【完結】ずっと遠くの暗闇に見つけた、

ベッド（2）＊

　垂れるそれを指で拭って、純也は明良のそこを愛撫した。圧をかけたり、くすぐったりされるうち、そこでの性交を覚えている体は指先を甘く食んでしまう。

「あ、あっ……っじゅ、く……ちゃんとほぐして。そ、んな、塗ったり……っ」

　いつものことだ。彼の何を刺激するのか、これをさせると純也は明良の指示を無視して自分の精液を塗りつけるのに執心する。かわいらしい暴走を増長させているのは、明良もそれが嫌いではない、と見てわかるからだろう。

「っは、明良さ、明良さん」

　興奮に息を荒くしながら、純也は熱心に内壁を探る。

「勃ってきてる……明良さんも気持ちいい？　俺、ちゃんとできてる？」

「っい、いい、純くん……っ塗るの、ダメ、広げて……っ」

「明良さん、明良さん……中すごいあっついよ。ここに俺の、いれていいの？　生でぜんぶ、出していい？」

「いい、いいから、入るように……っ」

　言いかけ、明良は声を飲んだ。飛沫をすくって内部にこすりつけるばかりだった指が、急に奥を開いたからだ。

　覗きこめば赤い体内が見えてしまうかもしれない。さすがに赤面する明良を抱きしめるようにして、純也は再びベッドの宮を探った。

　何かと身構える間もなく、ひらかれたそこに冷たいローションが落とされる。明良は指をくわえたままビクリとした。

「っ、つめ、たいよ、純く……っ！」

「ごめん、でも」

　乱暴にほぐしはじめた指と同様、その声は焦りにか早口だった。

「はやく、いれたい、明良さん……っ」

　切羽詰まった声音だ。明良は笑ってしまう。

「さっき……っだ、出したでしょ？」

「ダメなんだ、明良さんの中が俺ので濡れてるのとか、俺、想像だけで、俺……」

「純くん、っ付けないでいれるの、好きだもんね」

　明良は自分の薄っぺらい腹に触れる。

「中に出して、すぐ指入れてぬちゃぬちゃさせるの、大好きだもんね」

「……っ明良さんはそういうこと言っちゃダメ！」

　子供の癇癪みたいな声に明良はますます笑ってしまう。

「どうして？　恥ずかしい？　入れっぱなしで何回も出して、抜いたときとろとろ出てきたのをまた入れるのも好きでしょ、とかも言っちゃダメ？」

「ダメ！」

　足をのせたままの上半身で迫られると、さすがに息苦しくて息が詰まる。そしてそれ以上に期待で言葉を飲んでしまう。

　純也は明良のあごや頬にキスをしながら、その場所に自分のものをあてがった。ほぐすのは彼のほうが慣れている。もういいかどうか、純也は感触で判断できるのだ。

「……今日もしたくなるから、そういうこと、言うのダメ」

　制止のようでおねだりでもある一言に、明良はふっと笑ってしまう。

　緩んだそこを先端がじらすようにこする。まだ幼い駆け引きがかわいくて、明良は純也の前髪に触れた。

「……どういうこと、したいの？　教えて」

「言えないこと。……言うのも恥ずかしいこと、したい」

　いつもはサイドに流れている髪を耳にかけ、そのまま形の良い耳朶をくすぐる。キスの距離でないと聞こえないくらいの、ひそめた声でうながした。

「教えて。そしたらご褒美あげる。……なんでもしていいって、『よし』してあげる」

「…………」

　純也は真っ赤な顔で唇を噛み、明良の耳元に顔をよせた。年下の男の甘えた声が、とぎれとぎれ、したことのないことをねだる。

　希望を最後まで全部言わせて、明良はそのきれいな頭をなでた。

「ちゃんと言えたね。純くんはいい子だ」

「……しても、いいの？　変態みたいなことだ」

「ご褒美あげなきゃ」

