バスト・バースト!

世々良木夜風

文字の大きさ
上 下
20 / 45

Burst20. ワガマーマで情報探し

しおりを挟む
「どうやら街のほとんどがこっちのエリアに含まれているようだ」
マリアとグレースはとりあえず、フェンス沿いに歩いて、二つの区域の境界を確かめていた。
「そうですね。観光スポットも全てここにありますし、ショッピング街もこちら側です。こちらに入れる人は向こうのエリアに行く必要はないでしょう」
「だったら、Aカップ以下の女性はどうやって暮らしているんだ?」
「あまり考えたくはありませんが、劣悪な環境で、細々と暮らすしかないでしょう...」
「どうしてそんな政策を...Aカップ以下の女性へのいやがらせとしか思えない!」
「何か、魔物が生み出される理由と正反対の嫉妬が働いているような気もしてきます」
「あの『魔物は恵まれなかった女性の大きな胸に対する嫉妬から生まれる』ってやつか...」
「しかし、何故そんな嫉妬を...もちろん小さな女性が劣っているわけではありませんが、ここはそういう世界観のはずです」
「なんだ?その『世界観』ってやつは...」
「中にいる私たちには変えることのできない決まり事です」
「意味が分からないのだが...」
「私も意味が分かりません。誰かに言わされている気分です」
「とりあえず、いろんな人に聞いてみるしかないか...」
これ以上、追及されると困る誰かはグレースに話題を変えさせた。

それから、マリアとグレースは様々な人に話しかけた。
あちこちにいる警備員や店員さん。冒険者などにも話を聞いてみた。
その結果、分かったことは、
「この国の王様、ワガマーマ公には二人の王子と双子の姫がいる」
「双子の姫の姉の名は『アネノ・ワガマーマ』。『女権担当大臣』として、女性の権利の拡充に務めてきた」
「双子の姫の妹の名は『イモ―ト・ワガマーマ』。最近、隣国の王子様の元へ輿入れしたらしい」
「イモ―ト姫が嫁いだ後、アネノ姫のAカップへの態度が急変した」
「最初は自分の周りから遠ざけるくらいだったが、だんだんエスカレートしていき、ついにはワガマーマ公の反対を押し切り、『貧乳隔離政策』を導入してしまった」
「王宮の人間はなんとか撤回させたいらしいが、妙案がない」
ということだった。
ちなみにオーパイに関する情報は全く得られなかった。みんな、名前すら初耳という顔だった。

「どうやら、イモ―ト姫様の結婚がアネノ姫様の乱心の原因らしいですね。なんとか、ご面会できればいいのですが...」
「マリア師匠はできないのか?たしか、エライヒト家は上級貴族だと聞いたが...」
「私一人では無理です。お父様がいれば何とかなったでしょうが...それに儀礼用の服を持参していません。そのような状況で面会するのは不敬です」
「難しいものだな...それでは心が痛むが、オーパイの情報をもう少し探って、得られなければ早々に退散するしかないな」
「そうですね。オトメさんは何かつかめたでしょうか...」
「気になるか?」
「あのような環境では、まともな宿も取れないでしょう...今から道の駅に戻るのも難しいですし、心が痛みます」
「いっそのこと男装させればどうだ?」
「オトメさんの男装姿...それも素敵です。でもあの可愛らしいお顔はどうしても隠せないでしょう...それにもし他の女性に気に入られでもしたら!」
マリアの顔が陶酔から困惑、そして怒りへと変わる。
「そ、そうだな。さっさと情報を集めて退散しよう!そうしよう!」
グレースはマリアの背中を押して宿へと向かっていった。

