ひかるのヒミツ

世々良木夜風

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Secret6. ひかるとさくらの過去(首領交代)

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●登場人物
ひかる・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。超絶美少女。実は悪の秘密結社ダーク・ライトの首領。
紫野むらさきのすみれ(すみれ): ひかるのお店でバイトをしている。魔法少女のオタク兼ダーク・ライトの一員という相反する二足のわらじを履いている。
小松春こまつはる桜子さくらこ(さくら):元気が取り柄の14才!
 = ラフェド・セリシール:魔法少女。秘密結社ダーク・ライトの敵。ただ、ヒカルにはトラウマがあるようで...
・チッカー:全身黒づくめのモブ戦闘員。ひかるが幼いころからいたらしい。

●前回のお話
わたくし、輝・ダークライト(14才)と申します。少し読みにくいですが「輝」と書いて「ひかる」と読みますわ。
悪の組織の首領を務めさせていただいておりますが、それは魔法少女を輝かせるため。世界征服などという子供っぽい夢は持っておりませんの。
魔法少女と戦う際には「マテラス」という男性に変身しているのですが、それには深い理由がございまして...
それはそうと、今日はマテラスへの変身の際に必要な、魔法薬を調達に参りましたの。
でも、それを見たすみれが半狂乱になりまして...一体何があったのでしょうか?心配ですわ。



すみれは唐突に切り出した。
「そういえば、ひかるに聞きたいことがあったのよ」
「何ですの」
「数か月前まではひかるのお父さんが悪の首領だったのよね?」
「そうですわ。その後、わたくしが後を継いで...訳あって、今の形になってますの」
「その頃の話を聞きたいなぁって思って。ほら、私まだひかるに会ってなかったじゃない?ちょっと興味があるというか...」
「ひかるはヒカル・ダークライトが首領だったころの話を聞きたいのね」
「う、うん。話し辛いならいいよ」
「...そうね。辛い思い出だけど、すみれには知っておいて欲しいわ。まだ世間知らずだったわたくしの愚かな物語を...」
「うん...」すみれは空気を読める女だったのでつっこまなかった。
アイスコーヒーでツッコミをのどの奥に押し流すと、ひかるの昔話に耳を傾けるのだった。

・・・

今をさかのぼること数か月前...
「うっ、すまない」
黒ずくめの衣装に身を包んだ中年の男が、チッカーたちに介抱されながら秘密結社ダーク・ライトの本拠地に戻って来た。
「お父様、どうされたのです」
心配そうに駆け寄る少女は目も覚めるような美少女。ダーク・ライト首領の娘「ひかる」だった。
「今日の魔法少女との戦いの際、かっこよくバク転で攻撃を避けようとしたのだが、腰をひねって、ぎっくり腰になってしまったのだ」
「それで、魔法少女は?」
「うむ、事情を説明して解散してもらった」
「では、セリシール様はご無事ですのね?」
「うむ」
「良かった!」
「うむ???・・・私は腰を痛めているのだが」
「しばらく寝てれば直りますわ。大げさですこと」
「そ、そうだな。すぐに直してまた、戦いに赴くさ」
ダーク・ライト首領は腰を痛めた以上の打撃を心理的に被った。

それから一週間後。
「お父様、腰の具合はいかがですか?」
「うむ、どうやら長年の疲労が溜まっていたようで、良くなる兆しが見られないのだ。このままでは魔法少女の敵がいなくなってしまう」
「それは、大変ですわ。どうしましょう。わたくしに出来ることがあるといいのですけど...」
「それなのだがな、ひかるよ。少し早いのだが、お前が私の後を継いでくれないか?」
わたくしが...お父様の後を...」
「不安なのは分かる。しかし、悪がなければ正義は輝けないのだ」
わたくしがダーク・ライトの首領になれば、セリシール様と戦えますのね!」
「えっ、ああ、そうだが」
「セリシール様と魔法を打ち合い、セリシール様の魔法を受け、セリシール様を輝かせる...」
ひかる?」
「素晴らしいお仕事ですわ。わたくし、頑張ります!!」
「そ、そうか。やる気を出してくれたか。それは良かった」
「はい、お父様のことは決して忘れません!お空の上から見守っていてください!」
「いや、毎日会えるし、普通に部屋から見守っているが...」
その声がひかるに届くことはなかった。父にできることは昔の可愛かったころの記憶を思い出すことだけだった。

