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仮面の男
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「どこからくる?上か?下か?」
「次はどいつが殺される?間抜けな男か?ビッチな女か?」
「今だ!殺せ!・・・おい、なんでそこで転ぶんだよ!」
「お前なんでまだ生きてんだよ!あの攻撃喰らって生きてるわけねえだろ!さっきの感動が台無しじゃねえか!」
マイクはキャビンで一人映画に向かってボヤいていた。5人の学生が、旅行中に立ち寄った洋館で殺人鬼に次々と殺されていくという映画だ。見終わった後しばらくボーっとしていると、地下からカサカサと音がするのに気づいた。恐る恐る階段を降りると、そこには斧を持った仮面の男が、タンスの中を物色していた。男は瞬時にマイクに気づき、奇声をあげながらマイクに向かってきた。マイクは慌てて階段を上り、キャビンの外に逃げた。携帯を持ち忘れたまま逃げたので警察も呼べない。出てきたところを一か八か奇襲することにした。恐らく外の換気口から入ったのだろう。換気口から出てくるのか玄関から出てくるのか、焦点を絞らずに見なければいけない。
40分ほど経ったがまだ出てこない。少し離れたところにある沢水を飲みに行きたいが、飲みに行っている間に出てきて逃げられるかもしれない。ここは勇気を出して中に入って水を飲もう。そして携帯で助けを呼ぼうとマイクは思った。
どっちから入ろうか迷ったが、換気口の方から入ることにした。ここから地下に入れる。しかし上下の幅32㎝、左右の幅54㎝の換気口を進むには匍匐前進をするしかなかった。3mほど進んだ頃だろうか、暗闇から突然、柄の部分がマイクに向いた状態で斧がスーッと滑り込んできた。お金や財布を入れた袋を持っているから、斧を前に滑らせつつ匍匐前進するつもりだったのだろう。これはチャンスだ。マイクには男を殺す準備は出来ていた。息をひそめて男が来るのを待った。ズーッズーッという音とともに、少しずつこちらに近づいている。男の手が見えた。いまだ!マイクは袋を持っている右手の方に斧を振りかざした。男は痛さのあまり叫んだ。振りかざせる幅が小さいので、マイクはその分何度も攻撃したかった。斧が換気通路に当たる音が響く。しかし、男は2発喰らった後にすぐ右手を引っ込め、袋を左手に持ち替えて、今度は後ずさりを始めた。右手は使い物にならなくなったはずだ。マイクは斧を持ちながら男を追った。しかし男の方も意外に後ずさりが早く、逆にマイクは斧を持ちながらだとスムーズに進めない。何度も追いつきそうになり、そのたびに手の甲に向かって斧を振るのだが、寸前で引っ込められてしまう。そこでマイクは男を攻撃することを諦め、お金が入った袋を奪い取ることにした。男は右手の力が入らないので、1対2の力で当然マイクの方が有利だった。しかし男も執念なのか、なかなか袋を手放さなかった。腕を押したり引いたりしてるときに、斧が二の腕に何度か当たってすごく痛い。マイクは一瞬左手を袋から離し、斧を男の方に滑らせた。すると今度は男の二の腕に斧が当たり始めた。男は斧が体に当たらないように体を傾けてまだ袋を手放そうとしない。マイクは今度は右手を袋から離し、男のこめかみを殴った。そこで一瞬男が怯み、左手の力が抜けた。そしてようやくマイクは袋を奪い取ることに成功した。袋を奪われた男は再度斧を手にして、今度はマイクを追いかけてきた。マイクは急いで後ずさりした。男の斧を振りかざす速さはマイクの比じゃなかった。マイクよりもっと刃に近いところを持ったのだ。2mほどマイクが後ずさりしたとき、男は今度は後ずさりし始めた。しまった。とマイクは思った。男が地下の方から自分より先に出てしまうと、自分はこの換気通路に閉じ込められるも同然になってしまう。しかしもう手遅れだ。ここからだと地下の方が近いので、男が先に出ることになる。自分はどっちに男がいるのか分からず、前にも後ろにも進む勇気がなくなってしまう。出てきたところを斧で殺られるからだ。これは参った。とマイクは思った。さっきの戦闘で汗をかき、余計に喉が渇いた。このまま干からびて死んでしまうのか?でも待てよ。あいつはただの強盗のはずだ。別に俺を殺したいわけじゃないはずだ。それか干からびて死んでから袋を奪うつもりか?
