異世界で探がす愛の定義と幸せカテゴリー

彦野 うとむ

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妖精の森編

サッと来て、ガッとやって、パッと帰る。それが職人の合言葉

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 「杉田様、流石にそれはやりすぎだと思います」
 「……」
 「一応、私はお止めしましたからね?」
 
 エスカの声で妖精が目を覚ますと、まず最初に目に飛び込んできた光景は、大三郎が焚火をしている姿だった。
 大三郎が目を覚ました妖精に気が付き、スクッと立ち上がり、妖精の下まで行くと、徐に妖精を持ち上げる。

 「では、焼いてみたいと思います」
 「え?」

 妖精は自分が枝に縛り付けられている事に気付く。
 
 「スギタ! お前、何をするつもりだ?!」
 「焼いてみたいと思います」

 大三郎はスタスタと焚火に歩いて行く。

 「待て! 私を焼いて食べても美味しくないぞ!」
 「食べないよ」
 「じゃあ、どうするつもりだ?」
 「、と思います」
 「ちょちょっと待て! ただ焼くだけなのか?」
 「そうです。私こと杉田大三郎は、妖精を、と思い立ちました」
 
 無表情でそう言う大三郎を見て妖精の顔が青ざめる。

 「何故、焼くんだ?!」
 「焼いたら、妖精の粉が出るかもしれないから」
 「出ないよ!」
 「私こと杉田大三郎の相方、エスカ・何とかの名言を聞かせましょう」
 「な、何だよ?」
 「
 「分かるよ!」
 「僕には分からない」
 
 ずんずん焚火に近づいて行く大三郎に妖精が提案をする。

 「分かった! 分かったから! 妖精の粉を出してやるから私を焼くな!」
 
 それを聞いた大三郎は歩くのを止め、ゆっくりと妖精の顔を見ながら一言だけ言う。

 「嘘だったら焼くよ?」

 その無表情な大三郎の顔を見て、妖精は更に青ざめる。

 「もし、紐を解いた瞬間、飛んで行ったら、エスカがライトニングで、焼くよ? 良い?」
 
 大三郎は顔を近づけ真顔で言う。
 妖精はエスカをチラリと見てゴクリと息をのむ。

 「わ、分かった。約束する。だから、私を焼くなよ? 良いな?」

 大三郎は、妖精の顔をじぃーっと見つめた後、紐を解き始めた。
 解放された妖精は、やれやれと言う感じで肩をグルグル回す。
 
 「妖精を焼こうとした人間なんて初めてだ」
 「初体験が出来て良かったね」
 「良くない!」
 「妖精さん、大丈夫ですか?」

 エスカが何食わぬ顔で妖精に尋ねる。

 「ったく。お前らはサノスとは大違いだな」
 「サノスさんをご存じなのですか?」
 「ああ。サノスに妖精の粉をあげる約束をしてたからな」
 「そうなんですか?」
 「約束の日時に来なかったけどな。妖精の粉を持って、森の外をウロウロしているのは凄い危険だから、約束の時間が過ぎて帰ったけどさ。それでも、森の外でギリギリまで待ったんだぞ」
 
  エスカは大三郎をジト目で見る。

 「元凶の貴女に、そんな目で見られる筋合いはありません」
 「お前らもサノスの知り合いなのか?」
 「まぁ、そうだな」
 「杉田様とサノスさんはお尻合いです」
 「おい、エスカ・オパイ・De・ビッチ」
 「何ですか? 絶対モテないプロトタイプ短小包茎たんしょうほうけい1号杉田大三郎様」
 「ァぁ……ぁァぁ……ぁ」
 「お、おい、人間の女。な、何か、スギタが、お爺ちゃんになったぞ?」
 「下半身の一部はミイラ化しているでしょうね」
 「ぅぁ……ぁァぁ……ぁ」
 「お、おい、人間の女。スギタお爺ちゃん、泣き始めたぞ」
 「ミイラ化した一部が、涙で潤えば良いのではないでしょうか?」
 「バカっぱぁーーい!!」
 
 ――スパーン!

