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華やかな舞踏会の喧騒が響く宮殿の大広間。その一角で、美しいドレスに身を包んだ少女が、冷ややかな笑みを浮かべていた。名はアリシア・ルミエール。彼女はこの国の公爵家の令嬢であり、社交界でも一際目立つ存在だった。

「また貴方ですか、アリシア様」

彼女の前に現れたのは、今宵の主役である王子、レオンハルト・アルベール。彼の瞳には、警戒の色が浮かんでいた。

「何かご用でしょうか?」

アリシアは優雅に頭を下げながらも、心の中で嘲笑っていた。自分が悪役令嬢としてこの場にいる理由は、まさにここから始まるのだ。

「レオンハルト王子、今夜は私とのダンスをお断りになるつもりですか?」

彼女の声には挑発的な響きが含まれていた。王子は一瞬ためらいの表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。

「申し訳ない、アリシア様。私は他に約束があるのです」

その言葉に、周囲の人々の視線が集まった。アリシアは一瞬の隙を見逃さなかった。彼女はわざとらしく悲しげな表情を浮かべ、一歩後退した。

「そうですか。それでは、仕方ありませんね」

その瞬間、会場の空気が変わった。人々の間に緊張が走り、次第にざわめきが広がった。アリシアは満足そうに微笑み、内心で計画が順調に進んでいることを確信した。

彼女の本当の目的は、ただのダンスではなかった。この夜、アリシア・ルミエールは、悪役令嬢としての真の姿を見せる決意をしていたのだ。

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