その翌日、
ひかる、お前の戦闘服が出来上がったぞ」
「まあ、楽しみですわ。早く見せてくださいませ」
「はっはっは。そう慌てるでない。この魔法陣の紙に触れながら変身の魔力を流してみるが良い」
「はいっ!」
ひかるは首領の手から魔法陣の書かれた紙を受け取ると、早速、魔力を流した。すると、ひかるの体が光に包まれ、収まったときには...
「なっ、なんですの~~~!これは!」
ひかるの全身は黒のレザーのぴったりした服におおわれていた。
ショートのタンクトップにローライズのショートパンツ。膝まで隠すブーツに肘まで覆った手袋。
背中には小さなコウモリの羽のモチーフ。おしりからは悪魔の尻尾が伸びている。
肩パッドには棘がついており、いかにも悪の首領という風体である。
「うん。うん。素晴らしい。ひかるの美しさと悪のオーラが両立しておる。しかも肩パッドの棘は父とお揃いだぞ!われながら良いセンスだ」
「いやーーー!かわいくないーーーー!!」
ひかるは肩の棘で父に体当たりした。
「ぐふっ!」
ダーク・ライト首領は完全に再起不能となった!
わたくしがデザインしなおします!!」
戦闘服のお披露目は翌日に持ち越された。

そして翌日、
「出来ましたわ。わたくしの自信作!とってもかわいいですのよ」
「うん。ちょっと心配だが父に見せておくれ」
ひかるは複雑な魔法陣を脳内に明瞭に思い浮かべながら、全身に魔力を流した。高度な変身技術だ。
すると昨日と同じように、ひかるの体が光に包まれ、収まったときには...
白いフリルの襟がついたブラウスに、ライトブラウンのジャケット。赤のチェックのミニスカートにニーソックス。
スカートとお揃いの赤のリボンタイに加え、同じ色の大きなリボンが頭に結んである。
「はて、ひかるは来年、高校生だったかな??」
「まあ、お父様。冗談がお上手ね。ひかるはまだ14ですわ。これは戦闘服ですわよ♡」
ひかるは高校を制服で選ぶタイプだった。
「そ、そうか。うん。かわいいことはかわいいが、ミニで戦うのはお勧めできないな」
「大丈夫ですわ。見えないようにスパッツを履いてますもの」
「しかし、あー、あれだ。お父さんとしては男の子に声をかけられるのではとちょっと心配になったりして...」
「まあ、少し過保護じゃございませんこと。でも心配には及びませんわ。魔法少女は女の子ですもの」
「それはそうだが、あー...」
「と・に・か・く。わたくしはこの服が気に入ってますの。これ以外では戦いません!」
「分かった。分かった。欲を言えば悪のオーラが欲しかったところなのだが...」
「えっ、小悪魔コーデで検索したのですが、ダメでした?...」
ひかるがしょんぼりしている。父はあわてて
「いや、そんなことはない。悪魔かわいいぞ。では、この戦闘服でけって...」
「決定ですわね!さあ、早速、セリシール様と対決ですわ!!」
「......」
こうして世にもかわいい悪の首領コーデが完成したのであった。

・・・

「というわけで、セリシール様との初対決を迎えましたの」
見るとすみれがテーブルに突っ伏している。
「あぁ、つっこみたい。私なら10回はつっこんでるわ」

......ツッコミ不在の物語はボケたおしで続いていく・・・
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