元気な朝立ちがフルンと晒されてしまった。
にんまりと微笑む淫魔。
「ほらぁ、もう準備できてるくせに」
「……ただの生理現象だ」
一晩ですっかり健康を取り戻した上に遠慮も無くした淫魔は、元気に起立した俺の息子氏をハムッと咥え込んだ。
「……んッ」
その人間技とは思えない舌技に翻弄され、思わず声が漏れる。
朝からじゅるじゅると盛大に音をさせてそれを啜るヴィオラ、纏う雰囲気はやはり人外の者だ。
ソロ魔物使いとしての旅立ちの朝がこれでいいのだろうか?という一抹の疑問を抱きつつ、抵抗を諦めて淫魔の口内に今朝二度目の精を放った。
このナルファは近くに魔物の巣と呼ばれる巨大ダンジョンがある。初級から中級までは楽に戦闘経験積んでレベルアップできるとあって、非常に冒険者の多い街だ。そのため、手頃な宿は常に満室。俺がその夜きちんとした個室のベッドで寝るには多少奮発しないといけなかった。まあ、一晩だけだ、仕方ない。
ヴァイオレットはずーっと俺に張り付いてたけど、宿に入る時には姿を消してた。気にせず部屋に入って荷ほどきしてると、また姿を現す。
「やっぱりお前幽霊だろ」
「違うよ。僕は夢魔」
「淫魔だろ?」
「淫魔は夢魔の一種だから」
「ふーん」
部屋に頼んでた湯桶が運ばれてきた。湯桶って言うか、ほぼタライだな。それでも、自室で湯が使えるなんて、さすがは高い宿だけある。いいな。いつもの冒険者の宿は当たり前のように風呂無し素泊まりだし、ヘタすりゃ見知らぬ他人と相部屋だ。大部屋で雑魚寝って宿も当たり前にあるからな。
ホクホクして服を脱ぎ捨て湯に浸かると、ヴァイオレットが体育座りでじーっと俺を見つめてた。
「あんまり見るなよ」
「おつゆ、いつ出すの?」
「後だ、後!」
「せっかく裸になったのにえっちしないの?」
「しねぇっつーの!」
あーもー、やりにくい!
遠慮のない視線に晒され、股間の我が息子は縮こまり気味だ。視線の主がゴーストにしか見えない半透明の美少年なだけに。
幽霊ってさ、綺麗な顔してるほうが怖くね?
部屋の隅で体育座りして淀んだ視線を投げかけてくる不健康な美少年のヴァイオレット、地縛霊にしか見えねぇんだよ。
精液あげるって約束したけど、果たして勃つのか、ちょっとあやしい。
湯から上がり、体を拭いて夜着を手に取るとヴァイオレットが不満そうに口を尖らせた。
「服を着ちゃうの?おつゆくれるって言ったじゃん」
「湯の始末頼むのが先だろ。メイド呼ぶのに裸ってわけにはいかねぇだろうが」
「おちんちん触りたい……」
思わず瞑目した。ダメだこいつ、放っとこ。
夜着を纏ってメイドに湯の始末を頼み、いつもよりフカフカしてるベッドに腰掛けた。
まだちょっと酔いが残ってて、横になるとこのまま眠ってしまいそうだ。
ヴァイオレットが擦り寄ってきて、足もとに蹲り、縋るような視線を向けてくる。
「レイチ……」
うーん。
コイツいないほうが自慰が捗りそうなんだよな。
目の前にいると、欲情よりも可哀そうが先に立っちゃって、食い物とか分けてやりたくなる。けど、コイツにとっての食い物が精液だってんだから、無理にでも勃たせるより他はない。
まあ、約束は約束だ。努力はしよう。それでダメだったら、見られてると勃たないからとりあえずどっか行けって言える。
粘りつくような視線を感じながら俺は股間のものを取り出し、渋々と擦った。
ん。まあ、案の定というか、目を瞑ってもそこに冷やっとするような存在を感じるんだから、いくら擦ってもペニスは項垂れたままで、いたずらにふにふにくにくにとそれをもてあそぶ時間が過ぎてゆく。
「ねぇ。舐めたい」
突然ヴァイオレットがグイッと身を乗り出してきた。
「お前男同士のやり方知らないって言ってただろ?」
「知らないけど、いい。舐めたい」
紫色の瞳が爛々と輝いている。
この目は、あれだ。
空腹の肉食獣が獲物を目の前にしたときの。
大丈夫なのか?
勢い余って齧り取られないか?
