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妖精の森編
サッと来て、ガッとやって、パッと帰る。それが職人の合言葉
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「杉田様、流石にそれはやりすぎだと思います」
「……」
「一応、私はお止めしましたからね?」
エスカの声で妖精が目を覚ますと、まず最初に目に飛び込んできた光景は、大三郎が焚火をしている姿だった。
大三郎が目を覚ました妖精に気が付き、スクッと立ち上がり、妖精の下まで行くと、徐に妖精を持ち上げる。
「では、焼いてみたいと思います」
「え?」
妖精は自分が枝に縛り付けられている事に気付く。
「スギタ! お前、何をするつもりだ?!」
「焼いてみたいと思います」
大三郎はスタスタと焚火に歩いて行く。
「待て! 私を焼いて食べても美味しくないぞ!」
「食べないよ」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「焼いてみたい、と思います」
「ちょちょっと待て! ただ焼くだけなのか?」
「そうです。私こと杉田大三郎は、妖精をただ焼いてみたい、と思い立ちました」
無表情でそう言う大三郎を見て妖精の顔が青ざめる。
「何故、焼くんだ?!」
「焼いたら、妖精の粉が出るかもしれないから」
「出ないよ!」
「私こと杉田大三郎の相方、エスカ・何とかの名言を聞かせましょう」
「な、何だよ?」
「やってみなければ分からない」
「分かるよ!」
「僕には分からない」
ずんずん焚火に近づいて行く大三郎に妖精が提案をする。
「分かった! 分かったから! 妖精の粉を出してやるから私を焼くな!」
それを聞いた大三郎は歩くのを止め、ゆっくりと妖精の顔を見ながら一言だけ言う。
「嘘だったら焼くよ?」
その無表情な大三郎の顔を見て、妖精は更に青ざめる。
「もし、紐を解いた瞬間、飛んで行ったら、エスカがライトニングで、焼くよ? 良い?」
大三郎は顔を近づけ真顔で言う。
妖精はエスカをチラリと見てゴクリと息をのむ。
「わ、分かった。約束する。だから、私を焼くなよ? 良いな?」
大三郎は、妖精の顔をじぃーっと見つめた後、紐を解き始めた。
解放された妖精は、やれやれと言う感じで肩をグルグル回す。
「妖精を焼こうとした人間なんて初めてだ」
「初体験が出来て良かったね」
「良くない!」
「妖精さん、大丈夫ですか?」
エスカが何食わぬ顔で妖精に尋ねる。
「ったく。お前らはサノスとは大違いだな」
「サノスさんをご存じなのですか?」
「ああ。サノスに妖精の粉をあげる約束をしてたからな」
「そうなんですか?」
「約束の日時に来なかったけどな。妖精の粉を持って、森の外をウロウロしているのは凄い危険だから、約束の時間が過ぎて帰ったけどさ。それでも、森の外でギリギリまで待ったんだぞ」
エスカは大三郎をジト目で見る。
「元凶の貴女に、そんな目で見られる筋合いはありません」
「お前らもサノスの知り合いなのか?」
「まぁ、そうだな」
「杉田様とサノスさんはお尻合いです」
「おい、エスカ・オパイ・De・ビッチ」
「何ですか? 絶対モテないプロトタイプ短小包茎1号杉田大三郎様」
「ァぁ……ぁァぁ……ぁ」
「お、おい、人間の女。な、何か、スギタが、お爺ちゃんになったぞ?」
「下半身の一部はミイラ化しているでしょうね」
「ぅぁ……ぁァぁ……ぁ」
「お、おい、人間の女。スギタお爺ちゃん、泣き始めたぞ」
「ミイラ化した一部が、涙で潤えば良いのではないでしょうか?」
「バカっぱぁーーい!!」
――スパーン!
大三郎はエスカの胸をアッパーカットのように平手でかち上げた。
「いったーーい!!」
「何が潤えばだ! バカっぱい!」
「ラ――ッ?!」
エスカがライトニングを唱える瞬間、大三郎はエスカの口の中にすかさず指を入れる。
「言わせない。そう何度も何度も言わせなぎゃぁああ!!」
エスカは大三郎の指を思いっきり噛む。
「痛い痛い痛い! 離せバカっぱい!」
「いー!」
「こんの、バカっぱい!!」
――ゴッ!
