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人生おじさんのこれからの人生
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その日の夕方は、そんなに忙しくなく、次の授業まで合間が出来たので、急にお父さんの遺品のカメラで、お花の写真を撮ろうと思いました。
塾の裏手に行くと遠くの方から『ぷーうーぷー、ぷーうーぷー』と笛がなり、だんだんとその笛の音と共に1台の自転車が、人生おじさんの方へ向かって来ました。
その自転車の後ろには大きい箱を積んでいて、運転しているのは、ちょっと疲れた感じのポニーテールの女の人でした。首にはタオルと笛をさげていました。
「こんばんは、凄く綺麗なお花ですね…」
「こんばんは、ありがとうございます…あなたは…」
「通りすがりの豆腐屋です…向こうから真っ赤な花が見えて、こっちまで来ちゃいました」
「お花好きなんですか?」
「はい、特に花びらが、5枚赤い花が…」
その女の人は、急にポニーテールの髪に結んでいたハンカチを外して、広げました。
「何か、この花に似ていませんか?」
「えっ…」
そのハンカチは、だいぶ使い込まれていて、色が薄くなっていましたが、回りが黄色に5枚の花びらの真っ赤な花が1輪描かれてました…。
ゆきちは、それを見ると自然と涙が溢れて出て、胸がキュンとなり、豆腐屋の女の人の顔を、もう一度良く見つめました。そして、涙声で、振り絞り、ハンカチのことを聞いてみました。
「…それは…どう、したの、ですか…」
「え、これですか?…」
その女の人も、急に泣きながら聞かれたので、とまどいながら、ハンカチのことを話しました。
「小さい時に大切なお友達からもらっ…、…」
女の人は、急に泣き出したおじさんの顔をまじまじと見て、大切な懐かしい名前を思い出して、呼んでみました。
「ゆーちゃん…?」
「うん、みゆちゃん…?」
「うん…」
みゆちゃんも涙が溢れて来て、ポロポロと涙を落ちました。ふたりは自然と抱き合いました。
『お母さんの大好きな真っ赤なお花』
『お父さんが用意してくれたプレゼント』
『柔道おじさんの塾』
ゆきちを愛してくれた人達が奇跡を起こしくれました。何一つ欠けても2人は、再び逢うことは出来なかったでしょう。
その日は、みゆちゃんが持ってきた豆腐を全て買い、時間の許す限り、お互いの話をしました。
その日以降、夕方になると『ぷーうーぷー、ぷーうーぷ』と笛の音を鳴らしながら、ポニーテールに赤いハンカチを巻いたお豆腐屋さんが、自転車で人生おじさんの学習塾に来てくれるようになったそうです。
終わり
塾の裏手に行くと遠くの方から『ぷーうーぷー、ぷーうーぷー』と笛がなり、だんだんとその笛の音と共に1台の自転車が、人生おじさんの方へ向かって来ました。
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「こんばんは、凄く綺麗なお花ですね…」
「こんばんは、ありがとうございます…あなたは…」
「通りすがりの豆腐屋です…向こうから真っ赤な花が見えて、こっちまで来ちゃいました」
「お花好きなんですか?」
「はい、特に花びらが、5枚赤い花が…」
その女の人は、急にポニーテールの髪に結んでいたハンカチを外して、広げました。
「何か、この花に似ていませんか?」
「えっ…」
そのハンカチは、だいぶ使い込まれていて、色が薄くなっていましたが、回りが黄色に5枚の花びらの真っ赤な花が1輪描かれてました…。
ゆきちは、それを見ると自然と涙が溢れて出て、胸がキュンとなり、豆腐屋の女の人の顔を、もう一度良く見つめました。そして、涙声で、振り絞り、ハンカチのことを聞いてみました。
「…それは…どう、したの、ですか…」
「え、これですか?…」
その女の人も、急に泣きながら聞かれたので、とまどいながら、ハンカチのことを話しました。
「小さい時に大切なお友達からもらっ…、…」
女の人は、急に泣き出したおじさんの顔をまじまじと見て、大切な懐かしい名前を思い出して、呼んでみました。
「ゆーちゃん…?」
「うん、みゆちゃん…?」
「うん…」
みゆちゃんも涙が溢れて来て、ポロポロと涙を落ちました。ふたりは自然と抱き合いました。
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ゆきちを愛してくれた人達が奇跡を起こしくれました。何一つ欠けても2人は、再び逢うことは出来なかったでしょう。
その日は、みゆちゃんが持ってきた豆腐を全て買い、時間の許す限り、お互いの話をしました。
その日以降、夕方になると『ぷーうーぷー、ぷーうーぷ』と笛の音を鳴らしながら、ポニーテールに赤いハンカチを巻いたお豆腐屋さんが、自転車で人生おじさんの学習塾に来てくれるようになったそうです。
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