39 / 61
2
さんじゅうはち
しおりを挟むルシファーに連れてこられたのは、なんだか歴史がありそうなお店だった。
「にしても、アンタの笑顔は驚異だな」
アークがボソッと言った言葉に私はなにも言わない。
何故ならアークのいう通り、ルシファーの笑顔は驚異的に眩しかったからだ。
ニコッと笑うのではなく、ふわっと花のように柔らかく笑った後、目を細めて妖艶に微笑むのだから、老若男女関係なく堕ちるだろう。
そんな彼に「すみませんが我々だけにしてくれますか?」なんて言われたらそれはそれはみんなどこかへ去る。実際に去った。
私とアークは呆然とし、ヘレスはさっすがまおちゃん!とにこにこ笑っていた。
怖いもの知らずとはこのことかと今日1日で何回も思った。
「さてと、今日はここに泊まるよ。ルゥと僕、ヘレスとアークでいいよね?」
「「却下します。」」
ルシファーの提案に私とアークが即答で切り落とす。
そんな私たちを見て、なぜ?と本気で不思議そうに首を傾げるルシファー。
私は魔王の世界基準がどうか分からないが、こちらは未婚の女性。いくら、魔王と言えど男性と共に寝食は出来ない。ましてや、私はエドワード様の婚約者だ。
アークの場合は契約しているのだから、特に問題はないはずだが彼も首を横に振り思い切り否定している。
「アンタの世界の常識なんて知らないが、ルナは女性。たとえ、未亡人だとしても騎士だとしても、女性と男性がともに寝るのは好ましくない!この世界に生きるのならこの世界の常識で生きよ、魔王ルシファー」
「あ、アーク、お前っ!」
「、というのは建前で、正直あまり親しくないものと寝るのは無理だからルナと私!ルシファーとヘレスという組み合わせがいちばーーぐはっ何をする!?ルナよ!」
思わず感動してしまった己にも腹が立ったし、得意げにいうアークにも腹が立ったのでとりあえず風魔法で飛ばしてみた。
アークはすぐに受け身を取り、私に何をする!?と顔ごと問うてきた。
「お前馬鹿か!私は未婚の女性だ!おかしいだろうが!なぜ貴様と私が一緒に寝なければならない!!!」
「なにをいう!教会で共に寝たではないか!(結界付き)」
「うぐっ!確かに共に寝たが、あれは無効だろうが!」
「ならば今回もあれを発動させとけばいい!私はそこにいる魔王とも破壊のヘレスとも寝れん!寝不足になる!」
「なぜお前の寝不足に私が合わせなければならないんだ!勝手に寝不足になってろ!私はヘレスと寝る!」
「却下だ!!!!!私もその部屋の隅で寝る!!!!」
「ええい!!隅ならば許可する!!!ヘレス行くぞ!」
とりあえず、体を休めたかった私はイライラしながらもアークに許可を出し、ヘレスを連れて案内人に何処だと聞く。
案内人はこちらですと言いながらも私の後ろをチラチラ見ていた。
大方、ルシファーが怒ってるか萎れているかのどちらかだろう。
こういう場合は無視するのが一番だと決まっている。
ヘレスは戸惑いつつも、「おねーちゃんとアークと一緒!うれしい!」と笑った。
良かった良かった笑ってくれて。
まあ、これが破壊の魔物じゃなかったらより愛でられるのだろうけれど。
私は案内人に連れられてもらった部屋に入り、ベッドに腰掛け一息をついた。
よし、ここは一つヘレスと仲良くなるためになにか話をして、仲を深めよう!
私は同じくベットに転がり、感触を楽しんでいるヘレスに話しかける。
「ヘレス、君はなにが主食なんだい?」
「んーと、人間!」
…質問間違えたか。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる