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番外編②
雷雨でも特別な一日③
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ジルはこのまま暖炉の前で昼食をとりたいらしい。
型にはまらない彼女を改めて好きだと思う。
神に祈りを捧げるその横顔は優しくて、神秘的だ。
いつまでも見ていたいのだが、長すぎると怒られるのを知っているから早々に視線を外し、深皿の中の腸詰をフォークで差し、齧る。
(アッツ……!!)
中から飛び出した肉汁が思ったよりも熱く、口を抑える。
アホな失態を見られてしまったかと、彼女をチラリと見ると、まだ目を瞑り、祈りを捧げ続けているので、バレていないだろう。
口の中の熱い物体を我慢して咀嚼する。
「お味はどうですか?」
「……うまいケド」
何とか飲み込み、返事をするものの、正直熱すぎて味なんて分からなかった。
ハイネの嘘を疑いもせず、嬉しそうにはにかむ彼女。嘘をついた甲斐があったようだ。
「うん。ちゃんと味が染み込んでますわね。我ながら力作です」
(そんな美味いのか。スープから飲んでみようかな)
熱を持ってそうな、ゴロゴロした具材を避け、スプーンでスープをすくう。
冷めるのを少しばかり待ってから口にふくむと、野菜や腸詰から出た出汁の味わいにホッコリする。それに、腹の中からジックリ温まる感覚もある。
「何杯でも飲みたいくらい美味い」
「気に入っていただけた様で嬉しいですわ」
今度は心からの言葉を告げると、力強く頷かれる。
「先程採って来たポルチーニ茸も美味しいです。雨に打たれた甲斐があったというものですわね」
「リゾットにするって言ってなかったっけ? ポトフも最高だけど」
「ええと……。リゾットは夕食にしようかと思いまして。……ハイネ様も召し上がって行きませんか?」
(ん? これって……)
ジルの顔は、さっきよりも赤い。暖炉からの熱気の所為ばかりではない気がする……。
(リゾットを餌に、俺を引き留めようとしてる!?)
もっと一緒に居たいという気持ちは、彼女も一緒らしい。でも、この閉鎖的な空間で心臓を鷲掴みにするのは、色々危険すぎる。
「いいけど……」
「良かったですわ!」
冷静さを装った返事に、ジルは無邪気に喜ぶ。
そんな姿を見ると毒気を抜かれてしまう。
(早とちりして行動したらきっと嫌われるから、気を付けないとな)
彼女にバレないように、後ろを向いて、コッソリため息を吐く。そんなハイネに、ジルは意外な事を口にした。
「ねぇ、ハイネ様。昨日誕生日って本当ですか?」
「え? ああ、そうだけど。よく知ってるな」
てっきり知らないと思っていたので、ドキリとする。
「昨日パン屋さんでオイゲンさんとお会いした時に教えていただいたのですわ。宮殿で祝砲を打ち上げたとか……」
「そーそー。大袈裟だよな。誕生日くらいで」
「私、オイゲンさんから知らされた事、ちょっぴり悔しかったんです」
「悔しい? 何で?」
彼女の顔を見ると、寂し気な表情をしていた。
「皇太子の誕生日なら、少し調べれば分かったのに、そうしなかった。オイゲンさんにお会いしなければ、スルーしていたかもしれません! 私はハイネ様とお付き合いしてますのに、こんなの失格ですわよね……」
自分の誕生日を意識するジルの気持ちが嬉しい。当然、彼女失格だなんて思ってない。気を遣わせない様にと思って、敢えて伝えなかったのだから。
だが、ある事に思い至り、嫌な汗をかく。
(俺もジルの誕生日を知らないけど、もう過ぎてる!? 彼氏失格なのか!?)
付き合った時直ぐに、彼女のプロフィールを根ほり葉ほり聞くべきだったと、今更ながらに後悔する。
「あの。これ、プレゼントですの。急だったから、大した物を用意出来なかったのですけど、受け取っていただけます?」
差し出されたのは、綺麗に包装された細長い箱だ。何が入っているのだろうか?
「今開けてもいいのか?」
「ええ。どうぞ」
黒地に金の葉の模様が入った紙を丁寧にはぎ、中から現れたビロードの箱を開けると、万年筆が入っていた。この筆記用具に関しては近年海外の技術者が特許を取得したと聞く。この国でも普及し始めており、ハイネも数本持っている。だけど、ジルに貰った物だから一目で気に入ってしまった。
「何を差し上げたらいいのか分からなくて、実用的な物にしましたの」
何も言わずに万年筆を握ってみたりしているハイネに不安になったらしく、ジルの声は小さくなっていく。
「使わせてもらう。ちょうど新しいのが欲しかったんだ。嬉しいよ」
「ホントですか!? 良かったです! このマロンタルトも、誕生日を祝うつもりで焼いたのですわ」
暖炉の前でどっしりと存在感を主張していたタルトは、彼女によって切り分けられ、さらに盛り付けられた。
「いっぱい召し上がってくださいね」
満面の笑みで皿を差し出され、胸が苦しい……。挙動不審にならないように、震える右手を左手で押さえながら受け取る。
「……なんか」
「ん?」
「こんなに色々してもらったら、お返ししないわけにはいかないんだけど」
「そんなの! 気にしないでいただきたいのですわ! だって私、ハイネ様に色々していただいてますもの。この指輪も、凄く嬉しくて……」
彼女の胸元で怜悧な輝きを放つ指輪。それをジルは、まるで宝物を扱う様に両手で持ち上げ、幸せそうに微笑んだ。
(俺の婚約者、可愛すぎないか??)
もう何度思ったか分からない。この分だと、今後も自分はこの調子だろう。
だけど、今は彼女の言葉に感動している場合ではない。ハイネにも主張すべき事があるのだ。
「それはアンタと結婚する為にやった物だから、当然渡すべき物であって、誕生日とは分けて考えるべきだと思う」
「む? そうです?」
「そーなんだよ! だから、ええと……。アンタの誕生日はいつ? 欲しい物、何でも買ってあげたい」
「誕生日は十一月十日なのですわ。でもほしい物何て何も無いのです」
「十一月十日か……」
ほんの二週間程であるが、ハイネの方が年上らしい。
訳も無く嬉しくなる。
「その日、空けといて。一緒にどこか行こう」
「お出かけ! 必ず空けておきます。楽しみです! でも、プレゼントは本当に要りませんからね?」
「分かった分かった」
適当に頷いておくけど、頭の中では何を取り寄せるか考え始めている。
(珍しい宝石のアクセサリー? 年代物のワイン? う~ん……女が喜ぶ物ってなんだ? 小切手とか? あ~でも、ジルって結構金持ってるからそんなもん要らないか)
なかなか難しい。だけど、彼女へのプレゼントを考えるのは不思議と楽しい。
絶品のマロンタルトをおかわりしながら、彼女からヒントを貰う。
「ドレスは間に合ってる?」
「えぇ! 間に合ってますわ!」
「別荘はまだ持ってないだろ」
「別荘!? この家があれば充分なのですわ!」
「セキュリティ向上のために近衛を二人程渡すとかは?」
「ちょっと手に余る様な……」
「もう二週間あるし、少し悩んでみるか……」
「だから要らないと何回も言ってますのに!」
「そういう訳にはいかないから」
「はぁ……。あ! 何時の間にか雨がやんでますわ!」
強引に話題を変えられた様な気がしなくもないが、窓に視線を向けると、雲の隙間から太陽の光が下りていた。
「あー、ホントだ」
たぶん、前までの自分だったら、雨があがり、雷が止んだ事を単純に喜んでいただろう。それなのに、今は何故か天気にムカついている。
自分の感情が良く分からず、首を傾げる。
「晴れそうですわね。夕食までの間、どこかに散歩に行きませんか? 雨上がりの空気はきっと美味しく感じられますわ」
ジルの言葉を聞き、自分の感情の正体にピンときた。たぶん、雨に閉ざされた家の中で、彼女と身を寄せ合う様に過ごすのをかなり心地良く感じている。だから外になんか出たいわけがない。たちが悪い事に、それを言葉で伝えるは恥ずかしいから、天気の所為にしたいのだ。だから晴れてしまう事が気に入らない。
「水たまりで転ぶと、ずぶぬれになるし、今日はフラフラ出歩かないで家の中に居た方が安全だと思うけど」
「何故水たまりで転ばなければならないのです?」
「たぶん、アンタは転ぶと思う。だって、この間なんか安全な室内で植物に連れて行かれたし」
「むむ……。だってアレは!!」
「アンタ色々巻き込まれる体質みたいだから、このままここでノンビリしてようぜ!」
釈然としない顔をする彼女の口に、マロングラッセを突っ込み、黙らせる。驚き、真っ赤になるジルの姿がやっぱり可愛い。
雷の日でも、彼女と過ごすと最高の一日になる。自分の気持ちを引き上げてくれる彼女のパワーは、やっぱり自分にとっては無くてはならない物になりつつある。
型にはまらない彼女を改めて好きだと思う。
神に祈りを捧げるその横顔は優しくて、神秘的だ。
いつまでも見ていたいのだが、長すぎると怒られるのを知っているから早々に視線を外し、深皿の中の腸詰をフォークで差し、齧る。
(アッツ……!!)
中から飛び出した肉汁が思ったよりも熱く、口を抑える。
アホな失態を見られてしまったかと、彼女をチラリと見ると、まだ目を瞑り、祈りを捧げ続けているので、バレていないだろう。
口の中の熱い物体を我慢して咀嚼する。
「お味はどうですか?」
「……うまいケド」
何とか飲み込み、返事をするものの、正直熱すぎて味なんて分からなかった。
ハイネの嘘を疑いもせず、嬉しそうにはにかむ彼女。嘘をついた甲斐があったようだ。
「うん。ちゃんと味が染み込んでますわね。我ながら力作です」
(そんな美味いのか。スープから飲んでみようかな)
熱を持ってそうな、ゴロゴロした具材を避け、スプーンでスープをすくう。
冷めるのを少しばかり待ってから口にふくむと、野菜や腸詰から出た出汁の味わいにホッコリする。それに、腹の中からジックリ温まる感覚もある。
「何杯でも飲みたいくらい美味い」
「気に入っていただけた様で嬉しいですわ」
今度は心からの言葉を告げると、力強く頷かれる。
「先程採って来たポルチーニ茸も美味しいです。雨に打たれた甲斐があったというものですわね」
「リゾットにするって言ってなかったっけ? ポトフも最高だけど」
「ええと……。リゾットは夕食にしようかと思いまして。……ハイネ様も召し上がって行きませんか?」
(ん? これって……)
ジルの顔は、さっきよりも赤い。暖炉からの熱気の所為ばかりではない気がする……。
(リゾットを餌に、俺を引き留めようとしてる!?)
もっと一緒に居たいという気持ちは、彼女も一緒らしい。でも、この閉鎖的な空間で心臓を鷲掴みにするのは、色々危険すぎる。
「いいけど……」
「良かったですわ!」
冷静さを装った返事に、ジルは無邪気に喜ぶ。
そんな姿を見ると毒気を抜かれてしまう。
(早とちりして行動したらきっと嫌われるから、気を付けないとな)
彼女にバレないように、後ろを向いて、コッソリため息を吐く。そんなハイネに、ジルは意外な事を口にした。
「ねぇ、ハイネ様。昨日誕生日って本当ですか?」
「え? ああ、そうだけど。よく知ってるな」
てっきり知らないと思っていたので、ドキリとする。
「昨日パン屋さんでオイゲンさんとお会いした時に教えていただいたのですわ。宮殿で祝砲を打ち上げたとか……」
「そーそー。大袈裟だよな。誕生日くらいで」
「私、オイゲンさんから知らされた事、ちょっぴり悔しかったんです」
「悔しい? 何で?」
彼女の顔を見ると、寂し気な表情をしていた。
「皇太子の誕生日なら、少し調べれば分かったのに、そうしなかった。オイゲンさんにお会いしなければ、スルーしていたかもしれません! 私はハイネ様とお付き合いしてますのに、こんなの失格ですわよね……」
自分の誕生日を意識するジルの気持ちが嬉しい。当然、彼女失格だなんて思ってない。気を遣わせない様にと思って、敢えて伝えなかったのだから。
だが、ある事に思い至り、嫌な汗をかく。
(俺もジルの誕生日を知らないけど、もう過ぎてる!? 彼氏失格なのか!?)
付き合った時直ぐに、彼女のプロフィールを根ほり葉ほり聞くべきだったと、今更ながらに後悔する。
「あの。これ、プレゼントですの。急だったから、大した物を用意出来なかったのですけど、受け取っていただけます?」
差し出されたのは、綺麗に包装された細長い箱だ。何が入っているのだろうか?
「今開けてもいいのか?」
「ええ。どうぞ」
黒地に金の葉の模様が入った紙を丁寧にはぎ、中から現れたビロードの箱を開けると、万年筆が入っていた。この筆記用具に関しては近年海外の技術者が特許を取得したと聞く。この国でも普及し始めており、ハイネも数本持っている。だけど、ジルに貰った物だから一目で気に入ってしまった。
「何を差し上げたらいいのか分からなくて、実用的な物にしましたの」
何も言わずに万年筆を握ってみたりしているハイネに不安になったらしく、ジルの声は小さくなっていく。
「使わせてもらう。ちょうど新しいのが欲しかったんだ。嬉しいよ」
「ホントですか!? 良かったです! このマロンタルトも、誕生日を祝うつもりで焼いたのですわ」
暖炉の前でどっしりと存在感を主張していたタルトは、彼女によって切り分けられ、さらに盛り付けられた。
「いっぱい召し上がってくださいね」
満面の笑みで皿を差し出され、胸が苦しい……。挙動不審にならないように、震える右手を左手で押さえながら受け取る。
「……なんか」
「ん?」
「こんなに色々してもらったら、お返ししないわけにはいかないんだけど」
「そんなの! 気にしないでいただきたいのですわ! だって私、ハイネ様に色々していただいてますもの。この指輪も、凄く嬉しくて……」
彼女の胸元で怜悧な輝きを放つ指輪。それをジルは、まるで宝物を扱う様に両手で持ち上げ、幸せそうに微笑んだ。
(俺の婚約者、可愛すぎないか??)
もう何度思ったか分からない。この分だと、今後も自分はこの調子だろう。
だけど、今は彼女の言葉に感動している場合ではない。ハイネにも主張すべき事があるのだ。
「それはアンタと結婚する為にやった物だから、当然渡すべき物であって、誕生日とは分けて考えるべきだと思う」
「む? そうです?」
「そーなんだよ! だから、ええと……。アンタの誕生日はいつ? 欲しい物、何でも買ってあげたい」
「誕生日は十一月十日なのですわ。でもほしい物何て何も無いのです」
「十一月十日か……」
ほんの二週間程であるが、ハイネの方が年上らしい。
訳も無く嬉しくなる。
「その日、空けといて。一緒にどこか行こう」
「お出かけ! 必ず空けておきます。楽しみです! でも、プレゼントは本当に要りませんからね?」
「分かった分かった」
適当に頷いておくけど、頭の中では何を取り寄せるか考え始めている。
(珍しい宝石のアクセサリー? 年代物のワイン? う~ん……女が喜ぶ物ってなんだ? 小切手とか? あ~でも、ジルって結構金持ってるからそんなもん要らないか)
なかなか難しい。だけど、彼女へのプレゼントを考えるのは不思議と楽しい。
絶品のマロンタルトをおかわりしながら、彼女からヒントを貰う。
「ドレスは間に合ってる?」
「えぇ! 間に合ってますわ!」
「別荘はまだ持ってないだろ」
「別荘!? この家があれば充分なのですわ!」
「セキュリティ向上のために近衛を二人程渡すとかは?」
「ちょっと手に余る様な……」
「もう二週間あるし、少し悩んでみるか……」
「だから要らないと何回も言ってますのに!」
「そういう訳にはいかないから」
「はぁ……。あ! 何時の間にか雨がやんでますわ!」
強引に話題を変えられた様な気がしなくもないが、窓に視線を向けると、雲の隙間から太陽の光が下りていた。
「あー、ホントだ」
たぶん、前までの自分だったら、雨があがり、雷が止んだ事を単純に喜んでいただろう。それなのに、今は何故か天気にムカついている。
自分の感情が良く分からず、首を傾げる。
「晴れそうですわね。夕食までの間、どこかに散歩に行きませんか? 雨上がりの空気はきっと美味しく感じられますわ」
ジルの言葉を聞き、自分の感情の正体にピンときた。たぶん、雨に閉ざされた家の中で、彼女と身を寄せ合う様に過ごすのをかなり心地良く感じている。だから外になんか出たいわけがない。たちが悪い事に、それを言葉で伝えるは恥ずかしいから、天気の所為にしたいのだ。だから晴れてしまう事が気に入らない。
「水たまりで転ぶと、ずぶぬれになるし、今日はフラフラ出歩かないで家の中に居た方が安全だと思うけど」
「何故水たまりで転ばなければならないのです?」
「たぶん、アンタは転ぶと思う。だって、この間なんか安全な室内で植物に連れて行かれたし」
「むむ……。だってアレは!!」
「アンタ色々巻き込まれる体質みたいだから、このままここでノンビリしてようぜ!」
釈然としない顔をする彼女の口に、マロングラッセを突っ込み、黙らせる。驚き、真っ赤になるジルの姿がやっぱり可愛い。
雷の日でも、彼女と過ごすと最高の一日になる。自分の気持ちを引き上げてくれる彼女のパワーは、やっぱり自分にとっては無くてはならない物になりつつある。
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