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第1章

08.

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こんくんは紅茶で良いよね?」

掃除したばかりの綺麗な私の部屋。
長年務めてくれているメイド長の前田さんから飲み物の乗ったおぼんを受け取り、彼の前にカップを置いた。
意外とコーヒーが飲めないところが、可愛いんだよな~と思いながら紺くんのカップに紅茶を、自分のカップにコーヒーを注ぐ。

「……ありがと」

そう言ってから紅茶を飲む紺くんは、まるで映画のワンシーンのように美しい。
このまま切り取って引き伸ばしたいくらい!
私はそう思いながらテレビゲームの準備を始めた。
兄の桜介おうすけが家に帰って来るまで2時間くらいあるらしいので、ゲームでもして遊んでいよう。
私はかなりのゲーマーで、紺くんも昔から普通に好きだから丁度良い。
私はコントローラーを手にしてソファに腰掛ける。

「……えっ」

突然隣に座ったからか、彼は驚きで目を丸くしてこちらを向いた。
コントローラーを渡すと納得したようにテレビに向き直る。


▶▶▶


新作のゲームに夢中になること約1時間、少し休憩しようとコントローラーを離した。
コーヒーを飲みながらくつろいでいると、ソファに隣同士で座ると結構距離が近いことに気がつく。
そして、1度気になったら意識してしまう。

「このゲーム結構面白いでしょ?最近発売されたんだけど紺くんも買ってみた……………ら」

意識しているのを悟られないよう、自然な会話をしたつもりだった。
しかし紺くんが、「そうだね」と言いながらじっと見つめてくる。
まるで恋人同士の甘い雰囲気……みたいな。
紺くん視線が優しくて、甘い。
吸い込まれてしまいそう。

「ねぇ美桜みおう

「は、はい」

「好き」

「は、はい………………えぇ??」

思わず間の抜けた声が漏れた。
聞き間違えを疑ったが、紺くんの真剣な瞳を見ると、間違いではないと分かる。
どんな種類の「好き」か聞かなくても分かるくらいに、彼は熱っぽい視線を私に向けていた。

「………昔から一緒にいたけど、改めて伝えた事ってなかったと思ったから」

紺くんは恥ずかしくなったのか、視線をふいと上の方に逃がした。

「き、急に……」

どうしたの、と言おうとした。
しかし、私のスマホの着メロにかき消されてしまう。
私は何故かほっとして「ごめん」と言って机の上に置かれたスマホを取ろうとする。
液晶には『タルくん』の文字。
友人からの電話だ。

「その人、美桜と同じクラスの人だよね」

紺くんのその声は、聞いた事ないくらい低かった。

「休みの日まで電話してくるのはどうして?」

珍しく笑顔の彼。
しかし、目が笑っていないような気がする。



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