・・・

一方、オトメは、なかなか情報が得られないでいた。
貧乳エリアは活気に乏しく、みんな暗い顔をしている。
話しかけても逃げられることも多かった。
(う~~ん、うまくいかないなぁ~。マリアちゃんたちはどうしてるかな...)
そんなことを考えていると、裏通りで一人ぽつんと座っている老婆を見かけた。
「こんにちは!こんなところで一人、どうしたの?」
オトメは気になって話しかけてみた。すると、
「おぉ、こんにちは。わたしゃ、息子夫婦が向こうに住んでいるので、何もやることがないんだよ。こんな年寄りまで胸の大きさで分けるとはねぇ...」
老婆はそう言うと、大きくため息を吐いたが、あまり悲壮感は感じられなかった。
「元気そうだね!良かった!みんな暗い顔してるから...」
「そりゃそうもなるさ。全く、ワガマーマの娘さんたちは問題児ばっかりだねぇ」
「娘さん?」
「知らないのかい。こんなお触れを出したのはワガマーマ公の娘だよ。ホントに困ったもんだ。そういや、ワガマーマ公のお母ちゃんもおてんばだったねぇ...」
「へぇ、それって、お婆さんの若いときの話でしょ?何かやらかしたの?」
「それが、この街にやってきた『ユメミル』とかいう胸が無いのに冒険者やってる変な子について、冒険に出ちゃったんだよ。城の財宝を軍資金にしてね」
「えっ!お姫様がそんなことしていいの?!」
「もちろん、大騒ぎさ!周りの国にまで探偵を派遣して捕まえようとしたんだけど、逃げ足が速くてねぇ...」
「それでどうなったの?」
「結局、『オーパイ』とかいう胸を大きくしてくれるとかいう、怪しげな街までそのユメミルと行って帰ってきたんだよ」
「オーパイ!!その話、詳しく聞かせて!!」
「えらく食いつきがいいねぇ。もしかしてあんたもオーパイで胸を大きくしてもらうつもりかい?」
「そう!正確には『胸の大きさを大きくも小さくもできる』んだけど、私は大きくしてもらうため、仲間は小さくしてもらうためにオーパイを探してるの!」
「おやまぁ、そんな夢物語を信じてるのがまだ、いたなんて...」
「夢物語じゃないよ!旅の途中で胸を大きくしてもらったお婆さんにも出会ったんだから!」
「お婆さんねぇ...そのユメミルっていうヤクザみたいな奴じゃないだろうねぇ?」
「ユメミル?違うよ。確か『ロスト』って言ってた。でも若い頃はガラ悪かったみたいだけど...」
「そんなのがユメミル以外にもいたとはねぇ...」
「そのユメミルって人はどうなったの?今もいるの?」
「それがお姫様は一人で帰って来たんだよ。ユメミルの姿はどこにもなかった...あんなに寂しそうなお姫様を見たのは初めてだったよ。何しろ、お姫様のおてんばは周りの国でも有名だったからねぇ...そのユメミルと一緒に悪さもしてたらしいよ!」
「そのお姫様は?今でもお城にいるの?」
「それが最近、亡くなったんだよ...噂によると最後までユメミルを待っていたとか...ユメミルって何者だったんだろうねぇ...」
「そうかぁ...じゃあ、その話を詳しく知ってる人はいないんだね...」
「そうさねぇ、お姫様はお姫様を可愛がっていたからお姫様なら知ってるかもねぇ...」
「えっ、『お姫様』ってだれがだれ?」
「あぁ、悪いねぇ。昔、ユメミルと旅に出たのが亡くなった『オテンバ』姫様。可愛がっていたのが、今、ろくでもないお触れを出している『アネノ』姫様さ」
「名前までオテンバ...」
「何かおかしいかい。わたしゃ、普通の名前だと思うけどねぇ...」
「いや、おかしいのは私かも...何故か名前を聞くと、その人の個性が分かるの」
「そりゃ、特殊能力だねぇ...もしかして『魔法』かい?」
「えっ!お婆さん、『魔法』知ってるの?!」
「こりゃ、失敗した。今のは聞かなかったことにしておくれ!知られたら牢屋にぶちこまれるからねぇ...あんたも気軽に話すんじゃないよ!」
「ゴメン。分かった。ちなみにこれは『』じゃないよ!勘みたいなものかな!」
「そうかい。まぁ、いいさ。さっきの話だけどアネノ姫様なら何か知ってるかもねぇ...でもわたしら庶民は話すどころか会うことも難しいよ」
「ううん!話を聞けただけでも良かった!ありがとう!お婆さん!」

(よし!オーパイの情報ゲットしたよ!マリアちゃんなら貴族だからそのお姫様に会えるかも!明日、聞いてみよう!)
そう考えながら、暗くなってきたので、宿を探すことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流美と清華の下着に関するエトセトラ

世々良木夜風
恋愛
流美は可愛い女子高生。 幼馴染の清華とは大の仲良しです。 しかし、流美には秘めた思いが。 美人でいつも自分を守ってくれる清華のことが大好きでたまらないのです! そんな流美には大事な思い出が。 幼い時に清華に助けてもらった時に言った言葉。 「大人になったらお嫁さんになってあげるね!!」 当然、清華は忘れていると思っていたのですが... これはそんな二人が、下着姿を見せ合ったり、お互いに下着のにおいを嗅ぎ合ったりしながら絆を深めていく物語。 二人は無事「両想い」というゴールに辿り着けるのでしょうか? えっ?!順序が逆?! そんな細かいことは放っておいて、走り出してしまったちょっとアブノーマルな恋愛列車。 無事、幸せという終着駅に到着することを祈りましょう!! ※全16話の短めの連載です。お気軽にどうぞ。 〇小説家になろう様にも掲載しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

美咲の初体験

廣瀬純一
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」 そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。 明日は来る 誰もが、そう思っていた。 ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。 風は時の流れに身を任せていた。 時は風の音の中に流れていた。 空は青く、どこまでも広かった。 それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで 世界が滅ぶのは、運命だった。 それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。 未来。 ——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。 けれども、その「時間」は来なかった。 秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。 明日へと流れる「空」を、越えて。 あの日から、決して止むことがない雨が降った。 隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。 その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。 明けることのない夜を、もたらしたのだ。 もう、空を飛ぶ鳥はいない。 翼を広げられる場所はない。 「未来」は、手の届かないところまで消え去った。 ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。 …けれども「今日」は、まだ残されていた。 それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。 1995年、——1月。 世界の運命が揺らいだ、あの場所で。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...