大三郎はエスカの頭に頭突きをした。
「いったーーい!! 頭突きする事ないでしょ!」
大三郎は頭に大きなタンコブを作り倒れている。
「だ、大丈夫か……スギタ?」
「……ゴッて言った」
「な、何だって?」
「ゴン、じゃなくて、ゴッて音がした」
「あ、ああ、そうだな」
「岩に頭突きした」
「い、岩?」
「ちっこいの」
「な、何だよ?」
「気を付けろ」
「何が?」
「あいつは人じゃない」
「え? に、人間の女がか?」
大三郎は大きなタンコブを作りながら、ゆっくりと立ち上がり、エスカに指を指し言う。
「人間じゃない。あいつは、オパイ・ザ・ゴーレムだ!」
「オパイ・ザ・ゴーレム?!」
「その容姿とは裏腹に、オパイで世界を7日7晩、火の海にしたのだ!」
「ひ、火の海に?!」
「俺の故郷である地球、そう……、青星までその名を轟かせた伝説の巨神パイ。チッ、母乳が出てやがる、デカすぎたんだ。オパイ・ザ・ゴーレム!」
「な、何ぃ!!」
妖精は素で驚きエスカを見る。
エスカは無言で大三郎に近づくと、自分を指している大三郎の指を掴む。
「ちっこいの」
「な、何だ?」
「今から衝撃映像が流れます。ご注意ください」
「え?」
大三郎がそう言うと同時に、エスカは大三郎の指を、曲がってはイケない方向に力一杯曲げる。
「ぎゃあああああ!!」
「ぎゃあああああ!!」
大三郎の悲鳴と共に妖精も悲鳴を上げる。
「に、人間の女! やめろ! もう、やめてやれ!」
「何故です?」
「な、何故って? いくらなんでもスギタが可哀想だ」
「何処がですか?」
「何処って……、指はそっちに曲がら――」
「余り五月蠅いと、あなたの羽も、千切りますよ?」
エスカは無表情を超えた冷酷な顔に、妖精は何も言えなくなった。
「ち、ちっこいの……巨神パイから……ぅぎゃああ!! に、逃げろ……ぎゃあああ!!!」
「え? え?」
妖精はどうする事も出来ず、ただオロオロするばかりだった。
そんな妖精に、エスカは目は全く笑ってない笑顔で一言。
「逃げたら、焼きますよ」
その一言は、首に剣を突き付けられるより絶望的だったと、後に妖精は語る。
「エ、エ、エ」
「何ですか?」
「エ、エクレール買ってやるから! 離して!」
「……」
「パンシェのエクレール買ってやるから!」
パンシェとは、リトットにあるケーキ屋の名前で、そこで売っているエクレールはエスカの大のお気に入りだった。
「何個ですか?」
「何個? いぎゃ! 2個!」
「……」
「3個!」
「……良いでしょう」
エスカは大三郎の指を離す。
「さて、妖精さん?」
「は、はい!」
「粉は頂けるのでしょうか?」
「こ、粉?」
「羽を千切ったら思い出しますか?」
「――ッ! 粉ね! あげる!」
「それは良かった」
エスカはやっといつもの顔に戻った。
しかし、妖精は少し困った顔をしている。
「ただ、すぐには無理なんだ……」
「何か問題でも?」
「サノスにやるはずだった妖精の粉は、もうダメになってしまってるし……」
「何故です? ……あ、そうでした」
大三郎は指を押さえながら不思議そうに尋ねる。
「何でダメになってんだ?」
「妖精の粉は日持ちしないんです」
「日持ち?」
「はい。妖精の粉の効力は、そのままだと30時間程しか持たないんです」
「え? そうなの?」
「ええ。ですから保存する場合、特殊な手法でなければ効力が消えてしまいます。その為、妖精の粉は最高級ランクの貴重品なのです」
「マジか?」
「はい。取引される金額も、青星の金額で例えると、そうですね、効力にもよりますが、美容効果の最高級ランクだと、1グラムで数億円ほどです」
「なっ?! そ、そんなにするの?」
「はい。若返りの効果も抜群ですし、その上、入手困難な品と言う事もありますから」
大三郎は想像以上の金額に目を点にして驚いていた。
「蛾とか蝶々の鱗粉程度にしか考えてなかったから、その金額には素でびっくりだよ」
「蛾ってなんだよ?! 蛾って! 妖精の粉はマリリアン様の力を借りて、皆でお祈りをしてやっと出せるんだ!」
「え、そうなの? 妖精を捕まえて、塩コショウみたいに振れば出るかな~って思ってた。はは」
「スギタお前! 私達をバカにし過ぎだぞ!」
「ごめんごめん。そ~怒んなよ~。ちっこいの」
「さっきから、ちっこいのちっこいのって。私はパニティーって名前があるんだ!」
「パンティー?」
