忌み子と呼ばれた鬼が愛されるまで

文字の大きさ
上 下
2 / 5
本編

しおりを挟む
「 ……様、……葉様、紅蓮葉様 」

‘’ 誰かが俺の名前を呼んでいる…
優しくて、水が澄んだ様な聞き馴染みのある綺麗な声 ”

「 あお…? 」
「 はい、蒼です。顔色が優れないようですが大丈夫ですか? 」
「 ん…あぁ、昔の事思い出してたからかな… 」
「 ……そうですか、、 」

‘’ 俺が目を開けると、そこには俺が想像していた通りの鬼が立っていた
彼の名は『 蛇穴 蒼( さらぎ あおい )』
俺の幼馴染であり側近だ( 俺は『 あお 』って呼んでる )
どうやら俺の顔色が余程良くないらしい
昔の事を思い出し、気分が優れないのは確かだった為正直に伝えると、あおはやってしまった…と言わんばかりのバツの悪そうな顔で「 そうですか 」と短く言葉を返した ”

「 ……あおは何も悪くねぇんだから、そんな顔しなくていい…で、俺に何か用があったんじゃねぇのか? 」

( 俺はあおにこんな顔をさせたかった訳じゃない、、 )


紅蓮葉はこの空気を変えたい気持ちもありつつ恐らく何か用があってここに居る蒼に声をかけた


「 あ…はい、実は里の近辺に魔物が出たそうで、お父上の紅郎様より紅蓮葉様に出陣して頂きたいと言付かっております 」
「 魔物…最近やけに多いな…。分かった今から出る 」

蒼はまだ少し先程の事が気にかかっているようだったが、紅蓮葉の父、紅郎( べにろう )からの言付けという事もあり用件を直ぐに述べた

魔物…森の奥深くに生息する瘴気を放つ異生物。紅緋の里はその魔物が住む住処に近い所に位置する為、よくこのように魔物が出る。紅蓮葉はと言えど、里を統治する鬼灯家の嫡男。
このような事態になった時には先陣を切って出陣する必要がある

‘’ 先陣…って言うのは言葉だけだけどな
家臣達何人かも付いて出るが、俺の指示に従う者はいない。ガキの頃からそんなんだから俺も家臣達に指示はしない。俺は黒炎が使える、黒炎は赤炎と違って威力が桁違いに高い。だからこそ災いを引き起こすって恐れられているんだけどな
正直、家臣達に任せるよりも俺が魔物を殲滅する方が早い
大方この2つの理由で指示を出していない ”


「 今から…、、着物で赴かれるのですか? 」
「 あぁ、どうせ召し物変える使用人もいないんだ。返り血で汚れるかも知れないが、別に良い 」
「 ……ダメです、私が手伝いますからお召し物は変えてください 」
「 いや、いいって…っておい!! 」

部屋着の着物のまま屋敷を出ようとした紅蓮葉を蒼は引き止め、半ば無理やり着替えさせた


「 ったく、、良いって言ったのに… 」
「 貴方は鬼灯家の息子なんです、部屋着でなんて行ったら紅蓮葉様が笑われるでしょう? 」
「 それも別に今更だろ?笑われたり馬鹿にされるのは慣れてる 」
「 私が嫌です、というか何故紅蓮葉様を笑ったり馬鹿にしたりする鬼達がいるのかが分かりません 」
「 そりゃ俺が『 出来損ないの無情な鬼 』?だから… 」
「 、紅蓮葉様は無情でも出来損ないでもありません。貴方は優しくて強くて、本当は情にも厚い御方です。そんな風に言われていい所なんて1つもありません 」

紅蓮葉は昔から他の奴らに笑われたり馬鹿にされたりする事が多かった。
だから本当に人よりは疎まれることに耐性がある
とは言えど『 出来損ないの無情な鬼 』と自分で言うのはかなり虚しかった様で、紅蓮葉の顔が一瞬曇った

そんな紅蓮葉の言葉を遮って、蒼が食い気味に否定した
蒼は普段冷静沈着だが、紅蓮葉がこういう風に自分を卑下にする発言をした時だけ、少し感情的になるのだ


「 ……あるよ、俺1本角で、黒炎使いだし、、」
「 だから違うと何度も…っ、、 」
「 俺はさ、あおが居ればそれで良いから 」
「 っ………… 」

‘’ 俺は鬼灯家の鬼達とは角も妖力も違う
だから気味悪がるのは仕方ねぇんだ
あおは、そんな事は無い・紅蓮葉様は素晴らしい御方だっていつも褒めてくれるし、庇ってくれる
でも俺は_________ ”


紅蓮葉は蒼の胸辺りにおでこをコツンと当て、この上なく優しい声で心からの言葉を蒼に伝えた
蒼は驚いた様で、少したじろいだ


「 例え里の皆が敵だとしても、俺はあおが傍に居てくれれば良い 」
「 ………紅蓮葉さ… 」

「 あ~~、、ほ、ほら、そろそろ出るぞ、俺らがこうしてる間にも被害が大きくなってるかもしれねぇ 」
「 ……そうですね、、行きましょうか 」
「 あぁ 」


蒼が居ればいい、それ以上は何も望まない

‘’ 素直な気持ちを述べると同時に、俺は急激に恥ずかしくなって咄嗟に話を逸らした、あおの言葉を遮って… ”

蒼は何か言いたげだったが、被害拡大等を懸念してそれ以上は何も言わなかった

否、懸念の他にも何か理由があったようだが…それにはまだ、紅蓮葉は気付いていない

紅蓮葉と蒼の2人は、ぎこちない雰囲気を残しつつも、魔物が出て暴れている場所へと向かって行った



▶︎ 続く

※作品内容の所に紅蓮葉と蒼のプロフィールを記載しております!!
良ければご覧になってみて下さい✨
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...