伝説の後始末

世々良木夜風

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Legend 22. 宝箱の中身は

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「まあ、簡単にいやぁ、どんな宝箱でも開けることができるんだ!」
ミミックがミミック族の秘密とやらを話す。
「本当に簡単ね...でも、それってすごい能力なんじゃ...」
ツィアがミミックの力に驚いている。
「どうだ?少しは俺様を見直したか?」
ミミックが偉そうな顔をするが、
「でも、それ、バラしちゃって良かったの?もし他の人間に知られたら...いえ、魔物だって悪用するかもしれないわ!」
ツィアは心配そうにしている。
「そういやぁそうだな...これは秘密ってことで...」
ミミックはやっぱり不安になったようだった。
「...あなた、大丈夫?可愛いからっていろんな子に話してるんじゃないの?」
ツィアが念のため、確認すると、
「バカにするな!そこのカワイ子ちゃんは特別だ!他の子に話したことはねぇよ!」
ミミックはそう言って怒り出す。
「ま、まあ、ハルほど可愛い子はいないことは認めるけど...」
ツィアが同意していると、
「ツィ、ツィアさん!!」
ハルは真っ赤になって俯いてしまった。
「あ、あの!...こ、こ、これは深い意味はなくて...ありのままを言っただけというか...」
ツィアが自分の失言に真っ赤になって言い訳していると、
「う、うれしいです...ツィアさんにそう言ってもらえて...それと...ツィ、ツィアさんだって世界一、綺麗ですよ!」
ハルは赤く染まった顔でそう言った。
「あ、ありがと...」
頬を染め、俯き合っているツィアとハル。

「あ~~~あ!見てらんねぇな!...とにかくその宝箱を開ければいいんだな!...このことはくれぐれも人にはしゃべるなよ!」
そんな二人に、呆れたように声をかけたミミックだったが、気を取り直すと、開ける前に念を押す。
「分かった!絶対、秘密にする!」
「私もしゃべりません!」
「ワタシモダ!」
そこにいる皆が約束したのを確認したミミックは、鍵のかかった宝箱に向け、命令した。
「開け!」
<パカッ!>
その声と共に宝箱が開く。
「「おおぉぉ~~~~~!!」」
皆が感心していると、
「へへ!...で、中身はなんなんだ?」
少し照れくさそうに笑ったミミックがそう聞いてきた。
「どれどれ?」
その言葉を聞いたツィアが中身を取り出すと叫んだ。
「これは...『水中用マスク』!」
「なんですか?それは?」
するとハルが不思議そうに聞いてくる。
「これって鼻から口を覆う形になってるでしょ?」
「はい」
ハルがうなずくと、ツィアは説明を続けた。
「これを通して水を空気に変えることができるのよ!つまり...」
「つまり?」
まだ、ピンとこない様子のハルにツィアが言う。
「水中でも息ができるの!...水中にあるアイテムを探したり、ダンジョンを攻略する際には必須ね!」
するとハルは、
「えっ?!人間は水中じゃ息ができないんですか?」
そう言って驚いている。
「えっ?!魔物って水中でも息ができるの?」
逆にツィアが『信じられない』といった顔で尋ねると、
「息...というか魔物は魔力を吸い取ってますので...水中の魔力を取り込めばいいだけです!」
ハルがそう答えた。
「そう...魔物っていろいろ、便利ね!...でも、ならなんでこんなアイテムを守ってるのかしら...」
ツィアが首を傾げていると、
「そりゃ、人間に余計なことをさせないために決まってるだろ!魔物だってバカじゃないんだぜ!」
とミミックが言う。
「じゃあ、これを作ったのは人間?」
ツィアが聞くと、
「さあ...俺は知らねぇアイテムだな!」
ミミックはそう答えた。
「ふ~~~~ん...数が少なくてパーティ分、集めるのが大変なんだけど、今は作られてないのかしら...」
ツィアが独り言のように言うと、
「だから知らねぇって言ってんだろ!自分で考えろ!」
ミミックに怒られてしまった。
「まあいいわ!とりあえず使う予定はないけど、持っとくと便利よね!ありがたくいただいておくわ!」
ツィアはそれ以上、考えるのはやめたようだ。そのアイテムをしまう。
そしてゴーレムに尋ねた。

