異世界で探がす愛の定義と幸せカテゴリー

彦野 うとむ

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鬼子と縫いぐるみ編

孤独な者の秘密と孤独だった者へと変わる美酒②

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 「じーさんはその後、どーしたの?」
 「その後?」
 「うん。見逃してやった後」
 「再び没頭した」
 「研究に?」
 「いや。復讐を果たす相手を知る事にだ」
 「誰か知らないの?」
 「知らん」
 「え? え? ど、どうやって果たすの? てか、何百年も前なら……そいつはもう」
 「二百年の間、少なからず分かった事がある」
 「そ、それは?」
 「そ奴は今も尚、どこかで生きておると言うこと。……だが、それ以上、分からんのだ。いくら調べても調べても、それ以上の事が分からん」
 「そ、そっか……」
 「この世界の事は調べ尽くした。知り尽くした。それでも探し求めた。二百年間ずっとな……」
 
 大三郎はその言葉に、パハミエスが無機質な顔になった理由を知った。
 クエストはあるのにアプデが無いから永遠に進まない。それでもプレイしなければならない、二百年間……ずっと。パハミエスと初めて会った時の無機質な顔を思い出し、(俺でもそうなるわ……)と心の中で呟いた。

 「何時しか、我を名指しで討伐しようとする連中が現れた」
 「え?! 討伐? じーさんを?」
 「そうだ」
 「何したの?!」
 「我は何もしておらん」
 「何もしてないのに討伐されそうになったの?!」
 「うむ。無論、全て返り討ちにしたがな」
 「だ、だろうね。じーさんと戦おうとする連中も連中だけど、でも何で、何もしていないじーさんを討伐しようとしたんだろ?」
 「アウタル・サクロを滅したかったのだろうて」
 「それで、じーさんを狙ったのか……」
 「アウタル・サクロの者を大三郎は見ただろう? あんな連中が居るのだ。色々な所で好き放題していたのだろう」

 大三郎はジュオニカスやエブルットを思い出す。
 あんな連中と言う事は、まだ他にも居ると言うこと。
 ジュオニカスやエブルットのような奴等が、あちらこちらで好き放題していれば世界各国から狙われて当然だと大三郎は納得する。
 
 「最初は、何故、我を討伐するのだ? と聞いておったが、訳の分からん事をほざく者、答えもせずに挑んでくる者、終いには討伐隊ではなく討伐軍として我に挑んで来おった」

 弁解しようにも誰もパハミエスの言葉に耳を傾ける者はおらず、何時しか弁解する気も失せた。そんな中、パハミエスの知らない所で虎の威を借る狐の如く、アウタル・サクロやパハミエスの名を使い、好き放題する者、アウタル・サクロで手に入れた力で暴れ回る者と後を絶たず、それが全てパハミエスの所為にされてきたのだ。パハミエスにしてみれば、身に覚えのない事で討伐すると言われた挙句、相手の身勝手とも思える戦いを挑まれ、パハミエスにあっけなく敗北し、自分勝手に挑んで来ておきながら恨んでくる。そしてまた討伐だと挑まれる。その負の連鎖は増幅しながら続いていたのだろう。

 『魔物が暴れるのは魔王が居るから。だったら魔王を倒してしまえ』

 人は昔から単純な事を難しく考え、難しい事を単純に考えてしまう事が多々ある。賢ければ賢いほどその傾向は強くなり、それが周りに伝染するように広まると、何時しか歯止めが効かなくなる。討伐する側に私利私欲が絡めば尚更である。   
 
 探し求めているものはアプデが永遠に来ないクエストの中。謂れのない事で世界中から敵視され、難癖をつけてくる国々。そして、酷いエンカウント率のように湧いてくる討伐隊や討伐軍。
 大三郎は思う。自分の声に耳を傾けてくれる者が居ない世界で、パハミエスは何を思い、悠久の時の中を生きて来たのだろう……と。
 
 「我は我に挑んでくる者を返り討ちにするだけだからな、監視人エスカや小童が我に抱く敵対心など、我にしてみればどうでも良い事。我に敵対心を抱く者を腐るほど相手にして来たのだ、一々気にしてられん」
 
