魔法のデッサン

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魔法のデッサン

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「おい、清彦きよひこ。俺たちをこんなところに呼び出しやがって、どういうつもりだ。あっ」

 放課後の美術室には似つかわしくない声が響いた。不満げな表情を浮かべた3人の男たちが部屋に入ってくる。そこには、美術部員である清彦が1人で待っていた。ほかの部員たちの姿はすでにない。

「ああ、お待ちしてました、ちゃんと手紙は届いたみたいだね」

「気取ってんじゃねぇよ、どういうつもりで俺たちを呼び出したんだって聞いてんだよ」

 美術室に入ってきたのは、そこには似つかわしくない不良3人組だった。 度重なる暴力沙汰で学校内でも恐れられている。超然とした清彦の態度が気に食わないのか、執拗に嫌がらせをされることがあった。

 さっきから何かと脅しをかけるような物言いをする小柄な男は篤詩あつし。相撲部屋からの誘いもあったといわれる大柄な男が若志わかし。リーダー格は切れると何をするかわからないことから「狂犬」とよばれている太資ふとしだった。

「新しいデッザン用の鉛筆が手に入ってね。試し描きをするのにモデルになってもらおうかと思ってね」

「ふざけてんのか……」

「ははは、恐い顔しないでよ」

 言葉数が多い篤詩より、凄みのある太資の一言には恐怖を感じたのか清彦は少しひるんだような表情をみせた。

「おい、若志。少し痛めつけてやれ」

「おう!」

 丸太のような太い腕を見せつけて若志が近づいていく。運動が苦手な美術部員である清彦など一捻りで屈服させられるだろう。

 しかし、清彦はなぜか落ち着いた表情で鉛筆を取り出すとスケッチブックに手早く何かを描き始めた。四角や三角がくみあわさった3つの塊がスケッチブックに描かれていく。よく見ると、清彦の目の前にいる3人組の大まかな位置と合致していた。

「よし、まずはこんなもんで」

「あ?」

 清彦がスケッチブックから目を離し、3人組のほうを見ると、若志が困惑した表情を浮かべていた。

「どうした、若志。早くしろよ」

「あれ? なんか動けないんだ」

「は? なに、いってんだよ、若志。動けないって、あれ? おい、何しやがった清彦!」

 若志だけじゃなく、自分も動けないことに気づいた篤詩が騒ぎ始めた。同じく動けない太資はじっと清彦を睨み付けながら、口を開いた。

「答えろ、清彦。ぶっ殺されたくなかったらな」

「太資くんは怖いなぁ。別に大したことじゃないんだよ、これが原因さ」

 清彦はスケッチブックに描きこむために使った鉛筆を上げて見せた。別にどこにでもあるような普通の鉛筆だ、しいて言えば、メーカー名がなく美しい文様が描かれているだけのものだった。

「これは魔法の鉛筆なんだ」

「魔法? なにをふざけたことを言ってやがんだ。お前、正気かよ」

 清彦の突拍子もない答えを露骨に馬鹿にする篤詩。

「まあ、そういう反応になるよね。実際に見てみないと信じられないだろう」

「何をする気だ」

「とりあえず、デッサン用にポーズをとってもらおうかな」

 そういうと清彦はデッサンを始める。ラフだった絵をとりあえず手足の向きがわかる程度に書き込みをしていく。

「うわ、なんだ。身体が勝手に」

 3人はそれぞれデッサン通りのポーズをとっていく。太資は椅子に座らされ、残りの2人も意思に関係なく身体が動いていった。

「どうだい、少しは信じる気になったかな。楽しくなるのはこれからなんだけどね」

「清彦、俺らが動けるようになった後のこと、ちゃんと考えてるのか」

「3人がかりで痛めつけてやるかんなぁ、覚悟してやがれよ」

 確かに、いつまでもこのままで3人を固めて置くことはできないだろう。しかし、清彦はニヤリと笑いながらこう言った。

「ちゃんと後のことは考えてるよ。君たちをいつも描いている石膏像の質感で、こんな風に描いたらどうなるかな」

 再び鉛筆を走らせ、何かを書き込んでいく。すると、太資の持っていた鞄が突然重くなり、耐えかねた太資の手から落ちてしまった。

 ゴトと重い音を響かせ落ちた鞄は、白い石膏のそれに変わっていて落ちた衝撃で端が欠けていた。それを見た3人組は驚いて叫ぶ。

「ふざけんじゃねぇぞ! 俺たちを殺す気か」

「そんな夢見の悪いことはしないよ、ちょっと君たちが置かれている状況を教えてあげただけだよ」

「悪かった、清彦。これまでのことは謝るから許してくれよ、な。そうだ、お前彼女欲しいって言ってるらしいじゃん。許してくれたら、女紹介してやるよ。だからさ、開放してくれよ」

