彩り 〜青〜

ガタヤマ

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青春

種子

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春風が

木々を揺らし

心地よい気分にさせてくれる。


照りつける太陽は

優しく私たちを見守ってくれる。


家から歩いて5分もすれば

登り坂で、道の脇には

太陽を反射して

綺麗に光る小川が流れている。


私は、自然の中で育ち

自然とともに成長をしていった。


だけど、私は

小さな頃から喘息で

夜になると呼吸をするにも

精一杯で寝付けず

吸入で薬を身体に取り込み

安静になることを繰り返していた。

酷いときには緊急で病院に行くことも

稀にあった。

もちろん、夜に診てもらえる

大きな病院は近くにない。

車で30分以上かけて向かう。

両親には沢山の迷惑をかけたと

自覚している。


喘息もあって

運動は苦手だった。

速く走れたり、マラソン大会で

優勝するような人たちが

本当に羨ましかった。

そんな私がある人との出会いで

変わり始める。


ある日

学校の授業で

アサガオを1人ひとり

育てることになった。

自分専用の植木鉢に

土を入れて数センチの穴を指であけて

そこに種を入れた。

水をかけて、日の当たる場所に

みんなで置いた。


先生が私たちに質問をしてきた。


「植物が成長するには何が必要でしょうか?」


土、水、太陽とみんなが答える。

どれも正解だろう。

でも、ある男の子だけ

違うことを言っていた。


「続けること」


先生はその男の子に質問した。


「何を続けるんだい?」


「願い続けること」


周りのみんなは、笑っていた。

でも私は、

この言葉が頭から離れなかった。


学校が終わり、放課後に


「ねぇ、一緒に体育館でドッチボールしない?青彩が入ってくれると人数も丁度いいからさ」


クラスでも運動のできる

春田くんから声をかけられた。

この歳頃に運動のできる人は

だいたい人気者である。


「うん、いいよ。」


不安もあったが、声をかけられたことが

少し嬉しかった。

やってみると、

ボールで相手に当てることは

難しいけど、みんなと一緒に

何かをやることが素直に楽しかった。


でも、その日の夜に

私は酷い発作を起こした。

酸素を肺に取り込もうと

身体も懸命に呼吸するが

苦しくて、息をすることができない。

すぐに病院に

連れて行かれた。

診断の結果は、肺に穴が空いて

そこから空気が漏れていた。

その日から入院することになった。


母は病院に泊まりながら

看病をしてくれて


「早く良くなるといいね。」


と弱い私をすぐそばで見守ってくれた。

そのときに私は思った。


「私生きてていいのかな」


私の目から涙がこぼれる。

母に迷惑をかけて

友達にも、せっかく誘ってもらって

遊んだのに、私の身体は脆くて

私がいない方が、誰にも迷惑を

かけないと思えた。

そんな私に母は


「青彩、人ってね、そこに居てくれるだけで幸せなんだよ。それでね、青彩が生まれたときから、お母さんにとっては生きる希望なの。だから、青彩が生きててくれることが願いでもあるんだよ。」


と伝えてくれた。


「うん、ありがと」


私はその夜、母の手の温もりで

眠りについた。 
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