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Panic 17. マコリンの貧乏生活
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「お帰りなさい!」
マコリンのお母様が玄関までやってくる。
(あっ!頭、しばってる...)
お母様はマコリンと一緒で黒髪。
中年になっても色あせない、ツヤのある髪をロングのストレートにしていた。
美しい風貌と抜群のスタイルも、とてもアラフォーとは思えなかった。
ただ、こちらのお母様は家事の邪魔なのか、黒髪をゴムでしばっている。
服もみすぼらしい。
着古したワンピースのせいか、その美貌が色あせて見えた。
「あの...ただいま戻りました...お母様...」
マコリンが様子を窺うように挨拶をすると、
「あら、なに?今日はお嬢様の真似?変なマコリン!」
お母様はそう言って笑う。
(あっ!可愛い!)
マコリンは思わず見とれる。
向こうのお母様は、あまり顔を崩さないので、笑った顔は新鮮だったし、何より愛嬌があって可愛らしかった。
(向こうのお母様も、こんなだったらいいのに...)
マコリンがじっとお母様を見つめていると、
「どうしたの?」
お母様は不思議そうな顔をしている。
「ああ、今日のマコリンはちょっと変なんだ!学校で何かあったんだろうか?」
お父様が心配そうに口にすると、
「...そう...マコリンもいろいろ大変なのね!ゴメンね!家にもっとお金があったら...」
お母様は悲しそうな顔になる。
「ううん!こっちのお父様もお母様も素敵よ!」
マコリンがにっこり笑って、そう言うと、
「ホントにどうしちゃったのかしら?...まあ、いいわ!そんなとこで立ってないで早く入りなさい!」
お母様は照れたのか、少し頬を染めると、奥へと戻っていく。
「ああ、疲れた!...何してるんだい?そんなところでぼおっとして!...入らないのかい?」
お父様も靴を脱ぐと、家の中に足を踏み入れた。
「は、はい!」
マコリンも慌てて入ろうとしたが、
(いけない!靴は脱がなきゃ!)
土足だったことに気づくと、足を戻し、靴を脱いでから、廊下を歩いていくのだった。
☆彡彡彡
2階にある自分の部屋の前にやってきたマコリン。
居間でおろおろしていると、お母様が教えてくれた。
<ガタガタ!>
そして、相変わらず建て付けの悪い、ふすまを開けると、
「狭い...それに何もないわね...」
四畳半の和室に、テーブルが一つにタンスが一つ。
<ガラッ!>
マコリンは押し入れを開ける。
中には布団一式が入っていた。
「なるほど...部屋が狭いから、布団は寝る度に敷くのね!庶民の知恵かしら?」
一人で納得している。そして、
<カチャ!>
今度はタンスを開けてみる。
「これだけ...」
中にはつぎはぎの入ったワンピースが2着だけ。
制服の予備は、もちろん、ない。
「さ、さすがに下着は!」
マコリンは下の引き出しを開けるが、下着は1セットしかなかった。
「こ、これって...」
マコリンの表情が曇る。
下着を交換すると、使用済みの下着の洗濯が終わるまで、新しい下着はつけれない。
また、下着を選ぶ余地もなかった。
「・・・」
替えの下着を手に取ってみる。
「...可愛くない...」
安物の無地の白の下着だ。
更に、ところどころほつれている。
「中は...」
マコリンが中を広げてみると、
「うっ!」
あそこが当たる部分に、大きなシミができていた。
「あ、明日はこれをはいて学校へ...」
マコリンの頭が真っ白になる。
「と、とりあえず!」
マコリンはワンピースに着替えようと制服を脱ぐ。すると、
「やだ!」
ブラウスを脱いだ瞬間に、かすかな汗のにおい。
「お風呂入らなきゃ!」
マコリンはほのかに頬を染めると、ワンピースを被り、下へと降りていった。
☆彡彡彡
「お母様!お風呂に入りたいのですが...」
マコリンがお母様に声をかける。
するとその答えは、思いもよらないものだった。
「あら、今日は土曜だったかしら?」
「えっ?!...金曜ですけど、それが何か?」
マコリンは戸惑いながらも、その問いに答えると、
「お風呂の日は土曜でしょ!もう!マコリンったら!...今日は本当に変ね!」
お母様はそう言って笑った。
「えっ?!」
マコリンは意味が分からず、考え込んでしまう。
(ま、ま、まさか、お風呂は週に1回とか?!...い、いくらなんでもそれは...)
