微笑みの梨乃亜姫

魚口ホワホワ

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誘拐される?

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 宿場町に着いたのは、暗くなりかけた時で、伊吹は、まだ美代の背中で、夢の中でした。今夜の宿を決めて、部屋に入りました。お金も贅沢出来ないので、3人で1部屋で安いお部屋にしました。

 部屋に入っても全然起きない伊吹を布団ごと縛り、梨乃亜と美代は出された夕飯を食べる事にしました。

「梨乃亜様、伊吹の夕飯も食べちゃってええですか?」
「そうね、今晩は起きなさそうだから、食べてもいいわ」
「やったー、いただきますだ」
「美代は、相変わらずの食いしん坊ね…」

 夕飯を食べ終わると2人でお風呂に行きました。そして、戻ってきて温まったので、寝ることにしました。

「それでは、美代寝ましょう…」
「はい…ぐうくう…ぴーひゃらら…」
「あら、美代…もう寝ちゃったの…」

 梨乃亜も目を閉じて、寝ようとしましたが、美代のいびきで、なかなか寝付けず、困り果てて、布団を持ってて、押し入れで寝ることにしました。

「ここなら、いびきがそんなに聞こえないわ」

 梨乃亜は、安心して眠りにつきました。

 夜中になると廊下をみしみしと歩く音がし、部屋のふすまが、すーっと開くと黒づくめの男がふたり、梨乃亜達の部屋に入ってきました。

「姫はここの部屋で泊まっているのか?」
「はい、話に聞いた3人組は、ここに泊まってるそうです」
「でも、2人しかいないぞ…」
「でも、ここの部屋と聞きましたよ…」
「じゃあ、ここで寝てるのが、姫だな?」
「はい、そうです…でかいですね…」
「なんで、こっちの男は縛られてるんだ?」
「さあ?」

 黒づくめの男達は、荷物をあさり、書状を探しましたが無かったので、姫と間違えて美代を縛って、伊吹に張り紙をして、運んで行きました。

 朝になり、梨乃亜は押し入れから出てくると美代がいないので、伊吹を起こそうとして、張り紙を見つけました。

『姫は預かった、返して欲しくば、書状を持って神社に来い』

 西の大国への書状は、梨乃亜が肌身離さず、持っていました。

「伊吹、起きて、行くわよ」
「はあ…良く眠りました…何で?縛られてるんてすか?」
「今、縄をほどくから…すぐ出るわよ」
「どこに行くんですか?」
「神社よ…」
「神社ですか?」

 梨乃亜は、宿の人から神社の場所を聞いて、伊吹を連れて、出発しました。走って行くとすぐに神社の鳥居が見えてきました。鳥居をくぐり抜けて、階段を登ると美代が縛られて、黒づくめの男達が数名いました。

「書状は持ってきたわ…美代を離してちょうだい…今、伊吹に持たせて、そちらに行かせるわよ」
「えー、怖いですよ…」

 伊吹に書状を持たせて、黒づくめの男達の方に向かって、伊吹のお尻を蹴り飛ばしました。伊吹は、黒づくめの男の前で、派手にこけました。

「よし、書状を渡せ!」
「いたたっ、でも、やる気出てきた…伊吹拳闘術…あご打ちの構え…やあー、あちゃー、おー」

 伊吹は、立ち上がり構えると凄い勢いで、軽いフットワークで男達のあごを打ち抜きました。これが教わった格闘術の「伊吹拳闘術」でした。

 梨乃亜は、その隙に美代の側にいた男に飛び蹴りを食らわし、吹っ飛ばすと美代の縄をほどきました。こうなると3人ともやりたい放題です。あっという間に全員やられてしまいました。

 その中で、一番偉そうな奴を縛るとほっぺたをビンタして、起こしました。

「誰の差し金で、襲ったの?」
「言えない、言えるかよ…」
「何だすか…首、絞めて良いだすか?」
「それじゃあ、聞けなくなるわ…そうだ、伊吹、例の忍術やってちょうだい…」
「縛られてるから、怖くないので、やります…伊吹拳闘術…指動かしの構え…こちょこちょ、こちょこちょ」

 そうすると、伊吹はこの偉そうな奴の足袋を脱がせ、素足にするとすべての手の指を足の裏に持っていき、勢いよく動かしました。 

「ひひー、こりゃたまらん、言う、言います…」
「伊吹、やめて!…さあ言いなさい」
「黒の、盗賊団…がくっ」
「黒の盗賊団?伊吹わかる?」
「はい、聞いた事があります…西の大国のお宝を狙ってる…盗賊団がいると…」
「そうか…だから、この書状を使って、城内のお宝を狙ったのね」

 こちょこちょされた男はぐったりして、もう聞ける状態ではなかったので、他の男達に聞こうとすると先ほどまで、そこでのびていたが、もういなくなっていました。 

 しょうがないので、この男も神社の柱に縛り付けて、お役人が来てくれることを祈り、出発しました。
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