上 下
6 / 6

6.伝えられなかった想い

しおりを挟む
そう、彼の言う通り、メッセージが来た日の夜に思い出した言葉があった。

「僕は大好きな人の誕生日はどんなに離れていてもお祝いしたいな。」

この言葉は私一人に向けて言った言葉ではなくて、当時遠距離恋愛をしていた沙耶加が「彼が誕生日を忘れていた」と皆に愚痴った時にケリーが沙耶加に向けて言った言葉だった。

思い出してしまったから余計に意識してしまって夜もうまく眠れない程に考えてしまった。

ケリーは再び私に言った。

「覚えてくれていたから環ちゃんは今ここにいるんだって十分わかっているし、あの当時も今も僕は環ちゃんが好きだよ。」

さらっと告白され、ケリーに好かれていたような気がしていたのが自分の勘違いではなかったこともわかり、心がじんわり温かくなった。

「うん、私に向けて言った言葉ではなかったから忘れていたけれど、なんであのメッセージが来たのか考えているうちに思い出したよ。あの頃もケリーはいい人だったよね。皆が困っているといつもさりげなく助けてくれたね。」

「だって人生2回目だったしね、あのとき。1回目の人生では僕はもっと気の利かない自由な人間だったよ。もうまさにあだ名通りの『ケリー』って感じで。好奇心のままに跳ね回ってるようなやつでさ。環ちゃんに惚れたけどいつもちゃらけてしまって気持ちが伝えられなかったら、雅人が環ちゃんに告白して2人は付き合って結婚したよ。30歳の頃にグループの皆がそれぞれ家庭を持ったりで疎遠になっても僕はずっと環ちゃんが忘れられなくて35歳の時まで引きずっていたよ。2回目の人生では環ちゃんに優しくしたいと思っていたからそうしたけど、告白する勇気がなかなか出なかった。そうしているうちに環ちゃんは転勤して彼氏が出来て結婚して。34歳になる頃からに何度も同じ夢を見た。35歳になった2日後に再びあの頃に転生する夢。環ちゃんも新宿の交差点で事故にあって転生してくることも夢で知ったよ。僕は再び転生することを夢を見るたびに確信した。」

「転生しなかったらどうするつもりだったの?」

思わず私は口を挟んでしまった。

「転生しなかったらラウンジで環ちゃんの誕生日を祝って今度こそ自分の気持ちを伝えようと思っていた。旦那さんには悪いけれど環ちゃんの気持ちを奪ってやろうって思ってたよ。」

穏やかだと思っていたケリーの激しい言葉に私は思わず赤面してしまった。

「ずっと好きだったよ。3度目の人生も変わらず環ちゃんが好きだよ。また35歳で折り返して4回目があっても環ちゃんが好きだよ。ずっと一緒にいてほしい。」

「…ありがとう。私もあの頃からケリーの優しさを感じていたし、好きだった。でもグループのあの雰囲気を壊したくなくて言えなかった。私も勇気が出なかった。私達だいぶ寄り道したね。」

ケリーは私の台詞を聞いて「よっしゃッ!」とガッツポーズをした。穏やかな彼らしくない声だった。

でも今ならわかる。彼らしくない言動も全て本当の彼なんだと。2度目の人生で抑圧していたものをきっとこれから見せてくれるんだと。

私はこれからの楽しい人生を予感した。


(完)


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花
恋愛
魔力があった、ただそれだけの理由で王女なのに捨て子として育ったマルガレーテは、隣国との政略結婚のためだけにある日突然王女として引っぱりだされ、そして追放同然に邪悪な国と恐れられるルトリアへと送られた。  そしてルトリアでの魔力判定により、初めて自分が白の魔力を持つ者と知る。しかし白の魔力を持つ者は、ルトリアではもれなく短命となる運命だった。  これでは妃なんぞには出来ぬとまたもや辺鄙な離宮に追放されてしまったマルガレーテ。  しかし彼女はその地で偶然に病床の王妃を救い、そして流れ着いたワンコにも慕われて、生まれて初めて自分が幸せでいられる居場所を得る。  もうこのまま幸せにここでのんびり余生を送りたい。そう思っていたマルガレーテは、しかし愛するワンコが実は自分の婚約者である王子だったと知ったとき、彼を救うために、命を賭けて自分の「レイテの魔女」としての希有な能力を使うことを決めたのだった。  不幸な生い立ちと境遇だった王女が追放先でひたすら周りに愛され、可愛がられ、大切な人たちを救ったり救われたりしながら幸せになるお話。  このお話は「独身主義の魔女ですが、ワンコな公爵様がなぜか離してくれません」のスピンオフとなりますが、この話だけでも読めるようになっています。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜

長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。 幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。 そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。 けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?! 元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。 他サイトにも投稿しています。

【完結】婚約者候補の落ちこぼれ令嬢は、病弱王子がお気に入り!

白雨 音
恋愛
王太子の婚約者選びの催しに、公爵令嬢のリゼットも招待されたが、 恋愛に対し憧れの強い彼女は、王太子には興味無し! だが、それが王太子の不興を買う事となり、落ちこぼれてしまう!? 数々の嫌がらせにも、めげず負けないリゼットの運命は!?? 強く前向きなリゼットと、自己肯定感は低いが一途に恋する純真王子ユベールのお話☆ (※リゼット、ユベール視点有り、表示のないものはリゼット視点です) 【婚約破棄された悪役令嬢は、癒されるより、癒したい?】の、テオの妹リゼットのお話ですが、 これだけで読めます☆ 《完結しました》

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

処理中です...