微笑みの梨乃亜姫

魚口ホワホワ

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伊吹と梨乃亜の恋物語

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 梨乃亜一行は、旅の芝居一座の三平劇団にお世話になることになりました。そして、2週間後の殿様への奉納芝居で、お城の中に入れます。そこで、お殿様に会うのが目的です。

 三平劇団は、三平座長を筆頭に7人家族で、座長、奥さん、長男、次男、三男、長女、次女で芝居をしているので、外から役者を入れるのを大歓迎です。ましてや、超男前の伊吹や、べっぴんさんの梨乃亜が入るとなると大盛況間違いなしです。

 三平座長は、二人を主役にして伊吹と梨乃亜の恋物語にしようと台本を書き、皆の前であらすじを説明しました。

「これは、遊び人とお城にいるお姫様の恋物語で、お姫様が遊び人に一目ぼれして、城を抜け出し、遊び人に会いに行くという話になります…」
「えー、梨乃亜様がお姫様役で、俺が遊び人…無理ですって…」
「伊吹! 殿様に会うためです…頑張りましょう」
「ところで、わすは何の役だすか?」
「美代さんは、大木役です、枝を持って立っててください…」
「えっ?もっと、良い役ないだすかー」
「実は、この大木が大切で、大木の前で二人が会ったりするので、すごく必要なのです…」
「そうなんだすか?…それじゃやるだす…」

 一座の各々にも役が振られ、今日は練習日です。明日からもう披露するので、みんな一生懸命です。

「伊吹、大丈夫だから…おもっきりやって!」
「梨乃亜様になんて、怖いですって…」

 梨乃亜は、しょうがないので、伊吹の尻をひっぱたきました。そうすると伊吹の目付きが変わり、本当の遊び人のように軽い感じに変わりました。

「伊吹さまの芝居を見せてやる!」

 まずは、梨乃亜姫が悪者に襲われて、遊び人が助けて、初めて出会うところです。

「この悪党ども、そのお嬢さんを離しやがれ…」
「なんだと、この青二才野郎!」

 そして、伊吹の立ち回りです。戦いは得意なので、伊吹格闘術 お助けの構えで悪者達をやっつけます。

「いたた…この野郎…覚えてやがれ…」
「おととい来やがれ…お嬢さん大丈夫ですか…」
「はい、大丈夫です…お強いのですね…」

 二人は見つめ合い、梨乃亜姫が遊び人に恋してしまうところです。

「あの…お名前は…」
「伊吹って…くだらない者ですぜ…お嬢さんは…」
「梨乃亜…です…また、お会いできますか…」
「しがない遊び人…そこら辺で一杯やってますぜ…」

 舞台の奥には、美代が枝を持って、にやにやして、二人の芝居を見ています。

 そして、話は後半の遊び人の伊吹が、梨乃亜姫を袖にするところです。倒されても、倒されても、足にすがりつくところです。

「梨乃亜よ、俺に近寄るとやけどするぜ…あっちに行きやがれ…」
「待って、伊吹さま、置いてかないで…」

 それを見てた三平座長たちは、目が釘付けになり、我に戻ると拍手喝采しました。

「すっごい、二人とも役者の才能大有りで…」
「すごい、迫真の演技でした…」
「よっ! お二人さん千両役者だね…」

 二人は、照れてまんざらでもない顔になりました。

「座長! おらの演技はどうだすか?」
「美代さんもすごい、ただのうどの大木でした…」
「へへへ…ほめられただす…」

 そして、次の日になり、新しい芝居が始まり、初日からけっこうな人達が見に来ました。

 もちろん町娘達も伊吹の素っ気ない態度を自分に当てはめ、胸がどきどきしたり、梨乃亜の美しさにも若い男の子達も釘付けになりました。美代も舞台の特等席で二人の芝居を見れるので、一生懸命にうどの大木をしました。

 芝居も回を重ねるごとに噂は広まり、立ち見席や1日に三回公演に増やしたりして、たくさんの人達を楽しめました。

 そして、座長の発案で、瓦版屋さんに伊吹と梨乃亜の絵を描いた瓦版を作ってもらい、芝居の前売り券にするとそれも飛ぶように売れて、瓦版屋さんも笑いがとまりません。

「やっぱり、兄さん役者だったんだねぇ…」

 そして、忙しくあっという間に2週間が経ちました。お城での奉納芝居の日になりました。
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