彩り 〜青〜

ガタヤマ

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盛夏

双葉

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学校の校門を出ると

人影が見える。

気にせずに近づいてみると

佐助くんだった。

私は思わず驚き、引き返そうと思ったが

それはそれで可笑しいと思い、

そのまま何もなかったように

通りすぎた。

佐助くんも一度こちらを見たような

気がしたが、他人のように

すれ違った。



何もできなかった…

隣に佐助くんがいて

一緒に話しながら帰れたら

どれだけ幸せなのだろう。

帰るのが現実だった。

月の明かりと

ポツン、ポツンと頼りなく

光る街頭が薄っすらと

雪道を照らし、

一歩、一歩を踏み締めて帰宅した。




悴んだ手を

暖めようと白い息をかけても

なかなか暖まらず

自販機で買った暖かい紅茶花伝を

手に学校帰りにコンビニで

母を待っていた。

買い出しの手伝いだった。

スーパーへ買い物に行くと、

様々なチョコレートが

たくさん売り出している。

お店の中にもバレンタインの文字が

大きなポスターで貼り出されていた。

もうバレンタインか~

恥ずかしながら、

これまでバレンタインで

親以外の人にあげたことがなかった…

ポスターを見上げていると


「青彩、今年は誰かにあげるの?」


と母が質問してきた。


「えっ!なんでわかったの?」


不意打ちをくらって、少し驚いた。


「へぇ、誰だれ?」


興味津々に母が聞いてくる。


「佐助くんってわかる?」


「ごめん、知らない…」


そこから、佐助くんについて

少しだけ話をした。


「そうだったんだー!それはお礼しなきゃね!」


母はなんだか嬉しそうだった。



バレンタイン当日

学校はいつも通り登校日だ。

母が協力してくれたおかげで

見た目は、だいぶ整っている。

あとは、味だが少し心配だ。

学校に行くと

他の女子も先生にバレないように

隠しながら

バレンタインのチョコを

持ってきている。


「青彩、今日バレンタイン作ってきた?」


夏美が私の耳のそばで

コソコソと言ってきた。


「うん…」


「えっ!本命?誰に渡すの?」


「佐助くんに渡すつもり」


「佐助くん?あぁ、2組のね!」


なんとか知っていた

ぐらいの反応だった。


「確かサッカー部だっけ?」


「あっ、そうなんだ!」


私も今更ながら

サッカー部だと知ることになった。


「実は私もサッカー部の勇気くんに渡す予定なんだよね!」


クラスの人気者だ。


「夏美もやるなー!じゃあ、一緒に渡しに行かない?」


「しょうがないなー、じゃあ、部活終わったら行こうか!」


「うん!」


心強い仲間が加わって

私は少しほっとしていた。


バスケの部活が終わり、

サッカー部の人たちも同じぐらいに

終わっていた。

私は夏美と共に

校門を出て、少し先に進んだ

コンビ二の手前で

待っていることにした。

こんなにも人って緊張するんだぁ

と心臓がいつもより早く

波打つのを感じながら

これから全校生徒の前で、

告白をするかのような

今すぐにでも逃げ出せるなら

この場から逃げ去りたい気持ちだった。


「来たよ!行くよ!」


夏美が覚悟を決めて

私の腕を引っ張りながら

半ば強制的に連れていかれた。


だけど、

そこに佐助くんの姿はなかった。


「どした?2人して。」


勇気くんが少し驚いた表情をしている。


「おつかれ!今ちょっと時間ある?」


「おう、いいけど」


「今日バレンタインでしょ。これ良かったら食べて。」


恥ずかしがりながらも

行動を起こした夏美に

私も行動しよう!と心動かされた。


「俺に?ありがとう。」


勇気くんも

少し照れくさそうに受け取る。

次は私の番だ。と覚悟を決めた。


「佐助くんは今日いる?」


「あぁ、佐助は今日、部活中にチームメイトとぶつかって、足首折れたかもしれないんだよ。だから、病院に行くって帰ったよ!」


「えっ!大丈夫なの?」


「佐助なら大丈夫!あいつはつえーからさ!」


「佐助に渡しものだった?」


「うん」


「明日、病院に行こうと思ってるから渡しておこうか?おそらく少しの間、入院かもしれないから。」


「そうなんだ…お願いしてもいいかな?」


「オッケー!任せて!」


勇気くんにチョコを渡した。

勇気くんと夏美はそのまま一緒の

方向で帰っていった。

別方面の私は1人で帰る。

この短い時間で

今まで味わったことのない想いが

混ざり合っていた。

行動できた嬉しさと

大丈夫かという心配と

少しほっとした気持ちと

直接渡せなかった後悔と

夏美への感謝。勇気を出した自分。


でも、これが初めての

佐助くんに何かできた行動だった。

直接じゃないけど

見えない何かで繋がったような

今までに感じたことのない嬉しさが

込み上げていた。
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