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妖精の森編
それは喜び、そして伝説へ
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「俺はおっぱいが好きだ。大好きだ。大事な事なので、もう一度言います。おっぱいが大好きです」
「良かったですね」
川のほとりで体育座りをしている大三郎の後ろで、エスカは無表情のまま答える。
「良くない!」
「何故ですか?」
「何で男の胸を触らきゃならん、のだ! おいおっぱい。答えろおっぱい」
「クエストなので仕方がありません」
「捨ててしまえ」
「はい?」
「そんなクエスト捨ててしまえ!」
「出来る訳がありません」
「何故だ?」
「クエストだからです」
「異世界に男の胸を触りに来た訳じゃない! 俺はその為に来たんじゃない! 俺は美女や美少女の巨乳やつるぺったんが触りたいんです。揉みたいんです」
現実世界の地球であれば、軽蔑の眼差しで見られても仕方ない大三郎の心の叫びを、エスカは黙ったまま聞いていた。
「俺が何でここまで言うか、分かるか?」
「何故です?」
「道端でどれだけ、おっぱいを触りたい、揉みたい、と大声で言っても大丈夫だからです」
「は?」
「大丈夫なのです」
「何が、大丈夫なのですか?」
大三郎は、その質問を聞くや否や立ち上がり、勢いよくエスカに振り向くと、大声で言い放つ。
「お巡りさんが居ないから!」
余りにも馬鹿過ぎる発言に、エスカは言葉を失い、目を見開き呆れてしまう。その見開いた目が徐々に冷たい視線へと変わっていく。
「ふん! そんなゴミを見るような目で俺を見ても痛くも痒くもないわ。切ないが、痛くも痒くも無いわ!」
「この世界には、青星の警察官は居ませんが、憲兵は居ます」
「憲兵? はは。漫画やアニメで良く見るが、怖くも何ともない。それはどうしてか?!」
「どうしてです?」
「良く分からないから!」
「はぁ。では、頭が可燃ゴミで出来てる、杉田様でも理解できるように説明します」
「おう!」
エスカは溜息をつき、出来るだけ大三郎が想像しやすいよう分かりやすい例えで話す。
「まず初めに、青星の警察官を思い出してください」
「はい」
「その警察官が杉田様に職務質問をしようとします」
「はい」
「まず、杉田様を殴ります」
「え?」
「それから職務質問をします」
「待って」
「そして、少しでも反抗的な態度を杉田様がとったとしたら射殺されます」
「デンジャー!」
「これがこの世界の警察官。所謂、憲兵です。ご理解頂けたでしょうか?」
「ご理解頂けないわ! なぜ撃つ? 即撃つ?」
「杉田様みたいなのが多いからです」
「同志がいっぱい! おっぱい同盟! おっぱいおっぱい!」
大三郎は現実逃避するように、また川のほとりで体育座りをし、川に向かっておっぱいを連呼しながら腕を振り始めた。
「ふぅ。杉田様、何時までそこに居るおつもりなのですか?」
「何時までも!」
「それではクエストを終らせる事は出来ませんよ?」
「ヤローの胸を触るクエストなんてクエストじゃないね!」
「分かりました」
「分かってくれた?」
「はい。私がここへお連れします」
「何となく誰を連れてくるか分かるけど、一応聞くね。誰を連れてくるのかな?」
「サノスさんです」
「やめて!」
「杉田様が行かないとなると、サノスさんをここにお連れするしかありませんので」
「やめたげて! 大三郎のHPはゼロよ!」
「ではどうするのですか?」
「どうもしません。させません」
「杉田様は、この世界を救ってくださらないのですか?」
「救えるものなら救ってやりたいよ。でも、考えて」
「何をでしょう?」
「普通さ、こう言うのってさ、世界を救う為にさ、すったもんだしながら、美女とか美少女のおっぱいを触って行くんじゃないの? 違うの? そう言う事じゃないの? なして最初がヤローなの? バカなの死ぬの?」
「杉田様の中でどうなっているのか分かりませんが、神々から頂いたクエストをこなしていくのが本筋です」
「違う! おっぱいを触って、世界を救うのがこのお話なの! そうなの! そうじゃなきゃ異世界に来た意味ないの!」
「良く分かりませんが、胸を触ると言うなら合っているのではありませんか?」
「そうだけど、そうじゃない!」
「何が違うのですか?」
「おお、こらおっぱい。貴様の思考はおっぱいで考えてるのか?」
「それは杉田様です」
「ああそうだよ! 俺の思考はおっぱいで一杯だよ!」
