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第6話 馬とは鳴きながら感情を露わにする生き物である

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「ヒッ、ヒヒッ。ヒヒーーーーーーンッ!!(まずいぞ皆ぁぁ!!盗賊だ!ミゲルは盗賊だった!)」
「うーーーん。どうした。お前急にそんなに、喚き出して?なんだ、またケツをシバかれたいのか?」
「ヒーーン(違えに決まってんだろ、クソ野郎!)」

 俺は柵の中を喚きながら駆け回った。一刻も早く知らせなくてはならない。この真実を……!

 チャンバスが家の奥から飛び出してきた。

「ヒヒーーン(チャンバス!気づいてくれ!誰か大人が必要だ。最低でも、三人は欲しい!)」
「どうしたんだい、アレキサンドース?ニンジンかい?」
「ヒヒン(ちげーーーよ!毎回、ニンジンで済ませるのもやめろ!気づけ!)」

 俺は、喚きながら同時にその場で地団駄じだんだしてみた。頼む!気づいてくれよ。

「そうか、分かった!!」

 よし、気づいたのか!ありがとう。さすがに気づくだろう。こんだけ、暴れたんだ。今、大人を連れてきて、そうそう。

 手綱を持ってきて散歩だ。

 違うだろおおお!盗賊だよ、と う ぞ く! あーもう駄目だ。俺は、諦めた。どうやら、馬語はチャンバスには分からないらしい。

「ヒヒッ、ヒヒン(ガッカリだよ……。どうすりゃいいんだ)」
「あれ、急に大人しくなったね?散歩じゃないの?どうしたんだい?そうか、さっきまで鳴いてたから、疲れたんだね。よしよし」

 チャンバスが俺の毛並みをなぞるように手で触ってくる。ちょっと敏感なんだ。そこら辺は、尻尾が少し、上に上がってしまう。心なしか、遠くのミゲルが笑っているような気がした。
____________________________





 その夜に藁の小屋で俺は、寝れずにいた。寝れる訳がないだろう。盗賊がいるんだよ。近くに……。もしだ、もしミゲルが俺の事を襲ってきたら、俺はどう対処すればいい。そんなことを考えながら、夜更けに一人で佇んでいた。今の俺は何か物音に対して、すごく敏感になっている。少しでもガサッ!なんて音がしたら、速攻でここを飛び出る。

 そんな時だった、足音がする。

「ヒヒン(来たか)」

 俺は、二、三回素早く瞬きをして[天眼]を発動させた。

『スキル:[天眼]を発動、』

「あーもうイエス。イエス一択だから」

 脳内で瞬時に返事をする。すると、目の前全体が立体的なモデルとなって全ての情報が俺の脳みそにぶち込まれる。て言うか、この感覚、船酔いのそれよりヤバくて、吐きそう。コンピューターじゃなきゃ、この大量の情報を整理できない……。ましてや、今の俺は馬だ。

 一旦、必要な情報だけ頭の中に纏めた。おそらくだが、藁の小屋の外に盗賊が立ってる。『表示』と同時に装備の情報も入ってくる。

 コイツら、ダガーとそれに、ミゲルだ。ミゲルが居やがる。合計で四人。塞ぐようにして、俺の小屋を囲んでやがる。


「ヒヒーーーーーンッ!(外に出る!!)」

 パカラッ、パカラッ、と豪快に蹴りながら俺は小屋を飛び出した。

「なっなんだ。あの、黒馬?俺らに気づいてたのか?」

 あたりめーーだろ!『アレキサンドース』様だぞ?俺は、馬であって、普通の馬じゃない。

 ”スキル持ちの馬” なんだよ!とりあえず、逃げる!!

「ヒヒーーーーン!(誰かぁ!!誰か!盗賊ダァ!)」

 俺は柵を飛び越え、辺りの草原を駆け回り、森の中へと突っ走って駆けていく。
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