 その言葉に何も言えない。
 多分、エスカにもビックマウドにもパハミエスとの戦いで大切な人を失った事があったのかもしれない。だが、その事でパハミエスを責める事など見当違いも良い所だと大三郎は思う。
 森を燃やし妖精達の命を奪ったことで恨まれるのなら、「恨まれて当然」「討伐だと言われて当然」だと思うが、何もしていないパハミエスとの戦いの切っ掛けを作った国々には正当性を感じる事は出来ず、申し訳ないがパハミエスとの戦いで命を落とした者には同情する気にはなれなかった。
 
 大三郎はふと思い出すように、パハミエスへ質問をする。

 「そう言えば、何で森を燃やそうとしたの?」
 「小童が居ったからだ。他の妖精の森は討伐軍に加担する所もある。小童が妖精王をたらし込み、軍を引き連れ再び我に挑んでくるかもしれんと聞いてな。それならば、こちらから出向いてやろうとここまで来たのだ」
 
 それを聞いた大三郎は納得した顔をする。

 「そうか。それで森ごと軍隊をやっつけようとしたんだね」
 「そう言う事になるな。だが、まさか数人で行動しているとは思わなんだ」
 「そっか~。危なかったぁ。ほんと良かったよ、じーさんと出会ってさ」
 
 その言葉にパハミエスは驚いた顔をした。

 「我と出会って良かった?」
 「うん。出会ってなかったらさ、森は燃やされるわ、じーさんは仲間になってなかったわで、最悪な事になってたもん」
 「……ふむ」
 「出会ったお陰で森は燃やされずに済んで、じーさんが仲間になった。……これも神々の加護ってやつなのかな? ま、加護でも何でも良いや。森の皆が無事で、じーさんが仲間になった。ほんと良かった」
 「そうか」
 「うん。それにさ」
 「何だ?」
 「この森はじーさんが守ってくれる世界一安全な場所になったしね」

 大三郎はそう言い、パハミエスに二カッと笑う。
 パハミエスはそんな大三郎から目を反らすように泉に顔を向け、「我と関わる事で、寧ろ危険な場所になったとも言えるがな」と言い、果実酒をゴクリと飲む。

 「そんな事ない」

 キッパリと言う言葉に、パハミエスは再び大三郎の顔を見る。

 「何故そう思う?」
 「俺は正義の味方には成れないけど、じーさんは成れるから」
 「成れる訳なかろう」
 
 パハミエスはまた泉に顔を向け、果実酒をゴクリと飲む。

 「成れるよ」
 「何故そう思う?」
 「それは秘密です」
 「何?」
 
 パハミエスは驚いた顔をして大三郎の顔を見た。

 「じーさん、さっき言ってたじゃん?」
 「何をだ?」
 「この世界を調べ尽くし知り尽くしたってさ」
 「うむ」
 「じーさんが不思議に思うって事はさ、まだまだこの世界にはじーさんが知らなきゃならない事が沢山あるって事だよ」
 「……ふむ。そうだな。だが、それと我が成れる事と何が関係しておるのだ?」

 パハミエスは一度納得したように頷き、再び大三郎を不思議そうな顔で見る。
 それを見た大三郎は思わず吹き出してしまった。

 「ぷふ! あははは!」
 「何故、笑う?」
 「じーさん、なんか俺みてーだからさ。あははは!」

 俺みたいと言われたパハミエスはショックだったのだろうか、「何っ?!」と声を上げ、爆風を浴びたような顔をした。その時のパハミエスの心情を効果音で表すのなら、「ガーーーン!」と言う音が最も適切だろう。
 そんなパハミエスをよそに、大三郎は笑いが止まらなかった。
 
 「あははは! 分かってるようで分かってないんだもん。あははは!」
 「……大三郎と同じなのは、ちと……嫌だぞ」
 「あ! ひでー! もー、怒ったもんね! じーさんは俺と同じだって皆に言いふらしてやる」
 「それは困る。監視人エスカにおバカなパハミエスなどと言われとうない」
 「ぶふ! おバカなパハミエスって、あははははは! 想像つかねー! あはははは!」
 
