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それぞれの思惑
それぞれの思惑④
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壁に開いた穴から繋がっていたのは、帝都内にあるリスバイ公爵の邸宅だった。
意外な所だと思いはしたが、アジ・ダハーカの話を聞くと、それが何故なのか判明した。
アジ・ダハーカはリスバイ公爵家で食べた鮭の味を気に入り、帝都に移動した後も、別邸に入り浸り、公爵と親交を深めたのだそうだ。一人と一匹の男の会話で、どういうわけか、アジ・ダハーカがナターリア皇女に会いに行く事になり、彼女の口からステラに起こるであろう脅威を知ったらしい。
暖房が入った居間の中、状況把握のためにも、各々がナターリアに質問を繰り返す。
「つまり、ステラの代わりにこの国に送った少女は皇帝に殺されてしまったんですね?」
公爵家の執事に提供された軽食を口にしながら、ジョシュアはナターリアに問いかけた。
「そうだ。そもそも父上が、わたくしが産んだ子を探し始めたのは、わたくしを悪魔への供物とし、子を研究に携わせるため。王国から送られて来た娘は能力を持たないから代わりにはならなかった」
嫌でも耳に入る話のせいで憂鬱な気分になる。
「あの時、直ぐに私を帝国に引き渡していたら、他人を巻き添えにしなくても済んだんですよね……」
「オレは正しい判断をしたと思ってるよ。ナターリア皇女の話を聞いていただろう? 皇帝陛下は君のスキルで大量破壊兵器を開発しようとしている。君がそんなのに利用されるなんて、あってはいけない事だよ」
「……それでも、私の代わりに死んだ人が居たなんて。申し訳なくて……」
「ステラ……」
残酷な話はそれだけではなかった。
「以前、父上は母上の魂でバルバトスを召喚し、前皇帝を殺害した。お前のフレグランスが効いたのは、父上の魂が度重なる悪事で穢れていたからだろう」
「なるほど、徐々に人ならざる者となり果てていたか」
アジ・ダハーカの言葉に、居間の空気が凍りつく。
それが事実なのだとしたら、この国はこの先どうなるのだろうか。
(最悪だ。私のおばあちゃんは悪魔にその魂を奪われたのか……。そしてこの人の魂も近いうちにシトリーに渡る)
悪魔に魂を囚われた場合、天国に行く事が出来ず、生まれ変わる事も出来ないのだそうだ。
泣きそうな気分で顔を上げてナターリアを見る。
少しの間だけ目が合い、向こうから視線を逸らされた。
(気にかける必要なんか無いはずなのに、どうしてだろう。胸が痛い)
バッグの上で手を彷徨わせると、角ばった物に触れる。
シトリーに渡された小箱だ。
横に座るジョシュアを見上げれば、優しい微笑みで見つめ返してくれた。
良く信頼していられるな、と思う。この小箱をステラに持たせたままで……。
__バンッ!!
荒々しく扉が開き、居間に居る者全員の注意がそちらに向く。
入って来たのはリスバイ公爵だ。何かが起きたのか、血相を変えている。
「皇帝陛下がいらっしゃった! ナターリア皇女、貴女だけでもお逃げ下さい!」
もう居場所がバレてしまったらしい。
アジ・ダハーカの空間移動能力をもってすれば、足がつき辛いのではないかと想像していたのに、甘かった。
「逃げる? 馬鹿を言うな、この役立たず! わたくしが時間を稼ぐから、お前達はここから立ち去れ」
ナターリアはリスバイ公爵を軽蔑の眼差しで一瞥したあと、ステラを見た。
「帝国でもなく、ルフロス王国でもない国へ逃げろ。今後一切この地を踏むな」
これで永遠のお別れなのだろうか。
何か言った方が良いのかと思うのに、唇が戦慄いただけで、言葉が出てこない。
そんなステラの代わりに、ジョシュアが訳の分からない事を言った。
「ステラさんは私にお任せ下さい、御義母様! 絶対に守りぬいてみせますから!」
「……男は良く選べ」
ナターリアはそう言い放ち、出て行ってしまった。
リスバイ公爵まで、彼女に縋り付くように退室する。
騒めく室内で、ステラは騒めき続ける胸を押さえ、彼等が去って行った扉を見つめ続けた。
外務大臣や外交官達はアジ・ダハーカが再び開けた穴から、どこか他の場所に移っていっているが、ステラはこのまま逃げ去っていいのかと自問自答を続ける。
「ステラ、オレ達も行こう」
ジョシュアに手を握られ、穴に向かって引きずられるように歩かされる。
たぶんここから消えて、全て忘れてしまうのが賢いのだろう。
それなのに、視線が一点に固定してしまう。
「後悔、したくないです……」
「ステラ?」
潜り抜けた穴が小さくなる。ステラがぎりぎり屈んで通れるくらいに。
ジョシュアの手が緩んだ隙をついて、走り出す。
「待って!!」
ステラが公爵家の居間に戻ると共に、空間に開いた穴は閉じてしまった。
心細さに耐えながら、居間から走り出る。
どこかから聞こえてくる硬質な声を頼りに、進むと、階下に通じる螺旋階段が見えてくる。
(エントランスで話しているみたい)
死角になりそうな所を探しながら移動し、一階を見下ろす。
ナターリアは大勢の者に囲まれながらも皇帝と対峙し、リスバイ公爵は拘束されていた。
「__あれ程のアイテムを作成出来るのだから、きっと役に立つ。居場所を言え、ナターリア」
「さぁ……? どこへ行ったやら」
「しらばっくれるな。お前の侍女を尋問して漸く存在が明らかになったのだぞ。融合スキルを使用出来なくなったお前の代わりに出来るというのに、計画を潰す気か!?」
「気に食わないなら、今ここでわたくしを殺せばいい」
「フン。それもいいだろう。お前を殺し、シトリーにその魂を差し出そう」
刃物を抜き放つ音が二階にまで響いた。
ステラは意を決して、バックの中から小箱を取り出し、走る。
「ナターリア皇女!」
「な!? 何故逃げなかった!? この馬鹿娘!」
「煩いです! シトリー!!」
大声で美しき悪魔の名を呼ぶ。
あんな恐ろしい生き物と取引するのは、これで最初で最後だ。
「私が、私が一番大事なのはっ!」
叫びながら小箱を開けると、フワリと鈴蘭の香りが広がる。
それと同時に皇帝の身体が白く発光する。
「この光は!?」
意外な所だと思いはしたが、アジ・ダハーカの話を聞くと、それが何故なのか判明した。
アジ・ダハーカはリスバイ公爵家で食べた鮭の味を気に入り、帝都に移動した後も、別邸に入り浸り、公爵と親交を深めたのだそうだ。一人と一匹の男の会話で、どういうわけか、アジ・ダハーカがナターリア皇女に会いに行く事になり、彼女の口からステラに起こるであろう脅威を知ったらしい。
暖房が入った居間の中、状況把握のためにも、各々がナターリアに質問を繰り返す。
「つまり、ステラの代わりにこの国に送った少女は皇帝に殺されてしまったんですね?」
公爵家の執事に提供された軽食を口にしながら、ジョシュアはナターリアに問いかけた。
「そうだ。そもそも父上が、わたくしが産んだ子を探し始めたのは、わたくしを悪魔への供物とし、子を研究に携わせるため。王国から送られて来た娘は能力を持たないから代わりにはならなかった」
嫌でも耳に入る話のせいで憂鬱な気分になる。
「あの時、直ぐに私を帝国に引き渡していたら、他人を巻き添えにしなくても済んだんですよね……」
「オレは正しい判断をしたと思ってるよ。ナターリア皇女の話を聞いていただろう? 皇帝陛下は君のスキルで大量破壊兵器を開発しようとしている。君がそんなのに利用されるなんて、あってはいけない事だよ」
「……それでも、私の代わりに死んだ人が居たなんて。申し訳なくて……」
「ステラ……」
残酷な話はそれだけではなかった。
「以前、父上は母上の魂でバルバトスを召喚し、前皇帝を殺害した。お前のフレグランスが効いたのは、父上の魂が度重なる悪事で穢れていたからだろう」
「なるほど、徐々に人ならざる者となり果てていたか」
アジ・ダハーカの言葉に、居間の空気が凍りつく。
それが事実なのだとしたら、この国はこの先どうなるのだろうか。
(最悪だ。私のおばあちゃんは悪魔にその魂を奪われたのか……。そしてこの人の魂も近いうちにシトリーに渡る)
悪魔に魂を囚われた場合、天国に行く事が出来ず、生まれ変わる事も出来ないのだそうだ。
泣きそうな気分で顔を上げてナターリアを見る。
少しの間だけ目が合い、向こうから視線を逸らされた。
(気にかける必要なんか無いはずなのに、どうしてだろう。胸が痛い)
バッグの上で手を彷徨わせると、角ばった物に触れる。
シトリーに渡された小箱だ。
横に座るジョシュアを見上げれば、優しい微笑みで見つめ返してくれた。
良く信頼していられるな、と思う。この小箱をステラに持たせたままで……。
__バンッ!!
荒々しく扉が開き、居間に居る者全員の注意がそちらに向く。
入って来たのはリスバイ公爵だ。何かが起きたのか、血相を変えている。
「皇帝陛下がいらっしゃった! ナターリア皇女、貴女だけでもお逃げ下さい!」
もう居場所がバレてしまったらしい。
アジ・ダハーカの空間移動能力をもってすれば、足がつき辛いのではないかと想像していたのに、甘かった。
「逃げる? 馬鹿を言うな、この役立たず! わたくしが時間を稼ぐから、お前達はここから立ち去れ」
ナターリアはリスバイ公爵を軽蔑の眼差しで一瞥したあと、ステラを見た。
「帝国でもなく、ルフロス王国でもない国へ逃げろ。今後一切この地を踏むな」
これで永遠のお別れなのだろうか。
何か言った方が良いのかと思うのに、唇が戦慄いただけで、言葉が出てこない。
そんなステラの代わりに、ジョシュアが訳の分からない事を言った。
「ステラさんは私にお任せ下さい、御義母様! 絶対に守りぬいてみせますから!」
「……男は良く選べ」
ナターリアはそう言い放ち、出て行ってしまった。
リスバイ公爵まで、彼女に縋り付くように退室する。
騒めく室内で、ステラは騒めき続ける胸を押さえ、彼等が去って行った扉を見つめ続けた。
外務大臣や外交官達はアジ・ダハーカが再び開けた穴から、どこか他の場所に移っていっているが、ステラはこのまま逃げ去っていいのかと自問自答を続ける。
「ステラ、オレ達も行こう」
ジョシュアに手を握られ、穴に向かって引きずられるように歩かされる。
たぶんここから消えて、全て忘れてしまうのが賢いのだろう。
それなのに、視線が一点に固定してしまう。
「後悔、したくないです……」
「ステラ?」
潜り抜けた穴が小さくなる。ステラがぎりぎり屈んで通れるくらいに。
ジョシュアの手が緩んだ隙をついて、走り出す。
「待って!!」
ステラが公爵家の居間に戻ると共に、空間に開いた穴は閉じてしまった。
心細さに耐えながら、居間から走り出る。
どこかから聞こえてくる硬質な声を頼りに、進むと、階下に通じる螺旋階段が見えてくる。
(エントランスで話しているみたい)
死角になりそうな所を探しながら移動し、一階を見下ろす。
ナターリアは大勢の者に囲まれながらも皇帝と対峙し、リスバイ公爵は拘束されていた。
「__あれ程のアイテムを作成出来るのだから、きっと役に立つ。居場所を言え、ナターリア」
「さぁ……? どこへ行ったやら」
「しらばっくれるな。お前の侍女を尋問して漸く存在が明らかになったのだぞ。融合スキルを使用出来なくなったお前の代わりに出来るというのに、計画を潰す気か!?」
「気に食わないなら、今ここでわたくしを殺せばいい」
「フン。それもいいだろう。お前を殺し、シトリーにその魂を差し出そう」
刃物を抜き放つ音が二階にまで響いた。
ステラは意を決して、バックの中から小箱を取り出し、走る。
「ナターリア皇女!」
「な!? 何故逃げなかった!? この馬鹿娘!」
「煩いです! シトリー!!」
大声で美しき悪魔の名を呼ぶ。
あんな恐ろしい生き物と取引するのは、これで最初で最後だ。
「私が、私が一番大事なのはっ!」
叫びながら小箱を開けると、フワリと鈴蘭の香りが広がる。
それと同時に皇帝の身体が白く発光する。
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