「駄々っ子ですね」
「駄々もこねるわ!」
大三郎は川のほとりで口を尖らせ、涙目になりながら拗ねた子供のようになっている。
エスカはそれをあやす母親のようだった。
「あ、エスカさん。そんな所で何してるんですかぁ?」
エスカが振り向くと、そこには可愛らしい少女が立っていた。
「あら?」
少女は二人の所へ駆け寄っていく。
「この娘は誰?」
大三郎は聞き慣れない声に振り向きエスカに尋ねる。
「この子がサノスさんです」
「こんちにわ~。サノスですぅ」
「んん?!」
「ところで、エスカさんはここで何してたんですぅ?」
「丁度あなたに会いに行くところでした」
「そうなんですかぁ?」
「はい。こちらの方が、サノスさんに用事がありまして」
「僕にぃ? 何のご用事でしょうかぁ?」
可愛らしい笑顔で大三郎を見る。
「……エスカさん」
「はい」
「この子は……男の子?」
「はい。そうですが?」
サノスは後ろに手を組み、可愛らしい笑顔で大三郎を見る。
大三郎も無言でサノスを見る。
「何でしょ~?」
サノスは小首をかしげ、不思議そうに大三郎を見る。
大三郎は無言のままガッとサノスの股間を掴む。
「――ッ!!!」
サノスの股間を掴んで揉む。
「あ。ある」
大三郎の手に、ちっこい何かの感触が伝わる。
「ちっこいチンぶらぁあーー!!」
「いやーーー!!」
大三郎はサノスのコークスクリューブローを腹に食らい、川へ飛んで行った。
「な、なな何するんですかぁー!」
サノスは前屈みになりながら顔を真っ赤にさせていた。
「すみません。あれでも一応、救世主なので」
「え? きゅ、救世主」
「はい。この世界を救っていただく為、私が青星から連れて来ました」
「え? え? えぇー!」
「サノスさん、ちょっと待っててください。あのままだと、杉田様が流されてしまいますので」
大三郎はうつ伏せになって川に浮いていた。
――バチン! バチン!
何かを叩く音が聞こえる。
徐々にそれが自分の頬を叩く音だと気づく。
「痛い痛い痛い痛い!」
「やっと起きましたか」
「な、ななな何すんの?!」
「勝手に死なれても困ります」
「あれ? デジャヴ?」
「あ、あのぉ……」
サノスはおずおずと声を掛ける。
「あ。男の娘」
「はい、サノスさんは男の子です」
「違う! 男の娘!」
「ええ、ですからサノスさんは男の子ですよ?」
「もう良い。君がサノスちゃん?」
「は、はい」
「そっか~」
大三郎は顎に手を当て、サノスを見つめながら少し考え込む。
「…………」
「あ、あのぉ……」
「よし、出来る」
大三郎は徐にサノスの服を脱がせ始めた。
「な、ななな、何を!」
「良いから、おじさんに任せなさい。痛くしないから、ね?」
「なななな!」
「ほら脱いで、心配しなくて良いから、……ぐへへ」
「杉田様」
「エスカよ、これはクエストの為なのだ。好きでやっている訳じゃい。ほ~ら、万歳して服を脱ごうね~。ついでに下も脱いじゃおうか~? ぐへへへ」
「はわわわわ!」
「ぐへへへ!」
「ライトニング」
「あばばばばばばばば!!!」
大三郎はエスカの電撃魔法を喰らい、頭から煙を出し倒れた。
「サノスさん、大丈夫ですか?」
「は、はい」
サノスは、脱がされかけた服を手で押さえ、恥ずかしそうにしている。
妙に色っぽい姿に、エスカも少し見入ってしまう。
「うぉらあ! バカっぱい!」
「何ですか?」
「何ですかじゃねーよ! 何だ今の? スタンガンか何かか?!」
「いえ、電撃魔法です」
「電撃魔法? 魔法?」
「はい、魔法です」
「きゅ、救世主様は凄いです」
「え? 俺が凄い?」
「は、はい。エスカさんのライトニングを受けて死んでません」
「死ぬ?」
「は、はい。エスカさんの電撃魔法はトロールでも一撃で仕留めますから」
「待って」
「は、はい?」
「あ、いや。サノスじゃなくて、そこのバカっぱい」
「何でしょう?」
「トロールは俺でも知ってる」
「あら? 博学ですね」
「全く感心してないのは分かる。それは良い。エスカは、そのトロールを殺っつけちゃう魔法を、俺に掛けたの?」
「はい」
「はい、じゃねーよ! おお何だ、このどたぷんバカっぱいは俺を殺す気ですか? 殺す気ですね?」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃねーよ!」
「救世主と神々から認められた方は、異常なほど丈夫になるので」
「丈夫?」
「はい。簡単に死なれては面白くな、コホン、困るからだと思います」
「……今、なに言いかけて止めた?」
「何も」
「いや、ほんと、聞き捨てならない事を言いましたよね?」
「別に」
大三郎はエスカの目を見ると、エスカはスッと目を反らす。
「おい、何で目を反らす? お前……何か隠してるだろ?」
「別に」
「嘘だ。この感じ、お前は嘘をついている」
「嘘は言ってません」
「嘘を言っていないと言うならこっちを見ろ」
エスカは大三郎を見返すが、問いには何も答えず微笑む。
「その笑顔じゃない笑顔が怖い! お願い、本当の事を言って! 凄い不安になるから!」
「それよりも、クエストをこなしてください」
「あ! 話ずらした誤魔化した!」
「あ、あのぉ~」
二人のカオスなやり取りの中、サノスがおずおずと声を掛ける。
「何でしょう?」
「ぼ、僕は、その、あの……そろそろ、行きますので」
「駄目です」
「え? な、何で……でしょう?」
「杉田様のクエストがあるからです」
「クエスト? ですか?」
「はい。サノスさんの胸を揉み倒すと言うクエストがあるので」
「ふえ? ぼ、僕の……む、胸を?」
「はい」
「ええー!」
サノスは思いもよらない事を平然と言われ、思わず声を上げて驚いてしまったが、エスカは驚きの声を上げているサノスを尻目に、淡々と大三郎に事を進めるよう促す。
「では、杉田様。公序良俗の範囲内でお揉みください」
「公序良俗の範囲内で揉むって、どんな範囲でだよ」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください」
「何でしょう?」
「ぼ、ぼ、僕の胸をなぜ揉むのですか?」
「先ほども言いましたが、杉田様のクエストだからです」
「で、でも、ど、どうして僕の胸なんですか?」
「神々がお決めになった事なので、私には分かりません」
「か、神様が?」
「はい。ですので諦めた上、覚悟を決めて揉まれてください」
「えぇ~……」
「さ、杉田様。サノスさんの胸を揉み倒してくだい」
「なんか改めて言われると……」
「さぁ、早く。さぁ!」
「お前……興奮してないか?」
「そ、そんな事はありません」
「まぁ、良いや。そゆ事だから、サノスちゃん、揉ませてもらうね」
「は、はい……」
「では」
「ふにゅ~……」
頬を赤らめながら顔を背け、ふるふると震えているサノスが全く男の子に見えず、ただ単に、川のほとりで、大三郎が少女にイケない事をしているようにしか見えない。
「待て待て。……俺、やばくないか? これ、やばくないか?」
「杉田様、何をしているのですか? そこはサノスさんを後ろから抱きかかえるように」
「黙れ腐女子!」
大三郎はもう、何が何だか分からなくなってきていた。
「この子は男の子。この子は男の子。この子は男の娘――んん?!」
「き、救世主様……や、優しくして……ください……ね」
サノスはふるふる震えながら頬を赤らめ涙目で言う。
大三郎の中で何かが爆発した。
「アッーーーーーー!!」
”クエスト1 リトットに居るサノスの胸を揉み倒せ” 完了。
レベルが上がりました。
習得スキル:ゴッド・フィンガー
スキル内容:触れた者全てを昇天させる
スキル取得の対価で失ったもの:自尊心
「良かったですね」
川のほとりで体育座りをしている大三郎の後ろで、エスカは無表情のまま答える。
「良くない!」
「何故ですか?」
「何で男の胸を触らきゃならん、のだ! おいおっぱい。答えろおっぱい」
「クエストなので仕方がありません」
「捨ててしまえ」
「はい?」
「そんなクエスト捨ててしまえ!」
「出来る訳がありません」
「何故だ?」
「クエストだからです」
「異世界に男の胸を触りに来た訳じゃない! 俺はその為に来たんじゃない! 俺は美女や美少女の巨乳やつるぺったんが触りたいんです。揉みたいんです」
現実世界の地球であれば、軽蔑の眼差しで見られても仕方ない大三郎の心の叫びを、エスカは黙ったまま聞いていた。
「俺が何でここまで言うか、分かるか?」
「何故です?」
「道端でどれだけ、おっぱいを触りたい、揉みたい、と大声で言っても大丈夫だからです」
「は?」
「大丈夫なのです」
「何が、大丈夫なのですか?」
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「憲兵? はは。漫画やアニメで良く見るが、怖くも何ともない。それはどうしてか?!」
「どうしてです?」
「良く分からないから!」
「はぁ。では、頭が可燃ゴミで出来てる、杉田様でも理解できるように説明します」
「おう!」
エスカは溜息をつき、出来るだけ大三郎が想像しやすいよう分かりやすい例えで話す。
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「はい」
「その警察官が杉田様に職務質問をしようとします」
「はい」
「まず、杉田様を殴ります」
「え?」
「それから職務質問をします」
「待って」
「そして、少しでも反抗的な態度を杉田様がとったとしたら射殺されます」
「デンジャー!」
「これがこの世界の警察官。所謂、憲兵です。ご理解頂けたでしょうか?」
「ご理解頂けないわ! なぜ撃つ? 即撃つ?」
「杉田様みたいなのが多いからです」
「同志がいっぱい! おっぱい同盟! おっぱいおっぱい!」
大三郎は現実逃避するように、また川のほとりで体育座りをし、川に向かっておっぱいを連呼しながら腕を振り始めた。
「ふぅ。杉田様、何時までそこに居るおつもりなのですか?」
「何時までも!」
「それではクエストを終らせる事は出来ませんよ?」
「ヤローの胸を触るクエストなんてクエストじゃないね!」
「分かりました」
「分かってくれた?」
「はい。私がここへお連れします」
「何となく誰を連れてくるか分かるけど、一応聞くね。誰を連れてくるのかな?」
「サノスさんです」
「やめて!」
「杉田様が行かないとなると、サノスさんをここにお連れするしかありませんので」
「やめたげて! 大三郎のHPはゼロよ!」
「ではどうするのですか?」
「どうもしません。させません」
「杉田様は、この世界を救ってくださらないのですか?」
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「何をでしょう?」
「普通さ、こう言うのってさ、世界を救う為にさ、すったもんだしながら、美女とか美少女のおっぱいを触って行くんじゃないの? 違うの? そう言う事じゃないの? なして最初がヤローなの? バカなの死ぬの?」
「杉田様の中でどうなっているのか分かりませんが、神々から頂いたクエストをこなしていくのが本筋です」
「違う! おっぱいを触って、世界を救うのがこのお話なの! そうなの! そうじゃなきゃ異世界に来た意味ないの!」
「良く分かりませんが、胸を触ると言うなら合っているのではありませんか?」
「そうだけど、そうじゃない!」
「何が違うのですか?」
「おお、こらおっぱい。貴様の思考はおっぱいで考えてるのか?」
「それは杉田様です」
「ああそうだよ! 俺の思考はおっぱいで一杯だよ!」
「駄々っ子ですね」
「駄々もこねるわ!」
大三郎は川のほとりで口を尖らせ、涙目になりながら拗ねた子供のようになっている。
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「あ、エスカさん。そんな所で何してるんですかぁ?」
エスカが振り向くと、そこには可愛らしい少女が立っていた。
「あら?」
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大三郎は聞き慣れない声に振り向きエスカに尋ねる。
「この子がサノスさんです」
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「はい、サノスさんは男の子です」
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「は、はい」
「そっか~」
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「…………」
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「はわわわわ!」
「ぐへへへ!」
「ライトニング」
「あばばばばばばばば!!!」
大三郎はエスカの電撃魔法を喰らい、頭から煙を出し倒れた。
「サノスさん、大丈夫ですか?」
「は、はい」
サノスは、脱がされかけた服を手で押さえ、恥ずかしそうにしている。
妙に色っぽい姿に、エスカも少し見入ってしまう。
「うぉらあ! バカっぱい!」
「何ですか?」
「何ですかじゃねーよ! 何だ今の? スタンガンか何かか?!」
「いえ、電撃魔法です」
「電撃魔法? 魔法?」
「はい、魔法です」
「きゅ、救世主様は凄いです」
「え? 俺が凄い?」
「は、はい。エスカさんのライトニングを受けて死んでません」
「死ぬ?」
