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蒼の皇国 編
強制暴露タイム! 逃げ道何て初めから用意されていなかった……
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私は不本意ながら夜天のアイリスと呼ばれています。
私の知らないところで勝手に傍観派の王として扱われています。
非常に迷惑なことです。
それで私がどれだけ悩んだか教えてあげたいくらいです。
いえ、いつかはそいつら全員に仕返ししてやります。
でも、それはついさっき一段落したの今はいいです。
今問題なのは意地悪なアオお姉ちゃんです。
私はアオお姉ちゃんのことが大好きだけど、同じくらい大っ嫌いです。
アオお姉ちゃんは私がコウイチお兄ちゃんに隠してる秘密を話せと言うんです。もし言わないならアオお姉ちゃんが言うって脅すんです。
……だから、嫌だったけど私は話しました。
傍観派の王で、コウイチお兄ちゃんたちも傍観派として認識されていて身動きが取りづらい状況に陥っているということを。全部私のせいだってことを。
本当に怖かったんです。勝手にそんな迷惑な状況にしてしまって嫌われてしまうんじゃないかって。
でもでも、やっぱりコウイチお兄ちゃんは優しかった。
自分のせいだって言って受け入れてくれた。
それで私の肩の荷も下りた……はずだった。
アオお姉ちゃんはそれでは許してくれなかったんです。
アオお姉ちゃんは私に言えというんです。
私の正直な想いを。
「お前が言わないなら私が――」
「あーあー、もう!? 自分で言うから、アオお姉ちゃんは黙って!?」
危険です!
マジヤバです!
マジギレ寸前です!
アオお姉ちゃんが私のことを”お前”と呼ぶ時は次は容赦しないという意味なんです。
これ以上逆らったら私は氷漬けにされて、目の前で私の赤裸々恋愛白書の暴露大会が始まってしまいます。しかも、確実に捏造と脚色を交えられた最悪のシナリオで語られてしまいます。
普段から口数が少なくて、感情を殆ど表に出さない鉄仮面アオお姉ちゃんですが、実は結構子供っぽいところがあるんです。プリンが好きなところとか、プリンを食べると滅茶苦茶怒るところとか、思い通りにならないとすぐにキレるところとか。
アオお姉ちゃんが物凄い剣幕で睨んできます。
私にはもう話す以外の選択肢がありません。
他人に暴露されて玉砕するくらいなら、自分で伝えて玉砕した方が一億倍マシです。
「あのね、コウイチ……お兄、ちゃん」
怖いです。
声が震えてしまいます。
だって、もしダメだったら私は私を保てる自身がありません。
この局面で言えというのは、仮に私が暴走したとしても止めてあげるという意味なんだと思います。
つまり、アヴァロンは――、
「代わりに私が――」
「言わなくていいですぅ! 黙ってて!?」
もうダメだ。
腹を括ろう。
そう、切腹する覚悟で行くんだ。
エイエイオー、私!
「私ね、お兄ちゃんのことが……えっと、……コウイチさんのことが好きなの! 大好きです!」
顔が熱いです。
耳まで熱いです。
目の前がくらくらしてきた。
お兄ちゃんとしてじゃない。
家族のような存在としてじゃない。
一人の男性として好き。
「俺も好きだぞ」
その言葉に心臓が口から飛び出そうになりました。
嬉しい。
けど、コウイチお兄ちゃんの目を見た瞬間、私の中で昂っていた熱が一気に冷めて行きました。
コウイチお兄ちゃんの”好き”は私の”好き”とは違う。
責任感。
そんな感じが読み取れた。
コウイチお兄ちゃんは、アイリスがこんな風になってしまったことを後悔している。その責任感から私のことを大切にしてくれている。今のはその延長線上での”好き”だ。
「コウイチ、それはちが――」
「コウイチさん、違う!?」
