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蒼の皇国 編
勝利へのロードマップ
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影の球体が割れ、不機嫌な顔をした女性が2人とその間で泣きじゃくる少女が1人現れる。
夜天のアイリスが黒剣:夜天の剣先を黎明のアイリスの首元に押し当てる。
セツナ=リュウザキが長く伸ばした影の爪で黎明のアイリスの頭を鷲掴みにしている。
黎明のアイリスは両手を胸の前で縛られ、逃げる事が出来ず大粒の涙を流している。
「君らさぁ……何やってんの?」
「流石の俺も同情するぞ?」
悲惨な惨状に少年魔王と創造神カノンがドン引きしていた。
「ちょっと重要な話をしてるの。邪魔しないで貰える?」
「少し娘の教育をしているんです。待ってもらえますか?」
血走った眼のセツナとハイライトの消えた虚ろな瞳をした夜天のアイリスが殺意全開で睨み付けてくる。
「「…………」」
創造神カノンが少年魔王を一瞥するとため息を吐いた。
「はぁ、時間をやるから作戦の説明でもしたらどうだ?」
「言われなくてもそうするよ」
セツナが殺意をむき出しにして創造神カノンを睨む視線を更に鋭くした。
「何それ。さっさと殺ればいいのに、施しか何かのつもり?」
勝利の可能性を自ら低くするなど裏があるとしか思えない。
「理由はそいつが教えてくれるさ」
創造神カノンは欠伸をしながら顎で少年魔王を見ろ促す。
「全員よく聞いてね」
淡々と作戦の説明が始まった。
「あの人が今攻撃して来ないのは僕がいるからだよ。実体を持たず遠隔操作でこの世界に干渉してるカノンと実態を持つ代わりに力を制限されて干渉していると僕では少しだけ僕の方が強い。僕以外に気を逸らせば僕に討ち取られるからね。
だから、あの人は不用意に動けない」
純粋な戦闘能力差にでの牽制による膠着状態。
攻撃してこないのではなく、攻撃が出来ない。
「なら、貴方が牽制してる内に全員で総攻撃すれば良いってことね」
セツナの解答に少年魔王は「惜しい」と唸った。
「言ったでしょ。今のあの人は実体がないって」
「それは知ってるわ。だから、私の力でこの世界に引きづり落とせばいいじゃない」
真祖の吸血鬼たるセツナを最強たらしめる事象に干渉する力――常闇の刃。
そこに実態はなくとも姿形が視認さえ出来れば、創造神カノンを世界の内部へと引きづり下ろせるだろう。
それが彼女たちの当初の作戦なのだろう。
だが、それではダメだ。
相手を甘く見すぎている。
「何の対策もなくあの人をこの世界に落としたら事態は最悪だよ?」
「どいうことよ?」
「あれでも一応、この世界を作った存在なんだよ。その力は強大で、君たちが束になったところで勝ち目は微塵もない」
創造神カノンが「おいおい、一応は失礼だろ?」などとちゃちゃを入れてくるが無視される。
「この世界に堕とされる事――それがあの人の本当の目的だからね」
「……それってどういう?」
「遠隔でプチプチと1匹づつ潰すより、直接まとめて殺しちゃった方が確実で簡単でしょ? この世界の破壊は遠隔では出来ないからね。だから、堕とされた方が楽なんだよ」
「なら、あいつはこの世界に堕とさずに倒さないといけないってこと?」
「えぇー、馬鹿なの死ぬの? 実態がないんだから倒せるワケないじゃん」
ケラケラと少年魔王はお腹を抱えて笑う。
久しく馬鹿にされたことが無く煽り耐性が落ちていたセツナは怒り心頭でほほを引き攣らせる。それでも長く生きたせいかギリギリのところで堪えている様子だ。
「あれを倒す……というか、追い返すにはこの世界に堕として権限を奪うか破壊するかしかないよ。あの人を殺すことは”絶対”に出来ないからね。僕の大好きな人がそう言ってるんだから間違いないよ」
「貴方がどういう存在か知らないし、急に惚気を入れられても興味はないわ。結局のところ、どうすればいいワケ?」
「簡単だよ。君では無理だけど僕なら出来る。だって僕は”無敵”だからね」
「……問答するのも疲れてきたわ。はぁ、……仕方ないわね。ようは貴方の指示通りやればいいってことね」
セツナはぐるりと周囲を見渡す。
リョウタ、タリア、エイジの三人はまだ意識が回復していない。戦力外。
ハクは攻撃をまともに受けたのか全身が真っ赤に染まるほどの出血が見られる。辛うじて意識を回復させている様だが指一本動かすことも出来ないだろう。何よりも早く治療を施さなければ命の危険がある。戦力外。
コウイチは無事の様だが千変万化は破損してしまっている。戦力としては乏しい。
蒼龍皇――双龍皇の二人は外見の問題はなさそうだが……詳細は分からない。判断不能。
メアリは怪我等は見受けられない。ただし、実力的に戦力として数えるのは難しい。
黎明のアイリスは未だに涙目で怯えている様子だが問題ない。戦闘可能。
夜天のアイリスは覚醒直後で力は不安定だろうが戦ってもらう。戦闘可能。
実質、戦力として数えられそうなのは自身と少年魔王を含めて4人だ。
「絶望的ね」
「そうでもないよ。もう作戦は伝えてあるからね」
「?」
セツナが首を傾げる。
少年魔王は創造神カノンに拳を突き出して構えて言う。
「僕があの人を一時的に力を使えない状態にして堕とすから、君たち三人で”創造”の力を簒奪するんだ。それが出来れば勝ちだよ」
あっさりと敵の前で作戦を公開してしまう。
折角のチャンスがお終いだ。
「貴方ね! 作戦を言ってしまっては意味がないでしょ!?」
「それは大丈夫だよ」
「どうして?」
「だって、それしか方法がないことくらいあの人は知ってるからね」
創造神カノンは腕組みをしてニヤリと笑う。
「この世界を託すに値するかテストしてやる。今のそいつが俺の力を無力化できる時間は10秒だ。その間に俺から”創造”の力を奪って見せろ」
勝手に舞台は整えられた。
セツナは踊らされているようで非常に不服な思いの中、逡巡……リョウタ達の敗北、想定以上の創造神の力に他の選択肢が思い浮かばない。
彼らの狙いが分からないが、他に選択肢がないのであれば――、
「私は乗り気ではないですけど、それしか方法がないのであれば……今は泥水でも飲むしか無いと思います」
夜天のアイリスがセツナの方を見て頷き、夜空を象ったような真っ黒な剣――黒剣:夜天を空間から引き抜く。
「わ、わたしも頑張ります!」
黎明のアイリスが袖で涙を拭って青白い夜明け前の空色をした黎明の短剣を空間から引き抜いて構えた。
覚悟が決まっていなかったのが自分だったことにセツナは驚き、落胆し――覚悟を決めた。
過去の多くの失敗から石橋を叩いて渡ることが当たり前になっていた気がする。
確実に勝てる戦い――最初から勝っている戦いしかしていなかった。
綱渡りの一本や二本、成功させなくては欲しい物など手に入りはしない。
「貴方たちに教えられるなんて、自分が恥ずかしいわ」
セツナは自身の影から闇から繰り抜いたような真っ黒な常闇の刃を取り出す。
「さあ、採点の時間だ! 俺を失望させんなよ?」
夜天のアイリスが黒剣:夜天の剣先を黎明のアイリスの首元に押し当てる。
セツナ=リュウザキが長く伸ばした影の爪で黎明のアイリスの頭を鷲掴みにしている。
黎明のアイリスは両手を胸の前で縛られ、逃げる事が出来ず大粒の涙を流している。
「君らさぁ……何やってんの?」
「流石の俺も同情するぞ?」
悲惨な惨状に少年魔王と創造神カノンがドン引きしていた。
「ちょっと重要な話をしてるの。邪魔しないで貰える?」
「少し娘の教育をしているんです。待ってもらえますか?」
血走った眼のセツナとハイライトの消えた虚ろな瞳をした夜天のアイリスが殺意全開で睨み付けてくる。
「「…………」」
創造神カノンが少年魔王を一瞥するとため息を吐いた。
「はぁ、時間をやるから作戦の説明でもしたらどうだ?」
「言われなくてもそうするよ」
セツナが殺意をむき出しにして創造神カノンを睨む視線を更に鋭くした。
「何それ。さっさと殺ればいいのに、施しか何かのつもり?」
勝利の可能性を自ら低くするなど裏があるとしか思えない。
「理由はそいつが教えてくれるさ」
創造神カノンは欠伸をしながら顎で少年魔王を見ろ促す。
「全員よく聞いてね」
淡々と作戦の説明が始まった。
「あの人が今攻撃して来ないのは僕がいるからだよ。実体を持たず遠隔操作でこの世界に干渉してるカノンと実態を持つ代わりに力を制限されて干渉していると僕では少しだけ僕の方が強い。僕以外に気を逸らせば僕に討ち取られるからね。
だから、あの人は不用意に動けない」
純粋な戦闘能力差にでの牽制による膠着状態。
攻撃してこないのではなく、攻撃が出来ない。
「なら、貴方が牽制してる内に全員で総攻撃すれば良いってことね」
セツナの解答に少年魔王は「惜しい」と唸った。
「言ったでしょ。今のあの人は実体がないって」
「それは知ってるわ。だから、私の力でこの世界に引きづり落とせばいいじゃない」
真祖の吸血鬼たるセツナを最強たらしめる事象に干渉する力――常闇の刃。
そこに実態はなくとも姿形が視認さえ出来れば、創造神カノンを世界の内部へと引きづり下ろせるだろう。
それが彼女たちの当初の作戦なのだろう。
