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あなたもちょっとだけあたしに似ている

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最近、クラスに気になる人がいる。男の子じゃないよ。髪の少し赤い女の子。

 彼女はずっとひとりでいる。教室ではいつも携帯電話をいじっている。校則で携帯電話の持ち込みは禁止されているのだけどね。そんなことはまったく気にする様子はない。昼休みや放課後には桜の木の下のベンチに座って校庭を見回している。いや。見守っているかな。

 どこかあたしと似ているような気がしたのだ。胸の中にあるものを吐き出せずに窮屈な思いをしているのではないかと察した。そのわりに、校庭で走り回る男子を見守る顔は微かに微笑んでいるようだ。
 
 赤い髪の女の子を気にしているのは果歩ちゃんも一緒だった。どんなところが気になるのか聞いてみると、やはりなんだかあたしに似ていると言う。どんなところが似ているのかと伺うと、物思いにふけっていることが多いところだと言う。果歩ちゃんの目にもあたしは、そう映っていたんだね。果歩ちゃんは明るくて、お喋りな子だけど胸の中にはもっとたくさんのことをしまっているんだね。あなたも少しだけあたしと似ているよ。
 
 ある日の昼休み、果歩ちゃんは真っ直ぐに赤い髪の女の子の腰かけているベンチに向かう。え?え?どうするつもりなの?まさかの事態に備えてあたしは二、三歩後ろを歩いた。彼女は躊躇いなく赤い髪の女の子に声をかけた。


「佐伯さん。なにをしているの。わたし達も隣に座っていいかな。」

 前言撤回。やっぱり彼女とあたしはあまりよく似ていない。あたしにはこんなに大胆な行動はとれない。他の子も同じだろう。やっぱり果歩ちゃんは特別に勇敢な女の子だ。


「果歩と優江。」

 赤い髪の女の子はあたし達を指差して名前を呼んだ。知っているんだ。これまでお話をしたこともないあたし達のことを。

「いつか声をかけられると思っていた。」

 そう言ってふたりが座れるだけのスペースを作って、手で埃を払いながら言った。

「今日はなにをしにきたの?」

 愛想なかったから、気まずかったけどあたしの隣の相方は全く気にしていないようだった。

「佐伯さんとお話がしてみたくて声をかけたの。」

 佐伯さんは視線をこちらに向けない。ずっと校庭でサッカーをしている男子に釘づけだ。

「美羽って呼んでいいよ。そんなことよりあそこの男の子達をよく見てごらんよ。」

 果歩ちゃんほど勇敢な女の子はいないと先程言ったばかりだけど、赤い髪の女の子、いや、美羽ちゃんも随分肝が据わっている。自分のペースを崩すことはない。
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