17 / 34
1日目
絵
しおりを挟む
ガサゴソと隣で音がなったので目が覚めた。まだ暗い。いつもより早く寝てしまったから、変な時間に目が覚めてしまった。
お兄さんがベッドから起きてどこかに行くみたいだ。
「…どこ行くの?」
寝ぼけながら声をかけると返事が来た。
「来る?」
何となく、あまり知らない部屋に一人で眠っているのが怖かった翔は頷いた。
お兄さんは翔の手を握った。
お兄さんと一緒に外に出ると、外は真っ暗で星だけがちらちらと輝いている。
翔が隣で目を擦ると、お兄さんが「眠いの?」と聞いてきた。
「お兄さんは夜に起きてるのに眠くないの?」
「俺いつも3時間ぐらいしか寝ないんだよねー」
翔はびっくりした。それで眠くならないなんて!
お兄さんは隣の隣の部屋に歩いていった。
扉を開けると、薄暗い中、何か大きいものが沢山置いてあるのが見えた。
お兄さんが電気をつける。
パッと光と共に視界に入ったのは、絵が描かれたキャンパスだった。大小いろいろな絵がある中で、最も大きなものは書き途中のようだ。
それは、とても綺麗な人間の絵に見えた。性別の分からない人間、人間じゃないのかもしれない。
お兄さんに手を引かれて中に入ると、その絵が良く見えて驚いてしまった。綺麗だと思っていた絵は昆虫などの死体の絵で描かれていた。繊細で緻密だ。
顔を見ると、目は黄金虫で描かれている。
虫の死体が描かれているのなんて、本当は気持ち悪いはずなのに、その絵の色は優しく、何かを薄く包み込むような色をしていた。
翔は綺麗だな、と思った。
お兄さんが扇風機をカチッとつけた。
絵を描く周りには新聞紙が端正に並べられているのに、その横にはぐじゃっと布団が置かれていた。
「そこ、使っていいよ」
お兄さんは床に置いてあったランプに灯りをともした。部屋の電気は消されて、柔らかいオレンジの光だけが灯される。
「俺、このランプの光の中にいるの好きなんだよね」
そう言うとお兄さんは絵を描く準備をし始める。
ぼうっと暖かい光を見つめていた翔は、お兄さんが絵を描き出したのを少しの間、見ていた。どうやってあんなに繊細な絵を描くのか気になった。
こんな薄暗いところで絵を描くから、さっき見た、今までにないような色になるのだろうか。
今まで変人だと思っていたお兄さんがさらさらと筆を撫でるように扱って絵を書いていく様子を見て、なんだか似合わないようで、しかしこっちが本当のような気もした。思考力も低下して夢心地になった翔はうとうとしていた。
明日の心配をする暇もなく、また翔は眠りについた。
お兄さんがベッドから起きてどこかに行くみたいだ。
「…どこ行くの?」
寝ぼけながら声をかけると返事が来た。
「来る?」
何となく、あまり知らない部屋に一人で眠っているのが怖かった翔は頷いた。
お兄さんは翔の手を握った。
お兄さんと一緒に外に出ると、外は真っ暗で星だけがちらちらと輝いている。
翔が隣で目を擦ると、お兄さんが「眠いの?」と聞いてきた。
「お兄さんは夜に起きてるのに眠くないの?」
「俺いつも3時間ぐらいしか寝ないんだよねー」
翔はびっくりした。それで眠くならないなんて!
お兄さんは隣の隣の部屋に歩いていった。
扉を開けると、薄暗い中、何か大きいものが沢山置いてあるのが見えた。
お兄さんが電気をつける。
パッと光と共に視界に入ったのは、絵が描かれたキャンパスだった。大小いろいろな絵がある中で、最も大きなものは書き途中のようだ。
それは、とても綺麗な人間の絵に見えた。性別の分からない人間、人間じゃないのかもしれない。
お兄さんに手を引かれて中に入ると、その絵が良く見えて驚いてしまった。綺麗だと思っていた絵は昆虫などの死体の絵で描かれていた。繊細で緻密だ。
顔を見ると、目は黄金虫で描かれている。
虫の死体が描かれているのなんて、本当は気持ち悪いはずなのに、その絵の色は優しく、何かを薄く包み込むような色をしていた。
翔は綺麗だな、と思った。
お兄さんが扇風機をカチッとつけた。
絵を描く周りには新聞紙が端正に並べられているのに、その横にはぐじゃっと布団が置かれていた。
「そこ、使っていいよ」
お兄さんは床に置いてあったランプに灯りをともした。部屋の電気は消されて、柔らかいオレンジの光だけが灯される。
「俺、このランプの光の中にいるの好きなんだよね」
そう言うとお兄さんは絵を描く準備をし始める。
ぼうっと暖かい光を見つめていた翔は、お兄さんが絵を描き出したのを少しの間、見ていた。どうやってあんなに繊細な絵を描くのか気になった。
こんな薄暗いところで絵を描くから、さっき見た、今までにないような色になるのだろうか。
今まで変人だと思っていたお兄さんがさらさらと筆を撫でるように扱って絵を書いていく様子を見て、なんだか似合わないようで、しかしこっちが本当のような気もした。思考力も低下して夢心地になった翔はうとうとしていた。
明日の心配をする暇もなく、また翔は眠りについた。
2
お気に入りに追加
412
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


ブラコンなイケメン兄に告白された弟
成竹
BL
兄である瞬は、弟の紘を溺愛している。
弟は兄のことがまあまあ好きなので拒みきれずに困っているのだが、そんなある日、弟は兄に告白されてしまった……。
兄が19歳で、弟が16歳です。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる