人生おじさんと赤い花

人生おじさんと新しい出逢い

　台風が去った数日後の朝、人生おじさんは何気なく塾の裏手に行きました。そして、あの植物を埋めた場所を見ました。

　そこには、葉っぱを２枚つけた若葉を発見しました。あの植物の葉っぱの形が一緒で、人生おじさんは思わず叫びました。

　「人生とは…人生とは…とは」

　そして、急いで水を汲みに行き、植物に水をあげました。人生おじさんは、その植物に愛着が涌いてきて、急に名前を付けたくなりました。

　今回は、ずっと元気にいつまでも生きていてほしいので、永遠と書いて『とわ』と名付けました。小さい板に名前を書いた物を作り、その植物の側にそっとさしてあげました。

　毎朝、散歩する前に塾の裏手に行き、永遠に水をあげながら、朝の挨拶をするようになりました。

「永遠、おはよう、大きく育てよ…」
　
　それから数日経つと植物の葉っぱが４枚になり、８枚になり、屋根へ真っ直ぐと伸びていきました。そして、壁一面につるが四方八方に伸びていき、今度はつるのあちこちで、つぼみがいくつも出来ました。

　また数日経つとつぼみは、だんだんと先の方が赤くなり、そこから赤い部分が増えていきました。また、数日経つとだんだんと花が開き始めて、あちこちで真っ赤な花を咲かせました。

　その花は、花びらが５枚で、お母さんが大好きだった花に似ていたので、人生おじさんは、天国のお母さんが咲かしてくれたんだと思いました。
　
　塾の裏手の壁は、赤い花が咲き誇り、どこからか飛んできたのか蝶々たちがその花の蜜を美味しそうに吸っていました。羽が白いのや、黄色くて綺麗な柄のついたちょっと大きめ蝶もいました。

　遠くから見ても華やかで、台風から塾を守った植物が、花を咲かせたと評判になり、町の人たちも、見学に来るようになりました。