「違う! パニティーだ!」
「違うパンティー? どれどれ」
大三郎はパニティーの葉を模様したスカートを捲ろうとする。
「や、やめろ! 変質者!」
「見たって、フィギュアのパンツを見る程度しか思わんよ」
「フィギュアって何だ?! 私はパニティー・フラッシェンと言う名だ! フィギュアじゃない!」
「分かった分かった。んで、パニティー」
「何だ?」
「妖精の粉は、どのくらいで出来るんだ?」
「時間か?」
「ああ。まさか、数日とか数ヶ月とかじゃないよな?」
「スギタ達が欲しがる量によるよ」
大三郎はエスカを見て、どのくらい持って行けば良いか相談する。
「エスカ、妖精の粉はどのくらいあれば良いんだ?」
「そうですね。ミュールさんのステージ用と言う事であれば、小さじ一杯分もあれば良いかと」
「小さじ一杯分て、何グラムだ?」
「塩なら6グラム、砂糖なら3グラムと物によって違います。妖精の粉もその効力によって、質量では無く重量が変わります」
「んん? どゆこと?」
「妖精の粉その物の重さは変わらないのですが、効力が大きければ大きい程、大地に吸い寄せられる力も大きくなるので、同じ分量でも、効力によって重さが変わってしまうんです」
「んじゃ、俺達が持って行かなきゃならないのは、どのくらいの重さになるの?」
「そうですね~。……美に関する効力だけであれば、砂糖くらいでしょうか?」
「3グラムってこと?」
「そうですね」
「分かった。教えてくれてありがと」
「どういたしまして」
大三郎はエスカに礼を言うと、パニティーを見ながら欲しい分を告げる。
「パニティー、妖精の粉、3グラム頂だい」
「3グラム?」
「杉田様。お店で、このお肉500グラムください。みたいに言っても駄目ですよ」
「何で?」
「妖精さんに妖精の粉を貰う時は、グラムではなく、欲しい量と効力を言うんです」
「そうなんだ? んじゃ、パニティー」
「何だ? 決まったのか?」
「ああ。小さじ一杯分の美に関する粉を頂だい」
「美?」
「杉田様。それでは肉の部位を言わずにただ肉をくれ。と、言っているようなものですよ」
「え~。美に関するって、俺には分かんないよ」
「それでは私が言います」
「よろしくお願いします」
エスカはパニティーと効力の話をしている。
大三郎は木陰に戻り、木の根元に腰を下ろし一息ついた。
暫くして、エスカが困った顔をしながら大三郎の下まで来る。
「終わった? どのくらい掛かる……って、どした?」
「少し困った事になりました」
「何? 粉が出ないとか?」
「いえ。それが……」
エスカの話によれば、サノスが半年間、毎日アップルパイを持って来たのは、妖精の秘宝とも呼べる”妖精の泉”が冒険者に見つかりそうになり、その冒険者を追い払うために、冒険者と戦い、何とか追い払ったのだが、その時に戦った妖精が大怪我を負ってしまう。
妖精達で治癒の祈りを捧げ、その傷を癒そうとしたのだが、重傷だったため、祈りを捧げる者達のエネルギーが大量に必要だった。
妖精は果物や木の実を食べたりするが、森のエネルギーを主成分として体内に取り込み、それを食事で得る栄養素の代わりにしていたので、調理と言う概念は殆ど無いに等しかった。
傷を癒すため、大量のエネルギーを森から強制的に摂ってしまえば、他の植物たちの栄養まで摂る事になり、植物たちの命を奪ってしまう。
妖精界では、強制的に森からエネルギーを摂る行為は禁断の行為として、古から固く禁止されていた。
その為、食事で栄養を摂る他なかった。
だが、調理の概念が殆ど無い妖精達には、自然に実った果物や木の実で栄養を摂るしかなかったが、それだけでは、治癒の祈りを捧げる為のエネルギーを得るには限界があった。
その時、サノスが現れ、事情を知ったサノスは、栄養価の高いサノス特性アップルパイを半年間、毎日欠かさず持って来てくれた。
そのお陰で、大怪我を負った妖精は回復し、そのお礼としてサノスの願いを叶える事になる。
その時、サノスがお礼の対価として貰うはずだったのが、妖精の粉だった。
「へー。そんな経緯があったのか」
「はい。私も、この話を聞いて合点がいきました」
「がてん?」
「はい。サノスさんが行った行為は私達にしてみれば、確かに凄い事ですが、妖精が素直に妖精の粉を渡すとは、正直、思ってなかったので」
大三郎はエスカの話を聞き、確かに。と思った。
妖精は人を揶揄い悪戯をする。
約束事だって簡単に反故にしてしまう事など当たり前なのだ。
「まぁ、仲間の命の恩人て言う、デカイ借りを作っちまったからな」
「ええ。それでも、サノスさんとの約束を反故にしようとしたら……」
「しようとしたら?」
「ライトニングでした」
「こ、怖いよ。俺以外にライトニングしたら死んじゃうよ?」
「それだけの事をした、と言う事です」
「ま、まぁね」
「はい」
真顔で言うエスカに、大三郎は少し引き気味になりながら話を続ける。
「んで、困った事とは?」
「はい。その冒険者がまた現れたそうなんです」
「マジか?」
「はい」
「それで、妖精の粉どころではないと?」
「そう言う事になりますね」
「だよなぁ~」
流石の大三郎もこれには素で困った。
救世主にされ、通常の人間より遥かに丈夫な体に成ったとはいえ、相手は冒険者。
大三郎自身、剣術はおろかスポーツもさほど経験が無い。戦う術が無いのだ。
「私が追い払っても良いのですが、盗賊ではなく、冒険者で下手に相手が強者だった場合、手加減が出来ず殺めてしまう可能性もあります」
「ん~……。そうなると、憲兵沙汰か」
「そうなりますね」
「面倒事はなるべく避けたいよなぁ?」
「はい。いくら救世主一行とは言え、盗賊や野盗ではなく、冒険者を殺めてしまえば、憲兵隊も簡単には解放してくれません。最悪の場合、私達が裁きを下される可能性もあります」
「ん~……」
大三郎は考え込んでしまう。
自分自身、戦う技術も知恵も経験も無い。本当に戦う術が何も無い。
エスカの魔法に頼る事も出来ない。
エスカに憲兵隊に来てもらえないかと尋ねたが、憲兵は殺人事件以外は街の中の事件しか取り扱わない。何より、妖精関連に関わる事はご法度らしく、憲兵に頼る事は出来ないと言う。
八方塞がりかと思った時、不意にあの声が聞こえた。
”世界を救いし者よ。汝、自ら苦難に立ち向かうのであれば道を示そう”
「え? 俺、何も願ってないけど?」
大三郎は懐から紙を取り出し見てみる。
=サブクエスト 冒険者の胸を揉み倒せ=
「……。サブクエストって何だよ?」
「え? 何が書かれてました?」
大三郎は無言でエスカに紙を渡す。
紙の内容を見たエスカも流石に無言になってしまった。
「……おっぱいは好きだよ。ちっちゃいのから大きいのまで」
「……」
「だがな、だが……な……」
大三郎は徐々に涙声になり、ポロリと涙をこばす。
「俺は、女のおっぱいが好きなんだ!!」
大三郎は訴えかけるように叫ぶ。
「俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ! 大事な事なのでもう一度言います。俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ!」
そして、大三郎は両膝をつき、何かを欲するように両腕を天高く上げ、空を見上げながら泣き叫ぶ。
「神よ! 俺は、男のおっぱいなどに興味は無いのだ! 神よ! ヤローのおっぱいを揉み、ヤローの乳首を弄る35歳独身男がそんなに見たいのか?! 神よ! あんた等ホモなのか?! 野獣・De・ウホ、なのか?! 神よ! 答えろ! 神よ! 男の冒険者など、いらんのだぁあ!! くそっ喰らえぇぇえ~ん!」
大三郎が泣き叫ぶ中、パニティーがスーッと飛んできて一言。
「冒険者は女だぞ」
泣き叫んでいた大三郎はピタリと泣き止んだ。
「何ですと?」
「え? 冒険者の事だろ?」
「そうですが、もう一度言います。何ですと?」
「だから、女だって」
「……因みに、どんな女ですか? 詳しく、事細かく、明確に、言って頂けませんか?」
「え~? ん~……、見た目は……、あ! そこの人間の女と似てるな」
大三郎はエスカを見る。
舐め回すように見る。
「な、何ですか?」
エスカは、大三郎の視線を避けるように身をよじらせ、両腕で身を守る様に腕を組む。
大三郎は暫しエスカをジッと見た後、スクッと立ち上がり空に向かって叫んだ。
「Good job My God!」
パニティーは、何故に大三郎が空に叫んでいるのか分からないでいたが、分かっているエスカは呆れた顔をしていた。
「コホン。さて、行こうか」
「何処にだ?」
「何処にとは愚問だぞ、パニティー」
「ぐ、愚問?」
「そうだ。決まっているだろう、冒険者の所へだ」
「ま、まさか?! 追い払ってくれるのか?」
「ふふふ。そう慌てるな、パニティーよ」
「な、何だよ?」
「救世主として、冒険者を倒せと、神のお告げが来たのだよ」
「か、神様が? 私達を助けろと?!」
「ふふふ。もう安心しろ、パニティーよ」
パニティーは感激の余り、今にも零れそうな涙を堪え、ふるふると小さな体を震わせていた。
「さぁ! 冒険者の所へ案内しろ!」
「分かった! こっちだ!」
「行くぞ! ひゃっほーい!」
「ひゃっほーい!」
バカ一人と単純妖精の後ろ姿を、呆れた眼差しでエスカは見つめていた。
「……」
「一応、私はお止めしましたからね?」
エスカの声で妖精が目を覚ますと、まず最初に目に飛び込んできた光景は、大三郎が焚火をしている姿だった。
大三郎が目を覚ました妖精に気が付き、スクッと立ち上がり、妖精の下まで行くと、徐に妖精を持ち上げる。
「では、焼いてみたいと思います」
「え?」
妖精は自分が枝に縛り付けられている事に気付く。
「スギタ! お前、何をするつもりだ?!」
「焼いてみたいと思います」
大三郎はスタスタと焚火に歩いて行く。
「待て! 私を焼いて食べても美味しくないぞ!」
「食べないよ」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「焼いてみたい、と思います」
「ちょちょっと待て! ただ焼くだけなのか?」
「そうです。私こと杉田大三郎は、妖精をただ焼いてみたい、と思い立ちました」
無表情でそう言う大三郎を見て妖精の顔が青ざめる。
「何故、焼くんだ?!」
「焼いたら、妖精の粉が出るかもしれないから」
「出ないよ!」
「私こと杉田大三郎の相方、エスカ・何とかの名言を聞かせましょう」
「な、何だよ?」
「やってみなければ分からない」
「分かるよ!」
「僕には分からない」
ずんずん焚火に近づいて行く大三郎に妖精が提案をする。
「分かった! 分かったから! 妖精の粉を出してやるから私を焼くな!」
それを聞いた大三郎は歩くのを止め、ゆっくりと妖精の顔を見ながら一言だけ言う。
「嘘だったら焼くよ?」
その無表情な大三郎の顔を見て、妖精は更に青ざめる。
「もし、紐を解いた瞬間、飛んで行ったら、エスカがライトニングで、焼くよ? 良い?」
大三郎は顔を近づけ真顔で言う。
妖精はエスカをチラリと見てゴクリと息をのむ。
「わ、分かった。約束する。だから、私を焼くなよ? 良いな?」
大三郎は、妖精の顔をじぃーっと見つめた後、紐を解き始めた。
解放された妖精は、やれやれと言う感じで肩をグルグル回す。
「妖精を焼こうとした人間なんて初めてだ」
「初体験が出来て良かったね」
「良くない!」
「妖精さん、大丈夫ですか?」
エスカが何食わぬ顔で妖精に尋ねる。
「ったく。お前らはサノスとは大違いだな」
「サノスさんをご存じなのですか?」
「ああ。サノスに妖精の粉をあげる約束をしてたからな」
「そうなんですか?」
「約束の日時に来なかったけどな。妖精の粉を持って、森の外をウロウロしているのは凄い危険だから、約束の時間が過ぎて帰ったけどさ。それでも、森の外でギリギリまで待ったんだぞ」
エスカは大三郎をジト目で見る。
「元凶の貴女に、そんな目で見られる筋合いはありません」
「お前らもサノスの知り合いなのか?」
「まぁ、そうだな」
「杉田様とサノスさんはお尻合いです」
「おい、エスカ・オパイ・De・ビッチ」
「何ですか? 絶対モテないプロトタイプ短小包茎1号杉田大三郎様」
「ァぁ……ぁァぁ……ぁ」
「お、おい、人間の女。な、何か、スギタが、お爺ちゃんになったぞ?」
「下半身の一部はミイラ化しているでしょうね」
「ぅぁ……ぁァぁ……ぁ」
「お、おい、人間の女。スギタお爺ちゃん、泣き始めたぞ」
「ミイラ化した一部が、涙で潤えば良いのではないでしょうか?」
「バカっぱぁーーい!!」
――スパーン!
大三郎はエスカの胸をアッパーカットのように平手でかち上げた。
「いったーーい!!」
「何が潤えばだ! バカっぱい!」
「ラ――ッ?!」
エスカがライトニングを唱える瞬間、大三郎はエスカの口の中にすかさず指を入れる。
「言わせない。そう何度も何度も言わせなぎゃぁああ!!」
エスカは大三郎の指を思いっきり噛む。
「痛い痛い痛い! 離せバカっぱい!」
「いー!」
「こんの、バカっぱい!!」
――ゴッ!
大三郎はエスカの頭に頭突きをした。
「いったーーい!! 頭突きする事ないでしょ!」
大三郎は頭に大きなタンコブを作り倒れている。
「だ、大丈夫か……スギタ?」
「……ゴッて言った」
「な、何だって?」
「ゴン、じゃなくて、ゴッて音がした」
「あ、ああ、そうだな」
「岩に頭突きした」
「い、岩?」
「ちっこいの」
「な、何だよ?」
「気を付けろ」
「何が?」
「あいつは人じゃない」
「え? に、人間の女がか?」
大三郎は大きなタンコブを作りながら、ゆっくりと立ち上がり、エスカに指を指し言う。
「人間じゃない。あいつは、オパイ・ザ・ゴーレムだ!」
「オパイ・ザ・ゴーレム?!」
「その容姿とは裏腹に、オパイで世界を7日7晩、火の海にしたのだ!」
「ひ、火の海に?!」
「俺の故郷である地球、そう……、青星までその名を轟かせた伝説の巨神パイ。チッ、母乳が出てやがる、デカすぎたんだ。オパイ・ザ・ゴーレム!」
「な、何ぃ!!」
妖精は素で驚きエスカを見る。
エスカは無言で大三郎に近づくと、自分を指している大三郎の指を掴む。
「ちっこいの」
「な、何だ?」
「今から衝撃映像が流れます。ご注意ください」
「え?」
大三郎がそう言うと同時に、エスカは大三郎の指を、曲がってはイケない方向に力一杯曲げる。
「ぎゃあああああ!!」
「ぎゃあああああ!!」
大三郎の悲鳴と共に妖精も悲鳴を上げる。
「に、人間の女! やめろ! もう、やめてやれ!」
「何故です?」
「な、何故って? いくらなんでもスギタが可哀想だ」
「何処がですか?」
「何処って……、指はそっちに曲がら――」
「余り五月蠅いと、あなたの羽も、千切りますよ?」
エスカは無表情を超えた冷酷な顔に、妖精は何も言えなくなった。
「ち、ちっこいの……巨神パイから……ぅぎゃああ!! に、逃げろ……ぎゃあああ!!!」
「え? え?」
妖精はどうする事も出来ず、ただオロオロするばかりだった。
そんな妖精に、エスカは目は全く笑ってない笑顔で一言。
「逃げたら、焼きますよ」
その一言は、首に剣を突き付けられるより絶望的だったと、後に妖精は語る。
「エ、エ、エ」
「何ですか?」
「エ、エクレール買ってやるから! 離して!」
「……」
「パンシェのエクレール買ってやるから!」
パンシェとは、リトットにあるケーキ屋の名前で、そこで売っているエクレールはエスカの大のお気に入りだった。
「何個ですか?」
「何個? いぎゃ! 2個!」
「……」
「3個!」
「……良いでしょう」
エスカは大三郎の指を離す。
「さて、妖精さん?」
「は、はい!」
「粉は頂けるのでしょうか?」
「こ、粉?」
「羽を千切ったら思い出しますか?」
「――ッ! 粉ね! あげる!」
「それは良かった」
エスカはやっといつもの顔に戻った。
しかし、妖精は少し困った顔をしている。
「ただ、すぐには無理なんだ……」
「何か問題でも?」
「サノスにやるはずだった妖精の粉は、もうダメになってしまってるし……」
「何故です? ……あ、そうでした」
大三郎は指を押さえながら不思議そうに尋ねる。
「何でダメになってんだ?」
「妖精の粉は日持ちしないんです」
「日持ち?」
「はい。妖精の粉の効力は、そのままだと30時間程しか持たないんです」
「え? そうなの?」
「ええ。ですから保存する場合、特殊な手法でなければ効力が消えてしまいます。その為、妖精の粉は最高級ランクの貴重品なのです」
「マジか?」
「はい。取引される金額も、青星の金額で例えると、そうですね、効力にもよりますが、美容効果の最高級ランクだと、1グラムで数億円ほどです」
「なっ?! そ、そんなにするの?」
「はい。若返りの効果も抜群ですし、その上、入手困難な品と言う事もありますから」
大三郎は想像以上の金額に目を点にして驚いていた。
「蛾とか蝶々の鱗粉程度にしか考えてなかったから、その金額には素でびっくりだよ」
「蛾ってなんだよ?! 蛾って! 妖精の粉はマリリアン様の力を借りて、皆でお祈りをしてやっと出せるんだ!」
「え、そうなの? 妖精を捕まえて、塩コショウみたいに振れば出るかな~って思ってた。はは」
「スギタお前! 私達をバカにし過ぎだぞ!」
「ごめんごめん。そ~怒んなよ~。ちっこいの」
「さっきから、ちっこいのちっこいのって。私はパニティーって名前があるんだ!」
「パンティー?」
「違う! パニティーだ!」
「違うパンティー? どれどれ」
大三郎はパニティーの葉を模様したスカートを捲ろうとする。
「や、やめろ! 変質者!」
「見たって、フィギュアのパンツを見る程度しか思わんよ」
「フィギュアって何だ?! 私はパニティー・フラッシェンと言う名だ! フィギュアじゃない!」
「分かった分かった。んで、パニティー」
「何だ?」
「妖精の粉は、どのくらいで出来るんだ?」
「時間か?」
「ああ。まさか、数日とか数ヶ月とかじゃないよな?」
「スギタ達が欲しがる量によるよ」
大三郎はエスカを見て、どのくらい持って行けば良いか相談する。
「エスカ、妖精の粉はどのくらいあれば良いんだ?」
「そうですね。ミュールさんのステージ用と言う事であれば、小さじ一杯分もあれば良いかと」
「小さじ一杯分て、何グラムだ?」
「塩なら6グラム、砂糖なら3グラムと物によって違います。妖精の粉もその効力によって、質量では無く重量が変わります」
「んん? どゆこと?」
「妖精の粉その物の重さは変わらないのですが、効力が大きければ大きい程、大地に吸い寄せられる力も大きくなるので、同じ分量でも、効力によって重さが変わってしまうんです」
「んじゃ、俺達が持って行かなきゃならないのは、どのくらいの重さになるの?」
「そうですね~。……美に関する効力だけであれば、砂糖くらいでしょうか?」
「3グラムってこと?」
「そうですね」
「分かった。教えてくれてありがと」
「どういたしまして」
大三郎はエスカに礼を言うと、パニティーを見ながら欲しい分を告げる。
「パニティー、妖精の粉、3グラム頂だい」
「3グラム?」
「杉田様。お店で、このお肉500グラムください。みたいに言っても駄目ですよ」
「何で?」
「妖精さんに妖精の粉を貰う時は、グラムではなく、欲しい量と効力を言うんです」
「そうなんだ? んじゃ、パニティー」
「何だ? 決まったのか?」
「ああ。小さじ一杯分の美に関する粉を頂だい」
「美?」
「杉田様。それでは肉の部位を言わずにただ肉をくれ。と、言っているようなものですよ」
「え~。美に関するって、俺には分かんないよ」
「それでは私が言います」
「よろしくお願いします」
エスカはパニティーと効力の話をしている。
大三郎は木陰に戻り、木の根元に腰を下ろし一息ついた。
暫くして、エスカが困った顔をしながら大三郎の下まで来る。
「終わった? どのくらい掛かる……って、どした?」
「少し困った事になりました」
「何? 粉が出ないとか?」
「いえ。それが……」
エスカの話によれば、サノスが半年間、毎日アップルパイを持って来たのは、妖精の秘宝とも呼べる”妖精の泉”が冒険者に見つかりそうになり、その冒険者を追い払うために、冒険者と戦い、何とか追い払ったのだが、その時に戦った妖精が大怪我を負ってしまう。
妖精達で治癒の祈りを捧げ、その傷を癒そうとしたのだが、重傷だったため、祈りを捧げる者達のエネルギーが大量に必要だった。
妖精は果物や木の実を食べたりするが、森のエネルギーを主成分として体内に取り込み、それを食事で得る栄養素の代わりにしていたので、調理と言う概念は殆ど無いに等しかった。
傷を癒すため、大量のエネルギーを森から強制的に摂ってしまえば、他の植物たちの栄養まで摂る事になり、植物たちの命を奪ってしまう。
妖精界では、強制的に森からエネルギーを摂る行為は禁断の行為として、古から固く禁止されていた。
その為、食事で栄養を摂る他なかった。
だが、調理の概念が殆ど無い妖精達には、自然に実った果物や木の実で栄養を摂るしかなかったが、それだけでは、治癒の祈りを捧げる為のエネルギーを得るには限界があった。
その時、サノスが現れ、事情を知ったサノスは、栄養価の高いサノス特性アップルパイを半年間、毎日欠かさず持って来てくれた。
そのお陰で、大怪我を負った妖精は回復し、そのお礼としてサノスの願いを叶える事になる。
その時、サノスがお礼の対価として貰うはずだったのが、妖精の粉だった。
「へー。そんな経緯があったのか」
「はい。私も、この話を聞いて合点がいきました」
「がてん?」
「はい。サノスさんが行った行為は私達にしてみれば、確かに凄い事ですが、妖精が素直に妖精の粉を渡すとは、正直、思ってなかったので」
大三郎はエスカの話を聞き、確かに。と思った。
妖精は人を揶揄い悪戯をする。
約束事だって簡単に反故にしてしまう事など当たり前なのだ。
「まぁ、仲間の命の恩人て言う、デカイ借りを作っちまったからな」
「ええ。それでも、サノスさんとの約束を反故にしようとしたら……」
「しようとしたら?」
「ライトニングでした」
「こ、怖いよ。俺以外にライトニングしたら死んじゃうよ?」
「それだけの事をした、と言う事です」
「ま、まぁね」
「はい」
真顔で言うエスカに、大三郎は少し引き気味になりながら話を続ける。
「んで、困った事とは?」
「はい。その冒険者がまた現れたそうなんです」
「マジか?」
「はい」
「それで、妖精の粉どころではないと?」
「そう言う事になりますね」
「だよなぁ~」
流石の大三郎もこれには素で困った。
救世主にされ、通常の人間より遥かに丈夫な体に成ったとはいえ、相手は冒険者。
大三郎自身、剣術はおろかスポーツもさほど経験が無い。戦う術が無いのだ。
「私が追い払っても良いのですが、盗賊ではなく、冒険者で下手に相手が強者だった場合、手加減が出来ず殺めてしまう可能性もあります」
「ん~……。そうなると、憲兵沙汰か」
「そうなりますね」
「面倒事はなるべく避けたいよなぁ?」
「はい。いくら救世主一行とは言え、盗賊や野盗ではなく、冒険者を殺めてしまえば、憲兵隊も簡単には解放してくれません。最悪の場合、私達が裁きを下される可能性もあります」
「ん~……」
大三郎は考え込んでしまう。
自分自身、戦う技術も知恵も経験も無い。本当に戦う術が何も無い。
エスカの魔法に頼る事も出来ない。
エスカに憲兵隊に来てもらえないかと尋ねたが、憲兵は殺人事件以外は街の中の事件しか取り扱わない。何より、妖精関連に関わる事はご法度らしく、憲兵に頼る事は出来ないと言う。
八方塞がりかと思った時、不意にあの声が聞こえた。
”世界を救いし者よ。汝、自ら苦難に立ち向かうのであれば道を示そう”
「え? 俺、何も願ってないけど?」
大三郎は懐から紙を取り出し見てみる。
=サブクエスト 冒険者の胸を揉み倒せ=
「……。サブクエストって何だよ?」
「え? 何が書かれてました?」
大三郎は無言でエスカに紙を渡す。
紙の内容を見たエスカも流石に無言になってしまった。
「……おっぱいは好きだよ。ちっちゃいのから大きいのまで」
「……」
「だがな、だが……な……」
大三郎は徐々に涙声になり、ポロリと涙をこばす。
「俺は、女のおっぱいが好きなんだ!!」
大三郎は訴えかけるように叫ぶ。
「俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ! 大事な事なのでもう一度言います。俺、は! 女、の! おっぱい、が! 好きなん、だ!」
そして、大三郎は両膝をつき、何かを欲するように両腕を天高く上げ、空を見上げながら泣き叫ぶ。
「神よ! 俺は、男のおっぱいなどに興味は無いのだ! 神よ! ヤローのおっぱいを揉み、ヤローの乳首を弄る35歳独身男がそんなに見たいのか?! 神よ! あんた等ホモなのか?! 野獣・De・ウホ、なのか?! 神よ! 答えろ! 神よ! 男の冒険者など、いらんのだぁあ!! くそっ喰らえぇぇえ~ん!」
大三郎が泣き叫ぶ中、パニティーがスーッと飛んできて一言。
「冒険者は女だぞ」
泣き叫んでいた大三郎はピタリと泣き止んだ。
「何ですと?」
「え? 冒険者の事だろ?」
「そうですが、もう一度言います。何ですと?」
「だから、女だって」
「……因みに、どんな女ですか? 詳しく、事細かく、明確に、言って頂けませんか?」
「え~? ん~……、見た目は……、あ! そこの人間の女と似てるな」
大三郎はエスカを見る。
舐め回すように見る。
「な、何ですか?」
エスカは、大三郎の視線を避けるように身をよじらせ、両腕で身を守る様に腕を組む。
大三郎は暫しエスカをジッと見た後、スクッと立ち上がり空に向かって叫んだ。
「Good job My God!」
パニティーは、何故に大三郎が空に叫んでいるのか分からないでいたが、分かっているエスカは呆れた顔をしていた。
「コホン。さて、行こうか」
「何処にだ?」
「何処にとは愚問だぞ、パニティー」
「ぐ、愚問?」
「そうだ。決まっているだろう、冒険者の所へだ」
「ま、まさか?! 追い払ってくれるのか?」
「ふふふ。そう慌てるな、パニティーよ」
「な、何だよ?」
「救世主として、冒険者を倒せと、神のお告げが来たのだよ」
「か、神様が? 私達を助けろと?!」
「ふふふ。もう安心しろ、パニティーよ」
パニティーは感激の余り、今にも零れそうな涙を堪え、ふるふると小さな体を震わせていた。
「さぁ! 冒険者の所へ案内しろ!」
「分かった! こっちだ!」
「行くぞ! ひゃっほーい!」
「ひゃっほーい!」
バカ一人と単純妖精の後ろ姿を、呆れた眼差しでエスカは見つめていた。
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