そして最後の望みを託すように、お母様に聞いた。
「ま、まさか『一週間のうち、お風呂に入るのは土曜だけですよ~~~!』なんて言いませんよね?!」
マコリンの必死な目を見たお母様は、優しく微笑みかける。
「そうは言わないわ!」
「良かっ...」
マコリンがホッとしていると、
「土曜以外はお風呂に入る余裕は、家にはないのよ!」
お母様は、可愛らしくウインクをしながら口にする。
「そんな~~~~~~~~!!同じことじゃな~~~い!!」
絶望の色を浮かべているマコリン。対して、
「なに?今更...大丈夫よ!今までだってそうしてきたでしょ!」
お母様は平然としている。
「だ、だって、体、ベトベトで気持ち悪いし、に、においだって...」
マコリンが顔を染めながら、口にした言葉に、
「大丈夫よ!」
お母様はそう言いながら、マコリンの首元に鼻を近づける。
「キャッ!」
思わず、距離をとったマコリンだったが、
「あら、先週から入ってないわりにはきれいね...とにかく大丈夫だから!...マコリンもそういうことが気になる年になったのね!」
お母様は微笑ましそうに笑っていた。
「そ、そ、それは、私は昨日、お風呂に入ったからで...ってなんでもない!!」
マコリンが失言に気づき、慌ててお母様の顔色を窺うが、
「とにかく明日には入れるから!...後1日の我慢よ!」
お母様は意味が良く分からなかったのか、マコリンの言葉をスルーすると、にっこり笑ったのだった。
(し、仕方ないわね!...でも下着だけは...)
今日は長距離走だったので、下着が汗で濡れて、すごいことになっている。
もう乾いているが、風呂に入れないのなら、せめて下着は替えたい。
「じゃ、じゃあ、下着の洗濯だけでも...」
マコリンがお願いすると、
「だから、洗濯はお風呂の残り湯を使うから、土曜の夜に1回だけよ!...どうしたの?今日は?」
お母様は、しれっと聞き捨てならないことを口にする。
「・・・」
ポカンと口を開け、途方に暮れるマコリン。
「確かに、1週間、はきっぱなしは女の子にとってはつらいわね!...でもごめんなさいね!まとまったお金が入ったら、下着、買ってあげるから!」
その様子を見て、申し訳なさそうな顔をするお母様。
「そ、それっていつ...」
マコリンが問いかけるが、
「さあ...お父さんが契約をとれてからね!」
お母様は、ハッキリした日にちは示せなかった。
「どうしても気になるのなら、もう1つのに替えなさい!その代わり、洗濯中は下着がなしになるけど...」
そしてマコリンにそう提案してくる。
「い、いい!!」
真っ赤になって拒否するマコリン。
(ど、どうしよう...明日も学校があるのに...)
貧乏のつらさを、イヤというほど思い知るマコリンだった。
マコリンのお母様が玄関までやってくる。
(あっ!頭、しばってる...)
お母様はマコリンと一緒で黒髪。
中年になっても色あせない、ツヤのある髪をロングのストレートにしていた。
美しい風貌と抜群のスタイルも、とてもアラフォーとは思えなかった。
ただ、こちらのお母様は家事の邪魔なのか、黒髪をゴムでしばっている。
服もみすぼらしい。
着古したワンピースのせいか、その美貌が色あせて見えた。
「あの...ただいま戻りました...お母様...」
マコリンが様子を窺うように挨拶をすると、
「あら、なに?今日はお嬢様の真似?変なマコリン!」
お母様はそう言って笑う。
(あっ!可愛い!)
マコリンは思わず見とれる。
向こうのお母様は、あまり顔を崩さないので、笑った顔は新鮮だったし、何より愛嬌があって可愛らしかった。
(向こうのお母様も、こんなだったらいいのに...)
マコリンがじっとお母様を見つめていると、
「どうしたの?」
お母様は不思議そうな顔をしている。
「ああ、今日のマコリンはちょっと変なんだ!学校で何かあったんだろうか?」
お父様が心配そうに口にすると、
「...そう...マコリンもいろいろ大変なのね!ゴメンね!家にもっとお金があったら...」
お母様は悲しそうな顔になる。
「ううん!こっちのお父様もお母様も素敵よ!」
マコリンがにっこり笑って、そう言うと、
「ホントにどうしちゃったのかしら?...まあ、いいわ!そんなとこで立ってないで早く入りなさい!」
お母様は照れたのか、少し頬を染めると、奥へと戻っていく。
「ああ、疲れた!...何してるんだい?そんなところでぼおっとして!...入らないのかい?」
お父様も靴を脱ぐと、家の中に足を踏み入れた。
「は、はい!」
マコリンも慌てて入ろうとしたが、
(いけない!靴は脱がなきゃ!)