アオお姉ちゃんが驚いた顔をしたのを始めた見た。
ここまで言ったんだ。
もう私は猫を被るのを辞める。
妹のような愛されるキャラを演じるのはもういらない。
ここで曖昧な答えのまま終わらせるほどアオお姉ちゃんからの重圧と私の覚悟は軽くはない。
「私は一人の男性として好きなの!」
どうしてアオお姉ちゃんが私の想いに白黒つけたいのかが分からない。
ちょっと前に近い内に邪魔者がいない状況を作ってあげると言われた時は、この能面龍は老いてボケたんじゃないかと思ったくらいだ。
その言葉が本気で、今日のこんな状況下で実行されるとは思ってもみなかった。
でも確かに、今日この日を逃せば邪魔者であるハクお姉ちゃんとメアリお姉ちゃんがコウイチお兄ちゃんの傍にいない状況なんてまずあり得ない。
今が絶好のチャンスで残り時間は三分とない。
カップラーメンが硬めで仕上がる程度の時間で白黒はっきりさせないといけない。
コウイチお兄ちゃんは鈍麻のヘタレで優柔不断だから、率直にズバズバと切込んで逃げられないように鷲掴みにしないとダメ。メアリお姉ちゃんが前に色仕掛けで既成事実を作ろうと迫ったことがあったみたいだけど、色々と事態が切羽詰まってるとか言い訳をしてのらりくらりとやり過ごして、それ以来音信不通で知らぬ存ぜぬだそうな。
この人は自分からハーレムを作ると言いながら、自分から作ろうとしない人だからこっちから勝手に作るしかない。
「コウイチさん、今ここで答えて! 私のことを一人の女の子として好きかどうか!? ダメなら諦めるからっ!?」
「アイリスさん? いきなり、どうしたんだ?」
「そうやってはぐらかそうとする! 私はずっとこうしたかった! メアリお姉ちゃんとは違うから! でも……でも、私はメアリお姉ちゃんと違うから……人間じゃないから……化物だから、コウイチさんの隣に居ちゃいけないって思ってたから……今まで言わなかった。それにハクお姉ちゃんやメアリお姉ちゃんがいつもコウイチさんの傍にいたし……ううん、これは言い訳。ただ怖かっただけ。私の本当の気持ちを伝えて、今の関係が壊れてしまうのが……」
「……アイリス」
コウイチお兄ちゃんが目を丸くして驚いている。
ああ、もうそろそろ限界だ。
不安が膨れ上がっていく。
視界が歪む。
涙が勝手に溢れて来る。
コウイチお兄ちゃんの好きな人は私じゃないから答えをくれないんだ。
私は立ち上がってコウイチお兄ちゃんから離れて背中を向ける。
泣いている顔を見られなくない。
化物の私じゃ、コウイチお兄ちゃんの傍は相応しくない。
コウイチお兄ちゃんの好きな人は……私じゃないアイリスの方だ。
感情が抑えきれない。
暴走に巻き込まないように早く離れないと。
水の鳥籠を破壊しようと黒剣:夜天を出現させて握る。
振り上げようとしたその腕を後ろから引かれた。
「っ!?」
「答えを聞かずに何処に行くんだ?」
「聞かなくても分かるもん。コウイチさんの好きな人は私じゃないんだって……好きなのは私じゃないアイリスでしょ!?」
長い沈黙。
私が長く感じただけで本当は一瞬だったのかもしれない。
「多分、アイリスの言う通りだと思う。俺の初恋はアイリスじゃないアイリスだったと思う」
「…………」
やっぱり、私には勝ち目が無かった。
早く手を振り払って迷惑のかからない場所に行こう。
「でも、今は違う」
その言葉で振り払おうとした腕が止まった。
振り向きたくない。
そのままの体勢で私は言葉を待った。
「俺もアイリスと同じなんだ。今の関係が壊れるのが怖い。メアリの件だってそうだよ。ハーレムを作るとか言いながらさ、今の関係を壊したくなかったからダラダラと引き摺って来てたんだ。皆、何も言わないからそれでもいいんだと思ってた。でもやっぱり、いつまでもそのままじゃダメなんだよな」
私は恐る恐る踵を返してコウイチお兄ちゃんと向き合う。
