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青春
発芽
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毎年春に
学校で恒例となっている
マラソン大会がある。
距離は1.5kmと
小学生の私たちには
長い距離に感じる。
私は毎年、喘息を理由に
見学している。
もし走れたとしても
後ろの方で恥をかくと
内心思っている。
だから、実は気が楽である。
小学6年生の最後となる
マラソン大会だが、迷いなく
見学を選んだ。
マラソン大会は
低学年、中学年、高学年ごとに
距離が違っている。
去年は6年生の人たちと走って
1位は逃したものの
2位でゴールしたクラスメートの
春田くんが今年は優勝候補だ。
クラスのみんなからも
慕われていて、
成績も優秀で
まさに言うことがない。
だけど、私は
ある男の子が気になっている。
マラソン大会1ヶ月前だった。
夕食の前に母に頼まれ、
近くのコンビニへ買い出しに行き
(近くといっても自転車で10分かかるところ)
途中にある学校を横目に
自転車を漕いでいると
グラウンドで黙々と走る姿が見えた。
私は気になってしまい、
探偵のようにこっそりと見つからない
ように、自転車を降りて
グラウンドを覗きこんだ。
走っているのは、
クラスメイトの佐助くんだった。
邪魔しちゃいけないし、
話したこともないことを理由に
私は声をかけなかった。
正直いうと勇気がなかった。
でも、
懸命に走る佐助くんの姿を
映画のようにずっと見ていられた。
マラソン大会1週間前
私は、母にまた買い出しを頼まれた。
なぜか、少しウキウキしながら
買い出しに向かう自分がいた。
学校を自転車で通りかかると
やはり走っている。
周りにひとけはない。
ただ夢中に走る佐助くんを眺めるのに
私も夢中になっていることに気づいた。
マラソン大会当日
天候に恵まれ、雲ひとつない
真っ青な空だった。
私は日陰があるスタート地点で
先生たちと見学だ。
全員で軽く体操を行い、
準備を整える。
スタートラインにそれぞれがつく。
スタートラインは野次馬のように
ごった返し、
スタートの合図のピストルを持った
体育の先生が準備を整える。
この瞬間は、
何とも言えない緊張感が漂う。
辺りの音が鳴り止み
ピストルの音が鳴り響いた。
みんな勢いよく飛び出し
走り出した。
そのときだった。
1人だけ地面転んでいた。
それは佐助くんだった。
肘と膝が転んで血が出ている。
先生が駆けつけようとした瞬間
佐助くんは立ち上がり、
何もなかったように走りだした。
膝が痛むのか、ペースが少し遅いが
着実に前に足を踏み出し続けている。
1つ目の曲がり角を曲がって
姿が見えなくなる。
私は、心配もあったが
立ち上がり、どうか最後まで
走り抜いて欲しいと強く願っていた。
スタート地点から学校の近くの
長い田んぼ道を走り
また一周して
スタート地点に戻ってくる。
5分ほどだろうか
早くも戻ってくる姿が遠くに見える
春田くんだ。
2位との差を大きく開いて
そのまま1位でゴールをした。
それに続いて
着々とみんなが戻ってくるが
まだ佐助くんの姿がない。
棄権したかな。
結構痛そうだったからな。
不安がよぎる。
そのときだった。
足を少し引きずりながらも
最後まで懸命に走る佐助くんが見えた。
周りから追い抜かれるが
気にせず、
ただ、ひたすらに
ゴールを見て、
そのために足を動かしているように
私は感じた。
私は思わず、
「頑張れー!」
と、これまで出したことがない
大きな声をだしていた。
こんなにも人のことを
必死に応援したのは初めてだった。
その声は届いたのか、届かなかったのか
わからないけど
そんなことはどうでもよかった。
佐助くんは最後まで諦めずに
走り抜いたことが、
なぜか自分のことように嬉しかった。
そして、
私の見る世界が変わった。
まるで暗闇だった種から