 大三郎はエスカの胸をアッパーカットのように平手でかち上げた。

 「いったーーい!!」
 「何が潤えばだ! バカっぱい!」
 「ラ――ッ?!」
 
 エスカがライトニングを唱える瞬間、大三郎はエスカの口の中にすかさず指を入れる。

 「言わせない。そう何度も何度も言わせなぎゃぁああ!!」

 エスカは大三郎の指を思いっきり噛む。

 「痛い痛い痛い! 離せバカっぱい!」
 「いー!」
 「こんの、バカっぱい!!」

 ――ゴッ!

 大三郎はエスカの頭に頭突きをした。

 「いったーーい!! 頭突きする事ないでしょ!」
 
 大三郎は頭に大きなタンコブを作り倒れている。

 「だ、大丈夫か……スギタ?」
 「……ゴッて言った」
 「な、何だって?」
 「ゴン、じゃなくて、ゴッて音がした」
 「あ、ああ、そうだな」
 「岩に頭突きした」
 「い、岩?」
 「ちっこいの」
 「な、何だよ?」
 「気を付けろ」
 「何が?」
 「あいつは人じゃない」
 「え? に、人間の女がか?」
 
 大三郎は大きなタンコブを作りながら、ゆっくりと立ち上がり、エスカにゆびし言う。

 「人間じゃない。あいつは、オパイ・ザ・ゴーレムだ!」
 「オパイ・ザ・ゴーレム?!」
 「その容姿とは裏腹に、オパイで世界を7日7晩、火の海にしたのだ!」
 「ひ、火の海に?!」
 「俺の故郷である地球、そう……、青星までその名を轟かせた伝説の巨神パイ。チッ、母乳が出てやがる、デカすぎたんだ。オパイ・ザ・ゴーレム!」
 「な、何ぃ!!」

 妖精は素で驚きエスカを見る。
 エスカは無言で大三郎に近づくと、自分をしている大三郎のゆびを掴む。

 「ちっこいの」
 「な、何だ?」
 「今から衝撃映像が流れます。ご注意ください」
 「え?」
 
 大三郎がそう言うと同時に、エスカは大三郎の指を、曲がってはイケない方向に力一杯曲げる。

 「ぎゃあああああ!!」
 「ぎゃあああああ!!」

 大三郎の悲鳴と共に妖精も悲鳴を上げる。

 「に、人間の女! やめろ! もう、やめてやれ!」
 「何故です?」
 「な、何故って? いくらなんでもスギタが可哀想だ」
 「何処どこがですか?」
 「何処って……、指はそっちに曲がら――」
 「余り五月蠅いと、あなたの羽も、千切りますよ?」
 
 エスカは無表情を超えた冷酷な顔に、妖精は何も言えなくなった。

 「ち、ちっこいの……巨神パイから……ぅぎゃああ!! に、逃げろ……ぎゃあああ!!!」
 「え? え?」
 
 妖精はどうする事も出来ず、ただオロオロするばかりだった。
 そんな妖精に、エスカは目は全く笑ってない笑顔で一言。

 「逃げたら、焼きますよ」
 
 その一言は、首に剣を突き付けられるより絶望的だったと、後に妖精は語る。

 「エ、エ、エ」
 「何ですか?」
 「エ、エクレール買ってやるから! 離して!」
 「……」
 「パンシェのエクレール買ってやるから!」
 
 パンシェとは、リトットにあるケーキ屋の名前で、そこで売っているエクレールはエスカの大のお気に入りだった。

 「何個ですか?」
 「何個? いぎゃ! 2個!」
 「……」
 「3個!」
 「……良いでしょう」

 エスカは大三郎の指を離す。

 「さて、妖精さん?」
 「は、はい!」
 「粉は頂けるのでしょうか?」
 「こ、粉?」
 「羽を千切ったら思い出しますか?」
 「――ッ! 粉ね! あげる!」
 「それは良かった」
 
 エスカはやっといつもの顔に戻った。
 しかし、妖精は少し困った顔をしている。

 「ただ、すぐには無理なんだ……」
 「何か問題でも?」
 「サノスにやるはずだった妖精の粉は、もうダメになってしまってるし……」
 「何故です? ……あ、そうでした」
 
 大三郎は指を押さえながら不思議そうに尋ねる。

 「何でダメになってんだ?」
 「妖精の粉は日持ちしないんです」
 「日持ち?」
 「はい。妖精の粉の効力は、そのままだと30時間程しか持たないんです」
 「え? そうなの?」
 「ええ。ですから保存する場合、特殊な手法でなければ効力が消えてしまいます。その為、妖精の粉は最高級ランクの貴重品なのです」
 「マジか?」
 「はい。取引される金額も、青星の金額で例えると、そうですね、効力にもよりますが、美容効果の最高級ランクだと、1グラムで数億円ほどです」
 「なっ?! そ、そんなにするの?」
 「はい。若返りの効果も抜群ですし、その上、入手困難な品と言う事もありますから」
 
 大三郎は想像以上の金額に目を点にして驚いていた。

 「とか蝶々の鱗粉程度にしか考えてなかったから、その金額には素でびっくりだよ」
 「蛾ってなんだよ?! 蛾って! 妖精の粉はマリリアン様の力を借りて、皆でお祈りをしてやっと出せるんだ!」
 「え、そうなの? 妖精を捕まえて、塩コショウみたいに振れば出るかな~って思ってた。はは」
 「スギタお前! 私達をバカにし過ぎだぞ!」
 「ごめんごめん。そ~怒んなよ~。ちっこいの」
 「さっきから、ちっこいのちっこいのって。私はパニティーって名前があるんだ!」
 「パンティー?」
 「違う! パニティーだ!」
 「違うパンティー? どれどれ」
 
 大三郎はパニティーの葉を模様したスカートをめくろうとする。

 「や、やめろ! 変質者!」
 「見たって、フィギュアのパンツを見る程度しか思わんよ」
 「フィギュアって何だ?! 私はパニティー・フラッシェンと言う名だ! フィギュアじゃない!」
 「分かった分かった。んで、パニティー」
 「何だ?」
 「妖精の粉は、どのくらいで出来るんだ?」
 「時間か?」
 「ああ。まさか、数日とか数ヶ月とかじゃないよな?」
 「スギタ達が欲しがる量によるよ」
 
 大三郎はエスカを見て、どのくらい持って行けば良いか相談する。

 「エスカ、妖精の粉はどのくらいあれば良いんだ?」
 「そうですね。ミュールさんのステージ用と言う事であれば、小さじ一杯分もあれば良いかと」
 「小さじ一杯分て、何グラムだ?」
 「塩なら6グラム、砂糖なら3グラムと物によって違います。妖精の粉もその効力によって、質量では無く重量が変わります」
 「んん? どゆこと?」
 「妖精の粉その物の重さは変わらないのですが、効力が大きければ大きい程、大地に吸い寄せられる力も大きくなるので、同じ分量でも、効力によって重さが変わってしまうんです」
 「んじゃ、俺達が持って行かなきゃならないのは、どのくらいの重さになるの?」
 「そうですね~。……美に関する効力だけであれば、砂糖くらいでしょうか?」
 「3グラムってこと?」
 「そうですね」
 「分かった。教えてくれてありがと」
 「どういたしまして」

 大三郎はエスカに礼を言うと、パニティーを見ながら欲しい分を告げる。

 「パニティー、妖精の粉、3グラム頂だい」
 「3グラム?」
 「杉田様。お店で、このお肉500グラムください。みたいに言っても駄目ですよ」
 「何で?」
 「妖精さんに妖精の粉を貰う時は、グラムではなく、欲しい量と効力を言うんです」
 「そうなんだ? んじゃ、パニティー」
 「何だ? 決まったのか?」
 「ああ。小さじ一杯分の美に関する粉を頂だい」
 「美?」
 「杉田様。それでは肉の部位を言わずにただ肉をくれ。と、言っているようなものですよ」
 「え~。美に関するって、俺には分かんないよ」
 「それでは私が言います」
 「よろしくお願いします」

 エスカはパニティーと効力の話をしている。
 大三郎は木陰に戻り、木の根元に腰を下ろし一息ついた。
 
 暫くして、エスカが困った顔をしながら大三郎の下まで来る。

 「終わった? どのくらい掛かる……って、どした?」
 「少し困った事になりました」
 「何? 粉が出ないとか?」
 「いえ。それが……」

 エスカの話によれば、サノスが半年間、毎日アップルパイを持って来たのは、妖精の秘宝とも呼べる”妖精の泉”が冒険者に見つかりそうになり、その冒険者を追い払うために、冒険者と戦い、何とか追い払ったのだが、その時に戦った妖精が大怪我を負ってしまう。

 妖精達で治癒の祈りを捧げ、その傷を癒そうとしたのだが、重傷だったため、祈りを捧げる者達のエネルギーが大量に必要だった。
 妖精は果物や木の実を食べたりするが、森のエネルギーを主成分として体内に取り込み、それを食事で得る栄養素の代わりにしていたので、調理と言う概念は殆ど無いに等しかった。

 傷を癒すため、大量のエネルギーを森から強制的にってしまえば、他の植物たちの栄養まで摂る事になり、植物たちの命を奪ってしまう。
 妖精界では、強制的に森からエネルギーを摂る行為は禁断の行為として、いにしえから固く禁止されていた。

 その為、食事で栄養を摂る他なかった。
 だが、調理の概念が殆ど無い妖精達には、自然に実った果物や木の実で栄養を摂るしかなかったが、それだけでは、治癒の祈りを捧げる為のエネルギーを得るには限界があった。 

 その時、サノスが現れ、事情を知ったサノスは、栄養価の高いサノス特性アップルパイを半年間、毎日欠かさず持って来てくれた。
 そのお陰で、大怪我を負った妖精は回復し、そのお礼としてサノスの願いを叶える事になる。
 その時、サノスがお礼の対価として貰うはずだったのが、妖精の粉だった。

 「へー。そんな経緯いきさつがあったのか」
 「はい。私も、この話を聞いて合点がいきました」
 「がてん?」
 「はい。サノスさんがおこなった行為は私達にしてみれば、確かに凄い事ですが、妖精が素直に妖精の粉を渡すとは、正直、思ってなかったので」 

 大三郎はエスカの話を聞き、確かに。と思った。
 妖精は人を揶揄からかい悪戯をする。
 約束事だって簡単に反故にしてしまう事など当たり前なのだ。

 「まぁ、仲間の命の恩人て言う、デカイ借りを作っちまったからな」
 「ええ。それでも、サノスさんとの約束を反故にしようとしたら……」
 「しようとしたら?」
 「ライトニングでした」
 「こ、怖いよ。俺以外にライトニングしたら死んじゃうよ?」
 「それだけの事をした、と言う事です」
 「ま、まぁね」
 「はい」

 真顔で言うエスカに、大三郎は少し引き気味になりながら話を続ける。

 「んで、困った事とは?」
 「はい。その冒険者がまた現れたそうなんです」
 「マジか?」
 「はい」
 「それで、妖精の粉どころではないと?」
 「そう言う事になりますね」
 「だよなぁ~」

 流石の大三郎もこれには素で困った。
 救世主にされ、通常の人間より遥かに丈夫な体に成ったとはいえ、相手は冒険者。
 大三郎自身、剣術はおろかスポーツもさほど経験が無い。戦う術が無いのだ。

 「私が追い払っても良いのですが、盗賊ではなく、冒険者で下手に相手が強者だった場合、手加減が出来ず殺めてしまう可能性もあります」
 「ん~……。そうなると、憲兵沙汰か」
 「そうなりますね」
 「面倒事はなるべく避けたいよなぁ?」
 「はい。いくら救世主一行とは言え、盗賊や野盗ではなく、冒険者を殺めてしまえば、憲兵隊も簡単には解放してくれません。最悪の場合、私達が裁きを下される可能性もあります」
 「ん~……」 