コウイチお兄ちゃんは少し顔を赤くして、照れ隠しと言うかばつが悪そうな顔で頬を掻きながら、けれど私としっかり目を合わせて言う。
「まあ、その、なんだ……」
「優柔不断」
「うるせー、諸悪の根源は黙ってろ!?」
アオお姉ちゃんが入れた野次にコウイチお兄ちゃんが声を荒げる。
そのやり取りが何故か面白くて、泣いているのが馬鹿らしく思えて来た。
「俺もアイリスのことが好きだよ。目の前にいる小さなアイリスのことが。勿論、女の子としてな」
「ホント、に?」
「本当に」
「だって、私は化物だよ?」
「可愛いから何の問題もない」
「これからもっと沢山迷惑をかけちゃうかもしれないよ?」
「可愛い女の子に掛けられる迷惑なら幾らでも背負うさ。すぐそこに無理難題を吹っかけて来る可愛くて怖い女の子がいるしさ」
「ロリコンって呼ばれちゃうよ?」
「……それは、まあ……アイリスだから別に呼ばれても構わない」
今まで抱え込んで来たのがバカみたいだ。
この人は一歩踏み出すのが苦手なだけで、踏み出してしまえばどんどんこっちに来てくれる。
私の手から黒剣:夜天が零れ落ちる。鳥籠の床に落ちる前に光の粒になって私の中に戻っていった。
「アイリス、逆に聞いて良いか?」
「いいよ」
「俺はアイリスが思ってる以上に何も出来ないヤツだけどいいのか?」
「うん、それでいい。違う、それがいいの」
「俺は人間だから数十年くらいしか一緒にいてられないけどいいか?」
「うん。その間に一生分の思い出作ってもらうから大丈夫」
「あと二、三十年したらハゲ親父になるかもしれなけどいいか?」
「……そうならないように何か考えるから大丈夫」
私はコウイチさんと向かい合う。
コウイチさんが私と視線を合わせてくれる。
どちらからと伴く、私たちは顔を近づけていく。
コウイチさんの吐息が当たるような距離。
唇と唇が触れようとした瞬間、
「そこまで」
私は首根っこを掴まれてずりずりと引き離されてしまう。
アオお姉ちゃんの仕業だった。
「な、何するの! いい所だったのに!?」
「時間切れ」
そう言ったアオお姉ちゃんの視線の先に紅い龍が純白の狼を片手に戻ってくる姿が見えた。
ハクお姉ちゃん……あと数秒頑張って欲しかったな。
「あと言えとは言ったけど、発情しろとは言っていない。全部終わってから勝手にして」
「べ、別に発情とか違うもん! アオお姉ちゃんの意地悪!?」
こうして私の赤裸々告白タイムは一応の成功で終わったのでした。
私の知らないところで勝手に傍観派の王として扱われています。
非常に迷惑なことです。
それで私がどれだけ悩んだか教えてあげたいくらいです。
いえ、いつかはそいつら全員に仕返ししてやります。
でも、それはついさっき一段落したの今はいいです。
今問題なのは意地悪なアオお姉ちゃんです。
私はアオお姉ちゃんのことが大好きだけど、同じくらい大っ嫌いです。
アオお姉ちゃんは私がコウイチお兄ちゃんに隠してる秘密を話せと言うんです。もし言わないならアオお姉ちゃんが言うって脅すんです。
……だから、嫌だったけど私は話しました。
傍観派の王で、コウイチお兄ちゃんたちも傍観派として認識されていて身動きが取りづらい状況に陥っているということを。全部私のせいだってことを。
本当に怖かったんです。勝手にそんな迷惑な状況にしてしまって嫌われてしまうんじゃないかって。
でもでも、やっぱりコウイチお兄ちゃんは優しかった。
自分のせいだって言って受け入れてくれた。
それで私の肩の荷も下りた……はずだった。
アオお姉ちゃんはそれでは許してくれなかったんです。
アオお姉ちゃんは私に言えというんです。
私の正直な想いを。
「お前が言わないなら私が――」
「あーあー、もう!? 自分で言うから、アオお姉ちゃんは黙って!?」
危険です!
マジヤバです!
マジギレ寸前です!