 腹を抱えて笑う大三郎を見て、パハミエスもつられて笑ってしまう。

 「ふふ……、ふははは。そうだな。はははは」

 泉の畔で二人は座りながら肩を並べ笑いあった。
 パハミエスは悠久の時の中で、初めて有意義な時間を過ごしたのかもしれない。
 声を出して笑う事など忘れかけていた。いや、忘れていたと言った方が正しい。普通に接してくる者すら居なかったパハミエスの世界に、他愛もない冗談を気楽に言い合える相手など誰一人として居なかったのだから。
 無機質な顔から無表情へと変わり、今は声を出して笑っている。
 たった数日で自分がここまで変わるとは、パハミエス本人でさえ思ってもみなかった事だろう。 
 
 果実酒の度数が高かった事や深夜だった事もあり、大三郎は暫くすると酔いつぶれ、いびきをかいて寝むってしまった。その寝顔は何とも満足気な顔だった。
 パハミエスは残りの果実酒を大三郎の寝顔と泉の景色を肴に飲む。

 
 今まで討伐されそうになった者が泣きついてきたり、悪知恵を働かせ自分の代わりにパハミエスを戦わせようとしたりする者が居たが、どんなに泣きつこうが悪知恵を働かせようが、興味も仲間意識も無いパハミエスに通じるはずもなく、姿を消す者、そのまま討伐された者、パハミエスに策を弄する前にサイガ達に策を見抜かれ粛清された者などが居た。だが、泣きついて来た者の中でも、結局は自分を討伐しに来る討伐隊や討伐軍の時だけはパハミエス自ら出向いた。それで命拾いする者も居たが、泣きついて来た者の行いが目に余るものであった場合、討伐軍諸共この世から消滅させられた。
 
 各国の討伐軍の中でも、ディエレ家が指揮する討伐隊の実力は帝都を守る聖騎士隊と同等と称される程で、千人規模の大隊でありながら他国の一個師団とは比べもにならないほどその強さは秀でており、幾人ものアウタル・サクロの者が討伐された。そして、そのディエレ家に資金援助などをして陰で支えていたのがラムダン家であった。
 半年前、ジュオニカスとエブルットがパハミエスの前に現れ、ラムダン家の娘をエブルットの嫁にすればディエレ家の力を削ぐ事ができ、アウタル・サクロの被害を最小限に食い止められる上、ラムダン家の膨大とも言える財産を手中に納める事でパハミエスの研究などに資金援助させれると、その策を弄したジュオニカスが豪語して来たが、どもりが酷くエブルットが代わりに説明をした。
 『来れば倒すだけ』のパハミエスにとって、そんな事はどうでも良かったが、気紛れだったのか、二人の申し出を受け、少しだけ頼み事を聞いてやった。
 そして半年が過ぎ、ジュオニカスからビックマウドが妖精王の居る森に来ていると聞かされ、パハミエスは妖精王が居るマストアの森に出向いたのだった。


 「神々の加護か……。半年前から神々は我を大三郎の味方にするつもりでおったのだな。今考えれば全てが必然。まぁ、アリナイの意志が相手なのだから当然と言えば当然か……」

 パハミエスはそう言うと立ち上がり後ろを振り向くと、「全て知っておったのだろう? それとも全て仕組んだ事なのか?」と言い、木々に向かいジロリと視線を送った

 「私が神々から聞かされたのは、一年と半年後、必ずアリナイの意志がこの世界に訪れると言う事だけ」
 
 木々の影から聞こえる声にパハミエスは、「そんな事はどうでも良い。我が聞きたいのはその事ではない」と即答で返した。
 パハミエスの即答で返す言葉に、木々の影から聞こえる声は沈黙する。
 
 「この世界を救う為なら、家族同然の己の仲間の命も利用するか……。まぁ良い。妖精王のお主とて、どうにかできる相手ではないからな」

 その言葉にマリリアンは木々の影から姿を現した。

 「神々と言えども物事を思い通りに進めれる訳ではありません。ですが、私は信じておりました。救世主とその友が森の民を救ってくれると」

 パハミエスはマリリアンの言葉を黙ったまま聞いていた。

 「都合の良い言葉に聞こえるかもしれません。ですが――」
 「別にお主を責めている訳ではない。そう聞こえたのなら言葉を選ばなかった我の失言だ。許せ」

 パハミエスはそう言うとマリリアンに軽く頭を下げた。

 「貴方が頭を下げる事ではありません。全ては私の責任。何を言われても仕方なき事」
 「そうか。だが、これからは違う」
 「何がでしょうか?」
 「今後、この森で起こる事は我にも責任がある」
 「……どう言う事でしょうか?」
 「我らの救世主が、我にこの森を守ってくれと頭を下げたのだ」
 「なんと……」
 「ヘンキロもこの森の妖精達を気に入ったようだしな、我だけ知らぬ存ぜぬは出来んよ」

 大三郎がこの森を守ってくれとパハミエスに願い出ていた事、それを承諾した事を知り、美しいエメラルドの瞳を見開き驚く。

 「お主にもこれを渡しておこう」

 パハミエスはそう言うと、懐からコンテ・ビオを取り出し、マリリアンに手渡した。

 「これはコンテ・ビオ。どうして私に?」
 「透破の者達にマストアの森を警戒させるが、万が一の事があるやもしれん。その時はそれで我を呼べ」
 「お心遣い感謝いたします」
 「お主達に万が一の事があったら大三郎は元より、ヘンキロが黙っておらんのでな」
 「ヘンキロ? あの手品やダンスが上手な?」
 「そうだ。あやつを連れて来たのは、今のアウタル・サクロの中で最も危険な者だからだ」
 「そうなのですか?」
 「うむ。何かある前に我の手元に置いておこうと思ったのだが、ヘンキロ自身が妖精達や我の仲間を気に入ったようで、心配事は取り越し苦労に終わったがな」

 ダルトが大三郎に「凶悪な二人が来ている」と言った言葉は過剰な評価ではなく、本当にそうなのだ。
 パハミエスは言うまでもなく、挑んで来る者には一切の容赦をせず打ち倒す。
 ヘンキロもその実態は色々と謎に包まれているが、アウタル・サクロの中でも上位の実力者。そして、一部の感情が欠落しているのかと思われるほど残忍であった。
 
 ヘンキロには絶対に譲れない美学があり、その美学に反する者に対して目を覆いたくなるような残忍な行為をする。それに、ヘンキロは敵味方関係なく、自分の美学や残忍な行為を理解してもらおうなどとは全く思わないが故、美学に反する者を殺す邪魔をすれば誰も止められないくらい暴走をし始める。何よりもパハミエスが心配していたのは、ヘンキロは異常なほど執念深いと言う点だった。
 ヘンキロが一度でも敵と認識してしまえば、自分がパハミエスに殺さる事になろうとも必ず討ち取る。それ程の執念深さ。

 パハミエスはこの世界最強の魔法使いだが万能ではない。自分が居ない所で大三郎や他の者がヘンキロに殺されるような事があれば守り通す事は不可能。それ故、手元に置いておきたかった。
 だが、パハミエスの心配をよそに、ヘンキロは大三郎達や妖精達を『自分の観客』として認識したのだった。
 ショーを披露する者にとって何よりも大切なのは観客。喝采と言うスポットライトを当ててくれる大切な観客。
 ショーを披露する者にとって何よりも大切な観客を傷つけれると言う事は、絶対に許せない事であり、絶対にあってはならないこと。
 ヘンキロが大三郎達を自分の観客と認識した事を知ったパハミエスは、その時点で妖精の泉に自分の魔力を分け与える事を決断した。
 
 ヘンキロはメルロ達を傷つけないと約束はしたが、大三郎までは約束をしていない。もし、大三郎を観客として認識しなければパハミエスは迷わずヘンキロを殺していた。ただ、ヘンキロと戦う事になれば打ち倒す事は出来るが、ラ・レボルテをした事もあり、妖精の泉が復活できる程の魔力は残っていなかったはず。そうなれば、神託が下りているのにも拘らず、魔力が回復するまで悪戯に日々を過ごすしかなかった。
 その心配も今は無い。無事に妖精の泉を復活させれ、尚且つ自分が居ない間、大三郎達の屈強なボディーガードとして味方につけれた。
 