 大三郎は考え込んでしまう。
 自分自身、戦う技術も知恵も経験も無い。本当に戦うすべが何も無い。
 エスカの魔法に頼る事も出来ない。
 
 エスカに憲兵隊に来てもらえないかと尋ねたが、憲兵は殺人事件以外は街の中の事件しか取り扱わない。何より、妖精関連に関わる事はご法度らしく、憲兵に頼る事は出来ないと言う。
 八方塞がりかと思った時、不意にあの声が聞こえた。


 ”世界を救いし者よ。汝、自ら苦難に立ち向かうのであれば道を示そう”


 「え? 俺、何も願ってないけど?」

 大三郎は懐から紙を取り出し見てみる。

 
 =サブクエスト 冒険者の胸を揉み倒せ=


 「……。サブクエストって何だよ?」
 「え? 何が書かれてました?」
 
 大三郎は無言でエスカに紙を渡す。
 紙の内容を見たエスカも流石に無言になってしまった。

 「……おっぱいは好きだよ。ちっちゃいのから大きいのまで」
 「……」
 「だがな、だが……な……」

 大三郎は徐々に涙声になり、ポロリと涙をこばす。

 「俺は、女のおっぱいが好きなんだ!!」
 
 大三郎は訴えかけるように叫ぶ。

 「俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ! 大事な事なのでもう一度言います。俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ!」

 そして、大三郎は両膝をつき、何かをほっするように両腕を天高く上げ、空を見上げながら泣き叫ぶ。

 「神よ! 俺は、男のおっぱいなどに興味は無いのだ! 神よ! ヤローのおっぱいを揉み、ヤローの乳首をまさぐる35歳独身男がそんなに見たいのか?! 神よ! あんた等ホモなのか?! 野獣・De・ウホ、なのか?! 神よ! 答えろ! 神よ! 男の冒険者など、いらんのだぁあ!! くそっ喰らえぇぇえ~ん!」

 大三郎が泣き叫ぶ中、パニティーがスーッと飛んできて一言。 
 
 「冒険者は女だぞ」

 泣き叫んでいた大三郎はピタリと泣き止んだ。

 「何ですと?」
 「え? 冒険者の事だろ?」
 「そうですが、もう一度言います。何ですと?」
 「だから、女だって」
 「……因みに、どんな女ですか? 詳しく、事細かく、明確に、言って頂けませんか?」 
 「え~? ん~……、見た目は……、あ! そこの人間の女と似てるな」
 
 大三郎はエスカを見る。
 舐め回すように見る。

 「な、何ですか?」

 エスカは、大三郎の視線を避けるように身をよじらせ、両腕で身を守る様に腕を組む。
 大三郎は暫しエスカをジッと見た後、スクッと立ち上がり空に向かって叫んだ。

 「Good job My God!」
 
 パニティーは、何故に大三郎が空に叫んでいるのか分からないでいたが、分かっているエスカは呆れた顔をしていた。

 「コホン。さて、行こうか」
 「何処にだ?」
 「何処にとは愚問だぞ、パニティー」
 「ぐ、愚問?」
 「そうだ。決まっているだろう、冒険者の所へだ」
 「ま、まさか?! 追い払ってくれるのか?」
 「ふふふ。そう慌てるな、パニティーよ」
 「な、何だよ?」
 「救世主として、冒険者を倒せと、神のお告げが来たのだよ」
 「か、神様が? 私達を助けろと?!」
 「ふふふ。もう安心しろ、パニティーよ」
 
 パニティーは感激の余り、今にもこぼれそうな涙を堪え、ふるふると小さな体を震わせていた。

 「さぁ! 冒険者の所へ案内しろ!」
 「分かった! こっちだ!」
 「行くぞ! ひゃっほーい!」
 「ひゃっほーい!」

 バカ一人と単純妖精の後ろ姿を、呆れた眼差しでエスカは見つめていた。
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