はなのゆめ

時は平安、華やかな権勢を誇る左大臣邸に女房として仕える于子(ゆきこ)。
縫物を得意とする于子は、左大臣の嫡男である太郎君と心を重ねるが、
太郎君は帝の妹宮と結婚することが決まっていて――。

「日陰の身で構いません。だから、どうか、」
「きみを妻にしたかった。命尽きるまできみだけを、愛したかった」

ひとひらの花びらのような願いは儚く散った。
これでようやく、観念することができるのだろうと思った。
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