およそ原稿用紙1枚の短編集

柊 真詩

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季節と生き方の変わり目

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 身体がブルりと震え、腕と脚に鳥肌が浮かぶ。私は無地の黒いブランケットを羽織った。
 九月下旬になって、肌寒さが増してきた。
 私はSNSを開いたスマホに視線を戻す。
 絵師。作曲家。詩人。探せばどんな世界にもいるものだ。
 私のような、人気者の裏で生きる日陰者が。
 どうして生き続けるのか、私にはその理由が分からない。
 私はフォロワーの「いいね」によって流れてきた投稿に視線を止める。
『月を掴む、唯一無二の配信者はココだ!』
 URLをタップすると、学校でよく騒いでそうな、二流美形といった金髪の男が、コメントと会話するように喋っていた。
 始めたては何だって楽しいのだ。少しちやほやされるだけで、自分はやれると思い込む。
 私はスマホの電源を消し、机に置いた。背もたれに体を預け、そっと目を閉じる。
 私はそっと、ブランケットを羽織り直した。
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