土足だったことに気づくと、足を戻し、靴を脱いでから、廊下を歩いていくのだった。
☆彡彡彡
2階にある自分の部屋の前にやってきたマコリン。
居間でおろおろしていると、お母様が教えてくれた。
<ガタガタ!>
そして、相変わらず建て付けの悪い、ふすまを開けると、
「狭い...それに何もないわね...」
四畳半の和室に、テーブルが一つにタンスが一つ。
<ガラッ!>
マコリンは押し入れを開ける。
中には布団一式が入っていた。
「なるほど...部屋が狭いから、布団は寝る度に敷くのね!庶民の知恵かしら?」
一人で納得している。そして、
<カチャ!>
今度はタンスを開けてみる。
「これだけ...」
中にはつぎはぎの入ったワンピースが2着だけ。
制服の予備は、もちろん、ない。
「さ、さすがに下着は!」
マコリンは下の引き出しを開けるが、下着は1セットしかなかった。
「こ、これって...」
マコリンの表情が曇る。
下着を交換すると、使用済みの下着の洗濯が終わるまで、新しい下着はつけれない。
また、下着を選ぶ余地もなかった。
「・・・」
替えの下着を手に取ってみる。
「...可愛くない...」
安物の無地の白の下着だ。
更に、ところどころほつれている。
「中は...」
マコリンが中を広げてみると、
「うっ!」
あそこが当たる部分に、大きなシミができていた。
「あ、明日はこれをはいて学校へ...」
マコリンの頭が真っ白になる。
「と、とりあえず!」
マコリンはワンピースに着替えようと制服を脱ぐ。すると、
「やだ!」
ブラウスを脱いだ瞬間に、かすかな汗のにおい。
「お風呂入らなきゃ!」
マコリンはほのかに頬を染めると、ワンピースを被り、下へと降りていった。
☆彡彡彡
「お母様!お風呂に入りたいのですが...」
マコリンがお母様に声をかける。
するとその答えは、思いもよらないものだった。
「あら、今日は土曜だったかしら?」
「えっ?!...金曜ですけど、それが何か?」
マコリンは戸惑いながらも、その問いに答えると、
「お風呂の日は土曜でしょ!もう!マコリンったら!...今日は本当に変ね!」
お母様はそう言って笑った。
「えっ?!」
マコリンは意味が分からず、考え込んでしまう。
(ま、ま、まさか、お風呂は週に1回とか?!...い、いくらなんでもそれは...)
そして最後の望みを託すように、お母様に聞いた。
「ま、まさか『一週間のうち、お風呂に入るのは土曜だけですよ~~~!』なんて言いませんよね?!」
マコリンの必死な目を見たお母様は、優しく微笑みかける。
「そうは言わないわ!」
「良かっ...」
マコリンがホッとしていると、
「土曜以外はお風呂に入る余裕は、家にはないのよ!」
お母様は、可愛らしくウインクをしながら口にする。
「そんな~~~~~~~~!!同じことじゃな~~~い!!」
絶望の色を浮かべているマコリン。対して、
「なに?今更...大丈夫よ!今までだってそうしてきたでしょ!」
お母様は平然としている。
「だ、だって、体、ベトベトで気持ち悪いし、に、においだって...」
マコリンが顔を染めながら、口にした言葉に、
「大丈夫よ!」
お母様はそう言いながら、マコリンの首元に鼻を近づける。
「キャッ!」
思わず、距離をとったマコリンだったが、
「あら、先週から入ってないわりにはきれいね...とにかく大丈夫だから!...マコリンもそういうことが気になる年になったのね!」
お母様は微笑ましそうに笑っていた。
「そ、そ、それは、私は昨日、お風呂に入ったからで...ってなんでもない!!」
マコリンが失言に気づき、慌ててお母様の顔色を窺うが、
「とにかく明日には入れるから!...後1日の我慢よ!」
お母様は意味が良く分からなかったのか、マコリンの言葉をスルーすると、にっこり笑ったのだった。
(し、仕方ないわね!...でも下着だけは...)
今日は長距離走だったので、下着が汗で濡れて、すごいことになっている。
もう乾いているが、風呂に入れないのなら、せめて下着は替えたい。
「じゃ、じゃあ、下着の洗濯だけでも...」
マコリンがお願いすると、
「だから、洗濯はお風呂の残り湯を使うから、土曜の夜に1回だけよ!...どうしたの?今日は?」
お母様は、しれっと聞き捨てならないことを口にする。
「・・・」
ポカンと口を開け、途方に暮れるマコリン。
「確かに、1週間、はきっぱなしは女の子にとってはつらいわね!...でもごめんなさいね!まとまったお金が入ったら、下着、買ってあげるから!」
その様子を見て、申し訳なさそうな顔をするお母様。
「そ、それっていつ...」
マコリンが問いかけるが、
「さあ...お父さんが契約をとれてからね!」
お母様は、ハッキリした日にちは示せなかった。
「どうしても気になるのなら、もう1つのに替えなさい!その代わり、洗濯中は下着がなしになるけど...」
そしてマコリンにそう提案してくる。
「い、いい!!」
真っ赤になって拒否するマコリン。
(ど、どうしよう...明日も学校があるのに...)
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