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「気のせいじゃない。でも何が悪かったのかわからなくて、真正面から聞いても怒ってることすら認めてくれないから、その……」
「…………」
「もう信じてもらえないだろうけど、最初はそのことを聞きたかっただけなんです。こんなのジョークアプリだと思ってたし、あっても少しぼうっとするような効能だろうって。もしそうなら『後輩には嘘をつかないものだ』って言って聞こうって。……誘惑に負けたのは、本当ごめんなさい」
何も言えない林藤に十和田はまっすぐ目を向けてくる。膝から降りていないので、その瞳孔に映る自分まで見える距離だった。
「ねえ先輩。俺はなんで嫌われたんですか?」
「……っそんなの……」
気のせいと言い張っても、こんなことをした変態に教える義理はないと突っぱねてもいい。わかっているが、十和田の苦悩が伝わってきてそうは言えなかった。こんなことにはなっているが、彼は本当に悩んでいたのだ。
林藤は体を揺する。その場所がむず痒くて集中できない。何を言うか決められないまま、林藤は沈黙に負けて口を開いた。
「……後輩の、出来がいいと、……中の下は複雑だろ」
「中の下?」
「営業としてだよ。俺は中の下の成績しか出せない。入って一年の、色々教えてやった後輩が簡単に自分を抜いたら、その……複雑だろ」
顔を見ていられず俯いた。その表情を覗き込もうとして気づいたのだろう。
未だ勃起しているどころか期待にビクついている林藤のものに、十和田の体が緊張する。どう見ても一回出さなければ落ち着かない状態だ。
おどおどと長い躊躇のあと、大きな手が決心したように陰茎に触れる。
「っ、う、ぅ……♡♡」
「……ごめんなさい。出させるだけにするので」
「はっ♡♡ ぁあ……♡ ……ん、ん……ッ♡ だ、っ、だから……」
手付きは穏やかで本当に苛む気はないようだ。
後輩の、犯人のくせにこの状況に戸惑っている後輩。その事実を認めたのか、快感に負けたのかわからない。林藤は言葉の続きを探す。
「っお前が、ぁ、あうぅ……っ♡♡ 俺、っを♡ 構うのは♡♡ っ、おかしい……っ♡ おかしいと思ってたんだ、ぁあ……ッ♡♡ それで、ぎっ、疑心暗鬼になった♡ 見下されてるとか、そ、っ想像したから、それで態度が、へ、っ変だった……ッ♡♡ あ♡ あ♡♡ ぉお……っ♡♡」
「俺は……俺が成果を出すことが先輩の能力の証明だと思ったんです」
「っは、あ♡♡ はっ♡♡ ……っあ♡♡ っしょ、しょうめ……?」
「先輩は新規の契約数は少ないけど、担当先と関係が切れることは絶対にないでしょう。そんな人は先輩くらいだ。それに俺が新米のときも、俺が自信持つように自分の手柄を譲ってた」
気持ちいい。物足りない。体のことなのか、十和田からの真摯な称賛のことなのかわからない。
「林藤先輩にはそういういいところがある。その長所は数字につながるって、自分を使って証明したかった。……無神経だったのはすみません。でも俺はそういうつもりだった」
「んっ♡ んっ♡♡」
「……先輩? あ! そ、そうか、先に催眠解かないと敏感なのか……!」
そう言って十和田はスマホを構えた。
目の前に画面を突き付けられ、上擦った声が解除を命じる。
画面。点滅。最早慣れたそれを見ても、物足りなさも興奮も収まる気配がない。
「…………」
「もう信じてもらえないだろうけど、最初はそのことを聞きたかっただけなんです。こんなのジョークアプリだと思ってたし、あっても少しぼうっとするような効能だろうって。もしそうなら『後輩には嘘をつかないものだ』って言って聞こうって。……誘惑に負けたのは、本当ごめんなさい」
何も言えない林藤に十和田はまっすぐ目を向けてくる。膝から降りていないので、その瞳孔に映る自分まで見える距離だった。
「ねえ先輩。俺はなんで嫌われたんですか?」
「……っそんなの……」
気のせいと言い張っても、こんなことをした変態に教える義理はないと突っぱねてもいい。わかっているが、十和田の苦悩が伝わってきてそうは言えなかった。こんなことにはなっているが、彼は本当に悩んでいたのだ。
林藤は体を揺する。その場所がむず痒くて集中できない。何を言うか決められないまま、林藤は沈黙に負けて口を開いた。
「……後輩の、出来がいいと、……中の下は複雑だろ」
「中の下?」
「営業としてだよ。俺は中の下の成績しか出せない。入って一年の、色々教えてやった後輩が簡単に自分を抜いたら、その……複雑だろ」
顔を見ていられず俯いた。その表情を覗き込もうとして気づいたのだろう。
未だ勃起しているどころか期待にビクついている林藤のものに、十和田の体が緊張する。どう見ても一回出さなければ落ち着かない状態だ。
おどおどと長い躊躇のあと、大きな手が決心したように陰茎に触れる。
「っ、う、ぅ……♡♡」
「……ごめんなさい。出させるだけにするので」
「はっ♡♡ ぁあ……♡ ……ん、ん……ッ♡ だ、っ、だから……」
手付きは穏やかで本当に苛む気はないようだ。
後輩の、犯人のくせにこの状況に戸惑っている後輩。その事実を認めたのか、快感に負けたのかわからない。林藤は言葉の続きを探す。
「っお前が、ぁ、あうぅ……っ♡♡ 俺、っを♡ 構うのは♡♡ っ、おかしい……っ♡ おかしいと思ってたんだ、ぁあ……ッ♡♡ それで、ぎっ、疑心暗鬼になった♡ 見下されてるとか、そ、っ想像したから、それで態度が、へ、っ変だった……ッ♡♡ あ♡ あ♡♡ ぉお……っ♡♡」
「俺は……俺が成果を出すことが先輩の能力の証明だと思ったんです」
「っは、あ♡♡ はっ♡♡ ……っあ♡♡ っしょ、しょうめ……?」
「先輩は新規の契約数は少ないけど、担当先と関係が切れることは絶対にないでしょう。そんな人は先輩くらいだ。それに俺が新米のときも、俺が自信持つように自分の手柄を譲ってた」
気持ちいい。物足りない。体のことなのか、十和田からの真摯な称賛のことなのかわからない。
「林藤先輩にはそういういいところがある。その長所は数字につながるって、自分を使って証明したかった。……無神経だったのはすみません。でも俺はそういうつもりだった」
「んっ♡ んっ♡♡」
「……先輩? あ! そ、そうか、先に催眠解かないと敏感なのか……!」
そう言って十和田はスマホを構えた。
目の前に画面を突き付けられ、上擦った声が解除を命じる。
画面。点滅。最早慣れたそれを見ても、物足りなさも興奮も収まる気配がない。
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