 態度を変えて媚び始めた篤詩を、冷ややかに眺めながら清彦はこう言った。

「彼女はいいよ、もう自分でなんとかできるから」

 清彦は再びスケッチブックに向かい、鉛筆で何かを書き始めた。3人に緊張が走る。清彦が魔法の鉛筆で何を変えようとしているのか、それを知ろうとあちこちに目を向けた。

「あ、俺の靴が、ズボンが!」

 若志が何かに気づいた。確かにさっきまで履いていた靴が消え去り、裸足で床に立っている。いや、今まさにズボンが裾からまるで霞のように消えていく。

「そうですよ、とりあえずみんな裸になってもらいますからね」

「この変態野郎、男の裸が見てえのかよ!」

 そう言っているうちにも、若志のズボンはふととも近くまでなくなっている。

「いやあ、僕も野郎の裸を見たいとは思わないからね。見て楽しいものに変えてしまおうと思うんだ」

「おい? まさか……」

 すでにズボンは消え、上着も胸の下まで消えていた。しかし、見えている裸体は若志の相撲力士体型のそれではなく、長く華奢な脚と小振りな腰だった。そして、なにより股間にあるはずのものがなく、わずかな毛に隠れているが、明らかな女性のそれが見えていた。

「ええ、そのまさかです。みんなには女の子になってもらおうと思います。とりあえず、デブマッチョの若志は小柄でかわいいタイプがいいかなぁ。胸もAカップで少し幼い感じにっと」

 清彦がそう言いながら筆を走らせると、若志の身体はその通りに変化していった。ついに、若志は全裸になり、身体はすっかりと女の子のものになった。ただ、顔だけは元のゴツい男のままで。

「とりあえず、若志はこれで一旦終了。次は篤詩だね」

「や、やめてくれ。頼むから、やめてくれ!」

 篤詩の懇願を気にもせず、清彦は何かを書き出した。

「そうだ、篤詩ってさ、背が低いのコンプレックスだったでしょ。前にチビって言った奴を病院送りにしてたよね。せっかくだから、背を高くしてあげるよ。すらっとして脚が長いモデル体系で、マジでファッションショーとか出られるくらいに」

 若志と同じように足元から着衣が消えていくとともに、篤詩の身長は高くなっていく。高くなった分はすべて脚の長さで、日本人離れしたスタイルの良い身体へと変化していく。

「でも、ただのモデル体型じゃ面白くないから、胸は巨乳にしてあげるよ、Fカップ? いや、どうせなら大きい方がいいよね、Gカップと」

 細身の体には似つかわしくないほど大きな胸が露わになり、篤詩も首から下はすっかり女性になってしまった。

「最後は太資だね。ロリ系、モデルときたからどうしようかな」

 そう言いながらも清彦は迷わず何かを書き始める。

「女性の美しさの大きな要素って母性だと思うんだよね。ムチムチっとした女性らしい体型って魅力的だと思わないかな。いかにも男性的というか暴力的な太資には、ミスマッチで面白いと思うよ」