「どう?もう守る呪縛から解かれた?」
するとゴーレムは、
「ソノヨウダ!カンシャスル!...デハ、ワタシハ、マカイニカエル!」
そう答えると魔界に帰ろうとする。そんなゴーレムを、
「ちょっと待て!俺を乗せてけ!」
ミミックが呼び止めた。すると、
「イイダロウ!オマエモ、ワタシヲタスケテクレタ、ヒトリダ!オンガアル!」
ゴーレムはそう言って、ミミックを肩に乗せる。
「良かったですね!これで早く魔界に帰れますね!」
ハルが微笑むと、
「カワイ子ちゃんは...そいつと一緒に行くんだな...」
ミミックはツィアを一目、見るとハルに尋ねた。
「はい!」
ハルが笑顔で答えると、
「で、どうするんだ?魔界で一緒に暮らすのか?」
ミミックがそう聞いてくる。
「「えっ?!」」
思わず顔を見合わせるツィアとハル。
(そ、そういえば魔界への扉まで行った後、ハルは魔界に帰っちゃうのよね...その時...私は...)
(わ、私が魔界に行っちゃったら、ツィアさんのお世話ができなくなっちゃいます!...ど、どうしましょう...)
二人は考え込んでいるようだ。
「なんだ、そんなことも考えてないのか!...まあ、魔界に着くまでに考えとくんだな!行こうぜ!ゴーレム!」
「デハ、サラバダ!」
そう言い残すとミミックとゴーレムはその場を去っていった。
(そ、そうね!まだ魔界に着くまでには時間があるわ!その時までに考えとけば...)
(と、とりあえず、ツィアさんのお世話を頑張りましょう!後のことはその時です!)
二人はミミックの言う通り、結論を後回しにしたのだった。

☆彡彡彡

<チャプッ!>
風呂場のお湯が跳ねる。
ツィアは浴槽に体を横たえると今日のことを考えていた。
『妬いてるんですか?』
ミミックと出会った時に聞かれたハルの言葉。
「そ、そんな...私がハルになんて...でも...ミミックがハルと話してるのを見てると...なんか無性にイライラしてきて...なんだったの?あれ...」
そして次に浮かんだ言葉は、
『わ、私!ツィアさんを!』
「何か思い切った様子だったな...なんて言おうとしたのかしら...咄嗟に聞いちゃいけない気がして誤魔化したけど...」
ツィアは自分が分からなくなっていた。その時、
「ツィアさん!」
浴室の外から声がかけられた。
「な、な、なに?ハル!」
思わず声が裏返ってしまうツィア。
そんなツィアにハルが言った。
「着替え、ここに置いときますね!...それと、こっちは洗濯しときます!」
「お、お願い...」
外でゴソゴソ、音がしていたが、やがてハルの気配が消える。
「私の脱いだ下着...ハルが洗濯してるのよね...」
ちょっとツィアの顔が赤くなった。
「そういえばエリザもサヨコにしか洗濯させなかったなぁ...きっとこんな気持ち...って違うわ!こっちは洗濯機があるから、いろいろ見られないし...その...シミとか...」
更にツィアの顔が赤くなる。
「それに...私、毎朝、ハルに下着姿、見せてるのよね...」
また、ツィアの顔の赤みが増す。
「最初は恥ずかしかったけど...ハルがうれしそうだから...その顔を見てる私もうれしくなって...って別に私は見られてうれしいわけじゃ!!」
ツィアの顔はもう耳まで真っ赤だ。
「...ハル...何がそんなにうれしいのかな?...私のことを...す、好きとか?」
『ボッ』とツィアは顔から蒸気が出たような錯覚に襲われる。
「そ、そんなわけないじゃない!...あれは...そう!きっと人間の下着に興味があるのよ!魔物は下着をつけないから...」
ツィアはそう口にして、なんとか心の中で高まる感情を抑えようとする。
「ま、まあ、いいわ!どうせ魔界に着いたらイヤでも別れて...」
そう考えるとどうしようもなく切なくなった。
「...ヤだな...もっと...一緒にいたい...えっ?!」
ツィアは自分の言葉に自分でビックリしていた。
「私、ハルともっと一緒にいたいの?...でも、どうすれば...」
その時、ツィアの頭に今日、手に入れた水中用マスクが思い浮かんだ。
「そ、そうだ!そういえばここは!...後でハルに聞いてみよ!...『うん』って...言ってくれるかなぁ...」
ツィアはいつになく落ち着かない様子で、早めに風呂を出たのだった。
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