アオお姉ちゃんが私のことを”お前”と呼ぶ時は次は容赦しないという意味なんです。
これ以上逆らったら私は氷漬けにされて、目の前で私の赤裸々恋愛白書の暴露大会が始まってしまいます。しかも、確実に捏造と脚色を交えられた最悪のシナリオで語られてしまいます。
普段から口数が少なくて、感情を殆ど表に出さない鉄仮面アオお姉ちゃんですが、実は結構子供っぽいところがあるんです。プリンが好きなところとか、プリンを食べると滅茶苦茶怒るところとか、思い通りにならないとすぐにキレるところとか。
アオお姉ちゃんが物凄い剣幕で睨んできます。
私にはもう話す以外の選択肢がありません。
他人に暴露されて玉砕するくらいなら、自分で伝えて玉砕した方が一億倍マシです。
「あのね、コウイチ……お兄、ちゃん」
怖いです。
声が震えてしまいます。
だって、もしダメだったら私は私を保てる自身がありません。
この局面で言えというのは、仮に私が暴走したとしても止めてあげるという意味なんだと思います。
つまり、アヴァロンは――、
「代わりに私が――」
「言わなくていいですぅ! 黙ってて!?」
もうダメだ。
腹を括ろう。
そう、切腹する覚悟で行くんだ。
エイエイオー、私!
「私ね、お兄ちゃんのことが……えっと、……コウイチさんのことが好きなの! 大好きです!」
顔が熱いです。
耳まで熱いです。
目の前がくらくらしてきた。
お兄ちゃんとしてじゃない。
家族のような存在としてじゃない。
一人の男性として好き。
「俺も好きだぞ」
その言葉に心臓が口から飛び出そうになりました。
嬉しい。
けど、コウイチお兄ちゃんの目を見た瞬間、私の中で昂っていた熱が一気に冷めて行きました。
コウイチお兄ちゃんの”好き”は私の”好き”とは違う。
責任感。
そんな感じが読み取れた。
コウイチお兄ちゃんは、アイリスがこんな風になってしまったことを後悔している。その責任感から私のことを大切にしてくれている。今のはその延長線上での”好き”だ。
「コウイチ、それはちが――」
「コウイチさん、違う!?」
アオお姉ちゃんが驚いた顔をしたのを始めた見た。
ここまで言ったんだ。
もう私は猫を被るのを辞める。
妹のような愛されるキャラを演じるのはもういらない。
ここで曖昧な答えのまま終わらせるほどアオお姉ちゃんからの重圧と私の覚悟は軽くはない。
「私は一人の男性として好きなの!」
どうしてアオお姉ちゃんが私の想いに白黒つけたいのかが分からない。
ちょっと前に近い内に邪魔者がいない状況を作ってあげると言われた時は、この能面龍は老いてボケたんじゃないかと思ったくらいだ。
その言葉が本気で、今日のこんな状況下で実行されるとは思ってもみなかった。
でも確かに、今日この日を逃せば邪魔者であるハクお姉ちゃんとメアリお姉ちゃんがコウイチお兄ちゃんの傍にいない状況なんてまずあり得ない。
今が絶好のチャンスで残り時間は三分とない。
カップラーメンが硬めで仕上がる程度の時間で白黒はっきりさせないといけない。
コウイチお兄ちゃんは鈍麻のヘタレで優柔不断だから、率直にズバズバと切込んで逃げられないように鷲掴みにしないとダメ。メアリお姉ちゃんが前に色仕掛けで既成事実を作ろうと迫ったことがあったみたいだけど、色々と事態が切羽詰まってるとか言い訳をしてのらりくらりとやり過ごして、それ以来音信不通で知らぬ存ぜぬだそうな。
この人は自分からハーレムを作ると言いながら、自分から作ろうとしない人だからこっちから勝手に作るしかない。
「コウイチさん、今ここで答えて! 私のことを一人の女の子として好きかどうか!? ダメなら諦めるからっ!?」
「アイリスさん? いきなり、どうしたんだ?」
「そうやってはぐらかそうとする! 私はずっとこうしたかった! メアリお姉ちゃんとは違うから! でも……でも、私はメアリお姉ちゃんと違うから……人間じゃないから……化物だから、コウイチさんの隣に居ちゃいけないって思ってたから……今まで言わなかった。それにハクお姉ちゃんやメアリお姉ちゃんがいつもコウイチさんの傍にいたし……ううん、これは言い訳。ただ怖かっただけ。私の本当の気持ちを伝えて、今の関係が壊れてしまうのが……」
「……アイリス」
コウイチお兄ちゃんが目を丸くして驚いている。