マイクが考えを巡らせていると、突然銃声が聞こえた。父だ!
「マイク!どこにいる?!」
やはり父の声だ。マイクは急いで地下の換気口まで進んだ。換気口から出ると、男は倒れていた。そして父が銃を持って男の前に立っていた。鹿猟に出ていた父が帰って来たのだ。
「マイク無事だったのか!良かった!」「父さん、水がほしい。」
父が水をマイクに渡した。マイクはがぶがぶ水を飲んだ。そして父に事情を説明した。事情を聞いた父は警察に電話した。そして、仮面を外して男の素顔を見た。知らない男だった。完全に息絶えていた。
しかしそれは男の演技だった。ぎりぎり急所を外れたらしく、まだかすかに息が残っていたのだ。マイクと父が上に上がったのを確認して、朦朧とした意識の中、男は目を開けた。壁に誰かの写真が飾ってあるのが見える。あれはたしか、ナントカっていう宗教の教祖だ。やつらこの宗教の信者なのか。と男は思った。しばらくその写真を眺めていると、一匹の蚊が教祖の顔の部分に止まった。次いでもう一匹止まった。そしてどんどん蚊が止まりだした。無数の蚊が教祖の顔に止まり、最終的に教祖の顔が蚊の顔に変った。死ぬ間際にはこんな気持ち悪い幻覚が見えるものなのかと男は思った。これ以上その写真を見たくないと思った男は、顔の向きを変えた。するとそこに一匹のゴキブリがいるのが見えた。なにか食料を探しているようだ。「諦めて出ていったほうが身のためだぞ。」と振り絞った声で男はゴキブリに言った。ゴキブリは構わず食料を探していた。「よう神様、あんたはなんで俺なんか作ったんだ?」と男はつぶやいた。
「次はどいつが殺される?間抜けな男か?ビッチな女か?」
「今だ!殺せ!・・・おい、なんでそこで転ぶんだよ!」
「お前なんでまだ生きてんだよ!あの攻撃喰らって生きてるわけねえだろ!さっきの感動が台無しじゃねえか!」
マイクはキャビンで一人映画に向かってボヤいていた。5人の学生が、旅行中に立ち寄った洋館で殺人鬼に次々と殺されていくという映画だ。見終わった後しばらくボーっとしていると、地下からカサカサと音がするのに気づいた。恐る恐る階段を降りると、そこには斧を持った仮面の男が、タンスの中を物色していた。男は瞬時にマイクに気づき、奇声をあげながらマイクに向かってきた。マイクは慌てて階段を上り、キャビンの外に逃げた。携帯を持ち忘れたまま逃げたので警察も呼べない。出てきたところを一か八か奇襲することにした。恐らく外の換気口から入ったのだろう。換気口から出てくるのか玄関から出てくるのか、焦点を絞らずに見なければいけない。
40分ほど経ったがまだ出てこない。少し離れたところにある沢水を飲みに行きたいが、飲みに行っている間に出てきて逃げられるかもしれない。ここは勇気を出して中に入って水を飲もう。そして携帯で助けを呼ぼうとマイクは思った。
どっちから入ろうか迷ったが、換気口の方から入ることにした。ここから地下に入れる。しかし上下の幅32㎝、左右の幅54㎝の換気口を進むには匍匐前進をするしかなかった。3mほど進んだ頃だろうか、暗闇から突然、柄の部分がマイクに向いた状態で斧がスーッと滑り込んできた。お金や財布を入れた袋を持っているから、斧を前に滑らせつつ匍匐前進するつもりだったのだろう。これはチャンスだ。マイクには男を殺す準備は出来ていた。息をひそめて男が来るのを待った。ズーッズーッという音とともに、少しずつこちらに近づいている。男の手が見えた。いまだ!マイクは袋を持っている右手の方に斧を振りかざした。男は痛さのあまり叫んだ。振りかざせる幅が小さいので、マイクはその分何度も攻撃したかった。斧が換気通路に当たる音が響く。