微笑みの梨乃亜姫

魚口ホワホワ

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梨乃亜、役者になる?

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 梨乃亜は、美代と町をまわり、西の大国の町並みがとても綺麗に整ってるのといろんなお店屋さんが並んで、町全体に活気がありました。

 ひときわ、人が並んでるところがあり、覗きに行きました。旅の一座の芝居小屋でした。町娘が噂話をしていました。

「すっごい、男前の役者が入ったそうよ!」
「えー、楽しみ!…早く見たいわ」

「梨乃亜様、男前だすって!」
「たまには、息抜きしましょう…」

 梨乃亜と美代は、芝居見物しようと町娘の列に並びました。

 その頃、伊吹は町娘にちやほやされたので、調子に乗っていました。舞台用のどうらんを塗られ、化粧をされていました。

「伊吹さん、最後に登場して、町娘達ににこっとしてくださいよ!」
「わかりました…任せてください!」

 梨乃亜と美代は、芝居小屋に入ると町娘達に圧倒されて、後ろの方の席に追いやれていました。芝居が始まりました。

 芝居の内容は、親の借金の型に町娘が悪徳金貸し一味に連れ去られ、その娘に恋する若者が、なけなしの銭で、侍を雇い助けに行きました。そして侍が悪者達をバッタバッタと切り、町娘が若者ではなく、侍の方を好きになってしまい、町娘が侍を誘い芝居小屋に見物に行くという話らしい。

「何か、あの若者かわいそうね」
「あの、侍、男前だす…」
「でも、見物している町娘達は、全然、喜んでいないわね…」

 町娘と侍が、芝居を仲良く見ていると最後に傘で隠した役者が出てきて、傘から顔を出して、にこっと微笑みました。その途端に前の方の町娘達は、悲鳴を上げました。

「にこっ!」
「きゃー、男前!」
「きゃー、きゃー」
「すんごい、男前!」

 町娘達は、すごい騒ぎになっています。その男前に失神する町娘もいました。

「あれ、何か見たことある顔だす?」
「伊吹よ…」
「えー、伊吹だすか…」
「こらー!伊吹!」
「えー?…梨乃亜様?…やばい!」

 伊吹は、持っていた傘を投げ捨て、慌てて奥に逃げようとしましたが、足がもつれて、舞台上で転んでしまい、それを見た町娘達は舞台に上がり、伊吹を捕まえに行きます。その後に梨乃亜と美代が続きました。

「きゃー、男前待って!」
「逃がさないわよ…」
「いたた…」

 それを奥で見ていた座長が、慌てて伊吹から買い上げた瓦版を持って、舞台に出てきました。

「はい、皆さん…落ち着いてください…この瓦版を持ってきてくれたら、次回は、ただで芝居を見ても良いですよ!」
「えっ?ただ?」
「ほしい! ちょうだい…」
「はい、一列に並んでください…」

 町娘達は、ただで芝居をまた見れると瓦版をもらうためにきちんと一列に並びました。その隙に伊吹を美代が確保しました。伊吹は観念して、正直に書状の事を話しました。

「梨乃亜様、ごめんなさい…書状半分無くしました…」
「半分って?…書状を見せなさい」
「はい…」

 伊吹は、ふところから、半分に破れた書状を梨乃亜に見せました。

「これじゃあ、書状は役にたたないわ…西の大国のお殿様に会えないわ…」
「西の大国のお殿様に会えないだすか?」

 座長は瓦版を一枚づつ配り、町娘達を帰していきました。ひととおり配り終えると座長は、梨乃亜と美代に話しかけました。

「伊吹さんのお連れさんですか?」
「はい、一緒に旅をしてきました…」
「そうだす…」
「今、聞こえたのですが…お殿様に会いに来たとか?」
「はい、詳しくは言えないのですが、書状を持って会いに来ましたが…書状が…」
「伊吹のせいだす!」
「ごめんなさい…」

 美代がこぶしを振り上げて、伊吹の頭を殴ろうとしました。伊吹は頭をおさえました。

「このー!」
「ひええー」

「ちょっと待ってください…お殿様に会えますよ…」
「えっ、会えるんですか?」
「はい、ちょうど2週間後、お城で奉納芝居をします…もちろんお殿様も見ますよ…そこで、一緒に芝居をしませんか?」
「芝居ですか?」
「娘さん、べっぴんなんで、ぜひ役者で出てください…」
「えー、べっぴんなんて…えー、えー」
「はい、決まりですね!」

 座長は、梨乃亜も芝居に出るように押しきりました。梨乃亜もまんざらでもなく、にやにやしてました。

「梨乃亜様が役者だすか…いいだすね」
「梨乃亜様もお綺麗なので、ぜひ、一緒にやりましょう!」

 伊吹は、この流れに乗じて、書状の半分を無くした事をうやむやにしようと一生懸命におだてました。

 こうして、梨乃亜一行は、旅の一座にお世話になることになりました。 
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