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正統継承者の王女ミキン

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 ミラーバードのミランは、ミキンの心を写すように綺麗な声でさえずりました。ミランを鳥かごから出しても逃げません。その美しい調べは、城中に響き渡り、ヨギンの部屋まで聞こえていました。

 ミキンの部屋の方からその小鳥の美しいさえずりが、聞こえてきました。ヨギンは、自分の部屋から出て、ミキンの部屋の前まで行き、ミキンに声をかけました。

「お姉様、お部屋から美しい鳥の声が聞こえますが、何か飼ってますの?」

 ミキンは、またヨギンに取られるのでは、とっさに嘘をつきました。

「いいえ、外にいる小鳥さんでは、ないかしら…」
「そうですか…お姉様、じゃあ、部屋の中に入れてください…」
「今は、だめよ…あとにして…」
 
 ヨギンは、ミキンの部屋の扉を開けて、勝手に入って、来ました。

「あっ、やっぱりいた…この小鳥ですね…貸してください…」
「いやよ…やっと怪我が治ったのよ…」
「お父様にいいつけますよ…」
「あっ…返して…ミランを返して…」

 ミキンは、鳥かごを押さえてましたが、一瞬、手が緩んだ隙にヨギンは、強引に鳥かごを引っ張り、奪ってしまいました。そして、すたすたと自分の部屋へ持っていってしまいました。

 ヨギンは部屋に入ると机の上に鳥かごを置いて、鳴くのを待ってましたが、全然鳴く気配がありません。我慢しきれずに鳥かごを手で叩き始めました。

「ほら、早く、鳴きなさいよ…」
「…」

 ヨギンは、怒りがこみ上げると部屋にあった棒状のムチで、鳥かごをおもいっきり、バンバンと叩きました。それでも鳴かないので、鳥かごの入口を開けると直接、ムチで小鳥を何度も叩きました。

「早く、鳴きなさいよ…」
「ぎゃあ、ぎゃあ…ぎゃあーーー…」

 小鳥は、この世の声とも思えない声で、最後に鳴き、絶命してしまいました。その声は、ミキンの部屋まで届き、ミキンは慌てて、ヨギンの部屋に行き、扉をどんどん叩いてヨギンを呼びました。

「ヨギン、ヨギン、開けてちょうだい…ミランを返して…」
「お姉さま、いいですよ…」

 部屋の扉が開くとヨギンが、鳥かごを持って立ってました。鳥かごの中には、ミランが血を流して、ぐったりと横たわっていました。

「はい、お姉様、お返ししますわ…」
「えっ、ミランに何をしたの…」
「何にもしませんわ…まだ、怪我が治ってなかったんじゃないですの…」
「ひどい…返して…」

 ミキンは、鳥かごを持って、自分の部屋に急いで戻りました。初めて、ヨギンに貸したものが戻ってきました。

 部屋に入り、鳥かごの中のミランをあらためて見ると酷い状態です。鳥かごから、そっと出して、優しく血を拭いてあげました。ミキンは、自然と涙が溢れだし、謝りながら、ハンカチで小鳥を包んであげました。

「ごめんなさい…ミラン…うっ、うっ…」

 その時、ミキンの心の中で、何かが崩れていきました。そして、ミランを包んだハンカチを持ち、自分の貯めていた全財産と少しの着替えをカバンにつめて、置き手紙をしてこっそりとお城を抜け出しました。

『お父様、お母様、今までありがとうございます。ミキンは、お城を出て行きます。もう探さないでください。さようなら ミキン』

 ミキンは、お城を出ると東の洞窟を抜けて、山の方に向かいました。そして、山を登って行くと小さな湖があり、落ち着いていて、景色が良い場所がありました。そこの側に穴を掘り、ミランを埋めてあげました。

「ミラン…ここで、ゆっくり休んでね…」

 穴を埋めると不思議な事が起きました。ミランを埋めた場所から光の玉が出てきて、その光は、ミキンを優しく包み込みました。そして、心の中にミランの感謝の言葉が入ってきました。

『ありがとう…楽しかった…私からのプレゼントを受け取って…』

 光に包まれるとミキンは、急に歌いたくなりました。歌い始めると自分でもビックリするくらい、綺麗な声で歌ってました。どうやらミランからの感謝の贈り物でした。そのまま、ミキンは歌いながら、どこかに行ってしまいました。

 しばらくすると、山の上にある湖を訪れた村人達から、透き通るような、綺麗な声を聞いたという話が噂になり、その湖は、『女神が訪れる湖』と言われるようになりました。
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