 「私に出来る事はありますか?」

 コンテ・ビオを胸元に持ち、美しいエメラルドの瞳をパハミエスに向ける。

 「そうだな。光の妖精に旅支度をさせろ」
 「光の妖精……。パニティーにですか?」
 「そうだ。それも今夜中にだ」
 「今夜中……。分かりました」
 「後は、どんな些細な事でも何かあったら必ず我に知らせろ」
 「はい。後は?」
 「それだけで良い」
 「分かりました。それと……」
 「何だ?」

 マリリアンは美しいエメラルドの瞳を伏せ、少し間を置くと再びパハミエスを見つめ「申し訳ありません」と頭を垂れた。

 「何がだ?」

 マリリアンには無表情に見えるパハミエスの顔だが、大三郎が見たら「じーさん、キョトンとしてるよ」と、教えてくれただろう。

 「貴方にした事です」
 「我に? 何をした?」
 「神々に貴方をハイ・クラウン・リッチとして認めていただいた事です」
 
 頭を垂れたまま申し訳なさそうに言うマリリアンに、パハミエスは全く気にしていない様子で「何だ、そんな事か」と言う。マリリアンはその言葉を聞き、許しの言葉を貰う前に思わず下げていた頭を上げ、「私は貴方に――」と、懺悔するように自分がした事を言おうとしたのだが、パハミエスはその言葉を遮るように、「ああでもしなければ、小童を止められなかっただろう?」と言った。
 
 「そうですが……」
 「気にするな。それにな――くっくっく」

 パハミエスは話している最中に突然俯きながら肩を小さく揺らし笑い出した。

 「どうなさいました?」
 「いや、すまん。大三郎がな」
 「はい?」
 「我が正義の味方に成れると言ったのだ」
 「え? 正義の味方、ですか?」
 「うむ。我にだぞ? この我にだ。何を言うかと思えば――くっくっく。いや、すまん。笑いが止まらん。くっくっく」
 
 パハミエスは思い出し笑いが止まらず、「失礼。ちょっと待ってくれ」と言うように、マリリアンに手のひらを翳し、俯いたまま肩を揺らし笑う。
 そんなパハミエスにマリリアンは優しげな目を向け、「我等の救世主が、我等の『大いなるハイ・クラウ神術者ン・リッチ』に相応しい役目を与えて下さったのですね」と告げた。

 「くっくっく。そうだな。我に付けたも、これで気にする事はなくなっただろう? くっくっく。しかし……、我が、正義の味方に……くっくっ、成れると、言うた奴など、大三郎だけだ。くっくっく。この我に。くふ! くっくっく。本当に面白い奴だ」
 
 手を翳し、俯いて笑い顔を見せないようにしているパハミエスだが、本当に楽し気に思い出し笑いをしている。マリリアンはその姿を見て笑みが零れた。
 そして姿勢を正し、パハミエスに「改めて私からもお願いいたします。我等の神術者パハミエス殿。この森をどうかお守りください」と深々と頭を垂れた。

 パハミエスは一頻ひとしきり笑った後、「分かった。礼はいらぬ――と言いたいところだが」と言葉を止めた。

 「何なりと仰ってください。出来る限りの礼はします」
 「ふむ。もし、透破の者が深手を負ったら治癒の祈りをしてやってくれ」
 「分かりました」
 「それと」
 「はい」
 「果実酒をもう少し分けてくれまいか? 大三郎も気に入った様でな」
 
 マリリアンはその言葉に、笑顔で「はい」と答えた。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ねこぱんち
2019.09.06 ねこぱんち

その替え歌は、僕も歌ってたなぁ…(´-ω-`)

2019.09.10 彦野 うとむ

感想ありがとうございます。
知る人ぞ知る全国共通の替え歌ですねw

解除

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