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Panic 2. マコリン

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「ポワンはね!召喚した仲間に名前をつけてるの!...どの子にもポワンと一緒で、必ず『ン』をつけてるんだけど...マコちゃんには『ン』がない!!」
ポワンが悲しそうな顔で叫ぶ。
「ちょっと待って!『召喚』って...どういうこと?」
真子まこが混乱しながら問いつめるが、
「マコちゃん!マコちゃんの名前に『ン』をつけていい?」
そんな真子などお構いなしに、ポワンが尋ねてくる。
「そんなのどうでもいいわ!それより...」
真子がそう答えると、
「やった!いいんだ!...そしたら...」
ポワンはそれを聞くと、大喜びであだ名を考え始める。
「人の話を聞かない子ね!...まあ、いっか!」
うれしそうなポワンの顔を見て、真子がほっこりしていると、
「そうだ!マコちゃんの『マ』と『コ』の間に『ン』を入れて...マン...」
「ダメ~~~~~~!!」
ポワンの言おうとしたあだ名を、真子は大声を出して遮った。
「どうしたの?」
真っ赤になって慌てている真子に、ポワンは不思議そうに問いかける。
「そ、それはNGワードなの!それをみんなの前で口にしたり、みんなの目に触れる場所に書いたりしちゃいけないの!」
そう説明する真子だったが、
「でも、ここにはポワンとマン...」
「わ~~~~!!」
また大声でポワンの発言を邪魔した真子は、更なる説得を試みる。
「だ、誰が見てるか分からないでしょ!例えばそこにいる君とか!」
真子は画面の外を指差す。
「...どこ、指してるの?」
ポワンは真子の言動の意味が分からないようだったが、
「とにかく、お願いだからそれだけはやめて!!」
真子の必死な顔を見ると、
「...分かった...じゃあ...」
また新たなあだ名を考え始めたようだった。
(良かった...)
一安心の真子。
(まさか、私の名前にそんなトラップが仕掛けられていたとは...恨みますわ!お父様!)
真子は初めて、自分の名前に負の感情を持ったのだった。
そうしていると、
「じゃあ、マコリンは?マコリンがいい!!」
ポワンは笑顔で提案してくる。
「マコリン~~~~~?」
(子供っぽくて、超絶美少女の私には似合わないわね...でも...)
あまり乗り気ではない真子だったが、頭の中にさっきのとんでもないあだ名が思い浮かぶ。
(また、変なあだ名をつけられるよりは...ま、まあ、可愛いといえば可愛いあだ名よね!)
そう思い直した、真子ことマコリンは、ポワンに微妙な笑みを返した。
「そ、それでいいわよ!」
「わ~~~~~い!マコリン、よろしくね!」
大喜びのポワン。そんなポワンにマコリンは問いかける。

「ところでポワン!さっき、『召喚』って言ってたけど...」
それはマコリンにとって、聞き逃せない言葉だった。
「うん!言ったよ!マコリンはポワンが召喚したんだ!」
ポワンは何事もないかのように口にする。そんなポワンに、
「ま、まさか『ここは異世界で、私は召喚されてこの地に呼ばれてきました~~~』なんて言わないわよね!」
マコリンはにっこりと笑って話しかけた。
「言う!ポワンにとってはマコリンのいた世界が異世界だけどね!」
そう微笑み返すポワンに、
「また~~~~!ポワンちゃんったら、冗談が上手なんだから~~~!窓の外を見れば、いつもの景色が...」
歩きだすと、木製の開き窓から身を乗り出し、外を見渡すマコリン。
「・・・」
そこからは家庭菜園と、その向こうに、どこまでも広がる森林しか見えなかった。

菜園では、小人の姿をした妖精たちが、作物の手入れに余念がなかった。
「あっ!あれは『コビトン』!『童話の世界』から召喚したんだ~~!人のお手伝いが大好きなんだよ~~~!」
いつの間にか隣に来ていたポワンが、得意げに話す。

<キ~~~~~~!!>
甲高い声が、空から聞こえた。
「なに?」
マコリンが上を見上げると、そこには小型のドラゴンが。
「あれは『コドラン』!『ドラゴンの国』から召喚したの!一緒にお空を飛べるんだよ~~!...後、動物や魚を捕まえてきてくれるの!」
またポワンが説明する。そして、

<ズシ~~~~ン!...ズシ~~~~ン!...>
大きなロボットのようなものが、遠くから木を担いで歩いてきた。
「キャ~~~~~!!」
マコリンが悲鳴を上げていると、
「大丈夫だよ!あれは『ゴレムン』!『機械の国』から召喚したの!なんか『えーあい』搭載で高性能なんだって!」
ポワンは安心させるように一声かけると、言葉の意味を分かっているのか怪しい解説をした。

「他にも『ファンタジーの世界』から召喚した、料理の得意な『オークックン』でしょ!『おとぎ話の国』からは裁縫の得意な『オリヅルン』!」
ポワンが次々と召喚した仲間たちを紹介していく。

「そ、そう...使用人がたくさんいていいわね!...うちにも負けないわ!」
マコリンはまだ、信じたくないようだった。
そうつぶやきながら、フラフラと室内に戻っていくと、ポワンが追いかけてきて言った。
「でも、話し相手がいなくて寂しかったの!...だからマコリンの召喚に成功した時は、本当にうれしかったんだよ~~~!!」
ポワンの心からの笑顔に、
(か、可愛い!)
心をわしづかみにされたマコリンは、つい、余計なことを口にしてしまう。
「私だってポワンに会えてうれしいわよ!可愛いし、お胸も大きいし、あそこも可愛かったな~~~!!」
その言葉に、
「あそこって!!...マコリン、見たんだ~~~~!!」
ポワンが真っ赤になって、スカートの裾を押さえている。
「ゴ、ゴメン...だって下着もつけずに目の前で跳び上がってるんだもん!」
マコリンが失言に気が付いて、言い訳をしていると、
「マコリンだけずるい!...ポワンだってマコリンの見たい!」
ポワンはそう言うと、いきなりマコリンのスカートをめくりあげた。
「キャ~~~~~!!」
マコリンは悲鳴を上げ、スカートを押さえつけるが、ポワンは顔を中に突っ込んでしまっていた。
「あ~~~~~!こんなのはいてる!...脱いで!見えないじゃない!」
ポワンはマコリンの下着に手をかけると、思いっきり、下へと引っ張る。
「ダ、ダメ~~~~~!!」
マコリンは必死に下着を押さえて抵抗するが、少しずつ、ずれていってしまう。
そして、そこが姿を現し始めたその時!
<ゴツン!!>
鈍い音がポワンの頭から聞こえた。
「痛~~~~~!!」
頭を押さえて涙目のポワン。
「もう!そんなことするからよ!少しは反省しなさい!!」
マコリンは腰に手を当てお冠だ。
頭からはツノが、口からはキバが生えていた。

「マコリンは見たくせに...」
口を尖らせているポワンに、
「ポ、ポワンのは可愛いからいいのよ!...私のは...」
マコリンの顔が真っ赤になるが、
「そんなことない!きっと綺麗!!」
ポワンは真面目な顔で断言する。
「・・・」
それを聞いたマコリンは、少し頬を染めていたが、
「そ、そのうちね!」
そう口にするだけだった。
「...うん...」
恥ずかしげにうなずいたポワン。
しばらく二人の間に沈黙の時間が流れたが、ふと、マコリンが言った。

「で、元の世界に帰るにはどうしたらいいの?」
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