 言葉の通り、太資の身体も女性らしいものへと変化していた。

「よし、とりあえず身体はこんなもんかな」

「清彦、お前絶対許さねえからな」

 首から下は女性という滑稽な姿にも関わらず、寒気がするほど迫力のある声で太資は清彦を脅した。

「許さないって言っても、そんな女の細腕じゃ、何もできないと思うけどね」

「たとえ力がなくてもな、ナイフでもチャカでも何でも使って、絶対お前をブッ殺す!!」

 鬼気迫る迫力に、言葉を失った清彦だが、少し目をそらして気を取り直した。

「うわぁ、怖いな。じゃあ、そうされないようにしておかないとね」

 そう言って、また鉛筆を取り上げるとスケッチブックに向かった。

「さあ、ここからが大変なんだよね。人間の表情ってその人の内面まで表すから絶妙なタッチで描かないといけないんだ」

 若志をじっと見て、おもむろに鉛筆を動かし始めた清彦。

「かわいい身体だから、顔も守ってあげたい感じの妹キャラにしてあげよう」

「うわ、俺の顔が変わっていく!」

「ダメだな、そんな言葉遣いじゃ。ちょっと臆病でオドオドしたところがある女の子にしてあげよう」

「い、いや、やめて下さい。私、元に戻れなくなる」

「大丈夫だよ、元に戻る必要なんてないからね」

 すっかり女の子になった若志は、まるで性格が変わったかのように怯え切った表情を浮かべていた。

「なぜなら、君は幸せな気持ちでいっぱいだからさ。そう! 恋をしているんだ、この僕にね。っとこの恋する乙女の表情ってのが難しいんだよね。う~~ん、こんなもんかな」

 清彦はこれまでより慎重に作業を進めると、筆を止めた。

「どうだい、若志。僕のことは好きになったかい?」

「……はい、前から清彦さんのことが……す、好きでした」

「いいねぇ、うまくいったね。これから若志の名前は若葉わかばに変わるよ、あと僕のことを呼ぶ時は清彦先輩だ、いいね」

「はい、清彦先輩」

 明るい表情で楽しそうにそう答える若葉。もうどこにも若志だった頃の面影は存在していなかった。

「次は、篤詩の番だね」

「や、やめてくれぇ」

「ふふふ、篤詩はね、青葉あおばっていう名前のお姉様キャラだ。でも、僕のことがかわいくてしょうがない、体の関係を持っちゃいたいくらいにね。どうだい、わかったかな」

「うふふ、わかってるわよ、清彦くん」

「OKみたいだね」

 2人の仲間の変化を見て、さすがの太資も顔色を青くして恐怖の表情をみせていた。

「顔の表情次第で、性格まで変えられるんだよ。これで僕の身が安全だってわかったでしょ」

「俺をどうするつもりだ」

「そうだな、名前は双葉ふたばにしよう。それで双葉にはお母さんになってもらうよ」

「はぁっ? 俺は18だぞ」

「太資はね。でも、双葉さんは若い時に青葉さんと若葉ちゃんを産んで、苦労して2人を育ててきたんだよね」

「やめろ、俺が、俺が消えていく、助けてく……」

 清彦が鉛筆を動かすたび、太資の顔は形を変えていく。

「で、2人の子供はすっかり大きくなって、これから人生をもう一度楽しもうって時に、僕が現れたんですよね、双葉さん」

「そうよ、清彦さん」

「愛してますよ、双葉さん」

「私もです、清彦さん」

 双葉は何の疑問も感じていないかのように笑顔をみせている。

「ずる~い、お母さん。私も清彦先輩のこと好きなのに。ね、青葉お姉ちゃんもそう思うでしょ」

「私は時々、清彦くんを貸してもらえばいいんだけど」

 すっかり、3人の親子関係は出来上がっているようだ。それを見て清彦はニヤリと笑った。

「大丈夫ですよ、3人とも相手をしますから。さて、おまけと言ってはなんですが、ちょっと僕の楽しみを追加しましょうか」

 そう言うと、デッサンに何かを追加し始めた。

「双葉さんはクリ○リスをすごい敏感にしてあげましょう。青葉さんはその巨乳が抜群の性感帯になりますよ。で、若葉ちゃんはまだ処女だけど、お尻で気持ちよくなれるようにしてあげよう」

「ああ! すごいわ、清彦さん!」

「見て、清彦くん。私の乳首がこんなに硬くなって!」

「清彦先輩、お尻の穴が切ないよぉ!」

「よし、これでこのデッサンは完成だな」

 清彦がデッサンにサインを入れ、スケッチブックをめくると、3人ともうっとりとした表情でそれぞれの体を触り始めた。

「さて、3人の家とか服のデッサンも描かないといけないな。今日は忙しいな」

 そう言って清彦は、新しいページに魔法の鉛筆で何かを書き始めた。

END
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