初めて抜け出し、
太陽をみることができた芽のように。
学校で恒例となっている
マラソン大会がある。
距離は1.5kmと
小学生の私たちには
長い距離に感じる。
私は毎年、喘息を理由に
見学している。
もし走れたとしても
後ろの方で恥をかくと
内心思っている。
だから、実は気が楽である。
小学6年生の最後となる
マラソン大会だが、迷いなく
見学を選んだ。
マラソン大会は
低学年、中学年、高学年ごとに
距離が違っている。
去年は6年生の人たちと走って
1位は逃したものの
2位でゴールしたクラスメートの
春田くんが今年は優勝候補だ。
クラスのみんなからも
慕われていて、
成績も優秀で
まさに言うことがない。
だけど、私は
ある男の子が気になっている。
マラソン大会1ヶ月前だった。
夕食の前に母に頼まれ、
近くのコンビニへ買い出しに行き
(近くといっても自転車で10分かかるところ)
途中にある学校を横目に
自転車を漕いでいると
グラウンドで黙々と走る姿が見えた。
私は気になってしまい、
探偵のようにこっそりと見つからない
ように、自転車を降りて
グラウンドを覗きこんだ。
走っているのは、
クラスメイトの佐助くんだった。
邪魔しちゃいけないし、
話したこともないことを理由に
私は声をかけなかった。
正直いうと勇気がなかった。
でも、
懸命に走る佐助くんの姿を
映画のようにずっと見ていられた。
マラソン大会1週間前
私は、母にまた買い出しを頼まれた。
なぜか、少しウキウキしながら
買い出しに向かう自分がいた。
学校を自転車で通りかかると
やはり走っている。
周りにひとけはない。
ただ夢中に走る佐助くんを眺めるのに
私も夢中になっていることに気づいた。
マラソン大会当日
天候に恵まれ、雲ひとつない
真っ青な空だった。
私は日陰があるスタート地点で
先生たちと見学だ。
全員で軽く体操を行い、
準備を整える。
スタートラインにそれぞれがつく。
スタートラインは野次馬のように
ごった返し、
スタートの合図のピストルを持った
体育の先生が準備を整える。
この瞬間は、
何とも言えない緊張感が漂う。
辺りの音が鳴り止み
ピストルの音が鳴り響いた。
みんな勢いよく飛び出し
走り出した。
そのときだった。
1人だけ地面転んでいた。
それは佐助くんだった。
肘と膝が転んで血が出ている。
先生が駆けつけようとした瞬間
佐助くんは立ち上がり、
何もなかったように走りだした。
膝が痛むのか、ペースが少し遅いが
着実に前に足を踏み出し続けている。
1つ目の曲がり角を曲がって
姿が見えなくなる。
私は、心配もあったが
立ち上がり、どうか最後まで
走り抜いて欲しいと強く願っていた。
スタート地点から学校の近くの
長い田んぼ道を走り
また一周して
スタート地点に戻ってくる。
5分ほどだろうか
早くも戻ってくる姿が遠くに見える
春田くんだ。
2位との差を大きく開いて
そのまま1位でゴールをした。
それに続いて
着々とみんなが戻ってくるが
まだ佐助くんの姿がない。
棄権したかな。
結構痛そうだったからな。
不安がよぎる。
そのときだった。
足を少し引きずりながらも
最後まで懸命に走る佐助くんが見えた。
周りから追い抜かれるが
気にせず、
ただ、ひたすらに
ゴールを見て、
そのために足を動かしているように
私は感じた。
私は思わず、
「頑張れー!」
と、これまで出したことがない
大きな声をだしていた。
こんなにも人のことを
必死に応援したのは初めてだった。
その声は届いたのか、届かなかったのか
わからないけど
そんなことはどうでもよかった。
佐助くんは最後まで諦めずに
走り抜いたことが、
なぜか自分のことように嬉しかった。
そして、
私の見る世界が変わった。
まるで暗闇だった種から
初めて抜け出し、
太陽をみることができた芽のように。
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