ああ、もうそろそろ限界だ。
不安が膨れ上がっていく。
視界が歪む。
涙が勝手に溢れて来る。
コウイチお兄ちゃんの好きな人は私じゃないから答えをくれないんだ。
私は立ち上がってコウイチお兄ちゃんから離れて背中を向ける。
泣いている顔を見られなくない。
化物の私じゃ、コウイチお兄ちゃんの傍は相応しくない。
コウイチお兄ちゃんの好きな人は……私じゃないアイリスの方だ。
感情が抑えきれない。
暴走に巻き込まないように早く離れないと。
水の鳥籠を破壊しようと黒剣:夜天を出現させて握る。
振り上げようとしたその腕を後ろから引かれた。
「っ!?」
「答えを聞かずに何処に行くんだ?」
「聞かなくても分かるもん。コウイチさんの好きな人は私じゃないんだって……好きなのは私じゃないアイリスでしょ!?」
長い沈黙。
私が長く感じただけで本当は一瞬だったのかもしれない。
「多分、アイリスの言う通りだと思う。俺の初恋はアイリスじゃないアイリスだったと思う」
「…………」
やっぱり、私には勝ち目が無かった。
早く手を振り払って迷惑のかからない場所に行こう。
「でも、今は違う」
その言葉で振り払おうとした腕が止まった。
振り向きたくない。
そのままの体勢で私は言葉を待った。
「俺もアイリスと同じなんだ。今の関係が壊れるのが怖い。メアリの件だってそうだよ。ハーレムを作るとか言いながらさ、今の関係を壊したくなかったからダラダラと引き摺って来てたんだ。皆、何も言わないからそれでもいいんだと思ってた。でもやっぱり、いつまでもそのままじゃダメなんだよな」
私は恐る恐る踵を返してコウイチお兄ちゃんと向き合う。
コウイチお兄ちゃんは少し顔を赤くして、照れ隠しと言うかばつが悪そうな顔で頬を掻きながら、けれど私としっかり目を合わせて言う。
「まあ、その、なんだ……」
「優柔不断」
「うるせー、諸悪の根源は黙ってろ!?」
アオお姉ちゃんが入れた野次にコウイチお兄ちゃんが声を荒げる。
そのやり取りが何故か面白くて、泣いているのが馬鹿らしく思えて来た。
「俺もアイリスのことが好きだよ。目の前にいる小さなアイリスのことが。勿論、女の子としてな」
「ホント、に?」
「本当に」
「だって、私は化物だよ?」
「可愛いから何の問題もない」
「これからもっと沢山迷惑をかけちゃうかもしれないよ?」
「可愛い女の子に掛けられる迷惑なら幾らでも背負うさ。すぐそこに無理難題を吹っかけて来る可愛くて怖い女の子がいるしさ」
「ロリコンって呼ばれちゃうよ?」
「……それは、まあ……アイリスだから別に呼ばれても構わない」
今まで抱え込んで来たのがバカみたいだ。
この人は一歩踏み出すのが苦手なだけで、踏み出してしまえばどんどんこっちに来てくれる。
私の手から黒剣:夜天が零れ落ちる。鳥籠の床に落ちる前に光の粒になって私の中に戻っていった。
「アイリス、逆に聞いて良いか?」
「いいよ」
「俺はアイリスが思ってる以上に何も出来ないヤツだけどいいのか?」
「うん、それでいい。違う、それがいいの」
「俺は人間だから数十年くらいしか一緒にいてられないけどいいか?」
「うん。その間に一生分の思い出作ってもらうから大丈夫」
「あと二、三十年したらハゲ親父になるかもしれなけどいいか?」
「……そうならないように何か考えるから大丈夫」
私はコウイチさんと向かい合う。
コウイチさんが私と視線を合わせてくれる。
どちらからと伴く、私たちは顔を近づけていく。
コウイチさんの吐息が当たるような距離。
唇と唇が触れようとした瞬間、
「そこまで」
私は首根っこを掴まれてずりずりと引き離されてしまう。
アオお姉ちゃんの仕業だった。
「な、何するの! いい所だったのに!?」
「時間切れ」
そう言ったアオお姉ちゃんの視線の先に紅い龍が純白の狼を片手に戻ってくる姿が見えた。
ハクお姉ちゃん……あと数秒頑張って欲しかったな。
「あと言えとは言ったけど、発情しろとは言っていない。全部終わってから勝手にして」
「べ、別に発情とか違うもん! アオお姉ちゃんの意地悪!?」
こうして私の赤裸々告白タイムは一応の成功で終わったのでした。
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