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エマちゃんに…

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 キイは、真っ暗な所に閉じ込められ、もうおしまいだと思いました。そして、今までの事を思い出していました。

 この池に来た頃は生意気で、それによって、金魚達から仲間外れにされても、寂しくないと思ってました。どうせすぐに人間に飼ってもらえて、あの美味しいエサを食べれると思っていました。

 そして、エマちゃんに出逢い、一目惚れして、金魚達を利用して、エマちゃんに飼ってもらう計画をたてました。

 計画を実行していくうち、参加してくれた金魚達やメダカ三兄弟、コイモト達、チュンク達と同じ目標に向かって、切磋琢磨するうちに、みんなが大切な存在になり、最後は自分を犠牲にしてでも守りたい仲間になりました。

 キイは、もうどうなってもよいと思いました。ただ心残りは、もう一度エマちゃんに会いたかったことです。でもそれも叶わぬ夢なので、もう諦めました。そうしたら急に眠くなり、深い眠りにつきました。

 次の日になり、池のみんなは、エマちゃんに『ちゅーちゅんビスケット』を披露する為、所定の場所に全員が集まりました。金魚Aチーム、金魚Bチーム、コイモト達、チュンク達、メダカ三兄弟もやる気満々です。

 監督の錦鯉のコイモトが、みんなに声をかけます。

「みんなありがとう、とうとうこの日がきました。キイはいませんが、エマちゃんに最高の演技を見せましょう…」
「うおおお」
「はい、がんばります…」
「最高のサウンドをだすっす」
「わーい、わーい」

 みんな所定の位置につきエマちゃんが、やって来るのを待ちました。

 定刻通りにエマちゃんが、ママと一緒にやってきました。チュンク、スズメA、Bがコイモトと他の錦鯉の上にとまり『ちゅーちゅんビスケット』を演奏を始めました。

「ありぇ~ママ、オカチのちゅーちゅんだよ」
「本当だね…あれ、エマ、池の方を見てごらん…」
「あっ、すゅんごい~」
「金魚さんが、ちゅーちゅんを踊ってるね」
「ちゅーちゅんだ~」

 エマちゃんも、チュンク達の音に合わせて、『ちゅーちゅんビスケット』を歌い始めました。ママも手拍子をしています。

「ちゅーちゅんびゅすけっと~」

 曲が終わり、エマちゃんも小さいお手々で、金魚達に拍手をしました。

「すゅごい…すゅごい…」

 金魚達もやりきった顔で、エマちゃんを見ています。

「エマちゃん可愛いなぁ~」
「うおおお」
「やったー」
「わーい、わーい」

 その時、エマちゃんが、ママに話しているのが、聞こえてきました。

「ママ…あれ…黄色いおしゃかなさんは、いないのかな~」
「いつもこの辺を泳いでいたよね…」
「どこ行ったのかなぁ~」
「明日、また見にきましょ…」

 金魚達は、急にキイが犠牲になり捕まってしまった事に申し訳ない気持ちで、いっぱいになりました。自分達だけが、エマちゃんに飼ってもらう事なんて、全然、考えてません。みんなは、あちこちに散って行きました。
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