だが、それではダメだ。
相手を甘く見すぎている。
「何の対策もなくあの人をこの世界に落としたら事態は最悪だよ?」
「どいうことよ?」
「あれでも一応、この世界を作った存在なんだよ。その力は強大で、君たちが束になったところで勝ち目は微塵もない」
創造神カノンが「おいおい、一応は失礼だろ?」などとちゃちゃを入れてくるが無視される。
「この世界に堕とされる事――それがあの人の本当の目的だからね」
「……それってどういう?」
「遠隔でプチプチと1匹づつ潰すより、直接まとめて殺しちゃった方が確実で簡単でしょ? この世界の破壊は遠隔では出来ないからね。だから、堕とされた方が楽なんだよ」
「なら、あいつはこの世界に堕とさずに倒さないといけないってこと?」
「えぇー、馬鹿なの死ぬの? 実態がないんだから倒せるワケないじゃん」
ケラケラと少年魔王はお腹を抱えて笑う。
久しく馬鹿にされたことが無く煽り耐性が落ちていたセツナは怒り心頭でほほを引き攣らせる。それでも長く生きたせいかギリギリのところで堪えている様子だ。
「あれを倒す……というか、追い返すにはこの世界に堕として権限を奪うか破壊するかしかないよ。あの人を殺すことは”絶対”に出来ないからね。僕の大好きな人がそう言ってるんだから間違いないよ」
「貴方がどういう存在か知らないし、急に惚気を入れられても興味はないわ。結局のところ、どうすればいいワケ?」
「簡単だよ。君では無理だけど僕なら出来る。だって僕は”無敵”だからね」
「……問答するのも疲れてきたわ。はぁ、……仕方ないわね。ようは貴方の指示通りやればいいってことね」
セツナはぐるりと周囲を見渡す。
リョウタ、タリア、エイジの三人はまだ意識が回復していない。戦力外。
ハクは攻撃をまともに受けたのか全身が真っ赤に染まるほどの出血が見られる。辛うじて意識を回復させている様だが指一本動かすことも出来ないだろう。何よりも早く治療を施さなければ命の危険がある。戦力外。
コウイチは無事の様だが千変万化は破損してしまっている。戦力としては乏しい。
蒼龍皇――双龍皇の二人は外見の問題はなさそうだが……詳細は分からない。判断不能。
メアリは怪我等は見受けられない。ただし、実力的に戦力として数えるのは難しい。
黎明のアイリスは未だに涙目で怯えている様子だが問題ない。戦闘可能。
夜天のアイリスは覚醒直後で力は不安定だろうが戦ってもらう。戦闘可能。
実質、戦力として数えられそうなのは自身と少年魔王を含めて4人だ。
「絶望的ね」
「そうでもないよ。もう作戦は伝えてあるからね」
「?」
セツナが首を傾げる。
少年魔王は創造神カノンに拳を突き出して構えて言う。
「僕があの人を一時的に力を使えない状態にして堕とすから、君たち三人で”創造”の力を簒奪するんだ。それが出来れば勝ちだよ」
あっさりと敵の前で作戦を公開してしまう。
折角のチャンスがお終いだ。
「貴方ね! 作戦を言ってしまっては意味がないでしょ!?」
「それは大丈夫だよ」
「どうして?」
「だって、それしか方法がないことくらいあの人は知ってるからね」
創造神カノンは腕組みをしてニヤリと笑う。
「この世界を託すに値するかテストしてやる。今のそいつが俺の力を無力化できる時間は10秒だ。その間に俺から”創造”の力を奪って見せろ」
勝手に舞台は整えられた。
セツナは踊らされているようで非常に不服な思いの中、逡巡……リョウタ達の敗北、想定以上の創造神の力に他の選択肢が思い浮かばない。
彼らの狙いが分からないが、他に選択肢がないのであれば――、
「私は乗り気ではないですけど、それしか方法がないのであれば……今は泥水でも飲むしか無いと思います」
夜天のアイリスがセツナの方を見て頷き、夜空を象ったような真っ黒な剣――黒剣:夜天を空間から引き抜く。
「わ、わたしも頑張ります!」
黎明のアイリスが袖で涙を拭って青白い夜明け前の空色をした黎明の短剣を空間から引き抜いて構えた。
覚悟が決まっていなかったのが自分だったことにセツナは驚き、落胆し――覚悟を決めた。
過去の多くの失敗から石橋を叩いて渡ることが当たり前になっていた気がする。
確実に勝てる戦い――最初から勝っている戦いしかしていなかった。
綱渡りの一本や二本、成功させなくては欲しい物など手に入りはしない。
「貴方たちに教えられるなんて、自分が恥ずかしいわ」
セツナは自身の影から闇から繰り抜いたような真っ黒な常闇の刃を取り出す。
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