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じゅうきゅ

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私の嘆きは誰に届くわけでもなく消えてゆく。私はとりあえず、親切なおじさんに勧められて教会に行くことに。


案内された場所はこじんまりとした境界だった。私はアヴェーヌ家とは違う作りにまじまじとみてしまった。

「あら、騎士様?どうかなさったの?」

じっくりとみすぎてシスターが出てきたのに気付かなかった。
私は優しい声にはっと意識を前に向け、慌てて挨拶をした。

「こんにちは、ルナと言います。…すみません、突然の訪問をお許しください。実は道に迷ってしまって、一晩だけ泊めてくれませんか?」


そう言って頭を下げればシスターの慌てた声が。

「騎士様お顔をお上げください!私達の民のために力を尽くしてくださる貴方達の力になれることは至上の喜びです。こんなところでよかったら、是非」

「ありがとうございます、シスター」

シスターは私の言葉にニコッと笑い、私を部屋に案内してくれた。

私はベッドに腰掛ける。
そして、今後のことを考える。

アランもいない、今回、どうこの状況を乗り切るか。
お金もなければ紋章、家紋もない。証明するものがなければ、相手を信用させることはできない。

非常に困った。
けど、この教会にあった地図を見る限りここは私の元いた世界であるので、エドワード様やアランたちに会えるのは時間の問題。そう、時間の問題のはず。

でも、ここでじっとしていられるほど私はお淑やかなお嬢様でもない。


私はとりあえず、シャルンの家より少しだけ豪華な布団に潜り込み目蓋を閉じる。

願わくば、明日起きたら目の前にお父様とお母様がいてくれますように。




早く会いたいなあ、



「貴様が流れ者の騎士か!!!!敵国のスパイだな!!!!」


「今寝てますので、明日朝来てくれませんか?」


「なに?!ふざけるな、我々はここの市民を守る義務があるのだ!」


「…私もこの国の民ですが?」


「最近、聖女マリアが王国を欺き、美しくも優しいルミナス侯爵令嬢の命を奪ったのだ!」


とても、面白くて興味深い話だけれど、私は残念ながら生きているのよね。


私は扉のところで騎士服を纏い、私の話を聞かず話をしている者を一瞥する。

大丈夫、あの程度なら防御魔法でもかけとけば死にはしないわ。

そう確信した私はうるさい騎士の話を聞きながら眠った。






何か温かいものとキャー!という女の悲鳴で目が覚めた。

薄ら開けた目からは温かい日の光のようなものが差す。
眩しい、朝?と思ったけど、そんなに寝ていた気がしないのは気のせいかしら?


私はふと視線を扉に向けると、うるさい騎士があらゆる魔法を私にぶつけていた。

そして、その隣でシスターが悲鳴を上げていた。


なるほど、朝ではないのね。
私は再び眠ることにした。大丈夫、あの程度ならあっちが魔力を切らして強制的に眠るはずだから。

今度こそ私はシスターの悲鳴を聞きながら、深い眠りについた。






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