そんな不安がよぎるほど、その目はギラギラとしていた。
……仕方ないな。
「好きにしろ」
いくら擦っても全く反応を見せない息子のことを諦めて、目の前で涎を垂らす肉食獣に差し出した。
まあ、なんだかさっきより若干顔色が良くなってるみたいだし。
「ああ……」
とろけるような眼差しでそれを捧げ持ち、うっとりと見つめてから、ヴァイオレットは恭しく口づけた。
まるで騎士が貴婦人の手に口づけるかのように。
なんだろう、妙に倒錯的な光景なんだが。
幾分顔色が良くなり幽霊みが減ったヴァイオレットは、その桜色の唇を黒ずんだイチモツに這わせ、やがてしずしずとそれを飲み込んでゆく。
あ。
血が、流れてゆく。
さっきまでグッタリとしていたペニスがぷっくりと質量を増していた。
「……んっ」
ヴァイオレットが微かに声を漏らす。その綺麗な口の中で、小さな舌がはしたなく俺を舐めてつついてこじって、弄り倒していた。片方の手が竿に添えられ、リズミカルにそれをしごいている。
……やべぇ。気持ちいい。
男同士のやり方知らないって言ってなかったか?!
漏れる先走りを貪欲に舐め取って、もっともっとと言うようにじゅるじゅると音を立てて吸って舐めて、未経験だったはずの少年が今やプロフェッショナルのお姉さんに負けないテクニックを見せていた。
「やっべ……イクッ……!」
快感の電流が俺を突き上げ、そのままビスクドールのように綺麗な少年の口内に放ってしまった。
少年は一滴も漏らすまいとするかのように口をすぼめ舌を這わせながら俺の股間から顔を離し、少し上向いて幸せそうに目を細めながら、コクリと音を立ててそれを飲み下した。
「ああ……」
甘い感嘆の吐息を漏らす。
「美味しい……」
恍惚とした微笑みを湛えた少年はもう幽霊どではなく、輝くような美貌を取り戻していた。
「七年どころじゃない、十年は延びたよ。この世にこんなに美味しいものがあるなんて……」
ヴァイオレットは俺の足の間に挟まり込んだままこちらを見上げ、とろけるように微笑んでその手を股間のモノに這わせる。
「ねぇ、レイチ。もっと欲しい」
ゴクリと思わず喉が鳴った。
ヤバい。
ここでこれに応えたら、俺は吸い尽くされる。そんな予感がした。
ヤバい。やっぱりコイツは淫魔なんだ。改めてそれを実感する。
美貌を取り戻したヴァイオレットの引力は半端じゃない。男女問わず惹きつけるだろう。子どもの外見であるにも関わらず。
俺だって例外じゃない。
それがこんな風に微笑みを向け、極上の快感を与えてくれるんだ。
自制しないと、溺れてしまう。
快感の海で溺死させる、それが彼ら淫魔なのだろう。
「今日は、ここまでだ」
自制心を総動員して、ヴァイオレットを離れさせた。
「えぇ?」
不満げに口を尖らせるヴァイオレット。
「約束通り精液をやっただろう?瀕死の状態からも逃れたなら、良かったじゃないか。これからは男も相手にすればいい。お前みたいに綺麗ならセックスを教えたがる男はごまんといるだろうさ」
「やだ!僕、レイチとしたい!」
ぷーっと頬を膨らませるその様子はほんとに子どもみたいで、会話の内容とさっきまでしてたことを思うと、目眩がする。
「俺としたいなら、言うことを聞け。セックスはしない。精液は一日一回だけだ。十年延びたんだろ?次は十年後って言わないだけ優しいと思わないか?」
「レイチ、ずるい」
紫の目をジトっと据わらせて俺を睨む。
「俺だって、自分を守らなきゃいけないんだよ。淫魔に枯れるまで絞り取られるわけにはいかないんだ」
「じゃあ、契約しようよ」
「……は?」
一瞬フリーズする。
淫魔も"魔"なんだよな。ってことは、契約って……。
「レイチ、魔物使いなんでしょ?僕と従魔契約しようよ。そしたら僕はレイチの命令絶対聞くし、ゴハンの面倒も見てもらえるよね?で、成長して精液飲むだけじゃ足りなくなったら、その時はセックスしてもらえるんでしょ?」
あ、そっちの契約ね。
しかし、こんな美少年を従魔にするのか、と、思わず呻いた。主張する内容は一部の隙もない言い分のように思える。だが、大きな穴があるぞ。
「淫魔のお前を従魔にして、俺にはなんのメリットがあるんだ?」
気持ちいいってだけでは納得しないぞ。
「僕、お買い得だと思うけどな。精神魔法使えるし、潜入しての情報収集とか超得意だし」
「潜入調査か。たしかに、姿消せるなら楽にできそうだな」
「相手の無意識内に潜入できるからね~。しかも、主とは思念で会話できるから、潜入先から直接情報のやり取りできるよ!」
「マジか。エロいだけじゃなかったんだな」
「そうだよ~、だから契約しよ!」
うむむ。たしかに、育てればかなり有能な従魔になりそうだ。
「……わかった。お前と契約しよう」
俺は魔物使いの契約魔法を発動した。
「ねぇ、名前つけてよ」
ヴァイオレットが下帯だけの半裸というインキュバスらしい格好で、ベッドに沈み込み今にも眠りに落ちそうになっていた俺にベッタリ絡みつき、眠りの海から強引に引き上げる。