　いれてもいいよ、とまず最初の『よし』をすれば、熱いそれは待ち焦がれたように明良の中へ入ってきた。大きく熱い上に、年齢のせいかそれは驚くほど硬い。

「っふ、う、う……っあ！　純く、じゅんくん……っ」

「あっ、すごい、せまい……っ明良さん、熱いよ……俺、すぐ、すぐ……ッ」

「ゆ、ッすっちゃ、ダメ……っあ、あ！　あ！」

　純也が暴走する若さを必死に御そうとしているのはわかる。あまり成功していないのも、自分の体内のことだ、よくわかる。

　夏場の犬のように荒く息をして、純也はどうにか、彼のすべてをおさめた。

「っあつい、せまい……ぐにぐにしてる」

　鼻をすすって彼は呟く。

「すぐに出ちゃいそう。明良さんの中、汚したい……」

「っあ、大きいよ、純くん……。あまり……ッ興奮、しないで」

「ムリ……」

　無意識に蠕動する内部に、純也は身を揺すりながら興奮を抑えているようだった。

　前回挿入を許したのはいつだっただろう。余裕のない年少者にとりとめなく考えながら、明良はできるだけそこを弛緩させ、彼が好きに振る舞えるよう馴染むのを待った。

　大きく開いたそこから痛みが消え、重たいような違和感だけになるのを待って、明良は言う。

「ちょっとだよ、……ちょっとだけ、動いて」

「うん……ッ」

　ようやっと次の『よし』が出たとばかりに、純也は言われた通りほんの少しだけ出し入れする。明良が大きすぎる違和感にのけぞれば、シャツの襟から覗いた喉仏の下を強く吸われた。

　ちりっとした痛みが鬱血を知らせる。ちゃんと普段は見えない場所を選んだことに、明良はふっと微笑んだ。

「純くん、純也……、っあ、あ、あ！　そこ、っそこ！」

「あきらさ、明良さん……ッ。もういい？　もうちょっと大きく動いていい？」

「んっ、ん、うんッ！　ああっ、あ、あ！」

　最初は身を揺する程度だった動きが、ちゃんと出し入れする動きになり、抜ける寸前まで引いて奥を打つ動きになる。明良は純也の滑らかな肌に爪を立てないことに必死で、声を殺すことまで気は回らなかった。

「っああ、あ！　あっ、いい、純くん……っいい、気持ちいいっ」

「明良さ……明良さん、明良さん……っ」

　素足にキスして硬い足を食みながら、純也は必死で明良の名を呼ぶ。彼の腰が震え、若い矜持が射精をこらえているのが感じられた。

「中いいよ、純くんの気持ちいい、あ、あっ！　じょうず……っああ！　そこ、純く、そこ……ッ！」

「明良さん、あついよ、出ちゃう……っ気持ちいい、明良さんの中、せまい……っ」

「いきそう？　っ、いって、小さくして……ッこれだめ、大き過ぎ……っあ、はやくいって、出して、中出し、して……ッ！」

「っ明良さん、あきらさ……ッ出……っあきらさん、出る……ッ」

　食っているのに、食われている感じ。犯しているのに犯されている感じ。純也は鼻をすすりながら必死に明良の名前を呼ぶ。

「あっ、あ、明良さんッ、出る……っ中に出していい？　ぐちゃぐちゃにしていい？」

「いい、いいから、っあ、大きい、純くん……っ出して、中、純くんのでどろどろにして……ッ」

「あきらさ、明良さん、出る……あ、あッ、んう……ッ」

　ぎゅっと明良を抱いた彼が震えるのを、明良は興奮の只中で見ていた。若い彼とはこなせる回数が違う。久々だから今日はいっぱいさせてあげようと、明良は射精しないよう押さえていた自身を握り直した。

　体質か、彼の放出は長い。

「っあきらさん、あきらさ、気持ちいいっ……明良さん……ッ」

「うん。うん、純くん」

　必死に明良を呼ぶセックス中の純也は、奪っているのに奪われているような声を出す。