しかし、男は2発喰らった後にすぐ右手を引っ込め、袋を左手に持ち替えて、今度は後ずさりを始めた。右手は使い物にならなくなったはずだ。マイクは斧を持ちながら男を追った。しかし男の方も意外に後ずさりが早く、逆にマイクは斧を持ちながらだとスムーズに進めない。何度も追いつきそうになり、そのたびに手の甲に向かって斧を振るのだが、寸前で引っ込められてしまう。そこでマイクは男を攻撃することを諦め、お金が入った袋を奪い取ることにした。男は右手の力が入らないので、1対2の力で当然マイクの方が有利だった。しかし男も執念なのか、なかなか袋を手放さなかった。腕を押したり引いたりしてるときに、斧が二の腕に何度か当たってすごく痛い。マイクは一瞬左手を袋から離し、斧を男の方に滑らせた。すると今度は男の二の腕に斧が当たり始めた。男は斧が体に当たらないように体を傾けてまだ袋を手放そうとしない。マイクは今度は右手を袋から離し、男のこめかみを殴った。そこで一瞬男が怯み、左手の力が抜けた。そしてようやくマイクは袋を奪い取ることに成功した。袋を奪われた男は再度斧を手にして、今度はマイクを追いかけてきた。マイクは急いで後ずさりした。男の斧を振りかざす速さはマイクの比じゃなかった。マイクよりもっと刃に近いところを持ったのだ。2mほどマイクが後ずさりしたとき、男は今度は後ずさりし始めた。しまった。とマイクは思った。男が地下の方から自分より先に出てしまうと、自分はこの換気通路に閉じ込められるも同然になってしまう。しかしもう手遅れだ。ここからだと地下の方が近いので、男が先に出ることになる。自分はどっちに男がいるのか分からず、前にも後ろにも進む勇気がなくなってしまう。出てきたところを斧で殺られるからだ。これは参った。とマイクは思った。さっきの戦闘で汗をかき、余計に喉が渇いた。このまま干からびて死んでしまうのか?でも待てよ。あいつはただの強盗のはずだ。別に俺を殺したいわけじゃないはずだ。それか干からびて死んでから袋を奪うつもりか?
マイクが考えを巡らせていると、突然銃声が聞こえた。父だ!
「マイク!どこにいる?!」
やはり父の声だ。マイクは急いで地下の換気口まで進んだ。換気口から出ると、男は倒れていた。そして父が銃を持って男の前に立っていた。鹿猟に出ていた父が帰って来たのだ。
「マイク無事だったのか!良かった!」「父さん、水がほしい。」
父が水をマイクに渡した。マイクはがぶがぶ水を飲んだ。そして父に事情を説明した。事情を聞いた父は警察に電話した。そして、仮面を外して男の素顔を見た。知らない男だった。完全に息絶えていた。
しかしそれは男の演技だった。ぎりぎり急所を外れたらしく、まだかすかに息が残っていたのだ。マイクと父が上に上がったのを確認して、朦朧とした意識の中、男は目を開けた。壁に誰かの写真が飾ってあるのが見える。あれはたしか、ナントカっていう宗教の教祖だ。やつらこの宗教の信者なのか。と男は思った。しばらくその写真を眺めていると、一匹の蚊が教祖の顔の部分に止まった。次いでもう一匹止まった。そしてどんどん蚊が止まりだした。無数の蚊が教祖の顔に止まり、最終的に教祖の顔が蚊の顔に変った。死ぬ間際にはこんな気持ち悪い幻覚が見えるものなのかと男は思った。これ以上その写真を見たくないと思った男は、顔の向きを変えた。するとそこに一匹のゴキブリがいるのが見えた。なにか食料を探しているようだ。「諦めて出ていったほうが身のためだぞ。」と振り絞った声で男はゴキブリに言った。ゴキブリは構わず食料を探していた。「よう神様、あんたはなんで俺なんか作ったんだ?」と男はつぶやいた。
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