5 / 16
旅の出発!
しおりを挟む「累、戻っていたのか」
「うん、つい今しがたね。とりあえずこれを着ろ」
兄が買ってきてくれた服を着ようとして、ああ、と思い出した。
「兄さん、申し訳ないんだけどシャワーを貸してくれないかな」
項に京極の匂いがついているというのであれば落としたいし確認しなければならない事もある。確かめるのは怖い。けれど、先送りしてもいい事などない。杞憂ならいいが、そうでなかったら放置は事態を悪化させるだけだ。
「いいよ」
蓮兄さんが何かを言いかけるのを兄さんが遮って言ってくれた
震える手で洗面台の兄の保湿クリームの裏に隠した検査紙を取り出す
カミソリで軽く指を切る。そのまま血液をたらした。俺が不安になりすぎているだけだと証明してくれ!
……
1分、たった1分の待ち時間がとてつもなく、とてつもなく長く感じた。
………
以前に試しで計測した時は、Ω値は検出されなかった。
今ははっきりと検出されている。この値がどれくらい危機なのかわからない……!
『この線を超えたら完全にΩに変わったと言う事よ』
まだ、半分だ。半分。でもここで止まってくれるのか!?
頸から、ニオイがした気がした。浴室に飛び込んだ。全身を思いっきり擦り洗いする。何度も何度も洗う。熱いお湯がひりついた肌に染みる。それでもまだ、うなじからニオイがする気がして悲鳴が漏れる。
俺はどこまで ピッチングが進んでいるのだろうか
蓮兄さんにうなじを嗅がれただけでゾワッとした。
けれど、ヒートは来ていない。まだ間に合うのだろうか
そしてコンちゃん、コンちゃんの言っていたことは正しかった。
この世界が小説の世界だなんて思いはしない。けれど、コンちゃんは未来予想、未来予見の力をもっていたのではないのだろうか
『いい?京極はね、陸の努力を全て台無しにするの。私は陸がαらしくあるためにどれだけ努力をしてきたかを知っている。お兄さんと比べられてどんなに辛かったかも知ってる。それを跳ね返すためにどれだけの努力をしてきたかを知っている。なのにあいつは……』
コンちゃん、俺はすごく努力をしてきたよ
βでありながら優秀な兄。
『βであれだけ優秀なのだから、弟はαだし、すごいのだろうな』
『うちの小学校から帝都大卒が出るんじゃ!?』
『なんだ、α様ってたいした事ないんだな』
『あれだけ 優秀なβの弟のくせして、αなのに大したことはないんだな』
『逆の方が納得いくよな』
『詐欺なんじゃね?』
『測定が間違ってるじゃ?それとも自分でズルしたのかね、兄の血液とすり替えたりしたとかさ』
ずるりと浴室の床に座り込んだ
ずっと言われてきた言葉。それを跳ね返すためにずっと頑張ってきた。
コンちゃんは俺のそういった姿を見てもいないのに分かってくれていた。
結果の出てない俺を、結果の出せない俺のそれまでの姿勢を見てくれたのだ。 経過を評価してくれたのだ。
そんなコンちゃんに惹かれた
2人で幸せになれると思ってた。コンちゃんは優秀な優秀なΩだ。俺は出来そこないのα
世間的に求められる像とはほど遠い2人。
でも割れ鍋に綴じ蓋。世間の評価なんて関係ない、俺たちは番って幸せな家庭を作れると思っていた。
でも……
俺はいつまでαでいられるのだろう……
「うん、つい今しがたね。とりあえずこれを着ろ」
兄が買ってきてくれた服を着ようとして、ああ、と思い出した。
「兄さん、申し訳ないんだけどシャワーを貸してくれないかな」
項に京極の匂いがついているというのであれば落としたいし確認しなければならない事もある。確かめるのは怖い。けれど、先送りしてもいい事などない。杞憂ならいいが、そうでなかったら放置は事態を悪化させるだけだ。
「いいよ」
蓮兄さんが何かを言いかけるのを兄さんが遮って言ってくれた
震える手で洗面台の兄の保湿クリームの裏に隠した検査紙を取り出す
カミソリで軽く指を切る。そのまま血液をたらした。俺が不安になりすぎているだけだと証明してくれ!
……
1分、たった1分の待ち時間がとてつもなく、とてつもなく長く感じた。
………
以前に試しで計測した時は、Ω値は検出されなかった。
今ははっきりと検出されている。この値がどれくらい危機なのかわからない……!
『この線を超えたら完全にΩに変わったと言う事よ』
まだ、半分だ。半分。でもここで止まってくれるのか!?
頸から、ニオイがした気がした。浴室に飛び込んだ。全身を思いっきり擦り洗いする。何度も何度も洗う。熱いお湯がひりついた肌に染みる。それでもまだ、うなじからニオイがする気がして悲鳴が漏れる。
俺はどこまで ピッチングが進んでいるのだろうか
蓮兄さんにうなじを嗅がれただけでゾワッとした。
けれど、ヒートは来ていない。まだ間に合うのだろうか
そしてコンちゃん、コンちゃんの言っていたことは正しかった。
この世界が小説の世界だなんて思いはしない。けれど、コンちゃんは未来予想、未来予見の力をもっていたのではないのだろうか
『いい?京極はね、陸の努力を全て台無しにするの。私は陸がαらしくあるためにどれだけ努力をしてきたかを知っている。お兄さんと比べられてどんなに辛かったかも知ってる。それを跳ね返すためにどれだけの努力をしてきたかを知っている。なのにあいつは……』
コンちゃん、俺はすごく努力をしてきたよ
βでありながら優秀な兄。
『βであれだけ優秀なのだから、弟はαだし、すごいのだろうな』
『うちの小学校から帝都大卒が出るんじゃ!?』
『なんだ、α様ってたいした事ないんだな』
『あれだけ 優秀なβの弟のくせして、αなのに大したことはないんだな』
『逆の方が納得いくよな』
『詐欺なんじゃね?』
『測定が間違ってるじゃ?それとも自分でズルしたのかね、兄の血液とすり替えたりしたとかさ』
ずるりと浴室の床に座り込んだ
ずっと言われてきた言葉。それを跳ね返すためにずっと頑張ってきた。
コンちゃんは俺のそういった姿を見てもいないのに分かってくれていた。
結果の出てない俺を、結果の出せない俺のそれまでの姿勢を見てくれたのだ。 経過を評価してくれたのだ。
そんなコンちゃんに惹かれた
2人で幸せになれると思ってた。コンちゃんは優秀な優秀なΩだ。俺は出来そこないのα
世間的に求められる像とはほど遠い2人。
でも割れ鍋に綴じ蓋。世間の評価なんて関係ない、俺たちは番って幸せな家庭を作れると思っていた。
でも……
俺はいつまでαでいられるのだろう……
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
ちびりゅうの ひみつきち
関谷俊博
児童書・童話
ともくんと ちびりゅうの ひみつきち づくりが はじまりました。
カエデの いちばん したの きのえだに にほんの ひもと わりばしで ちびりゅうの ブランコを つくりました。
ちびりゅうは ともくんの かたから とびたつと さっそく ブランコを こぎはじめました。
「がお がお」
ちびりゅうは とても たのしそうです。
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる