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父の従者は幼馴染
父の従者は幼馴染①
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夏にしては冷たい雨が降る中、不動産屋のゲントナー氏に案内され、ジルはマルゴットを伴って歴史を感じる物件に来ている。引っ越し先の物件を選びたいのだ。
「こちらの物件は没落したとある子爵が所有していた邸宅でして、条件として挙げていらっしゃった庭も付いております」
「少し見て回りますわ」
「ええ、気が済むまでご覧くださいませ」
何軒も見て回るうちに、だんだん何が良いのか分からなくなってくるジルだったが、折角自分で住む家を選ぶという貴重な体験なのだからと気合を入れ直す。
ジルの出身はこの国ではない。先日ブラウベルク帝国と戦争を再開させたハーターシュタイン公国が祖国である。ジルは当初帝国に人質としてやって来て、皇族が所有する離宮に軟禁されていた。
しかし皇太子であるハイネの取り計らいにより、公国の大公妃という身分や公爵令嬢という身分を捨て、帝国の一国民になる事が出来た。そのため、離宮に住み続けるのは抵抗を感じ、侍女のマルゴットと共に新居を探す事にしたのだ。
とは言っても、小娘二人と今後雇う予定の使用人少数が住むのにちょうどいい物件にはなかなか巡り会えず、雨の日が続く中かれこれ三日もゲントナーに案内してもらっている。
ゲントナー氏が紹介してくれた家の中を見て回ると、つい最近まで子爵家の人間が使用していたためか、家具等は綺麗な状態だし、庭も雑草がポツポツと生えている。だがそのくらいなら、復活させるのは容易いだろう。
ジルはマルゴットとこの家の良い点と悪い点を挙げていく。
「他になにか気になる点はあった?」
「はい。庭にナナカマドが植えられているので、黒魔術を行うのに適していません……」
「ナナカマドは魔除けで植えられるものね! 気になるなら、他の木に代えてしまえばいいと思うわ」
侍女のマルゴットは黒魔術の使い手であるため、一般的な人間とは気になるポイントが異なる。
でも、一緒に暮らすいじょう、出来るだけお互いにとって満足出来る家を探したい。
「この家もそうなのだけど、この国は随分古い物件でも未だに現役だから、凄いと思うわ! ハーター……おっと! 母国では首都に新しい建築物が増えているから、古い街並みが逆に新鮮!」
ゲントナーが傍にいるのを忘れ、ウッカリ出身国を口にしそうになったジルだったが、彼は気にしなかったようだ。
「帝都コトバスでは、昔から街の景観を守る事を重視しているので、新しい建物を建てる際に準拠させられる建築法がかなり厳しいのです」
「法が厳しいから中古物件をそのまま利用する方が楽……という事なのですのね」
「その通りでございます。ただ、最近の議会では建築法を緩め、建設業界を活性化させるべきとする議論もあるようですね」
「中古物件を取り扱うゲントナーさんにとってはあまり望ましくない状況なんですの?」
「扱う対象を土地に代える……とかで、なんとかなるでしょう。発議者のマリク議員殿は建築会社を経営するお方。政治家のバックグラウンドを調べて予め準備しておてますので、切り替えはスムーズにいきます」
マリクという名をジルは最近聞いている。六月にライ麦の品質で問題を起こした村が、マリク伯領だったのだ。この国の議員は貴族が行う。という事は名前が偶然一致したわけではなく、先日爵位を継いだマリク伯爵が発議者とみて間違いなさそうだ。
とは言っても、ジルは当人と面識があるわけではないし、不動産屋の人間にする世間話としても相応しくないため、「皆さん色々大変ですのね」と適当に濁した。
「屋敷の中は一通り見終わりましたか? お昼時ですし、次の物件へ向かう前にレストランでお食事等はいかがでしょう?」
「私は、充分なくらい見たわ。マルゴットはどう?」
「ジル様の選んだ所に合わせます……」
マルゴットがジルに全面的に物件選びを任せようとするのは、信頼の現れなのだろう。もしくは、黒魔術に関する事以外なら拘りが無いのか……。ジルはマルゴットに頷き、了解を伝えた。
三人でゲントナーの馬車に乗り、繁華街の目抜き通りを南へと向かう。
案内されたレストランは、オープンテラスの席が設けられており、この国にしては開放的な店内だ。
ただ、ゲントナーによると、腸詰がお勧めらしく、いつもと違う味わいを楽しめる店ではなさそうである。
ウエイターに奥のテーブルに案内され、三人で着席する。
「お二人のお好きな料理を頼んで下さい。私は腸詰さえあればいいのです」
彼の指さす黒板を見ると、意外と料理の種類が多く選びづらい。マルゴットは何がいいのか聞きたくて彼女を見たが、何故かいつもボンヤリしている表情を厳しく引き締め、扉側を見つめていた。
(どうしたのかしら?)
恐々とジルもそちらを見てみる。入口付近には長身の青年が居り、ウェイターに店内へと案内されていた。その人物の顔まで視線を上げてみて、ジルは驚き、立ち上がった。
「イグナーツ!?」
ここに居るはずのない人間。彼はジルの生家であるシュタウフェンベルク公爵家で父の従者なのだ。
灰色がかった茶髪に端正な顔立ちの彼は、ジルの姿を目にすると、ハッとした表情で立ち止まった。
「お嬢様! まさかこんな小汚いレストランでお会い出来るとは!」
イグナーツを案内していたウエイターは「小汚い」という言葉に渋い顔をするが、そんな事はお構いなしに彼はジル達のテーブルに近付いて来た。
感激した様な彼の表情を見て、ジルは内心微妙な気持ちになっていく。
彼とジルの関係はわりと長い。出会いは三歳くらいで、気づいた時にはいつでも傍にイグナーツが居た。記憶の端々に奇行をとる彼の姿が紛れてはいるものの、命を助けられた事は一度や二度ではない。
十一歳位までは友好的な関係を築けていたはずなのだが、ジルの体重が増加すると、他所他所しくなった。
それにグレート・ウーズ王国では、偶然会った彼にジルは捕獲され、ハーターシュタイン公国に連れ戻されている。
従者という彼の立場を考えるとしょうがないのだろうが、遠い昔兄の様に慕っていた事を思えば、不貞腐れそうになる。
だから少し他人行儀に振るまう事にした。
「御機嫌よう。何故貴方がこの国にいるのかしら?」
「あぁ……お嬢様! その軽蔑するような表情最高です! 踏まれたい!」
その陶然とした様な表情に、ジルは愕然とした。幼少の頃はよく彼のそういった表情を見る事があったが、ある時からパッタリと見せなくなったので、頭がまともになったのかと思っていたのだ。
真っ昼間の平和なレストランで危ない発言をする青年が薄気味悪いのか、近くの席の客たちは自分達の料理を手にテラス席へと逃げていく。
「イグナーツ……消えて……」
マルゴットはジルとイグナーツの間に立ちふさがる。
「やぁ、マルゴット久しぶり。相変わらずお嬢様にべったりなんだな」
「アンタが逆立ちしてもなれない侍女だしね」
昔から仲の悪かったマルゴットとイグナーツはジルの目の前で火花を散らす。ゲントナー氏が嫌そうな顔をしているのに気が付き、ジルは仕方無く二人を落ち着かせる事にした。
「マルゴット、イグナーツ。ここは外なのだし、人目を気にした方がいいわ」
「ごめんなさい……」
「申し訳ありません。あの、私も同席して構いませんか?」
イグナーツの申し出に、マルゴットは露骨に顔を顰めた。それを目にし、どうしようかと迷ったが、そもそも彼がここにいるのには理由があるはずなのだ。恐らくはジルの生家に関する事で。
だから追い返すわけにもいかず、渋々頷く。
「ゲントナーさん、申し訳ありません。彼は古い知人なのです」
「どうぞどうぞ。食事は人数が多い方が美味しくいただけますので」
流石は接客業を長年やっているだけあって、ゲントナーはイグナーツを満面の笑みで受け入れる。
そのまま四人で食事をとり、午後からはイグナーツを加えて予定通りに物件を見て回った。
夕方にゲントナー氏と別れた後、ジルはイグナーツとハーターシュタインに関する際どい話を切り出した。
「この国へと密入国して来た理由を話してもらってもいいかしら?」
「公国や公爵家の状況を貴女にお伝えするのと、公爵様からの贈り物をお渡しする為です」
「こちらの物件は没落したとある子爵が所有していた邸宅でして、条件として挙げていらっしゃった庭も付いております」
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しかし皇太子であるハイネの取り計らいにより、公国の大公妃という身分や公爵令嬢という身分を捨て、帝国の一国民になる事が出来た。そのため、離宮に住み続けるのは抵抗を感じ、侍女のマルゴットと共に新居を探す事にしたのだ。
とは言っても、小娘二人と今後雇う予定の使用人少数が住むのにちょうどいい物件にはなかなか巡り会えず、雨の日が続く中かれこれ三日もゲントナーに案内してもらっている。
ゲントナー氏が紹介してくれた家の中を見て回ると、つい最近まで子爵家の人間が使用していたためか、家具等は綺麗な状態だし、庭も雑草がポツポツと生えている。だがそのくらいなら、復活させるのは容易いだろう。
ジルはマルゴットとこの家の良い点と悪い点を挙げていく。
「他になにか気になる点はあった?」
「はい。庭にナナカマドが植えられているので、黒魔術を行うのに適していません……」
「ナナカマドは魔除けで植えられるものね! 気になるなら、他の木に代えてしまえばいいと思うわ」
侍女のマルゴットは黒魔術の使い手であるため、一般的な人間とは気になるポイントが異なる。
でも、一緒に暮らすいじょう、出来るだけお互いにとって満足出来る家を探したい。
「この家もそうなのだけど、この国は随分古い物件でも未だに現役だから、凄いと思うわ! ハーター……おっと! 母国では首都に新しい建築物が増えているから、古い街並みが逆に新鮮!」
ゲントナーが傍にいるのを忘れ、ウッカリ出身国を口にしそうになったジルだったが、彼は気にしなかったようだ。
「帝都コトバスでは、昔から街の景観を守る事を重視しているので、新しい建物を建てる際に準拠させられる建築法がかなり厳しいのです」
「法が厳しいから中古物件をそのまま利用する方が楽……という事なのですのね」
「その通りでございます。ただ、最近の議会では建築法を緩め、建設業界を活性化させるべきとする議論もあるようですね」
「中古物件を取り扱うゲントナーさんにとってはあまり望ましくない状況なんですの?」
「扱う対象を土地に代える……とかで、なんとかなるでしょう。発議者のマリク議員殿は建築会社を経営するお方。政治家のバックグラウンドを調べて予め準備しておてますので、切り替えはスムーズにいきます」
マリクという名をジルは最近聞いている。六月にライ麦の品質で問題を起こした村が、マリク伯領だったのだ。この国の議員は貴族が行う。という事は名前が偶然一致したわけではなく、先日爵位を継いだマリク伯爵が発議者とみて間違いなさそうだ。
とは言っても、ジルは当人と面識があるわけではないし、不動産屋の人間にする世間話としても相応しくないため、「皆さん色々大変ですのね」と適当に濁した。
「屋敷の中は一通り見終わりましたか? お昼時ですし、次の物件へ向かう前にレストランでお食事等はいかがでしょう?」
「私は、充分なくらい見たわ。マルゴットはどう?」
「ジル様の選んだ所に合わせます……」
マルゴットがジルに全面的に物件選びを任せようとするのは、信頼の現れなのだろう。もしくは、黒魔術に関する事以外なら拘りが無いのか……。ジルはマルゴットに頷き、了解を伝えた。
三人でゲントナーの馬車に乗り、繁華街の目抜き通りを南へと向かう。
案内されたレストランは、オープンテラスの席が設けられており、この国にしては開放的な店内だ。
ただ、ゲントナーによると、腸詰がお勧めらしく、いつもと違う味わいを楽しめる店ではなさそうである。
ウエイターに奥のテーブルに案内され、三人で着席する。
「お二人のお好きな料理を頼んで下さい。私は腸詰さえあればいいのです」
彼の指さす黒板を見ると、意外と料理の種類が多く選びづらい。マルゴットは何がいいのか聞きたくて彼女を見たが、何故かいつもボンヤリしている表情を厳しく引き締め、扉側を見つめていた。
(どうしたのかしら?)
恐々とジルもそちらを見てみる。入口付近には長身の青年が居り、ウェイターに店内へと案内されていた。その人物の顔まで視線を上げてみて、ジルは驚き、立ち上がった。
「イグナーツ!?」
ここに居るはずのない人間。彼はジルの生家であるシュタウフェンベルク公爵家で父の従者なのだ。
灰色がかった茶髪に端正な顔立ちの彼は、ジルの姿を目にすると、ハッとした表情で立ち止まった。
「お嬢様! まさかこんな小汚いレストランでお会い出来るとは!」
イグナーツを案内していたウエイターは「小汚い」という言葉に渋い顔をするが、そんな事はお構いなしに彼はジル達のテーブルに近付いて来た。
感激した様な彼の表情を見て、ジルは内心微妙な気持ちになっていく。
彼とジルの関係はわりと長い。出会いは三歳くらいで、気づいた時にはいつでも傍にイグナーツが居た。記憶の端々に奇行をとる彼の姿が紛れてはいるものの、命を助けられた事は一度や二度ではない。
十一歳位までは友好的な関係を築けていたはずなのだが、ジルの体重が増加すると、他所他所しくなった。
それにグレート・ウーズ王国では、偶然会った彼にジルは捕獲され、ハーターシュタイン公国に連れ戻されている。
従者という彼の立場を考えるとしょうがないのだろうが、遠い昔兄の様に慕っていた事を思えば、不貞腐れそうになる。
だから少し他人行儀に振るまう事にした。
「御機嫌よう。何故貴方がこの国にいるのかしら?」
「あぁ……お嬢様! その軽蔑するような表情最高です! 踏まれたい!」
その陶然とした様な表情に、ジルは愕然とした。幼少の頃はよく彼のそういった表情を見る事があったが、ある時からパッタリと見せなくなったので、頭がまともになったのかと思っていたのだ。
真っ昼間の平和なレストランで危ない発言をする青年が薄気味悪いのか、近くの席の客たちは自分達の料理を手にテラス席へと逃げていく。
「イグナーツ……消えて……」
マルゴットはジルとイグナーツの間に立ちふさがる。
「やぁ、マルゴット久しぶり。相変わらずお嬢様にべったりなんだな」
「アンタが逆立ちしてもなれない侍女だしね」
昔から仲の悪かったマルゴットとイグナーツはジルの目の前で火花を散らす。ゲントナー氏が嫌そうな顔をしているのに気が付き、ジルは仕方無く二人を落ち着かせる事にした。
「マルゴット、イグナーツ。ここは外なのだし、人目を気にした方がいいわ」
「ごめんなさい……」
「申し訳ありません。あの、私も同席して構いませんか?」
イグナーツの申し出に、マルゴットは露骨に顔を顰めた。それを目にし、どうしようかと迷ったが、そもそも彼がここにいるのには理由があるはずなのだ。恐らくはジルの生家に関する事で。
だから追い返すわけにもいかず、渋々頷く。
「ゲントナーさん、申し訳ありません。彼は古い知人なのです」
「どうぞどうぞ。食事は人数が多い方が美味しくいただけますので」
流石は接客業を長年やっているだけあって、ゲントナーはイグナーツを満面の笑みで受け入れる。
そのまま四人で食事をとり、午後からはイグナーツを加えて予定通りに物件を見て回った。
夕方にゲントナー氏と別れた後、ジルはイグナーツとハーターシュタインに関する際どい話を切り出した。
「この国へと密入国して来た理由を話してもらってもいいかしら?」
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