「は、はい。エスカさんの電撃魔法はトロールでも一撃で仕留めますから」
「待って」
「は、はい?」
「あ、いや。サノスじゃなくて、そこのバカっぱい」
「何でしょう?」
「トロールは俺でも知ってる」
「あら? 博学ですね」
「全く感心してないのは分かる。それは良い。エスカは、そのトロールを殺っつけちゃう魔法を、俺に掛けたの?」
「はい」
「はい、じゃねーよ! おお何だ、このどたぷんバカっぱいは俺を殺す気ですか? 殺す気ですね?」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃねーよ!」
「救世主と神々から認められた方は、異常なほど丈夫になるので」
「丈夫?」
「はい。簡単に死なれては面白くな、コホン、困るからだと思います」
「……今、なに言いかけて止めた?」
「何も」
「いや、ほんと、聞き捨てならない事を言いましたよね?」
「別に」
大三郎はエスカの目を見ると、エスカはスッと目を反らす。
「おい、何で目を反らす? お前……何か隠してるだろ?」
「別に」
「嘘だ。この感じ、お前は嘘をついている」
「嘘は言ってません」
「嘘を言っていないと言うならこっちを見ろ」
エスカは大三郎を見返すが、問いには何も答えず微笑む。
「その笑顔じゃない笑顔が怖い! お願い、本当の事を言って! 凄い不安になるから!」
「それよりも、クエストをこなしてください」
「あ! 話ずらした誤魔化した!」
「あ、あのぉ~」
二人のカオスなやり取りの中、サノスがおずおずと声を掛ける。
「何でしょう?」
「ぼ、僕は、その、あの……そろそろ、行きますので」
「駄目です」
「え? な、何で……でしょう?」
「杉田様のクエストがあるからです」
「クエスト? ですか?」
「はい。サノスさんの胸を揉み倒すと言うクエストがあるので」
「ふえ? ぼ、僕の……む、胸を?」
「はい」
「ええー!」
サノスは思いもよらない事を平然と言われ、思わず声を上げて驚いてしまったが、エスカは驚きの声を上げているサノスを尻目に、淡々と大三郎に事を進めるよう促す。
「では、杉田様。公序良俗の範囲内でお揉みください」
「公序良俗の範囲内で揉むって、どんな範囲でだよ」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください」
「何でしょう?」
「ぼ、ぼ、僕の胸をなぜ揉むのですか?」
「先ほども言いましたが、杉田様のクエストだからです」
「で、でも、ど、どうして僕の胸なんですか?」
「神々がお決めになった事なので、私には分かりません」
「か、神様が?」
「はい。ですので諦めた上、覚悟を決めて揉まれてください」
「えぇ~……」
「さ、杉田様。サノスさんの胸を揉み倒してくだい」
「なんか改めて言われると……」
「さぁ、早く。さぁ!」
「お前……興奮してないか?」
「そ、そんな事はありません」
「まぁ、良いや。そゆ事だから、サノスちゃん、揉ませてもらうね」
「は、はい……」
「では」
「ふにゅ~……」
頬を赤らめながら顔を背け、ふるふると震えているサノスが全く男の子に見えず、ただ単に、川のほとりで、大三郎が少女にイケない事をしているようにしか見えない。
「待て待て。……俺、やばくないか? これ、やばくないか?」
「杉田様、何をしているのですか? そこはサノスさんを後ろから抱きかかえるように」
「黙れ腐女子!」
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「この子は男の子。この子は男の子。この子は男の娘――んん?!」
「き、救世主様……や、優しくして……ください……ね」
サノスはふるふる震えながら頬を赤らめ涙目で言う。
大三郎の中で何かが爆発した。
「アッーーーーーー!!」
”クエスト1 リトットに居るサノスの胸を揉み倒せ” 完了。
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習得スキル:ゴッド・フィンガー
スキル内容:触れた者全てを昇天させる
スキル取得の対価で失ったもの:自尊心
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しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
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