およそ原稿用紙1枚の短編集

柊 真詩

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Break halfway through special dazzling moon

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 ツイッターを開くと、満月の写真がタイムラインを埋め尽くした。どの写真も同じようなものばかりなのに、いいねやリツイートの数にはバラツキがある。
 所詮は人気でしかない。他者から照らされる事で輝いて見える、月のような存在だ。
 だが、オレにはその「特別」が眩しかった。
 大学に入ってから金髪に染めた。ピアスだって開けた。普通に埋もれないための努力は、思いつく限りやった。
 それでも、まだオレは中途半端から抜け出せない。彼女がいるわけでもなければ、特出した充実を得た訳でもない。
――ビックな事をするんだろう?
 自分にそう言い聞かせ、深呼吸をする。右手でマウスを動かし、「配信開始」をクリックした。
 中途半端から抜け出すために。
 「特別」を手に入れるために。
 月へ、手を伸ばす。
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