「……あ?名前?明日にしろ……」
つーか離れろ。
睡魔に身を任せようとしてる俺の性欲を、強引に掻き立てようとしてるみたいでウザい。
やめてくれ、俺はもう寝るんだ。
「ヴァイオレットって名前あるだろ?」
「違うよ、それ名前じゃない。目の色からつけたあだ名みたいなものだよ」
「あだ名でもいいだろ。似合ってるよ……」
「やだ!主から名前贈られたいよ!」
「今まで会話できる魔物と従魔契約したことないんだが、そういうものなのか?」
今まで従魔に名前贈ったことないんだけど。
「え。レイチ、従魔に名前贈ったことないの?」
「……ない」
「えー!可哀そう、レイチの従魔」
「そういうものだったのか?いつの間にか居なくなると思ってたんだけど、まさかそのせいだったのか?」
「あーあ。レイチ、従魔にも愛想つかされてたの。しょうがないなぁ、僕が色々、教えてあげるね、だからご褒美頂戴♡」
「頼む、寝かせてくれ……」
「寝るのはいつでもできるでしょ、なんなら僕が睡眠の魔法かけたげるし」
「お前の魔法なんかで寝たら、変な夢見そうだ」
「変じゃない、いい夢。最高に気持ちよく夢精できるよ!」
「やっぱり変じゃねぇか、お断りだ。普通に寝るから邪魔するな。名前は考えておく」
「絶対だよ。おやすみ、いい夢を」
「……勝手に変な魔法かけるな」
本当に眠くて、ヴァイオレットを絡みつかせたまま眠りに落ちた俺だったけど、夢精は免れたようだ。なんとなくエロい夢を見た気はするものの、翌朝目覚めて下着を確認したら、特に汚れてはいなかったし。
下着の確認をする俺の傍らで微睡むヴァイオレットがやけにつやつやしてて、満足げに口元を舐めてたのは……気にしないでおこう。
そのヴァイオレットは今、なぜか俺の腰に両腕を回して絡みついている。……こら、股間に顔を埋めるな!油断も隙きもねぇな。
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そうだ。名前ね。名前……難しいな。
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「僕の名前?!」
「ん。お前が気に入ったら、だけど」
淫魔は嬉しそうに、満面の笑みを湛えた。
「気に入るに決まってるじゃん!嬉しい!ありがとうレイチ!」
ぎゅむーっと抱きついてくる、ヴァイオレット改めヴィオラ。喜んでくれて大変微笑ましいのだが、くっついて寝るのも抱きついてくるのも誤解を招くからやめてほしい。
男な上に子どもだ。日本だったら逮捕されかねない。
「おら、離れろ。今日は色々忙しいんだ。パーティの脱退手続きして、旅に出る準備して、出来れば午前中のうちに出発したいし……あれ?」
犬だったら間違いなくブンブンと尻尾を振りまくってるに違いない笑顔で俺を壁ドンならぬ床ドン状態で押し倒してるヴィオラを退かそうと肩に手をかけ、ふと違和感を覚えてマジマジと見つめた。
「お前さぁ、ちょっと成長してないか?」
俺が言うと、ヴィオラは実に嬉しそうにぐふふ~っと笑った。
「わかる?レイチにおつゆもらって栄養行き渡ったから、成長したんだよ!」
「一晩で?!」
「魔物ってそういうものだよ」
ドヤ顔で薄い胸を反らせるヴィオラ。昨日は十ニ、三くらいに見えたのが、今日は十三、四に見える。微妙な成長ではあるけど、小学生から中学生に成長したな。まあ、どっちにしても子どもだけど。
「そろそろセックスしたくなった?」
「まだだ」
「ケチ」
ぶっとむくれたヴィオラは四つん這いのままズルズルと下がると「じゃあ、レイチ、朝ごはん頂戴」と言って俺の下衣をずり下げようとする。
「待て、お前、さっき飲んだんだろ?もうダメだからな」
「え、何?知らないけど?」
「とぼけるな。俺に魔法かけてエロい夢見せて夢精させただろ。バレてんだぞ」
「魔法なんてかけてないもん。えっちな夢みたのは僕のせいじゃないし。夢精は飲んだけど。だって勿体ないじゃん!」
「とにかく飲んだならそれで今日の分は終了だ」
「やだ!僕、育ち盛りだもん、あれだけじゃ全然足りない!」
ヴィオラに強引に下衣を下げられ、元気な朝立ちがフルンと晒されてしまった。
にんまりと微笑む淫魔。
「ほらぁ、もう準備できてるくせに」
「……ただの生理現象だ」
一晩ですっかり健康を取り戻した上に遠慮も無くした淫魔は、元気に起立した俺の息子氏をハムッと咥え込んだ。
「……んッ」
その人間技とは思えない舌技に翻弄され、思わず声が漏れる。
朝からじゅるじゅると盛大に音をさせてそれを啜るヴィオラ、纏う雰囲気はやはり人外の者だ。
ソロ魔物使いとしての旅立ちの朝がこれでいいのだろうか?という一抹の疑問を抱きつつ、抵抗を諦めて淫魔の口内に今朝二度目の精を放った。
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