15 / 101
市場にて
市場にて④
しおりを挟む
「こんな所で立ち話も無粋なので、そこの軽食屋でビールでも飲みながら話しませんか?」
「そうだなバシリー。ジル行くぞ」
ジルはハイネに手首を掴まれ、近くの店に引きずるように連れて行かれる。
マルゴットの方を念を込めて見つめると、彼女はジルの願いを察した様で、馬車の方向へ走っていた。
◇
「アンタここで何やってた?」
年期を感じさせる店内は、温かな雰囲気なのに、ハイネとバシリーに尋問されるかの様に二対一の構図でテーブルを囲む事になり、非常に居心地が悪い。
「それは……えっと……」
「バシリーも知らないって事は無断で外出したのか?」
「はい……」
「協力者の名前は? アンタとあの侍女の2人だけで抜け出せるとは思えない」
「……」
「言えないの? さっきアンタの侍女が走って行ったけど、その先に協力者がいたんだろ?」
「あ! そう言われてみるとそうですね! クソ! あの女!」
バシリーはハッとした表情で立ち上がり、拳を握りしめた。
「お前あれで気づかないって、相当酷いぞ……」
「申し訳ありません! すぐ追いかけます!」
ハイネに冷たい目で見つめられたバシリーは顔色を無くし、店を出て行った。
「何か注文しよう。昼時だし」
バシリーがいなくなる事で、余計に気まずくなるかと思ったが、ハイネが店主に適当に注文を始めた事で少しだけ拍子抜けした。
「ハイネ様はこういう店にも来られますのね?」
「ああ。市場価格のチェックに来てた。どこかで買い占める奴がいると、値段が吊り上がったりするから、見てると色々気付けてわりと面白い」
「ご自分の目で見て見ないと気が済まないのです?」
「上がって来る書類だけで判断しても視野が狭くなるからな。時々現場に出向いて生の動きを見るんだよ」
「そうだなバシリー。ジル行くぞ」
ジルはハイネに手首を掴まれ、近くの店に引きずるように連れて行かれる。
マルゴットの方を念を込めて見つめると、彼女はジルの願いを察した様で、馬車の方向へ走っていた。
◇
「アンタここで何やってた?」
年期を感じさせる店内は、温かな雰囲気なのに、ハイネとバシリーに尋問されるかの様に二対一の構図でテーブルを囲む事になり、非常に居心地が悪い。
「それは……えっと……」
「バシリーも知らないって事は無断で外出したのか?」
「はい……」
「協力者の名前は? アンタとあの侍女の2人だけで抜け出せるとは思えない」
「……」
「言えないの? さっきアンタの侍女が走って行ったけど、その先に協力者がいたんだろ?」
「あ! そう言われてみるとそうですね! クソ! あの女!」
バシリーはハッとした表情で立ち上がり、拳を握りしめた。
「お前あれで気づかないって、相当酷いぞ……」
「申し訳ありません! すぐ追いかけます!」
ハイネに冷たい目で見つめられたバシリーは顔色を無くし、店を出て行った。
「何か注文しよう。昼時だし」
バシリーがいなくなる事で、余計に気まずくなるかと思ったが、ハイネが店主に適当に注文を始めた事で少しだけ拍子抜けした。
「ハイネ様はこういう店にも来られますのね?」
「ああ。市場価格のチェックに来てた。どこかで買い占める奴がいると、値段が吊り上がったりするから、見てると色々気付けてわりと面白い」
「ご自分の目で見て見ないと気が済まないのです?」
「上がって来る書類だけで判断しても視野が狭くなるからな。時々現場に出向いて生の動きを見るんだよ」
0
お気に入りに追加
1,033
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
あなたと別れて、この子を生みました
キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。
クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。
自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。
この子は私一人で生んだ私一人の子だと。
ジュリアとクリスの過去に何があったのか。
子は鎹となり得るのか。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
⚠️ご注意⚠️
作者は元サヤハピエン主義です。
え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。
誤字脱字、最初に謝っておきます。
申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ
小説家になろうさんにも時差投稿します。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化


愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる