米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

文字の大きさ
上 下
75 / 156
王都で会った男は胡散臭さ全開

王都で会った男は胡散臭さ全開①

しおりを挟む
 アリアは早朝に目覚め、マリの作った朝食を食べた後に、水の神殿に帰って行った。彼女を見送った後、マリ達はキャンプカーを走らせ、王都キングスガーデンから約1Km程離れた場所でキャンプカーを下りた。
 王都にキャンプカーで乗り込んだら、変なのに目をつけられてしまうだろうから、隠して、徒歩で向かうのだ。

 マリは例によってキャンプカーに封印を施した後、待っていてくれた三人に走り寄る。

「お待たせ!」

「いつ見ても、マリ様の術は落書きにしか見えませんね。これが封印になるとは……」

 セバスちゃんは、つぶらな目を細め、車体に描かれたマリの名前を観察する。自分でもそう思うんだから、他人からしてみたら、余計にふざけてる様に見えるんだろう。

「効果が発揮されずに、ただの落書きになっちゃってる時もあるかもね」

 セバスちゃんと笑いながら他の二人の前に立って歩く。

「朝食の時、アリアさんとプリマ……なんたらの話をしてましたね? 今日はそこに行くんです?」

「気が乗らないけどね。ちょっと水の神殿の事を報告して逃げるよ。っていうか、ぶっちゃけ公爵に行ってほしい」

 後ろを振り返り、公爵を軽く睨む。彼はヘラヘラと笑う。

「ごめんね。僕は城にアポイントの確認しに行ったりしないといけないんだよ。君と王を会わせる前に細かいスケジュール調整をアレコレしないと」

「う~~」

 それを言われてしまうと、強く出れない。
 城にアレックスが居るんだから、彼がそういうのをしてくれたらいいのにと思う。
 実は朝、彼に送ったメッセージの返事が届いた。スマホで連絡を取り合えるんだから、本当ならもっと調整はスムーズなはずなのだ。

(アイツほんと無能っていうか……、はぁ……)

 マリはジーパンのポケットからスマホを取り出し、画面を表示させる。

“変な名前の都市の救世主になったらしいじゃない! 王様が君に会うのを楽しみにしてるよ! 君ってほんと、昔からどこに行っても注目を集めるよね。ちょっと腹が立つよ。城に来たらまたメッセージちょうだい! 毎日暇だからいつでも会えるよ!”

 読み返してみて、ウッカリ舌打ちしてしまった。
 多少の友情くらいは持ってるだろうと思ったのに、メッセージの内容には気遣い皆無だ。マリが書いた内容も似たり寄ったりだったが、棚にあげる。

「おや? マリお嬢様、もしかしてメッセージを使える様になったんですか?」

 セバスちゃんにまた観察されていたらしい。彼に画面を見せると、「おおっ!」と感激される。

「でも今はこの世界限定みたい。ママにはメッセージが送れなかったんだ。しかも、相手もスマホ持ってなきゃいけないから、ほんと対象が限られてるよ」

「じゃあ、私にメッセージ送れます?」

「セバスちゃんの方は受信のみかもしれない」

 二人で試してみると、やっぱりセバスちゃんからはメッセージを送れなかった。

「グヌヌ……。レベルが足りないから送れないと表示されます。でも不思議ですね。私とお嬢様は同じレベルのはずなのに。何がなんだか……」

「あー、スマホがバグってるんじゃない?」

「んん? ということは、お嬢様は、私のスマホのバグを事前に予知していたと……?」

「そうなる!」

 堂々と嘘をつくマリの顔をセバスちゃんは怖気づいた様に見上げ、唇を戦慄かせた。「マリお嬢様を遠く感じる……」等と聞こえるのだが、スルー安定だ。

「お、あれが王都の城壁だよ! 中に入ったらまず僕の別宅に連れて行く。その後それぞれ別行動にしよう」

 公爵が楽しげに声をかけてくる。セバスちゃんと話をしながら歩いていたから気がつくのが遅れたが、丘の影から長大な城壁が現れていた。レアネーの物よりも、ずっと大きい。流石は首都なだけある。

 三人でその近くまで行くと、長蛇の列が出来ていた。パッと見二百人以上はいる。この人達は全員、入場審査待ちなんだろうか?

「いつもこんなに人が並ぶの?」

「この国で一番大きい都市だからね。今日は少ない方じゃない?」

 公爵の答えに絶望する。一体何時間待たなければならないのだろうか?
 途方に暮れていると、城門の方から随分派手な男がこちらに向かって歩いて来るのに気がついた。
 燃える様な赤毛を後ろに束ね、カラフルな服を着ていて、大道芸人みたいな雰囲気がある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...