1 / 16
不思議な術『ニコニコ』
しおりを挟む
あるところに天守閣に立派な金のしゃちほこがついたお城がありました。お城には殿様と奥方とお姫様がいました。そのお姫様の名前は梨乃亜姫と言いました。
この梨乃亜姫は、可愛いお顔でおてんばで、数え年で15歳になります。城下に町民の暮らしを見に行こうといつもこっそり出掛けようとしますが、家老やお付きの女中に見つかり止められます。
実は、梨乃亜姫は、町へ出て世直しをすることが、楽しくてしょうがありません。そして、梨乃亜姫は、なんとひとつだけ『不思議な術』を使えました。その術は、町民の悲しい顔や怒った顔もたちどころに笑顔に変えてしまいます。
今まで、この術を使い、町民達の争い事を仲裁したり、会う人達を笑顔にしてきました。
今日もこっそりとお城を抜け出そうと仲の良い女中見習いの「美代」と「美津」を呼び出し、町娘の着物を持ってきてもらい、支度を始めました。
「姫!姫!お勉学のお時間でございます」
そこへ家老がやって来ましたので、姫は慌てて、布団に潜り込みました。襖が開き、家老が部屋を覗きました。
「あれ、姫はお寝坊ですか?」
「いえ、ご家老様、姫は、ちょっと体調がすぐれないようでございます」
「姫…今日はゆっくりなさってください」
「ごほん…ごほん…」
家老は襖を閉めて、行ってしまいました。
「美代、行くわよ…美津はここで私の代わりにお布団に入っておいて…」
「はい…行きましょう」
「はい…お布団かぶっておきます」
梨乃亜姫は、美代を連れて城の裏口へ向かいます。そこには門番がいましたが、梨乃亜姫は美代の後ろで顔を隠して、門を通って行こうとしました。
「ちょっと待て!」
「はい、何でございましょう…」
「どこへ行くんだ!」
「ご家老様のご用事で、城下へ参ります…」
「えっ!それは失礼した…気をつけて行って参れ!」
「行って参ります…」
「行って参る…」
「あれっ…どこかで聞いたような声…」
門番は、誰の声かと一瞬考えましたが、まあ空耳だろうと流しました。
梨乃亜姫と美代は、うまく門を通過出来ました。あとは城下町まで一本道です。城下町に入るとお店屋さんやいろんな人達が往来していて、楽しい気分になります。
しばらく歩くと小さい女の子が泣いていました。どうやら、買ったばかりの飴を落としたようです。
「うえーん、えーん…」
梨乃亜は早速、術を使います。女の子の顔を見て、首を少し傾け『ニコニコ』とします。すると、不思議と女の子は泣き止み、笑顔になりました。梨乃亜は、やっぱりこの術『ニコニコ』は、凄いと思いました。
「これで、新しい飴を買いなさい」
「うん…ありがと…ひ…あっ」
「それでは、さようなら」
「さよなら…」
また、進んで行くと威勢の良い男達が争っていました。料理屋と魚屋でした。
「こんな腐りかけの魚なんていらねぇ」
「なにおー、まだ漁って一刻だぞ」
「目が死んでるのよ…魚屋なのにわからないのかよ…」
「うちの魚にケチつけないでくれ!」
梨乃亜は、この二人男達の前に立ちはだかると首を傾け『ニコニコ』としました。すると男達は、あっという間に笑顔になりました。
「だいの男が、往来で争わぬように…」
「あっはい…ひ…いや…」
「わかりやした…ひ…はい」
「良く見るといい魚だねぇ…」
「今度は、もっと早く持ってきやすぜぇ」
「もらっておくよ…」
「ありやんした…」
今日も町民達の助けになり、ご満悦の梨乃亜姫はまた先に進んで行きました。
この梨乃亜姫は、可愛いお顔でおてんばで、数え年で15歳になります。城下に町民の暮らしを見に行こうといつもこっそり出掛けようとしますが、家老やお付きの女中に見つかり止められます。
実は、梨乃亜姫は、町へ出て世直しをすることが、楽しくてしょうがありません。そして、梨乃亜姫は、なんとひとつだけ『不思議な術』を使えました。その術は、町民の悲しい顔や怒った顔もたちどころに笑顔に変えてしまいます。
今まで、この術を使い、町民達の争い事を仲裁したり、会う人達を笑顔にしてきました。
今日もこっそりとお城を抜け出そうと仲の良い女中見習いの「美代」と「美津」を呼び出し、町娘の着物を持ってきてもらい、支度を始めました。
「姫!姫!お勉学のお時間でございます」
そこへ家老がやって来ましたので、姫は慌てて、布団に潜り込みました。襖が開き、家老が部屋を覗きました。
「あれ、姫はお寝坊ですか?」
「いえ、ご家老様、姫は、ちょっと体調がすぐれないようでございます」
「姫…今日はゆっくりなさってください」
「ごほん…ごほん…」
家老は襖を閉めて、行ってしまいました。
「美代、行くわよ…美津はここで私の代わりにお布団に入っておいて…」
「はい…行きましょう」
「はい…お布団かぶっておきます」
梨乃亜姫は、美代を連れて城の裏口へ向かいます。そこには門番がいましたが、梨乃亜姫は美代の後ろで顔を隠して、門を通って行こうとしました。
「ちょっと待て!」
「はい、何でございましょう…」
「どこへ行くんだ!」
「ご家老様のご用事で、城下へ参ります…」
「えっ!それは失礼した…気をつけて行って参れ!」
「行って参ります…」
「行って参る…」
「あれっ…どこかで聞いたような声…」
門番は、誰の声かと一瞬考えましたが、まあ空耳だろうと流しました。
梨乃亜姫と美代は、うまく門を通過出来ました。あとは城下町まで一本道です。城下町に入るとお店屋さんやいろんな人達が往来していて、楽しい気分になります。
しばらく歩くと小さい女の子が泣いていました。どうやら、買ったばかりの飴を落としたようです。
「うえーん、えーん…」
梨乃亜は早速、術を使います。女の子の顔を見て、首を少し傾け『ニコニコ』とします。すると、不思議と女の子は泣き止み、笑顔になりました。梨乃亜は、やっぱりこの術『ニコニコ』は、凄いと思いました。
「これで、新しい飴を買いなさい」
「うん…ありがと…ひ…あっ」
「それでは、さようなら」
「さよなら…」
また、進んで行くと威勢の良い男達が争っていました。料理屋と魚屋でした。
「こんな腐りかけの魚なんていらねぇ」
「なにおー、まだ漁って一刻だぞ」
「目が死んでるのよ…魚屋なのにわからないのかよ…」
「うちの魚にケチつけないでくれ!」
梨乃亜は、この二人男達の前に立ちはだかると首を傾け『ニコニコ』としました。すると男達は、あっという間に笑顔になりました。
「だいの男が、往来で争わぬように…」
「あっはい…ひ…いや…」
「わかりやした…ひ…はい」
「良く見るといい魚だねぇ…」
「今度は、もっと早く持ってきやすぜぇ」
「もらっておくよ…」
「ありやんした…」
今日も町民達の助けになり、ご満悦の梨乃亜姫はまた先に進んで行きました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
ちびりゅうの ひみつきち
関谷俊博
児童書・童話
ともくんと ちびりゅうの ひみつきち づくりが はじまりました。
カエデの いちばん したの きのえだに にほんの ひもと わりばしで ちびりゅうの ブランコを つくりました。
ちびりゅうは ともくんの かたから とびたつと さっそく ブランコを こぎはじめました。
「がお がお」
ちびりゅうは とても たのしそうです。
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる